産まれた推しの子の電脳物語   作:阿後回

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「……なんだ、貴様は?」

「…………」

天井……、ううん防空壕の天井を貫いて降りてきたタイト。

「人間でありながら、我が『 紅焔(こうえん)』を防いだことは褒めてやろう……しかし、」

「…………」

その様子が、なんか変だ。

「我が目的の為、貴様には死んでもらう」

スーツェーモンが大きな羽を広げて威嚇していても、警戒する様子がない……、ううん、違う。

「この世界に棲むケモノの為、彼の世界にケモノらの安寧を手にする為、我を裏切ったニンゲン共を駆逐し、『主』を滅ぼす為、貴様には死んでもらう」

……あれは、


「『 紅焔(こうえん)』」


大きな焔がタイトに降り注ぐ。


「ーーーータイトっ!?」

「ーーーーマナトくんっ!?」

「タイトくん!?」

「タイトさんっ!?」

「おい、タイトっ!?」

「避けろよっ!!!」


みんなが叫ぶ中、私はただ茫然と理解してしまった。


()()()()()()()()()()


その焔の少しもタイトには届かない……ううん、


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


()()()


闇夜色を纏ったタイトがスーツェーモンを睨みながら、怒りを込めて笑いかける。



()()()()()()()()()()()()?」



この場にいない誰かの名前を呼んでいた。


第十七話 VS美樹原愛人 憤怒解いて

 

 ドン、ドン、ドンッ!!! 

 

 ドン、ダンッ! 

 

 ダン! 

 

 ……ダン。

 

 …………ダン。

 

 

「……っ、大丈夫でありますかっ!?」

 

 

 背後から、聞き慣れたペンギンの声が聞こえてくる。

 振り返ると、ユイが防空壕に来たみたいだ……でも、

 

 

「────バカドリ、遅いです」

 

「…………っ!?」

 

 

 クダモンの言うとおり、もう遅かった。

 

「……ハル?」/「ミユ……キ?」

 

「────ガブモンっ!?」/「────レナモンっ!?」

 

 ガブモンとレナモンが起きたみたいだ。どうやら、スーツェーモンに操られていないらしい。

 

(……よかった)

 

 操られてたら、危ないところだった。

 

「なにが、あったのでありますか?」

 

「レナモンとガブモンがスーツェーモンに操られて……、スレイプモンが戦ってくれてたんだけど、……途中から、タイトさんが」

 

 みゆきちゃんはそう言いながら、タイトのほうに視線を向ける……うん、そうだよね。あの姿は────

 

 

「答えろ」

 

「うぐあっ!?」

 

 バギンと大きな音が鳴った。

 スーツェーモンのくちばしが、タイトの足に踏み潰されたところだけ、『沈んで』いる。

 

 

「キリハとネネはどこにいる?」

 

 

 ここにいない誰かについて、なんどもなんども聞き続けている。

 

「グレイモンは、スパロウモンは……メイルバードラモンは?」

 

「ドルルモンは、バリスタモンは、ベルゼブモンは、スターモンズは?」

 

「リリモンは、ブラックテイルモンは、キャンドモンは、バーガモンは、エアドラモンは、オメカモンは、サウンドバードモンは、モニタモンは、サゴモンは?」

 

 

()()()()()()()()()()()?」

 

 

 そしてもう一度大きな音が鳴った。

 

 

 

「……ユイ、なにがあったの?」/「マナトくんはあないなふうに戦うんか?」

 

 私とみなみの声が重なる。

 みなみに横から睨まれた気がするけど、今はそんな時間はない。

 

「…………」

 

 ユイはタイトのほうを向いて、少し黙って見つめていたけど、

 

 

「……やはり、でありますな」

 

 

 ユイはそう言って、眉間に皺を寄せた。まるでこんなふうになるのがわかっていたみたいに……。

 

「…………っ、やはりって……、ご主人様になにをしたんですかっ!?」

 

「…………」

 

「……あれは、先ほどのことでありました」

 

 

 ユイは数刻前を思い出す。

 

 

「……遅いっ!!!」

 

 

 クダモンが戻るのが遅い。

 タイトの魂を持つ二人はあちらへと行ってしまったため、タイトの回復の準備すらできていない。

 

「スレイプモンになりさえすれば、不完全な四聖獣なぞすぐに倒せるでしょうに」

 

 本来の四聖獣ならば、定められた世界の役割を持つことによって、強力な力を振るうことができる。

 しかし、スレイプモンに圧倒されていたシェンウーモンのレベルはそれほど強くはなかった。むしろ、想定よりもだいぶ弱い。

 

 つまり、アレらは四聖獣に進化してしまっただけのケモノだというのが、結論として挙げられる。

 

「……にしても」

 

 寝たきりのタイト氏を見て、

 

 

「本当に『これ』でタイト氏は元に戻るのでありますか?」

 

 

 イグドラシルが言っていたことを思い出す。

 

 イグドラシルは言っておりました。

 

「ルビーの持つ『タイトの幼少期の記憶』」

 

 イグドラシルは人差し指を立てる。

 

「ユイが持つ『タイトのデジタルワールドにいた頃の記憶』」

 

 イグドラシルは中指を立てる。

 

「みなみちゃんの持つ『タイトが現世(リアルワールド)へと戻ってきた後の記憶』」

 

 イグドラシルは薬指を立てる。

 

「いろいろとイレギュラーはあったけれど、幼少期から、デジタルワールド、最後に現世(リアルワールド)の順に記憶を入れることで、タイトは完全に復活するのさ」

 

 その三つをタイト氏へと入れることで、タイト氏は復活するのだとイグドラシルは言った……、しかし、懸念点が生まれる。

 

「順番に入れなければどうなるのでありますか?」

 

「…………それは、僕にもわからない」

 

