産まれた推しの子の電脳物語   作:阿後回

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ある日の夕方。
俺は教室の机に肘をつき、ぼーっと夕焼け空を見上げていた……そんな時だった.

ーーーーだんッ!!!

大きな音とともに、眼鏡をかけた少年が机を叩いたのだ。

「……委員長?」

たしか、このクラスの学級委員長をしている少年だったと思う。リエさんからの仕事やパーティーなど、休まざる得ない日の授業内容をまとめたルーズリーフをよく貸してくれる人だった。


()()()()()()()()()()!!!」

「……は?」


90度に曲がったお辞儀をされ、『俺』は戸惑った。真面目な人間がこんなことを言うものだろうか、と。


場所は変わって、喫茶店。

「はい、どーぞ」

バイトの少女が二人分のコーヒーをテーブルに並べる。

「……で、どういうことですか?」

「…………」

あれから一言も発しない委員長に、話の内容を聞いた。

「……父が、父が癌で入院した」

「…………」

癌、ね……仕事ができなくなったとかそんなところか?

「俺の……俺の家族は父と兄と俺と……小学生になる腹違いの弟の四人家族だ」

家族の話をされても……と思ったところで、気になる言葉が聞こえてくる。

「ーーーー腹違い?」

嫌な言葉だ。
前世で何回も『関わった』から、その気持ち悪さに『僕』の脳が反応する。

「俺と、……俺の兄は死んだ母さんから産まれた子供だ。弟は、…………」

委員長はそこで俯いてしまう。

「……弟は」

()は言葉を促す。


「母さんが死んだ後、六十代後半の父がキャバクラに行って、仲良くなった外国人の女性と作った子供だ」

「……それで?」

「子供を作った後、弟の母親は弟を置いて母国に帰国……父は自分のしでかしたことに気がついて、必死に仕事をした.弟の面倒は俺達兄弟が見ている……そんな状態だったんだが」

「……父親が癌になった……と」


なかなかに重い話だ。
自業自得の面もあるが、クラスメイトである俺に頼むような案件ではない気がする。

「親戚には頼らなかったのか?」

まずは、親戚だろう。


「……親父は女癖の悪さから親父の親兄弟から勘当されていて、頼ることができない」

「公共機関は? 地方公共団体や市役所に支援を求めたらどうだ?」

「それも無理だ。既に生活保護をもらってる身……これ以上の支援はできないと言われた」


……たがら、


「……それで、『この学校の外ではお人好し』……と噂される金持ちの息子の俺に頼み込んだ、と」


だから、()に頼み込んだ、と。


「……にしても、よく頼み込んだな」

「…………」

あの事件の後に持ってくる話ではないだろ。

「この学校での俺の外聞はだいぶ悪いだろ」

「…………」

いくら、()がお人好しだからって、『惨劇』を起こした存在に頼るとか……バカじゃないのか?
いや、バカだったから、悪魔に頼み込んでも助けを求めたのかもしれないな……まぁ、いいか。

「……お前がどう考えてようが、別にいいけどな……恩があるし手伝ってやるよ」

いつもノートを見せてもらってるし、多少は手伝ってやろう。

「ーーーー本当かっ!?」

委員長は椅子から立ち上がって、驚き半分、喜び半分の視線をこちらへと向ける。


「ただし、『金を貸す』のは駄目だ。仕事を斡旋してやる……ちょうど人に頼みたい仕事があったところ、だしな」


そう、『言ったことちゃんと守れば』、本当に簡単な仕事だ。


仕事は簡単だ。

EDENに流行ってる『白い少年の幽霊』の噂がデマだと流してほしい。

なぜ、それが必要かって?

噂は上層部にも届いている。だけど、上層部はEDENのバグの一つで問題はないって考えてるみたいなんだ。

もしカミシロじゃない人間から問題が発覚した……って、なったら大問題だろ?

