産まれた推しの子の電脳物語   作:阿後回

90 / 130

真夜中の学校、家庭科室。
窓から差し込む月明かりに照らされたその場所で、そこで横になっている少年……、いや私の(好きな人)の頬を撫でる。

「……明日、最後の戦い、なんだよね」

眠るように、死んだように、造り物のように……少しずつ、少しずつタイト(かれ)の体が揺れている。さっきあんなに怒っていたのが嘘みたいな気がした。

「…………」

タイトを追いかけて、走ったのが始まりだった。
この世界に来て、たくさん戦って、たくさん怖い思いをして、たくさん痛いことをして、たくさん嫌な気持ちになって、初めて友達の気持ちを知って……、それでもーーーー


「少しだけ、……もう少しだけこの世界にいたいって思うのはなんでだろ?」


そう思って、タイトの髪を撫でる。


()()()()()()()()()()()()?」


ふと、そんな声が家庭科室の入り口から聞こえてきた。

「……みなみ?」

私の、……友人のみなみだった。

「よっこいしょっと」

「……なんでタイトに膝枕してるの?」

「別にあんたは関係あらへんよぉ。マナトくんの顔をよお見る為や……、あいっかわらず、かわいらしい顔しとんなぁ」

ムニムニと、ほっぺをつっつくみなみ。

(私だって膝枕したかったのに)

そんなことを思ってると、みなみの顔が真剣な顔になったのが見えた。


「……で、なしてこの世界にのことを名残惜しそうにしとるん?」

「…………」


……正直言って、みなみにだけは聞かれたくなかった。さっきの言葉も空耳であってほしかった。だから、私はみなみの言葉を聞こえないふりをした。


()()()()()()()()()()()()()()()

「ーーーーえっ!?」


衝撃的な言葉が聞こえてきた。

「……無視したんちゃうんか?」

「ーーーーっ!?」

……そうだった。
みなみに聞かれたくなくて黙ってたのを忘れてた……。

「…………」

つーん、と顔を背ける。
タイトのほっぺをつっつきながら、みなみは私に馬鹿にするような笑みを向ける。


「どーせ、『元の世界に帰ったらタイトと一緒にいられなくなる』……って考えとるんやろ?」

「ーーーーう゛っ!?」


みなみの言葉に心臓が大きく揺れた。

「図星やな」

図星ですけどなにか?
そんなことを思いながら、みなみに強がるように睨みつけ……、ううん、そうじゃない。

私が聞きたいのはーーーー、


「……みなみはどうなの?」


みなみは、あっちに戻ったらどうする……って、聞きたかったんだ。

「…………」

きっと『今』みたいなことはできないと思う。

「きっと、この世界から元の世界に帰ったら、タイトとはまたただの友人関係に戻っちゃうよ?」

前と、……タイトの事情を知らなかった頃に、私達は戻ってしまうと……、私はそう思ってる。

そして、それが嫌だから…………


()()()()()


