産まれた推しの子の電脳物語   作:阿後回

85 / 130
「全員集まったようだね」

夕焼けの教室。
壇上に立つのは、1人の少年……いや、一柱の神の声が教室内に響く。

その声に紅色の目の少女は頷き、

蒼色の竜は瞳を閉じ、

ピンク色の髪の少女はどこか上の空で、

魔の竜は心配そうに少女を見つめ、

カチューシャの少女は自身の相棒に微笑み、

人型の狐は壁際で神を睨みつけ、

壮年の男性は狐を見て帽子を目深に被り直し、

その相棒のケモノはあくびをしている。


「……準備万端なようで、よかったよ」


その姿を見て、神は呆れ……そして、確信を抱いた。


「今日の確認……、そして最後の四聖獣の戦いの話をしようか」



第十三話 タイトのイシ

 

「だいたい、今日あったことはこれでまとめられたかな?」

 

 板上には、

 

 

『バイフーモン、チンロンモン、シェンウーモンの制圧完了』◯

 

『全員『究極体』に進化』◯

 

『封印の解除について』◯

 

 

 と書かれている。

 

「ふむ、問題は後1体の四聖獣か……」

 

 教授は口元に手を当てて考え、

 

「イグドラシル、これについて詳細な情報はありますか?」

 

 イグドラシルへと質問する。

 

「あるっちゃ、あるね」

 

 だが、イグドラシルの口は重かった。

 

「教えていただくことはできませんか?」

 

「……言っても、そこまで変わらないと思うよ」

 

 再度聞いたその質問に、やはりイグドラシルの口は重い。

 

「それは、いったいどういうことなのですか?」

 

 その言葉に意味があると、教授は聞いているみたいだ。

 

「簡単にいえば、残りの四聖獣……『スーツェーモン』は伝承と君達の世界の伝承とほぼ変わらないんだ」

 

「炎の中から現れ、巨大な炎の羽で攻撃してくる不死鳥……バイフーモンみたいに音波で相手を石に変えるわけじゃないし、シェンウーモンみたいに幻覚を使って相手を惑わすわけじゃない」

 

「チンロンモンとの戦いみたいに、純粋な力との勝負になる可能性が高い」

 

 その話を聞いて、私は、

 

 

「……今の戦力で勝てるのかな?」

 

 

 ふと、そんなことを思ってしまった。

 イグドラシルに言われたとおり、バイフーモンは強かったけど……勝てない相手ではなかった。

 

「勝てるんじゃないか? 全員究極体になったからなっ!!!」

 

 ブイモンは励ましてくれたけど……。

 

「…………」

 

「…………」

 

 あたりを見回すと、教授もミユキちゃんも、レナモンもガブモンも簡単に希望を持っているような顔つきじゃなかった。

 

(……また、あんなのと戦うの?)

 

 バイフーモンでも大変だったのに、より強力なデジモンと戦うことに不安が生じてしまう……そしてその不安を煽るように、

 

「それはどうかな?」

 

 イグドラシルは薄気味悪い笑顔を浮かべながらそんなことを言ってきた。

 

「……なんか、意味深なセリフ」

 

「疑問に思うところがあるのかよ」

 

 私は強がり、ブイモンは……わからない。けど、2人の言葉がほぼ同時に教室内に響き渡る。

 

「スーツェーモンは四聖獣の中でも戦闘特化型なんだよ」

 

「戦闘特化型?」

 

「気性が荒く、力が強く……そしてなによりも、思い込みが激しいところがどんな世界のスーツェーモンに見られる具体的な特徴だ」

 

 また、嫌な言葉が聞こえてくる。

 

「……それがどうかしたの?」

 

「みなみちゃんが戦ったチンロンモンよりも強いって言いたいのさ」

 

 バイフーモン<シェンウーモン<チンロンモン<スーツェーモン。黒板に書かれたその文字列を見て、驚いてしまう。

 

「四聖獣っていうから、みんなおんなじぐらいの強さなんじゃないの!?」

 

「基本スペックは同格だよ。でも、気性の荒さとか戦闘への執着や忌避感、経験なんかは……板書した通りかなぁ? 