だから、『白い少年の幽霊』はなにかしらのバグで、EDENで見つけても近づかないよう、ハッカー達に噂を流してほしいんだ。

もし、『白い少年の幽霊』を見たとしても全力で逃げろよ。なにが起こるかわからないからな。

……わかればいいんだよ、わかれば。

一人でやるなら月三十万YEN、家族全員で噂を流すなら月百万YENをデジヴァイスに月末に送ってやる。

怖気付いたのか? ……そうか、問題ないよな。家族のためだからな。頑張れよ。

じゃあ、頼んだぞ…………あっ、最後に一番注意してほしいことがある。


『ザクソンのユーゴ』の耳に噂が届かないようにしてくれ。


頼んだぞ。


「ーーーー騙したのかっ!!!」

白に染まる病室。

「騙してなんかないさ」

病室に横たわる青年(あに)子供(おとうと)

「おかしいとは思わなかったのかな?」

「……は?」

()の口から出る思ってもない言葉(思っていた正論)


()()()()()()()()()()()()()Y()E()N()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


甘えてるだけの委員長(ガキ)に現実を突きつける。


「社会人が、何年も何年も血反吐を吐いて、働いて……ようやく辿り着く給金だ……なにもない『君達』に手取りで月に三十万も貰えるなんて……普通におかしいだろう?」

「ーーーー、あっ、くっ!?」


そんなことが言いたいわけではない。

「君達は、『四宮』からも金をもらっていたね」

でも、事実は残酷だ。

「調査内容……では、『『カミシロ』の不正を探せ』……か。月、百万だって? すごいね。俺のポケットマネーからだした給金と同じくらいだ」

最低限の約束(ルール)を守らなかったお前が悪い。

「でも、その調査書は四宮には渡せないね」

そう言って俺は、彼の調査書(データ)を隅々まで、壊した。


「だって、彼らの命は『カミシロ(おれたち)』に握られてるんだから」


経管栄養に繋がれた二人の人間。

裏切った少年の先にあるのは、無限の地獄だ。

たったこれだけの約束(ルール)を守ればよかっただけなのに……欲張るからこうなる。

本当に価値がない。

救う価値がない。



第十一話 一方その頃、羽は神と……

 

 時は再び遡り、

 

 

「……行ったな」

 

「行きましたな」

 

 

 ルビー殿とみなみ殿が学校を出発した後、拙者達はといえば…………。

 

「ほら、行きますよ」

 

 神の臀部(ケツ)を思いっきり蹴り上げる。

 

「いてっ……わかってるって」

 

「それにしても君……君のパートナーの身体って忘れてるんじゃないかな?」

 

「忘れてませぬぞ……それを差し引いても、喝を入れねばならぬと思っただけですので」

 

「……はいはい、わかりましたよ」 

 

 

 山の中を散策していく。

 

「……本当にこの方向に『彼女』はいるのでありますか?」

 

 拙者達の目的は、いつのまにかいなくなっていた『彼女』を探すことだった。

 

「100パー、いるね。間違いない」

 

 イグドラシルは確信を持ってそう言った。

 

「……なぜわかるのでありますか?」

 

 拙者にはわからない考えがあるのだろう……一応、長い付き合いであるイグドラシルに聞いてみる。

 

「彼女の思考は『タイト一筋』。現状、タイトのことを優先するのであれば、『主』の殲滅を優先するはずだ。ならば、四聖獣の一角と戦って勝つつもりだよ……それに」

 

「それに?」

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 ふむふむ、クダモンはルビー殿やみなみ殿の後に、

 

「…………」

 

 …………って、

 

 

「────っ、クダモンはここにいたのでありますか!?」

 

 

 気づかなかったのでありますぞ!? 

 

「……ん、気づいていなかったのかい? 

 校舎内にはいなかったけど、ここらへんの森の中でずっと待機してたよ」

 

 たぶん、ここを襲ってくる奴らが来るのを見張ってたんじゃないかな? 

 そう言って、軽薄そうにタイト氏の顔で笑って見せる……我らの『主人』の顔で好き勝手しないでほしいであります……が、

 

「……気がつかなかったのであります」

 

 これでも、テト殿やシン殿、ザンバモンに鍛えられたのでありますが……やはり、修行不足でありますか。

 

「流石、『ロイヤルナイツ候補』って呼ばれただけはあるよねぇ」

 

「…………」

 

 ロイヤルナイツ候補……そのような来歴も持ってるのでありますか……ん? 