みなみの顔に月の光が照らされる。


「『ウチ』は『実の姉(あんた)』とは違う」

星野タイト(マナトくん)を連れ戻そうとしとるあんたらとは末堂マナト(今のマナトくん)と一緒にいる目的が違う」

「ウチは末堂マナト(マナトくん)についていく」


矢継ぎ早に話すみなみの言葉。
たしかに、私とみなみとの関係は違う。違うからこそ、前みたいに戻っちゃうんじゃないかって、私、思ってた。

……だけど、みなみは。


「…………」


月に照らされた瞳は、月の光が池の水に反射するように煌めいている。


『ウチは末堂マナト(マナトくん)についていく』


たった一言、ただの一言……その言葉が、


『ねえ、本当にタイト、なんだよね?』

あの日、家を出る(ここに来る)前にママと話した言葉を思い出す。

『……うん、わかってる……ちゃんと確認してくるよ』

私のその言葉にママは笑顔で、それでいて不安そうに私に向かって笑いかけた。

『だいじょーぶっ!!! ちゃんと連れて帰ってくるから……ママも心配しないで……あと、ぐーちゃんはママの事を頼んだよ』

『ぐーちゃん言うな、……大丈夫だ。基本的に神城の手が行き届いていない田舎に行くような依頼は、俺が斎藤に言って依頼を断ってもらっている』

『ケモノが現れそうな場所も、今のアイと俺の実力なら並のレベルなら簡単に倒せるはずだ。アクアのほうも、仕事を休止してるから、そんな場所にわざわざ行く理由はない』

『だから、お前も安心して行ってこい』

ぐーちゃんはニヒルな笑みを浮かべながら、楽しそうに笑っていた。そして、なんとなくその言葉を聞いて、安心したのを覚えている。

『ぐかー、ぐかー』

エナドリを片手に机に突っ伏しながら寝てる斎藤さんと、

『もう時間じゃない? 早く行かないと遅れるわよっ!!!』

フライパンを洗いながら背中越しに、朝食を片付けてるミヤコさん……そして、


『ルビー、お願い、ね』


期待を込めた『星のように煌めく瞳』で、星野アイ(ママ)に見つめられる。

『それじゃ、行ってきますっ!!!』


そのときの私は知らなかった。タイトとこんな関係になんなんて思ってなかった……だけど、


『ルビー、お願い、ね』


あの、……ママの言葉を振り切って、みなみの言うとおり、私もついていけたら、よかったんだけどな。

私にはきっとーーーー


「……あんたは、どうなんや?」


その道は選べない……、そう思ったそのときだった。

「ーーーーえっ?」

みなみにそう聞かれたのは……。

「このままいけばウチの一人勝ちや。あんたはマナトくんについていかんのか?」

みなみは勝ち誇ったようにそう言った。

言った。

イッタ。

いった。

……った。


「…………」

私は、

「…………」

私は、

「…………私は」


()()()()()()()()()()()()()()()()

「ーーーールビーっ!」/「ーーーーミナミっ!」

振り返るとそこにはブイモンとギルモンが、息を荒げながら扉を開けている。

「……ブイモン、どうしてここに?」

「ギルモン、来たんか?」

ブイモンは私に、ギルモンはみなみに近づいて座る。

「起きたらルビーがいないことに気づいて、心配して探してたんだ! みなみ(こいつ)が入ってくのが見えたから、後ついてったらやっぱりだ!
昼間みたいに人質に取られることがあるんだ、気をつけろよ!!!」

「……ひと、じち?」

一瞬だけ、そんなことあったっけ……って思ったけど、そういえば昼戦った時に、人質作戦を取られたことを思い出した……ん、でもそれってーーーー

「……そっか、ごめん。でも、みなみはそんなことはしないよ」

みなみは『こんなこと』じゃ絶対にしないと思うよ?

「……本気で言ってる?」

「そーやな、やるかもしれへんしな」

いや、しないでしょ……って、みなみそんなこと言ったらーーーー


「ーーーーっ!?」

「ブイモン、やる気?」


ブイモンとギルモンが睨み合っちゃったじゃんか。

「ブイモンやめて」/「ギルモン、やめーや」

「「ーーーーっ!?」」

あっ、みなみと意見があった。

「なんや、まねっこか?」

「私が先に言ったから、そっちがまねっこだよね?」

「……ん゛?」

「……ハァ?」

みなみに煽られて、今度は私達が睨み合うことになる。

「あほくさ」

「明日、本番なんやから……、さっさと寝にいくで」

だけど、みなみはギルモンに目を向けて、呆れたように立ち上がった。

「……わかった」

ギルモンも、……一瞬だけブイモンを心配そうに見た後、家庭科室の扉に向かうみなみを追いかけ始める。

そして、家庭科室の扉に手をかけたとき、


「おい、逃げるのかよっ!!!」


ブイモンの言葉にみなみが固まった。

(……って、ブイモンっ!?)

「ーーーーだって、あいつ……っ、むぐ、ぐあっ!?」

(こんなとこでみなみを怒らせて戦いになったら、タイトの体に傷がつくじゃん!?)

(イグドラシルが守ってくれるだろ? ……それに、あいつに言われっぱなしも気に入らないんだよッ!!!)

(気に入らなくても我慢するの!!!)