 少しだけ、言葉を溜めたイグドラシル。その姿を見て拙者は、

 

(あやしい)

 

 そんなふうに思った。

 

「まぁ、今タイトの魂を修繕するのに使っているのは『タイトが今世で経験した『悪意』』だ」

 

「タイト氏が今世で経験した悪意……で、ありますか?」

 

 イグドラシルが言った言葉が引っかかった。

 タイト氏の前世で作り上げられた『悪意』ではなく、今世での経験によって生み出された『悪意』だとは思わなかったからだ。

 

「君にも身に覚えがあるだろう?」

 

「…………」

 

 身に覚えは、ある。

 

「たとえば、『母親がストーカーに殺されかけた記憶』や『仲間が自分の身を守って死んでしまった経験』、『現代の不可解な闇(理解したくない事情)』……、ひとつでも経験すればトラウマになってもおかしくない記憶だ」

 

 

「タイトはそれをたくさん見てきただろう?」

 

「くそったれのような前世がなければ耐えきれなかった悪意(それら)も、積み重なれば毒になる。そしてそれは身体の負荷として肉体に現れる」

 

「だから、僕は定期的にタイトが悪感情を溜めないように記憶の処理を行なっていたのだよ」

 

「…………」

 

 イグドラシルによって言われた次々の言葉が、図星を突かれたように心に刺さる。ああ、拙者は……拙者達は、タイト氏の大丈夫だと言う言葉に甘えていたのかもしれない。タイト氏の無茶を知っておきながら、なにもできなかったのだと、そう思えてしまった。

 

「なあに、順番どおりに記憶を入れてくれば問題はないのさ。そこらへんはユイ(キミ)を信用してるからね」

 

 イグドラシルはさも、『簡単なこと』、だというように、そんなことを言ってのけた。

 

 

「頼んだよ、ユイ」

 

 

 そう言ってタイト氏の魂の修復へと戻るイグドラシル。ただ、寝たきりの彼を見続けることしかできない拙者は……、

 

 

「……、もしルビー殿に危険が迫っていれば、助けに行かないと……、でも、タイト氏をこのまま置いていくのは危険すぎる」

 

 今、最高潮に焦りが高まっていた。

 

「遅いっ、本当に遅すぎる」

 

 下の空間では、強いデジモンが4体戦っているのが感じられる。

 

「……クダモン」

 

 そのうちの1体はスレイプモンだと理解していながらも、焦りはやまない。

 

 

『なあに、順番どおりに記憶を入れてくれば問題はないのさ。そこらへんはユイ(キミ)を信用してるからね』

 

 

 そんなときに、ふとイグドラシルのさっきの言葉が頭に響いた。

 

「あんなクソ神のことなんて信じられるかっ! これ以上待って、ルビー殿達になにかあったら、タイト氏には申し訳が立たないのであります!!!」

 

 そして、限界は最高潮を迎え、

 

 

「拙者は行かせていただきます……、────っ、あっ!?」

 

 ────あっ!? 

 

 

 スウン。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「あっ、間違えてタイト氏の中に拙者の持つ記憶を入れてしまったのであります!!!」

 

 

 イグドラシルは言っていた。

 

 

『いろいろとイレギュラーはあったけれど、幼少期から、デジタルワールド、最後に現世(リアルワールド)の順に記憶を入れることで、タイトは完全に復活するのさ』

 

 

 つまり、『ルビー』→『ユイ』→『みなみ』の順に、それぞれが持つ『タイトの良い記憶』を入れなければならなかった。

 

 それをユイはうっかり手から『タイトの良い記憶』を落としてしまったが故に、イグドラシルがやってはいけないと言っていた、『順番を無視』して記憶を入れてしまったのだ。

 

 

「どうしよう、どうしよう……っ、どうすればいいんだっ!?」

 

 先程とは別の意味で焦る気持ち。どうしようどうしようと頭を悩ませる……、そんななか、────ムクリ、と起き上がる音が聞こえた。

 

 

「────っ!?」

 

 

 頭を抑えながら起きるタイト氏。

 

「……タイト、氏?」

 

 起きたことに安心する。

 だけど、どこか様子がおかしい。

 

()()()()()? ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

()()()()()()()()()()? 

 

「タイト氏……、大丈夫なのでありますか?」

 

 様子を確かめるべく爪を立てながら、タイト氏の目の前に見えるように────

 

「……◾️◾️◾️氏? マナト殿じゃない……っ、というか、ここはどこだっ!?」

 

 ……一瞬、なにを言っているのか聞こえない言葉が聞こえた。それにここがどこかもわからないようだ。ならば、はやく伝えないと、ルビー殿達が危ない。

 

「あの、ここは────

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()!!!」

 

 

(────えっ!?)

 

 タイト氏はなにを言っている? 

 

「キリハは? ネネは? テトもシンもいないっ、いったいどうなっているっ!!!」

 

 ここはクロスウォーズの世界ではない。

 

 キリハ殿もネネ殿もこの世界にはおらず、あの世界はノルン殿曰く既に救われている。

 

 先輩方はタイト氏の命令で、現実世界にいるタイト氏の母親を狙っている『ケモノ(デジモン)』を探している。

 

 それを忘れている? ……まさかっ!? 

 

 

「タイト氏……、まさか、記憶が……っ!?」

 

「倒れていたから記憶が不鮮明だ。でも、ここがもし、バグラ軍が支配する地域なら、キリハ達をすぐに助けに行かないとっ!!!」

 

 タイト氏が立ち上がる。

 

(この状態のタイト氏を放っておくのはまずいっ!?)