 

「……ずっと気になってたのでありますが」

 

「なにが気になってるのかな?」

 

「クダモンはなぜタイト氏に執着してるのでありますか?」

 

「…………」

 

 そう言った時、イグドラシルに睨まれた……いや、聞いて当然の話だと思われますが? と思いながら睨み返す。

 

 

「……言いづらいことを聞くね」

 

「聞かなきゃわかりませぬから」

 

 

 お互いがお互いを睨み合う。

 

 

「…………」

 

「…………」

 

 

 互いに譲らず、森の中を歩きながら睨み合いを続け……、

 

「しょうがない、話します、か」

 

 5分ぐらいたった後に、ようやくイグドラシルが折れたのでありました。

 

 

「もともと、もっと後に『テトとクダモンの2体を幼年期IIの状態でタイトの下に送る』はずだったんだ」

 

 テト殿とクダモンが同時に送られるはずだった……でも、テト殿だけしか送られて……ん? 

 

「もっと後、とは?」

 

 もっと後……そっちの方が気になるのであります。

 

「タイトが三歳の誕生日に、タイトの世界へと送るつもりだった……だけど、『想定外』のことが起こった」

 

「想定外?」

 

 イグドラシル……神様にも想定外というものがあるのでありますか? 

 

 

「『()()()()()()()()()()()、『()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「────っ!?」

 

 

 頭が痛くなった。

 テト殿ならやりかねないのが、本当に頭がおかしい気がする。

 

「想定外もいいところでね。テトよりも先に生まれていたクダモンは送れないし、『イーター』は襲ってくるしで大変だったよ」

 

 ……そのようなことが……というか、テト殿の行動でさらりと、イグドラシル関連に被害を与えてるって、天性のトラブルメーカーでありますな!? 

 

「なんとか『イーター』は排除できたんだけどね。クダモンは落ち込んでしまってね……『本当は私が先に行くはずだったのにっ!!!』って怒っていたよ」

 

 クダモンもそれは執着するのであります。

 本当なら最初から会えるはずのパートナーが、相方の暴走でおじゃんになり、変な世界に送られ、何年も待つことになって、最終的に一番最後に会うことになった……うん、そりゃ執着するのであります。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 

 イグドラシルの言葉に再び引っ掛かりを覚える。

 

「……よかった? どうしてそう思うのでありますか?」

 

 クダモンにとってはよくないことが、タイト氏にとってよいことになった? それは一体どういうことなのでありますか? 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 

 星野アイ? それって、たしか……っ!? 

 

「────っ!?」

 

 タイト氏の今世の産みの母親であります!? 

 

「あっ、でも……テトが来なきゃ、タイトにとって星野アイってそこまで大きな存在にはならなかったから……別に問題ないのか」

 

「…………」

 

 あの、勝手に納得しないでほしいのであります。こっちにも情報を────

 

 

「────まっ、いいや。そんなことよりも重要なことがある」

 

 

 気が晴れたように笑うイグドラシル。これから、なにか大切な情報を聞かされるようなのだ。

 

「重要なこと、でありますか?」

 

 重要……神の言う重要。その意味を感じ取り、生唾を飲み込む。

 

「落ち込んだクダモンにね、当時の『僕』は言ったわけよ。『タイトの役に立つ方法があるけどどうする?』って」

 

「…………」

 

 ふむふむ。

 

「その後に、『ケモノガミの世界』に送ってさ。たいっへん頑張ってもらったんだよねぇ」

 

「…………」

 

 中略しすぎでは!? 

 

「クダモンには、『テトと同じようにタイトとの強力なリンク』を作ってあったからさ。すぐに究極体に進化できたよ」

 

「…………っ!?」

 

 ────は? 

 

 

()()()()()……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 ふざけるな。

 

 

「まっ、いい────

 

「いい加減にしろよ、あんた!!!」

 

 怒りで頭が沸騰する。

 

「……離して」

 

 袖を思いっきり掴んで足を止めるさせる。

 

「タイト氏やテト殿、クダモンの人生をなんだと思ってるのでありますかっ!!!」

 

 逃がすものかと意気を込め、睨みつける。ああだめだ(こいつ)とは考えが違うのだと今、実感させられた。

 

「離して、ね」

 

 それでも離せと強い口調で言うイグドラシルに、再び苛立ちが募る。本当に、本当にこいつだけは許せない、と怒りに腕が打ち震え始め、『我』は……

 