私とブイモンの口論が始まった……、だけど……。


「…………」

「……ミナミ?」


みなみの手が扉にかかったまま、家庭科室の戸を開かない。それどころか、ブイモンの言った『逃げるのか?』ってセリフから、体が一歩も動いてなかった。

「…………っ!」

みなみの肩が震えたのが見えた。

(あっ、これは)

ヤバイ、と内心思ってしまった。

ここで戦うのは危険だ。
タイトが寝たきりで動かない。ブイモンとギルモンは明日戦わなきゃいけない。そんななかで、体力も回復させなきゃいけないのに、こんなとこで喧嘩なんかしたらーーーー

「ーーーーみなみっ!?」

みなみが服のポケットに手を突っ込んだのが見えた。


(まさか、本当に初代デジヴァイスを取り出すーーーー

「…………ルビーっ!!!」


みなみのポケットに突っ込まれた手から、なにかが飛んでくるのが見えた。

『銀色』と『青色』のなにかが光ったのが見えた。

私に飛んでくるそれは、ゆっくりと私の手の中に落ちてくる。


「ーーーーうわっ!?」

「ルビーっ!?」


私の手の中に収まったそれは、

 「……って、これは?」


()()()()()()()()()()()

「あんたの勝ちや、もっときい」

そう言って、みなみは家庭科室の扉を開けて、走って出て行った。

「…………」

「…………」

みなみに似合わず、さらっとさわやかに家庭室から出て行ったのを見て、ブイモンと一緒に固まってしまった。

(…………はっ!?)

もうこんな時間だっ!!!

「ブイモン、私達ももう寝よっか」

私達ももう寝ないといけない。

「……ルビー」

不意に、ブイモンに手を握られる。

「なに、ブイモン?」

「……さっきのこと、本気で言ってたのか?」

さっきのこと?

ああ、人質を取られるってことだったっけ?

「本気だよ.だって、みなみはーーーー」



「私の友達だもん」

私の大切な友達だから、ね。


第十八話 最終決戦! 挑め、『主』との戦い

 

 午前九時半頃、私達は前にファングモンと戦った遺跡への道を歩いていく。

 

「……いよいよ、『主』と戦うんだね」

 

 カチャリ、とポケットの中から取り出した『タイトのゴーグル』を首にかける。

 

「……ルビーくん、そのゴーグルは……?」

 

「タイトの! ……みなみが譲ってくれたんだ」

 

 教授にみなみから受け取ったゴーグルを見せつける。

 

 

「……みなみくんがっ!?」 

 

「……ホントなんですかっ!?」

 

「本当なのかっ!?」

 

「────えっ、ホントかよッ!?」

 

 

 あの夜にいなかった全員がいっせいにみなみとギルモンの方を向く。

 

「…………」

 

「…………」

 

 みなみはムスッとした顔で、ギルモンは居心地が悪そうに前のほうを歩いていく。

 

(あっ、本当なんですね)

 

(どうであれ、あまりこの話に突っ込むのは遠慮したほうがよさそうだな)

 

 教授とみゆきちゃんが前を歩く二人の姿を見て、コソコソと話す。

 

(……って、ことがあってな。帰り際に、ルビーに投げつけてきたんだよ)

 

(案外、根性がないんだな)

 

(それをあの女の目の前で言える勇気があるのなら、評価するが……、貴様等、『主』と戦う前に死にかけても知らんぞ)

 

 ブイモンとガブモンとレナモンもなにか話してるみたいだけど……、なにを話してるんだろ? 

 

 うまく聞こえなかった。

 

「別にええやろ、早く進むで」

 

 そう言いながら、みなみはファングモンとの戦闘の跡が残る山道を軽く歩いていく。

 

「あっ、待ってよっ!!!」

 

 そう言いながら、私達も急いでみなみの後をついていくのだった。

 

 

 

「……ここが、あの遺跡?」

 

 遺跡の周辺の雰囲気が違う。

 ファングモンと戦った後の雰囲気という意味じゃない……なんとなく、なんとなくだけど────

 

 

()()()()()

 

 

 初めて『主』と戦ったときのような、紫色の蛙や蛇が出てくるときみたいな、……そんな気持ち悪さを感じる。

 

「なんか、雰囲気がおかしい」

 

「イヤな、感じ」

 

 ブイモンも遺跡を睨みつけてるし、ギルモンも牙を向きながら警戒している。

 

(四聖獣の封印が解けたせいなのかな?)