 

 タイト氏は記憶を失っている。ならば、前の呼び名で呼ばなければならない。少しだけこう呼ぶのは懐かしく思いながら、クロスウォーズの頃の呼び名を────

 

「マナト殿、それはっ────

 

 

()()()()()()()()()()()()()()

 

()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「────は?」

 

「ムーチョモン、先に行ってるからな」

 

 タイト氏は家庭科室の扉へと走っていく。

 

(まさかっ、今の状態でルビー殿達のところへと行くので、────って、ああっ!?)

 

「しかたない、行くのでありますっ!!!」

 

 そう言いながら、拙者は走り出した。

 

 

「……ということが、ありまして」

 

「……その結果が、アレと」

 

 

「……コヒュー、……コヒュー」

 

 全身の至る所が凹んでいるスーツェーモン。

 

「……チッ、結局口を割らなかったか。まあ、話を聞く相手はまだいるみたいだし」

 

 いらだちまじりに、こちらを見るタイト。だけどすぐにスーツェーモンのほうを向いて、

 

 

「……殺すか」

 

 

(────えっ!?)

 

 ボロボロのスーツェーモンにトドメを刺そうと、闇夜色のデジソウルがさっきよりも強くこの部屋を飲み込んでいく。

 

「────やめてくださいっ!!!」

 

「……なに?」

 

(……あっ!?)

 

 そういえば、私の時も、みなみの時も平安時代の服装の少年がいたことを思い出した。たぶん、スーツェーモンのパートナーなんだと思う。

 

(……でも)

 

 本当にタイミングが悪かった。

 

「私達は『ばぐら軍?』なるものではございませぬ。このケモノの世界で『主』と呼ばれる者を封じる────

 

「嘘だな」

 

「────っ!?」

 

「なら、こいつはなんだ? 背後にいる人間とデジモンを襲ってたじゃないか」

 

 タイトは私……、いや、教授へと親指を指しながら少年へと語りかける。

 

「……それは、私の不得が致す事態でして」

 

「信じられないな」

 

 冷淡なのは変わらず、少年へとデジソウルをさらに強めた拳を向け、睨みつけた。

 

「理由は二つ、一つ目は、ファンロンモンはダークナイトモンの部下だった」

 

「……はい?」

 

「四聖獣はファンロンモンの部下=ダークナイトモン、ひいてはバグラ軍に所属し、デジタルワールドを支配し、リアルワールドを侵攻しようとしているデジモン集団の一員だ」

 

「ばぐら軍なるモノにも似たようなケモノがいたというだけの話ではないですか!?」

 

 その言葉はタイトには届かない……だって、

 

 

「二つ目は、ストレスが溜まってる時に、てめえみたいな人間かどうかさえあやしい、クソッタレの話なんて聞いてられるかってことだよっ!!!」

 

「────があっ!?」

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「……アレ、本当にマナト……、タイトくんなんか?」

 

 みなみの言葉に……、正直言って私も頷きたい……だけど、

 

(あれは、間違いなくタイトだと思う)

 

 そう思えてならないのだ。

 夕焼け色の砂浜にいたあのタイトなのだと、記憶がそう言っているのだ。

 

「先輩がたがおられないので、気が立っているのであります。むしろ……」

 

 ユイも同意しながら、懐かしそうにタイトの……いや、苦渋を舐めるかのような表情へと変わって、

 

 

「『あのときのマナト殿』らしい雰囲気でありますな」

 

 

『あのときのマナト殿』という意味深な言葉を言っていた。

 

「……『あのとき』?」

 

「『マナト殿』?」

 

 

「……で?」

 

「ぐぅううっっ」

 

 スーツェーモンの頭を踏み潰しながら、

 

 

()()()()()()

 

 

 首がギュルンとこちらを向いた。

 

「……マナト殿?」

 

「……ムーチョモン?」

 

 ……って、ムーチョモンってなに!? 

 

 [ムーチョモン]

 

 デジモンの図鑑を開くとユイの姿が映り、説明が開始される。

 

 [レベル:成長期 種族: 鳥型 属性:データ種 必殺技:『トロピカルビーク』

 ペンモンとソックリの空を飛べない鳥型デジモン。トロピカルな南国育ちのデジモンで、いつも愉快に暮らしている。ほとばしるほどの情熱を持ち、サンバのリズムで踊り、ハデな極彩色の毛皮が大のお気に入りだ。必殺技は、カラフルなクチバシで突きまくる『トロピカルビーク』。]

 

(……えっ、なに、ユイのデジモンとしての種類の名前、初めて知ったんだけど)

 

 初めて聞く種族としての名前に、ちょっとだけ戸惑ってしまう。

 

(というか、タイトがユイのこと名前で呼ばないなんて、本当に────)

 

 記憶がないのだと実感できた。

 

 

「ここは『なにランド』だ?」

 

 

 タイトからテーマパークのような言葉が聞こえてくる。

 

「……なに?」

 

「ランド?」

 

 ランドってなに!? 

 

「……『ドラゴンランド』のドルビックモンを倒して、何日が経った?」

 

「……それは」

 

「テトとシン、キリハとネネは……、俺の仲間はどこにいる?」

 

「…………」

 

「リリモンやブラックテイルモン、キャンドモン達は? オメカモンやバーガモン達はどこに連れていかれた?」

 

 タイトから聞こえてくる聞いたことない名前や情報、どれも今のタイトにとってはついさっきのできごとだとわかってしまう。

 

 わかってしまうからこそ、

 

()()()()()()()()()()()

 

 胸の内に秘めた『嫉妬』が大きく揺らいだ。

 

「マナト殿っ!」

 

 横にいるユイが大きく叫ぶ。

 

 

「……なんだ?」

 

「ここはクロスウォーズの世界ではございませんっ!!!」

 

 

 ユイは大きな声で、タイトの間違いを指摘する。

 

(ユイ、よく言ったっ!!!)