 基本的に、バイフーモンは戦闘に向かない性格だし、シェンウーモンは逃げ腰、チンロンモンは秩序の維持ならしかたなく……って感じだけど、さっきも言ったようにスーツェーモンは違う」

 

「どの世界においても基本『気性が荒い』。戦闘への忌避感なんてものは一切ないんだ」

 

「────っ!?」

 

 戦闘の忌避感がないって……、それって────

 

 

「それって、勝てるの?」

 

 

 私の口から出た不安の言葉、

 

 

「難しいと思う……正直に言って、タイトの復活を待ったほうが確率は高いだろうね」

 

 

 その言葉とは真反対の希望の言葉が聞こえてきた。

 

 

「────っ、それって!?」/「タイトくんが復活するんかっ!?」

 

 

 イグドラシルがたしかにそう言ったのが、私達の耳に聞こえてきた。

 

「僕の想定を越えて、タイトは復活したいようだね。うまくいけば、明後日の昼にでも復活できるよ」

 

 希望が、タイトが戻ってくる!? 

 

(タイトが戻って来……みょうごにち?)

 

 なんだっけ? 

 

明後日(みょうごにち)ってことは?」

 

明後日(あさって)だよ、ルビー」

 

 ブイモンに訂正される。

 ああ、そうだった……明後日って、あさってだった……ってことは!? 

 

 

()()()()2()()()()()()()()()()()()

 

「────っ!?」

 

 

 タイトが戻ってくることを実感する。

 

「そっか、タイト……戻ってくるんだ」

 

 タイトが倒れてから四日間……じゃない、六日でタイトが復活する。最初は二週間くらいかかるって言ってたけど、やっぱり早くよくなってたんだ!? 

 

 タイトが戻ってくることに喜びを噛み締める。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 と、イグドラシルのそんな言葉が聞こえてきた。

 

「……出てこれないのですか?」

 

「タイトが再びこんな事態になったらもう一度出てくるさ。(ぼく)が関わったら、タイトの物語じゃなくなっておもしろくなくなるしね」

 

「……」

 

 変な奴だったけど、少しだけ寂しく思えた。

 

「そう、ですか」

 

 ミユキちゃんもおんなじようで、少しだけ俯いて────、

 

 

「別にいいんやないか? 場を荒らすだけでなにもしとらん神なんやし」

 

 

 ────みなみっ!? 

 

「みなみさん、そんな言い方っ!?」

 

 ミユキちゃんもその言い草を嗜める……が、

 

 

「そうですね、こいつがしっかりしていれば、こんなことにはなっていませんでしたよ」

 

「……それは、同意ですな。そんな力があるなら、ノルン様のところで治していただければよかったのであります」

 

 

(クダモンっ!? ユイまでっ!!!)

 

 イグドラシルはクダモンとユイに追撃を受ける。

 

「クダモンもユイも言い過ぎだっ!?」

 

 教授が今度は嗜める。

 

「……嫌われたみたいだね」

 

 少しだけしょんぼり……と音が聞こえてきそうな顔になる。タイトの顔でそんな顔をされると、ちょっとだけ苦しい思いになる。

 

「嫌われるようなことしかしてないのは自覚がないのですか? ……自覚がないのであれば、ここで魂に刻み込んであげますが?」

 

「やめてくだされ、タイト氏の体であります」

 

 クダモンとユイは手心がない。

 

「…………なんで、そんなに」

 

 

「知らなくていいのであります」/「知る必要などありませんよ」

 

 

 いったい、なにをしたんだこの神様。

 

「ずいぶん仲がよくなったようだね」

 

 それについてはイグドラシルに同意だけど……、

 

 

「こいつと、私が?」/「演算機能もやられたようでありますな?」

 

 

 当の本人達は否定気味なのでこれ以上突っ込んだら、痛い目を見そうな感じがする。

 

「……はぁ、だいぶ嫌われたようだから、修復作業に戻るよ」

 

「……あと、これだけは言っておかないとね」

 

「明日の夕方、かな? ルビーちゃん→ユイ→みなみちゃんの順に、タイトの『良い記憶』を入れるんだ」

 

「……なんでや?」

 

「『なんで』、でもだ」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「それじゃあ、作業に戻らせてもらうよ」

 

 

 最後に意味深なことを言って、眠りにつくイグドラシル。

 

 

「……さて」

 

 

 その後に、すぐ動き出す影二つ。

 

「みなみ?」/「ギルモン?」

 

 みなみとギルモンだ。

 

「邪魔者は消えてもろたことやし……」

 

「あなたっ、いったいなにをっ!?」

 

 みなみはイグドラシル……ううん、タイトの体に触って、

 

 

()()()()()()()()()()

 

 

(────っ!?)