 

 そんなことを思いながら、遺跡の中を入っていく。

 

 

「タイトくんと入った部屋まで行こう」

 

 

 ────コクリ、と全員頷いた。遺跡の中を歩いていくと……、

 

 

「……ここはっ!?」

 

「先に進む道があるっ!?」

 

 教授とブイモンの声が重なる。

 

(うん、やっぱり前に戦った時と違う)

 

 私とブイモンは遠目にしか見えなかったけど、壁しかなかったところが道ができてて、先に進むことができるようになってた。

 

「……進むよ」

 

 全員が手のひらに初代デジヴァイスを持って歩いている。いつ蛙の化け物が出てきてもいいように、戦闘の準備を整えているのだ。

 

「……昨日通った防空壕の出口みたいやな」

 

 ……たしかに、見た目だけはスーツェーモンやバイフーモンと戦ったあの洞窟に姿は似ていた。

 

 ただ、違う点が一つだけ、

 

 スーツェーモン達のは、差があれど威厳や荘厳な気配を感じ取れた。だが、こちらは違う。

 

 

 滲みきれない呪いのような『悪意』が『遺跡』の壁から滲み出ている。

 

 

「あれと同じものです。

『主』を封じる為、あの場が生み出されました。ならば、ここも…………」

 

「『主』を封じた場所……ってこと、か」

 

 みなみとみゆきちゃんの話から、同じ場所ようなところであることが確信できた……そして、

 

 

「……時間、のようだな」

 

 午前10時に秒針が傾いた。

 

「入り口から、イヤな気配が強くなったっ!!!」

 

 ギルモンの唸り声のようなその一言が、この場にいる全員に警戒態勢を取らせる。

 

「ギルモンの言うことが本当なら、……早く行きましょうっ、奴らが湧き出てきますっ!!!」

 

 初代デジヴァイスが光を放ち始める。

 

「もう少しっ、調べてみたいところなんだがねっ!!!」

 

「ハルっ、……『主』を倒した後に調べりゃいいじゃねえかっ! そうすれば調べる時間はたくさんできるんだ、ぜっ!!!」

 

「それも、そうだなっ!」

 

 教授とガブモン、

 

「ハルの研究熱心なところは尊重したいですが、早く行きましょうっ! 霧が濃くなっています、────レナモンっ!!!」

 

「わかってるさっ!!!」

 

 みゆきちゃんとレナモンが初代デジヴァイスを掲げる。

 

 

 [レナモン 進化]

 

「『キュウビモン』!」

 

 

 レナモンはキュウビモンに進化し、

 

 

 [ガブモン 進化]

 

「『ガルルモン』!」

 

 

 ガブモンはガルルモンへと進化する。

 

 

「さあ、早く乗ってっ!」

 

「ルビーくん、こっちだ!」

 

 

 ルビーとブイモン、みなみとギルモンは同時に頷いた。

 

 

「頼んだでっ!」/「ありがとうございます!」

 

「キュウビモン、ありがとう!」/「ガルルモン、ルビーのこと、よろしくっ!!!」

 

 

 私達を乗せた二人は全力で遺跡の中を駆け出していった。

 

 

「うげっ、霧から蛇がぎょうさん出てきとるな」

 

「すごい数……、こんなにたくさんいるっ!?」

 

 床や壁、天井の至る所からたくさんの蛙、蛇、ナメクジ……あと、鬼って言えばいいのかな? 頭のない人型の化け物が這いずり出てくる。

 

「相手なんかしてられないな。ガルルモン、もっと早く走れないか?」

 

「ハルには悪いが、これ以上早く走ったら敵にぶつかったときに危ない。このままのペースで走ったほうが、ハル達の安全を考えると……なっ!?」

 

(あぶなっ!?)

 

 鬼の首をガルルモンが踏みつけて、大きく先へと飛んでいく。

 

「振り落とされる危険もある」

 

「……っ、わかったよ」

 

 霧がどんどん濃くなるなか、ガルルモンとキュウビモンは走って駆け抜けていく……すると、

 

 

()()()()()()()()()()()()!?」

 

 

 とうとう、霧の中に突っ込むようになってしまった。

 

「初代デジヴァイスの力で、霧の先が少し見える。このまま止まって化け物どもに食われるより、突っ込んだほうがええでっ!!!」

 

「敵の腹の中に突っ込むのか!?」

 

 みなみはすでにキュウビモンは驚く……だけど、

 

「キュウビモン、やるしかないっ! 突っ込んでっ!!!」

 

「……っ、わかったっ!!!」

 

「全員、いつでも戦闘にうつれる準備をしときぃっ!」

 

「わかってるっ!!!」

 

「このまま霧の中にに突っ切る。舌を噛まないように、口を閉じていろっ!!!」

 

 

 私達は霧の中へと突っ込んでいった。

 

 

 ……あれ? 