 

 正直に言えば、あんな怖いタイトの言葉に違うって言うのは怖くてやりたくなかった。でも、ユイは答えてくれたから、少しだけ気持ちが和らいだ……のに、

 

 

「……は、なにを言ってる?」

 

 

(なんでタイトは威圧してくるのっ!?)

 

 威圧したいのはわかるけど、それは……気持ちを抑えて、こっちの話を聞いてくれたっていいじゃん。

 

 

「マナト殿の記憶は抜けているところがあります! 最後にどうなったかを思い出してくだされっ!!!」

 

「…………」

 

 いけ、ユイ……、そうだよっ! ユイ言ってあげてっ!!! 

 

 

 ……って、なんで? 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

「……お前、本当にムーチョモンか?」

 

「────っ!?」

 

 

 タイトは今ものすごく怒ってる。

 

「いや、その声と姿は『さっき』進化したムーチョモンであってるはずだ……、だけど、その口調はなんだ? オタクみたいな口調になっている。俺の寝ている間になにかがあった?」

 

「マナト殿……、あの戦いから、もう6年ほど経っているのであります!!!」

 

「……はっ? それはおかしいだろ。

 

 目の前には四聖獣の一角であり、バグラ軍のスーツェーモンがいる。

 

 目の前にはあの『クソガキ』みたいに、平安時代の古臭い変な格好をした幽霊みたいなガキがいる。

 

 そこにいるロイヤルナイツが戦っていた。

 

 これだけの証拠があって、なんでそんなおかしなことが言えるんだ?」

 

「マナト殿にはわかるはずであります!!! 

 よく体を見ていただきたいっ……、8歳の頃より圧倒的に身長が目減りしている。手足のリーチも戦闘における肉体的なスペックもだいぶ下がっております! 記憶の抜けも、あの戦いの後、マナト殿の魂が壊れてしまったが故に、修復するために記憶を物質化して、治している最中であります!!!」

 

「……そんな妄言が、信じられるわけ、……テトとシンはどうした? あいつらが俺から離れるわけ────

 

 

「テト殿とシン殿は、マナト殿の頼みでここにはおりませぬっ!!!」

 

 

(ユイ、よく言った!)

 

 あの怖いタイトにあそこまで言ったユイについすごいと思ってしまった。

 

『思ってしまった』のだ。

 

 周りを見ることもしないで、

 

 

「…………」

 

 

 タイトが俯いて、

 

 

「…………っ」

 

 

 手を握りしめて、

 

 

「…………っ!!!」

 

 

 声にならない叫びをあげた。

 

(……あっ、これは)

 

 そう、私は、……私達は気がついていなかった。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!!」 

 

 

「────っ!?」

 

 

()()()()()()()()()()()()()

 

 

「……お前、なにか様子がおかしいな。……もしかして操られているのか?」

 

 タイトの目つきが完全に変わったのを感じる。

 

(……うっ!?)

 

 タイトから感じていた圧が、さらに強まって、気配がどんどん怖くなる。

 

「────拙者は操られてなどおりませぬっ!!!」

 

 ユイはそう言うけど、これはもうだめだ。

 

「ああ、そうか。あの『テト』と『シン』が理由なく俺から……いや、理由があっても俺から離れるわけがない。むしろ、徹底してなにかに守らせるはずなのに、この状況は全てがおかしいんだ」

 

 私はどうすればいいのかわからない。

 

 

「……タイト?」/「……タイトくん?」/「ご主人様?」

 

 わからなくて、私達は心配そうにそう声をかけるしかなかった。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 

 なかったのに…………っ!? 

 

「「────っ!?」」

 

 タイトからそう言われてしまった。

 

「『紅色のカブトムシ』と『宵色のカマキリ』? 両方とも人型……、そんなデジモンはいたか?」

 

 紅色、カブトムシ? 

 

 宵色、カマキリ? 

 

 いったいなにを────、

 

 

『そんな父親に引き取られた『僕』だけど後遺症が残った』

 

『生きた人、特に目に見えて第二次性徴を迎えた後の女性が『虫』に見えること』

 

『これがひどくってさ、外に出歩けば母親なんてそこらにいるわけだから、家から出られないでやんの。女性恐怖症もここに極まれりってところでさ』

 

 

 あの夜、タイトはたしかそんなことを言っていた。

 

 

(もしかして、タイトの前世の病気が再発した!?)

 

(ウチとルビーは虫に見えとるってことかっ!?)

 

 

 あのとき寝たふりをしていたみなみと顔を見合わせる。

 

 

「ルビーがカブトムシで」

 

「ミナミがカマキリ?」

 

 

 ブイモンとギルモンの反応から、ミユキちゃんが『誰が』虫に見えているのかを知ってしまった。

 

「虫って……、タイトさんっ、ルビーさんとみなみさんのことを忘れてしまったんですかっ!?」

 

 ミユキちゃんのその言葉は……、話を聞いていないから、たぶんわかってないんだと思う。

 

「『前世の病気』が再発したか?」

 

 ミユキちゃんの言葉を無視して、タイトは自分の考えをまとめてる。チャンスだと思った。

 

 この場から少しでも離れようとして……、

 

(……『前世の病気』?)

 

 教授の小さな声が聞こえてくる。

 

「……いや、病気の再発にしてはおかしい。なぜあのカチューシャをつけた少女は虫にならない?」

 

 それと同時にタイトの目が変わった。

 

(……ミユキちゃんは虫にならないっ!?)