 

 

「それはっ、ご主人様のものですっ! 離しなさいっ!!!」

 

 

 クダモンは再び大きな声で威嚇する。

 

「……なんも知らん狐は黙っといてくれんか?」

 

「────なっ!?」

 

 みなみはその言葉を聞いて呆れた顔をしている。

 

 

()()()()()()()()()()()()

 

 

(────ユイにっ!?)

 

 みなみの言葉を聞いて、ユイのほうへと視線を向ける。

 

 

「『なにを』、と聞くのは邪推でありますな」。

 

「そう、やな」

 

「それを持つということは、どういうことか……わかっておりますか?」

 

「もちろんや」

 

「……覚悟はできているのでありますか?」

 

「タイトくんの『意思』はウチが受け継ぐ」

 

「……なら、拙者はなにも言いませぬ」

 

 

 なんなの、このやりとり? 

 

 

「なにっ、なにを言ってるの、みなみっ!?」

 

「ギルモンも止めろよっ!? みなみの言ってることはおかしいだろ? なんで止めないんだよっ!!!」

 

「ユイもなにを言ってるのですか!? あれはっ、ご主人様のものではないですか!? それをあんな小娘に渡すなぞ────

 

 

 私とブイモンとクダモン、その三人の声が響く教室。

 

 

()()

 

「「「────っ!?」」」

 

 

 ユイはその三人の言葉を否定した。

 

拙者(われ)が許可した。貴殿らには関係ない」

 

 ……口調が変わった? 

 

「勝手なことを決めないでくださいましっ!」

 

「我が同志ならこうする。お前とは過ごした歳月が違う」

 

 タイトならそうする? 

 ゴーグルに、そんな、意味があるの? 

 

「我が同志の意志を継ぐと言ったが……もう時期戻ってくるぞ。その意味がわかってて言ってるんだな?」

 

「わかっとるで」

 

 みなみとユイの問答は続く。

 

「戻ってきたとしても、戦えるかどうかなんてわからんやろ? あんなやつの言葉を鵜呑みにしたらあかんと思う」

 

()()()()()()()()()()()

 

 覚悟の確認。

 みなみはすでに覚悟ができているようで……、

 

 

「所詮、戻ってくるまでの『代理』でしかあらへん。でも、それでも必要やろ?」

 

「『()()()()

 

「……ふっ、そうでありますな」

 

 

 そう言って2人は笑いあった。

 

 ギルモンはそれを見て微笑んでいる。

 

「────待って!!!」

 

「『主人公』って、どういうこと?」

 

 わからない。

 

 わからない。

 

 わかんないよ!!! 

 

 

「なんも知らへんか? しょうがないけど、なぁ?」

 

「知らないのは『モグリ』ですな」

 

 

 2人だけ笑って、2人だけ知ってて、

 

 

「「……ふふふ」」

 

 

 まるで、通じ合ってるように、

 

 まるで、わかりあってるみたいに、

 

 みなみとユイは笑う。

 

 

「……まあ、ええわ。ちょーどやりたかったこともあるし、……な」

 

 

 そう言って、みなみはようやく私のほうを見る。

 

「……やりたかった、こと?」

 

 その目は私を見ているようで、どこかを見つめているようで、

 

「ルビー、明日」

 

 

 

 

()()()()()()()()()

 

 

 

 

 





夢を見る。

夢を見た。

夢を……みせた。


大切なものはなんだ。

大切なものはない。

望んだ結果は得られたか?

望まぬ世界に産まれてしまった。

価値がない。

価値がない。

価値がない。

俺/僕の嘯くその言葉は、本当に『価値』がなかった。

エイプリルフールについて(四月上旬に出すエイプリルフールネタ。エピローグ後もしくは、その間に挟まります。各√によってヒロインが変わります。話によってはタイトが主人公ではありません)

  • √アポカリモン その手で掴む為に
  • √カオスドラモン 星に寄り添う月の世界
  • √??? 失望の果てに
  • √ハッピーエンド IF
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。