 

()()()()()()? 

 

 声が出ない? 

 

 あっ、ああっ……っ!? 

 

 うわぁあああああああああああああ────っっ!? 

 

 

 

 

 

 

「…………っ!?」

 

 いつのまにか、だだっぴろい暗い、夜のように暗い世界に立っていた。

 

「……遺跡の中にこんな広い空間が?」

 

「────っ!?」

 

 教授の声が聞こえて、急いで振り向いた……そこには────

 

 

「ハル、驚きすぎ」

 

「だが、ガルルモンっ……こんな物理法則を超えた空間なんて、現実世界では見られないんだぞっ!!!」

 

「ハル、気持ち悪い」

 

「姉さんまでっ!?」

 

「地下、やないみたいやな」

 

「グルルルル」

 

 

 みんなが立っていた。

 

「……どうやら」

 

「来たみたいだな」

 

 私とブイモンは正面を向く。 

 

 

 ────ザッザッザッ!!! 

 

 

 統制の取れた紫色の化け物の軍勢。

 

「……あれと戦わないと奴とは戦えないみたいだな」

 

「怯えてるのか、ガルルモン?」

 

「はっ、今の俺達ならあんな奴らに負けることなんか、絶対にねえよっ!!! ────お前のほうこそどうなんだよ、キュウビモンっ!!!」

 

「正直に言えば、絶対に勝てるなんて……とは言うことはできない」

 

「だが、ミユキが後ろにいる以上絶対に負ける気はしないっ!!!」

 

 ガルルモンとキュウビモンの言い合いが聞こえてくる。

 

(いつもどおりみたいで安心する)

 

 今までにない危険な状況、だけど私達はどこか安心していた。

 

(だって、四聖獣達と戦ってきたんだもん)

 

『主』と一回戦って勝った経験、四聖獣やタイトと戦って得た新しい進化、今まで戦って、勝利してきた実績が私達がこの場で怯えない地震につながっている。

 

「じゃあ、みんな()る────

 

 

 

()()()()()()()姿()()()()()()()()()()()()()?」

 

 

 

 ドシン、と大きな音が鳴った。

 

「……アレは」

 

 巨大な紫色の竜がそこにいる。

 

「あの絵に出てきた……竜?」

 

『遺跡』の絵に出てきた金色の竜……、だけど────

 

(紫色?)

 

「すごいでかいドラゴンっ!?」

 

「あれが、ファンロンモン」

 

 頭の中に疑問が残る。

 

「金色じゃない!?」

 

「……」

 

 みなみが急いでデジヴァイスと初代デジヴァイスを繋ぎ合わせる。

 

 

 

 [()()()()()()() ()()()()()()*1

 

 

 

 タイトの話に出てこなかった名前が突然現れた。

 

「ルインモードだとっ!?」

 

「タイトの情報にはなかったよねっ!?」

 

 それでも、図鑑の情報はAIの声ともにアナウンスされる。

 

 [ファンロンモンに恨みのエネルギーを注ぎ込まれ暴走化した姿。善と光を無くし、悪と闇のみと偏った存在となり、世界を破滅させようと暴れまわる。記録によると、四聖獣が力を合わせ暴走化したファンロンモンを抑え込むことに成功したと残っている。

 必殺技は、デジタルワールドの万物を一切の光もない闇だけに飲み込ませる『無極(むきょく)』と、自然災害規模の竜巻に黒き炎を巻き起こす『晦冥葬(かいめいそう)』。]

 

 

「……恨みのエネルギー?」

 

「なにかを恨んでいるのか?」

 

 図鑑の情報を調べる。

 昨日、ユイと立てた作戦が『ファンロンモン ルインモード』によって崩壊していくのを感じる。

 

 

「その『宝具』、まことに煩わしきことよ」

 

 

 図鑑の情報を見ているときに、ファンロンモンルインモードからそんな言葉が聞こえてきた。

 

 

「『無極(むきょく)』」

 

「避けるんやっ!!!」

 

 

 みなみがいち早く気づいて、全員に避けるように指示をする。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「────チッ!」

 

 ファンロンモンルインモードの舌打ちが聞こえた、けど……、

 

「なんだ、あれはっ!?」

 

 私達のいた半径十メートルほどの場所を軽々と飲み込み、背後に迫っていた化け物の軍勢の全てを黒く濁った闇が飲み込んだ。

 