 

 どういうことっ!? ……と、考えようとするけど、目の前のタイトの圧がそれを考えさせるほどの余裕をくれない。

 

「────っ、思い出してくだされっ! マナト殿の前世の記憶をっ! サヴァイブの記憶をっ!!!」

 

 ユイ離れようと必死だけど、どんどん闇夜色のデジソウルの濃度が濃くなっていく。

 

「……ここは、クロスウォーズの世界だろ? 考慮する必要があるのかよ……それに────」

 

 タイトはもう────

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 戦うしかないんだ。

 

「────くっ!?」

 

 警戒していたスレイプモンが急いでみんなの前に出る。

 

 

「『オーディンズブレ「────遅いっ!!!」

 

「────ぐぅぅっ!?」

 

 

 あれだけ速かったスレイプモンが、気づいたときには目の前にいなくて、

 

「────スレイプモンっ!?」

 

 背後の壁に大きな金属ぶつかった音が聞こえた。振り向くとそこにはスレイプモンが壁に叩きつけられている。

 

「……はぁ」

 

 そして、タイトはスレイプモンが立っていたところに、……私達の目の前に立っている。

 

 

「しかたありませぬっ!!!」   

 

 [ムーチョモン ワープ進化]

 

 ユイの体が光に包まれ、大きな虹色のトリへと進化する。

 

 

「『ヴァロドゥルモン』!!!」

 

 

 ヴァロドゥルモンに進化したユイ。

 

「トロいんだよ」

 

 それを待っていたタイトは大きく拳を振り上げる。

 

「────っ!?」

 

 

「────ウラァッ!!!」/『パージシャイン』ッ!!!」

 

 

 バキンッ!!! 

 

 

「────ふわっ!?」

 

 今度は確かにユイの巨体が吹っ飛んだのが見える。

 

「……うそでしょ?」

 

 ユイの光の壁……、『パージシャイン』をタイトの拳が『貫通』して、ユイの体をスレイプモンの隣まで吹き飛ばしたのだ。

 

(どんな力してんのよ、あいつはっ!?)

 

 アレが私の敵になっていることに、ものすごく恐怖を感じた。

 

 

「……っつぅ、……あいっかわらず、化け物じみた怪力ですな」

 

 

 動かないスレイプモンの横を、ユイは痛みに耐えながらなんとか飛び上がった。

 

(……よかった)

 

 強がりか皮肉かはわからないけど、今のタイト相手に立ち向かえるぐらいユイが強いことに安堵を感じる……だけど、

 

「……化け物? 失礼だな」

 

 タイトはうっすら笑みを浮かべて……、

 

 

()()()()()()()()()()()?」

 

 

(────っ!?)

 

 本気でたしかにそう言った。

 

「本気で言っておられるのですか?」

 

 本気で正気を疑う。

 

 

「ダークナイトモンとの戦いの半分も力を出していないのに……、そっちこそ本気で言ってるのか?」

 

「────ッ!?」

 

(ダークナイトモン……、また別のデジモンの名前っ、いったいどんな……っ!?)

 

 ユイは苦虫を噛み潰したように苦悶な表情を浮かべる。

 

「テトとシンなら耐えれたはずなのに……、究極体に進化しようが、弱い奴は弱いままだな」

 

「────くっ!?」

 

 ユイは悲しそうな顔をするが、『私』は……、

 

 

「それ、本気で言ってるの?」

 

 

 正気ではないタイトの正気を疑ってしまった。

 

「────、あ゛っ?」

 

「ユイはタイトのことをずっと守ってたんだよ?」

 

 私はあの怖いタイト向かってそう言う……、だけど────

 

 

「◾️◾️? ◾️◾️◾️? なに言ってるのか聞こえねえよ」

 

 

 タイトに声は届かない……、というか、タイトの声になんか、ノイズがかかってるみたいなそんな音が混じってたような……? 

 

 

「────っ!?」

 

 タイトの拳が目の前に────っ、

 

 

「ルビーぃっっ!!!」

 

「────っ!?」

 

 ブイモンが私の体を押してくれたおかげで、なんとか避けられた。

 

「ミナミぃっ!?」

 

 ギルモンがみなみの隣まで走ってくる。

 

「みなみ?」

 

「大丈夫みたいや、な」

 

「ミナミ、大丈夫?」

 

 みなみも大丈夫みたいだ。

 

 

「ルビー、っっ、てめえっ!!!」

 

「…………」

 

 ブイモンはタイトへと走り出した。

 

 

「『ブイモンヘッド』ッ!!!」

 

「…………邪魔だ」

 

 

 片手であっさりと叩かれ、軌道を変えられ、タイトの右側、側面の壁まで飛んでいってしまう。

 

「────っ!?」

 

「ブイモンっ!?」

 

「こっちは大丈夫」

 

「……よかったぁ」

 

 なんとかブイモンは体勢を立て直すことができたけど……、

 

 

「……おまえら、何者だ? なにを持っている?」

 

「……は?」

 

「さっきの蹴りの瞬間に『明らかに固い壁』を感じた……、それに」

 

 固い壁、なにを言ってるの? 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

「…………っ!?」

 

 タイトの言っている言葉がわからない。

 

「おまえらとあった記憶はない」

 

 うん、本人の口からその言葉を伝えられ、少しだけ戸惑った。

 

「だが、俺に対して『好意的かつ過剰な性欲』を向けている女相手は『カマキリ』に見える。どんな形であれ、かなりの『好印象』を持つ相手は『カブトムシ』に見える」

 

(好印象?)/(……性欲?)

 

 私が好印象で、みなみが好意的で性欲? みなみのほうは告白してるから……、タイトは告白のことを性欲って(そう)考えてるのっ!? 

 

「どちらも俺自身がそのことに対し、強く認識しなければならないが……、そんなことは今はどうでもいい」

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「────蛾っ、しかも幼虫っ!?」

 

 そんなふうに見えてたのっ!? 

 

「さては、俺にもなにか仕掛けたな?」

 

 いや、それで好印象ってわかんないし……、って……タイトがもう、こんなところにっ!? 