「タイト氏は今でも夢に見るのでありますよっ!? 苦しんで、苦しんで、苦しんでるのでありますそれなのにあんたは────

 

 そう、許せないと思────

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()!!!」

 

 

 

 イグドラシルが大声で怒鳴り、怒気を発した。

 

「────っつう!?」

 

 怒気を発しながら、デジヴァイスの光でも、デジソウルでもない強烈な光をイグドラシルが発した。

 

「くだらない問答をする為に話したわけじゃない。これから会うクダモンとの対話に必須だから話したんだ。無駄な時間を取らさないでくれないか?」

 

 冷静に……それでいて苛立ちが混ざるようにイグドラシルが話す。だが、『我』には納得できない言葉があった。

 

「────っ、貴様っ!?」

 

 その言葉を詰問しようとした時、

 

「恨まれようが、憎まれようが興味はない。興味があるのはただ一つ」

 

 イグドラシルは拙者を強く睨みつける……その姿は、まるで…………

 

 

()()()()()()()()()()()()

 

 

 ノルン殿に重なって見えた。

 

「その過程でどうなろうが知ったことじゃないし、どうでもいい。苦労や苦難は物語のスパイスだからね」

 

「────っ」

 

 言っていることは最悪だ。でも、威光はノルン殿に近く、チグハグな印象を受ける。

 

「睨もうが、妨害しようが関係ないよ。僕の本体は既に乗っ取られている」

 

 クロスウォーズ対戦の時にね。

 その言葉を付け足した時、イグドラシルの足が再び止まった。

 

 

「────さっ、ついたよ」

 

 

 森の中心。

 そこには『森の中ではあり得ない』建物が存在した。

 

 

「なん、で……こんなものがっ!?」

 

「これは、タイトの記憶……いや、ルビーちゃんの記憶だね」

 

 

 そこには『東京ドーム』が建てられていた。

 

 





ーーーーガン!!!

ガンッ、ガンッ!!!

ガンッ、ガンッ、ガンッ!!!

巨大な紅い馬が、巨大な背中に大樹を背負った亀を蹴り倒している。


「さあっ、言うことを聞いてくださいまし」

「きさっまーーーーっぁ!?」


脚を振り下ろし、巨大な亀の甲羅を踏み砕く。

「でなければ、死にますわよ」

冷酷、冷徹、冷血……それらを纏った視線で馬は亀を睨みつける。

「私としては、死んでくれても構いませんが……『主』は仲間なのでしょう?」

怒りと憎しみ……それはどこか、八つ当たりのように感じるのは間違いではないだろう。だが、八つ当たりでも、負けている亀のデジモンが弱く、倒されているのは、完全に力量の差があるのは明白であった。

「やめてくださいっ!? 言うことは聞きますから、シェンウーモンから足を離してください!!!」

「幽霊には関係ないことです」

ガンッ!!!

少年の霊を無視して、再び甲羅に向かって脚を振り下ろした……が、


()()()()()()()?」

「ーーーーっ!?」


()()()()()()()()()()()()()


「……あなたは、ユイ……ですわね」

「そっちはクダモン……だな」


互いが、互いの初めて見る姿に戸惑い……そして、警戒する。

「邪魔しないでくださいまし……ご主人様を安全なところにお連れする為、この亀に『お願い』しています。黄色い鳥には関係ありません」

馬は怒りと使命感で鳥を睨む。

「それは『脅迫』と言うんじゃないのか? ……それに、そいつが倒されたら『主』の封印が弱まると思うのだが?」

冷静に、それでいて馬と同じように鳥は苛立ちを向ける。

「それが目的です」

「……」

馬は不遜に、軽蔑するように鳥に向けて宣誓する。


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……()()()()()()()()()()()()()()()()()

「…………はあ」


鳥は馬の言葉に呆れて物が言えず、大きなため息を吐いた。


「どうやら意見が違うようだな」/「邪魔をするつもりですね」


その様子を見て、2体は狭き戦場の中心で睨み合う。


「我が同志の邪魔立てはさせないっ!!!」/「ご主人様の救済の為、消えろっ!!!」


主人が倒れた2体のデジモンの戦いが今始まった。
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