「闇に吸い込まれている?」

 

無極(むきょく)』の危険性に体を震わせる。

 

 四聖獣はそれぞれの目に見える自然現象の恐怖を刻みつけられた。

 

 タイトの一撃は破壊力として恐怖を感じた。

 

 だが、ファンロンモンルインモードは違う。

 一撃で全てを飲み込む闇の恐ろしさに、最初に来たときにファングモンが飲み込まれた『瞬間』を思い出した。

 

「鬱陶しいケモノ共、我が神域を汚し、『巫女』を奪い、その力を持ちなんとするっ! 我が怨恨、我が憤怒、我が激情を持って消滅させてやろうっ!!!」

 

 再び、ファンロンモンルインモードの口から『闇』が集まっていく。

 事前に説明を受けていたファンロンモンの必殺技の『太極』とは違う攻撃……どうしても動揺して、動けなくなる。

 

 

 ────そんなときだった。

 

「恨み? 憤怒? ……知ったことかっ!!!」

 

 隣にいるみなみが大きな声で、ファンロンモンルインモードを睨みつける。

 

「ウチの、マナトくんとの世界を傷つけるこの世界の『主』気取りのトカゲなんぞに言われとうないわっ、────ギルモンッ!!!」

 

 みなみの掛け声とともに、初代デジヴァイスがさらに光を強める。ギルモンは走り出して、ファンロンモンルインモードへと進んでいった。

 

 [ギルモン 進化]

 

 初代デジヴァイスの光がギルモンを包み込む。

 

 最初は小さな竜だった。

 

 竜は成長し、魔を納め、雷を操る。

 

 魔竜は雷に呑まれ、機械の体を手に入れた。

 

 そして、内なら魔の力は竜を暴力装置となり、紅き竜を呼び覚ます。

 

 ただ、紅き竜の身体をを子竜は制御する。

 

 竜の体は集約し、忌まわしき『黒き』の鎧へ。

 

 紅は鈍色に覆い尽くされ、鉤爪はしなやかな籠手を見に纏う。

 

 右手には槍、左手には盾を持ち、どちらも危険な光を放ち煌めく。

 

 翼は闇のようなマントへと代わり、顎と牙は兜に変化する。

 

 

 そして、兜の中心に目金の光を呼び覚ました。

 

 

 

「『カオスデュークモン』ッ!!!」

 

 

 宵の騎士は敵に向かって走り出していた。

 

「その通りだ、ミナミ……、あんな恥知らず、このカオスデュークモンの槍で貫いて見せるっ!!!」

 

「ルビー達より先に倒せっ!!!」

 

「わかったっ!!!」

 

 その姿に少しだけ勇気がもらえたのと同時に────

 

 

「私だって、言いたいことが……ああっ、もう────、行くよっ、ブイモンっ!!!」

 

「遅れるわけにはいかないよなっ!!!」

 

 

 私も初代デジヴァイスを掲げ、ブイモンを究極体に進化させる。

 

 [ブイモン 進化]

 

 

 最初に子竜……それが成熟し竜となり、翼が生え唸り声を上げ、煌めきは、全てを掻き消し、想像する。

 

 蒼の竜人の身体には白き鎧が包み込む。

 

 両手は紅の宝玉が、両脚は金の装飾が光り輝く。

 

 翼は歴戦を超え、傷を全て呑み込み、より強靭なものへと変化する。

 

 そして、白と蒼、金を全て集約し『紅色の瞳』は、自身の主人の願いを……自身の主人への『忠義』をしめす為、現状を淘汰する。

 

 そう、そこに現れたのは、

 

『忠義を示す者』

 

『神に仕える聖騎士』

 

『理ことわりを越える力』

 

 

 その姿白く輝き、天を照らし現る真なる神の使者。

 

 

「『デュナスモン』ッ!!!」

 

 

 私の騎士がそこに現れる。

 

「カオスデュークモンを手伝ってっ!!!」

 

 私はデュナスモンに指示を出す。

 

「……本気か?」

 

 デュナスモンは聞いてくるけど、今はそんな状況じゃない。

 

「いいから、行くっ!!!」

 

「……っ、わかったよっ!!!」

 

 デュナスモンはファンロンモンルインモードへと飛んでいった……あとは、

 

「私達は」

 

「ここを守るっ!!!」

 

 [キュウビモン ワープ進化]

 

 

「『サクヤモン』っ!!!」

 

 

「ハル!!!」

 

 [ガルルモン ワープ進化]

 

 

「『メタルガルルモン』ッ!!!」

 

 

「露払いは任せてくれっ!!!」

 

「本当は俺達が……って、言いたいところだけどな」

 

 

 他のみんなも究極体に進化できたみたい……、ならっ────

 

 

(あとは、作戦をうまく当てはめてくだけっ!!!)