 

 

「────、『パージシャイン』ッ!!!」

 

 

「────、ユイっ!?」

 

 目の前にユイが来て、私達の壁になってくれている。

 

「さっきよりも固いが……、それでもダークナイトモンには及ばないッ!!!」

 

「────ぐべらっ!」

 

「……って、ユイぃいいっ!?」

 

 一瞬で叩き飛ばされる。

 

「……ならば、私の攻撃はどうでしょうか?」

 

 今度はスレイプモンだって!!! 

 

 

「『オーディンズブレス』ッ、『ビフロスト』ッ!!!」

 

 

 メタルガルルモンとサクヤモンの攻撃を同時に相殺した必殺技の同時発動……これならっ!? 

 

「温いんだよっ!!!」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……拳で、弾いた!?」

 

「メタルガルルモンとサクヤモンを同時に倒した技があんなに簡単に弾かれただとっ!?」

 

(タイトってば、本っ当に化け物っ!!!)

 

 

「メタルグレイモンだった頃のテトの攻撃よりも弱い……、もう一度聞いてやるよ、本気で戦ってるのかよっ!!!」

 

 

 そう、その場で声をあげたタイト。

 

(テトって、スーツェーモンよりも、強かったの? 

 タイトの仲間やタイトをボロボロにまで追い込んだ敵ってどうなってんのよ!!!)

 

 ゆっくりとこっちに歩いて来てるけど、逃げることができないのが、わかってしまう。

 

「……これは、ご主人様にどうやって勝てばよろしいのでしょう?」

 

「ほんっと、バグキャラでありますな」

 

 ユイやスレイプモンがなんども戦ってくれてる……だけど、勝てる雰囲気がまるで感じられない。

 

 

「ハル」/「ミユキ」

 

 

 ガブモンとレナモンが立ち上がった。

 

「レナモン? ……ガブモンもっ!?」

 

「「究極体に進化だ」」

 

 ボロボロの体をむりくり立ち上がらせる。

 

「まさか、アレと戦おうと言うのかっ!?」

 

「最低でもタイトを倒さないと、先には進めない……、なら戦うしかないだろ?」

 

「無茶だよっ、そんなボロボロでッ!?」

 

「なんでこんなに傷だらけなのか思い出せないが、今は戦うしかない」

 

 教授もミユキちゃんも止めるけど、二人は前に進んでいく。

 

「……わかった」

 

「ハルっ!?」

 

「姉さんも構えるんだ……でないと、こっちがやられる」

 

 教授が初代デジヴァイスを掲げる。

 

 

 [ガブモン ワープ進化]

 

 

 ガブモンが光に包まれて……、

 

 

「『メタルガルルモン』ッ!!!」

 

 

 メタルガルルモンに進化する。

 

 

「……ミユキ、頼む」

 

「────っ」

 

 

 [レナモン ワープ進化]

 

 

「『サクヤモン』っ!!!」

 

 

 レナモンもサクヤモンに進化した。

 

「……茶番は終わったか?」

 

「────っ!?」

 

 その様子を静かに待っていたタイト。こっちが戦えるまで、をずっと待ってたんだ。

 

「前衛は我とメタルガルルモン、後衛はスレイプモンとサクヤモンで戦う。できるだけマナト殿を拘束し続けろっ、ルビー殿とみなみ殿が持つ『タイト氏の記憶を────

 

「弱い究極体が4体……、それだけで勝てると思うか?」

 

 ユイが作戦を話している間に、タイトはメタルガルルモンの真横に突然現れる。

 

「メタルガルルモンッ!?」

 

 前衛として話していたユイとメタルガルルモンが、タイトに向かって瞬時に動いた。

 

 

「『パージシャイン』ッ!!!」

 

「『コキュートスブレス』ッ!!!」

 

 

 光と氷の息吹がタイトに炸裂……ううん、あれは────

 

 

「だから、遅いんだよ」

 

 

 タイトはいつのまにか天井に立っていた。

 

「喰らえ」

 

「────げほっ!?」/「────かはっ!?」

 

 ユイとメタルガルルモンが同時に地面に沈む。

 

「ユイッ! メタルガルルモンもっ!?」

 

 どうやって倒されたのかわからない。

 一瞬で倒されたから、どんなふうにユイ達が攻撃されたのかもわからない。

 

「申し訳ありませんっ、ご主人様っ!!!」

 

「『オーディンズブレス』ッ!!!」

 

 スレイプの冷気がタイトを襲い、

 

「ミユキ達には一切触れさせないっ、『金剛界曼荼羅(こんごうかいまんだら)』ッ!!!」

 

 私達の目の前にサクヤモンの『金剛界曼荼羅(こんごうかいまんだら)』が発動し、金色の結界が私たちを包んだ。

 

「脆い」

 

 だけど、タイトはすぐに『金剛界曼荼羅(こんごうかいまんだら)』を破壊した。

 

「────なっ!?」/「サクヤモン早く避けなさいっ!!!」

 

 驚くサクヤモンに警告するスレイプモン。

 

(……でも、狙いはっ!?)

 

 タイトはスレイプモンのほうへと向いている。

 

 

「────危ないっ、スレイプモンっ!!!」

 

「隙が大きい」

 

「────ぐおへっ!?」

 

 

 スレイプモンが蹴り飛ばされた。

 

 

「スレイプモンっ!?」

 

「気を取られすぎだ」

 

 スレイプモンがやられたのを見て隙ができたサクヤモンが、タイトによって頭を掴まれて、地面に叩きつけられる。

 

 

「────かはっ!?」

 

「────サクヤモンっ!?」

 

 

 全員、倒れてしまった。

 

「こんなに、強いの?」

 

「うそ、やろ?」

 

 タイトの強さに驚いてしまう。

 

「ルビー、逃げろ」「……ミナミ、下がって」

 

 ブイモン達が私達を守ろうと前に立ってくれるけど……、

 

(だめだって、逃げないとっ!?)