 

 

 ちょっと焦ったけど、今はそんなことは問題ない。ファンロンモンルインモードを倒すために全力を尽くすだけっ!!! 

 

 

「『デモンズディザスター』ッ!!!」

 

 カオスデュークモンの『デモンズディザスター』が命中する。

 

「この程度か……っと、わっ!?」

 

 ……が、奴に傷一つつけられない。それどころか、

 

「小癪なっ、羽虫風情がっ!!!」

 

 ファンロンモンルインモードが、足元にいるカオスデュークモンへと足を振り下ろし、攻撃していく。

 

(あんな攻撃に当たったら、危ないっ!?)

 

 カオスデュークモンの何十倍もの大きな体を持つファンロンモンルインモードに踏み潰されたら、カオスデュークモンでも耐えられないかもしれない。

 

 ……だけど、

 

 

「『ドラゴンズロア』ッ!!!」

 

「────ぬわっ!?」

 

 

 竜の閃光が奴の視界を塞ぐ。

 

「────ふぅ」

 

「……これは、デュナスモンの『ドラゴンズロア』か?」

 

 そう、デュナスモンが追いついたんだ。

 

 

「カオスデュークモン飛び出しすぎだっ!!!」

 

「遅い、お前が悪い」

 

「お前がって……、────ッ、ううん、今のお前らになにを言ってもしかたないよっ、なっ!!!」

 

 ファンロンモンルインモードが『無極(むきょく)』を放とうと力を溜めている。

 

「『無極(むきょく)』」

 

「『ブレス・オブ・ワイバーン』っ!!!」

 

 闇の極光と飛龍のエネルギーがぶつかりあい、ファンロンモンルインモードの『無極(むきょく)』の位置をずらす。

 

「背後がガラ空きだ。注意しろ」

 

 デュナスモンはカオスデュークモンにそういうけど……、

 

「それはこっちのセリフ、だっ!!!」

 

 ファンロンモンルインモードは次の一手を打っていた。

 

「『無極(むきょく)』」

 

「『ジュデッカプリズン』」

 

 闇の極光を全てを侵食する宵の光が部分的に溶かして、デュナスモンがいた位置は攻撃外れていた。

 

「さすがに、あの2人に追いつける自信は俺にはない」

 

「同感だな」

 

 隣から教授とメタルガルルモンの声が聞こえる。

 

「ルビー達を頼んだっ!!!」

 

「ミナミに傷一つでもつけてみろっ! このカオスデュークモン、(あのトカゲ)を倒したら次は貴様らの番だっ!!!」

 

 二人の声が聞こえてきて、少しだけ安心感が戻ってくる。

 

「それが人にものを頼む態度かよ」

 

 カオスデュークモンの悪態に不貞腐れるメタルガルルモン。

 

「それは、こちらの少女にも言えるんじゃないのか?」

 

 みなみは2体にすごく『ガン』を飛ばしてる。

 

 

「……なんや? ジロジロ見とらんと、こっちの蛙共をなんとかしぃっ!!!」

 

「ちょっとみなみ、そう言うのは……」

 

 いつもどおりだけど、今ここでそれをやるのは……っ!? 

 

 私達に向かって、鬼の化け物が襲いかかってくる。

 

 

「メタルガルルモンっ!!!」/「『サクヤモン』ッ!!!」

 

「『金剛界曼荼羅(こんごうかいまんだら)』ッ!!!」/「『コキュートスブレス』!」

 

 

 サクヤモンの出した『金剛界曼荼羅(こんごうかいまんだら)』の光が化け物達を弾き飛ばし、メタルガルルモンの『コキュートスブレス』が当たった敵を凍り付かせて、粉々に砕け散る。

 

(……強い)

 

 前回は倒せなかった敵が、次々に倒せていく。そして、いつのまにか、紫色の化け物の軍団は消えて無くなっていた。

 

「ほら、あんたの言うとおり、『なんとか』してやったぜ」

 

 してやったりって顔のメタルガルルモン。

 

「────ふんっ、こいつらはすぐに復活するんや。なにをいい気になっとるんや? さっさと持ち場に戻らないんか?」

 

 その顔にみなみは悪態をつく。

 

「愛想のねえ女だな」

 

「ウチが愛想を向けるのはマナトくんだけや。元敵の犬に向ける愛想なんかあらへんよーだ!」

 

「────チッ」

 

「…………」

 

 メタルガルルモンは舌打ち、みなみは初代デジヴァイスを弄ってる。

 

(……なにやってるんだろ?)

 

 そう思ったとき、

 

「メタルガルルモン、目の前っ、目の前っ!!!」

 

「くそっ、もうきやがったかっ!?」

 

 化け物の軍勢が再び押し寄せてくる。

 

「…………」

 

「……これは、勝てるのでしょうか?」

 

 みゆきちゃんの口からそんな言葉が聞こえてくる。

 

 言葉にはしなかったけど、私もおんなじ気持ちになってる。

 

 究極体の力はたしかに強い。

 完全体だった頃に倒すのがやっとだった紫色の化け物達を一瞬で倒すことができたし、デュナスモンとカオスデュークモンの2体でファンロンモンルインモードに相手取ることができてる。

 

「……だけど」

 

 圧倒的に、敵の主力を倒す力が足りてない。

 

(このままだと、体力の差でやられちゃう)

 

 タイトが来るまで、あと最低でも二時間は戦わなきゃいけない。その間に、敵は増えてくるし、私達は勝てるのかな? 

 

 そんな不安が過ったときだった。

 

 

「どうした」

 

『世界』からそんな声が聞こえる。

 

「我が大願を阻しケモノ共よ。我が理想を遮る贄共よ」

 

『世界』から霧が現れる。

 

「羽虫にすら劣る貴様らに、我が大願を阻む術なし」

 

『世界』から霧が形づけられる。

 

「さあ、『主』よ」

 

 

 ……そして、

 

 

()()姿()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!!」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「……なんや、アレは?」

 

「あれって、……なんでっ!?」

 

「これもタイトくんの言っていたデジタルワールドの影響……、というものなのだろうか?」

 

 

「いいえ、あれは」

 

 

 

「我が半身よ」

 

 

「我が怒りに応え、その者らを蹴散らそうぞっ!!!」

 

 

 

「『主』本体ですっ!!!」

 

 

 私達の耐久戦が今始まった。

*1
レベル:究極体 タイプ:神獣型 属性:NO DATA 必殺技:『無極』『晦冥葬』

 ファンロンモンに恨みのエネルギーを注ぎ込まれ暴走化した姿。善と光を無くし、悪と闇のみと偏った存在となり、世界を破滅させようと暴れまわる。記録によると、四聖獣が力を合わせ暴走化したファンロンモンを抑え込むことに成功したと残っている。

 必殺技は、デジタルワールドの万物を一切の光もない闇だけに飲み込ませる『無極(むきょく)』と、自然災害規模の竜巻に黒き炎を巻き起こす『晦冥葬(かいめいそう)』。





歌が響く。

透き通るような歌が、遥か昔から伝え、子々孫々に引き継がれてきた歌が夜の闇よりも深き、この暗い世界に響き渡る。

だが、その歌を誰も聞きはしない。

この場にいる誰にもその歌は届きはしない。


「……駄目、でしたか」


幾重も、幾重も時を重ねたとしても、『あの子』の為に私は歌い続けたというのに、『あの子』の耳に私の声は聞こえていない。

「…………」

戦乱を止める為にこの世を旅立ったというのに、多くの犠牲を生み出さぬよう旅立ったはずなのに、『あの子』は多くの犠牲を生み出し続けている。

「輪廻の果て、我が子孫を操り、人を、子供を、ケモノを殺し尽くそうとする我が弟よ」

異形の身に姿を変え、千と五百の歳月を超え、世界を恨みし我が弟よ。

「きっと貴方にはもう信じてもらえないのでしょう? ですが、姉はいつまでも貴方のことを思っています」

私も同じ年月を祈り続けましょう。

「だから、どうか……」


皆様、お願い致します。私の弟を救ってください。

誰一人の耳にも届かないその言葉は、決戦の爆風によってかき消されてしまった。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。