 

 本当に怖くて声が出なくなる。

 

「……◾️◾️◾️、◾️◾️◾️……やっぱり聞こえないな。ムーチョモンの言うとおり、本当に記憶が欠落している?」

 

 タイトはこっちにゆっくり歩いてくる。

 

「『ブンブンパンイ』っ!!!」

 

「どけ」

 

「うっ、ぐっ、ああっ!?」

 

 ブイモンが軽く手で叩かれ、吹き飛ばされる。

 

「なっ!?」

 

 明らかに手を抜いている攻撃だけど、なんどもなんども地面に叩きつけられないと、ブイモンの体は止まらなかった。

 

「もうおしまいや」

 

 みなみは座り込んでしまう。

 

 

「『ファイアーボール』、『ファイアーボール』、『ファイアーボール』っ!!!」

 

「……はぁ」

 

「『ロックブレイカー』っ!!!」

 

 ギルモンのロックブレイカーが人差し指と中指につままれ、技を止められる。

 

 

「最低限、究極体になってから出直せよ」

 

「ふべらぁっ!?」

 

 

「ギルモンっ!!!」

 

 そのまま、ブイモンが投げられた位置まで飛んでいく。

 

「……タイト」

 

「◾️◾️◾️……やっぱり、聞こえない。……でも、どうでもいい、か。おまえらが本当に俺の記憶を持っているのであれば、それを奪えばいいしな」

 

「────ぅっ!?」/「────ぁ、ぅっ」 

 

 タイトは私達の首を掴んで持ち上げる。

 

 

「死んだ後でも、奪えるはずだ」

 

「「────っぁあ」」

 

 

 ああ、もうだめだって思えてしまう。

 

 

「ルビーさん、みなみさんっ!?」

 

「姉さん、だめだっ!?」

 

「死ね」

 

 

(ウチら、ここで死ぬんか?)

 

(タイト、本当に?)

 

 

 キュイン

 

 

(でも、しょうがないかもしれへんな。ルビーにあないなことをやってもうたし)

 

(私は、……そっか、死ぬのか)

 

 

 キュイン、キュイン

 

 

(死にたく……、あらへんなぁ)

 

(タイトにまだ告白できて、ないのに)

 

 

 キュインキュインキュイン

 

 

(告白の答え、聞いておけば……っ、よかった)

 

(死にたく、ない)

 

 

 私達は、意識が消えそうになりながらも、『ポケットの中の熱さ』を感じていた。

 

 キュインキュインキュインキュインキュインキュインキュインキュインキュインキュインキュインキュインキュインキュインキュイン

 

 

 そこに込められていたのは……、

 

 

 [()()()() ()()()()()]/[()()()() ()()()()()

 

「『デュナスモン』ッ!!!」/「『カオスデュークモン』ッ!!!」

 

 

 宵色の光が煌めく。/紅色の光が照らし出す。

 

 

「ルビーをっ!」/「ミナミをっ!」

 

「────っ!?」

 

 視界の端に宵色が見えた気がした。/紅色の光がウチを守っとる。

 

 

「『 ドラゴンズロア(はなせぇ)』ッ!!!」/「『 デモンズディザスター(はなせぇ)』ッ!!!」

 

「────なにっ!?」

 

 

 ────どんっ! 

 

 その衝撃と一緒に、私達の首の圧迫感が消える。

 

「けほっ、けほっ!」/「かはっ、げほっ!!!」

 

 私達の首は……っ!? 

 

(デュナスモンにカオスデュークモン、ブイモン達はいつのまに進化したっ!?)

 

 デュナスモンとカオスデュークモンがタイトと戦っていた。

 

「進化したのかよっ!?」

 

 タイトは二人の攻撃を避けきった。……でも2体の目的は果たしていた。

 

 

「ルビー、大丈夫?」

 

「────けほっ、デュナスモンっ!?」

 

「────ミナミっ!?」

 

「かはっ、えほっ、……カオスデュークモン!?」

 

 

 二人は私達とタイトの距離を離すことが目的だった。

 

 

「デュナスモン、ミナミ達をっ!!!」

 

「わかった」

 

 

 お腹が支えられたと思ったら、ふわっと、変な感じがした。デュナスモンに抱えられてタイトから遠くの場所に移動させられたみたいだ。

 

 

「『デモンズディザスター』ッ!!!」

 

「聞くかっ、そんなものっ!!!」

 

 カオスデュークモンの槍の連続攻撃が、タイトによって簡単に防がれるのが見える。

 

 だけど、カオスデュークモンの盾に『秘策』は準備してあった。

 

 

「────まだだっ、『ジュデッカプリズン』!!!」

 

 

 光が溜まり、タイトへと超近距離から『ジュデッカプリズン』が放たれる。

 

「……それは、危ないっ、なっ!!!」

 

「蹴り返したっ!?」

 

 タイトはそれを上空へと蹴り飛ばした。よく見れば、靴が少しだけ溶けたように見えた。

 

「腐食の光か……、服が溶けただろうがっ!!!」

 

「────ふぐあっ!?」

 

 カオスデュークモンの盾に亀裂が入る。

 タイトの攻撃で、あの堅かったカオスデュークモンの盾にヒビが入ったのだ。

 

「カオスデュークモンっ!?」

 

 みなみの声が聞こえる……けど、

 

 

「こっちの番だっ、『ドラゴンズロア』っ!!!」

 

 

 今度は私とデュナスモンの番だ。

 

「ただの光弾じゃないっ!?」

 

 タイトに『ドラゴンズロア』が命中する。

 それはタイトの服を濡らし、地面に大きな泥だまりを作り出した。

 

「そうだ、俺の『ドラゴンズロア』は十のエネルギーを司る。その力を使えば……、『ドラゴンズロア』、『ドラゴンズロア』!!!」

 

 タイトに次々と命中する『ドラゴンズロア』。その一撃によって、タイトは植物に拘束された。

 

「動きが封じられたっ!?」

 

「水、土、木の力を集めて強力な樹木を生み出した。おまえにもう逃げ場はないっ!!!」

 

 タイトの体を締め付ける巨大な蔓。それで拘束したのなら────

 

「それはっ、どうかなっ!!!」

 

 タイトのその掛け声と一緒に、植物が簡単に引きちぎられる。

 

「────なにっ、俺の『ドラゴンズロア』がっ!?」

 

「この程度、テトがアルタウラスモードなら簡単に突破してるんだよっ!!!」

 

 タイトの声と一緒に、絶望的な事実を伝えられる。

 

「うそ、でしょ?」

 

「まじかよ」

 

(どうやって勝つん?)

 

 その絶望が私達の中に広がり、

 

「さっさと終わらせてやる」

 

 タイトは私達のほうへとゆっくり歩き出す。

 

(……どうすればって!?)

 

 四聖獣相手に通用していた技が、タイトにはなに一つ通じていない。

 

 タイトは時間が経っても倒れる様子はないし、むしろどんどん強くなっていくのを感じる。

 

(ほんっとにどうやって勝てばいいのよっ!!!)

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()使()()()

 

 ふと、『タイトの口』からそんな声が聞こえてくる。

 

「────へっ?」

 

「……はっ?」

 

「なにを、言っている」

 

 私もみなみもタイトもその場で固まった……、すると.

 

「はやく、そのポケット……の中にある『モノ』を、僕の体にっ、タイトに埋め込むんだ」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 …………僕? 

 

「まさか、イグドラシルなんか?」

 

 みなみがそう言ったことで、イグドラシルがタイトの体を乗っ取ったことを思い出した。

 

 

「はやく、はやくするんだっ!!!」

 

「イグドラシル? そうか、俺の口を使ってしゃべっているのかっ!?」

 

 

 ほぼ同時に喋り、そして、動かないタイト/イグドラシルに戸惑って、私達は動けなくなってしまう。

 

 タイトの体を乗っ取って、動きを止めているみたいだけど、イグドラシルもうかなり焦ってる。

 

 

「だめだよ、完全な君でないうえ、初代デジヴァイスの近くなら、制作者の僕のほうが君の肉体の主導権なら上だ」

 

「黙れ、はやく俺に肉体を返せっ!!!」

 

 

 タイトとイグドラシルが、肉体を奪い合っているなか、

 

「…………」/「…………」

 

 ウチとルビーは顔を見合わせて、思いが固まった。

 

 

「わかったっ!!!」

 

 

 私とみなみは同時に走り出した。

 

「はやくっ!」

 

 マナトくんの口からそんな言葉が聞こえてくる。

 

「やめろっ、それを俺に埋め込むなっ!!!」

 

 タイトは思いっきり手を振ったけど、デジソウルはイグドラシルによって消されてるから、ただの子供の力ぐらいしか出ていない。

 

「…………んっ!」/「────うん」

 

 タイト/マナトくんの目の前で私達は『良い記憶』を取り出した」

 

 

 

「「はぁあああああああ────っっ!!!」」

 

 

 タイトの体に埋め込まれて……、

 

「うっ、……あっ」

 

 タイトが倒れていくのが見えた。

 

 

「タイトに、勝った?」

 

 

 倒れたタイトが見えて、そんな言葉が口から出ていた。

 





「……スーツェーモンからはなんとか許可もらえましたぞおぉぉ」

ユイが家庭科室の床に寝転がる。どうやら、疲れたみたいだ。

「そうだよね。疲れた、……よね」

私達も疲れたので、床に座り込んだ。

(やけに長い一日だった)

みなみとブイモンと喧嘩して、レナモン達がいなくなって、クダモンがスレイプモンになってスーツェーモン達を倒して、その後に暴走したタイトを止めて……うん、疲れた。

「さすがに疲れたのですぞ」

「もともとは君が原因だけどね」

イグドラシルがユイに茶々を入れる……うん、

「イグドラシル、うるさい」

「黙っててください」

私とミユキちゃんの声が重なる。……ん?

「えっ、ミユキ?》

「……っぷい」

ミユキちゃんにまで怒られてやんの。

「僕はなんども忠告したのに」

いじけ始めた。

「……それで、タイト氏の本格的な復活はいつ頃になる予定なのでありますか?」

「明日の昼過ぎだね」

タイトの復活の時間がわかった……だけど、

「……昼過ぎ、でありますか」

……昼過ぎ、かぁ。

「スーツェーモンが『主』の封印を解除するのが午前10時頃、そこから順次封印が解けていくとしても……」

十一時までには『主』と戦うよね。

「私達は参加できないというわけですか」

クダモンがタイトのほうを見てそんなことを言う。
うん、本音を言えばクダモンやユイには参加して欲しいけど、タイトも守らなきゃいけないし……、

「大丈夫や……、さっきの戦い以上に強い敵はおらへんから」

タイト以上に怖い敵はいないから、うん怖がる必要はないかなぁ?

「……それは、そうでありますけど」

みなみの言葉で勇気がもらえた。

「ルビー殿?」

私は立ち上がってユイのところまで行く。

「『主』を相手に私達は戦ってくるから、ユイとクダモンはここでタイトを守っててよ」

私は、いや……。

ブイモンもみなみも、ギルモンも、教授も、ガブモンも、ミユキも、レナモンもみんな頷いていた。

「それなら、我々が来るまで頑張っていてくだされ」

「案外、俺達が倒してるかもしれないぜ」

ユイとブイモンが笑い合った。

「作戦どないしよか?」

「ファンロンモンってどんなデジモンなの?」

「……それは」

夜は少しずつ更けていく。
明日の『主』との戦いの為、私達は計画を練るのであった。
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