紫色の球体……『主』とそれを守るように立ち塞がるファンロンモンルインモード。
「『主』が……?」
「二人?」
ミユキちゃん/あの少女の言った言葉が、私/ウチの頭を混乱させる。
「そうですっ! 『主』は二人存在しています!!!」
「『主』は人間だった私達水瀬の先祖とその
甲高く……、それでいて警戒を促すように発生された子供と女の子の間をいくようなソプラノボイスがやけに耳に響いてくる。
「……それって」
どう戦えばいいの?
そう聞ける相手は今、この場にはいなかった。
「如何した? 我らのみにては物足りぬか?」
「されば、数を増やして遣わそうぞ」
『主』/ファンロンモンルインモードが嗤う。
そして、『主』の体から死体に這い出す蛆虫のように、たくさんの蛇/蛞蝓/蛙/鬼の化け物が産み出されていく。
「ーーーーひぇっ!?」
誰かの悲鳴が聞こえてくる。
私はその不気味な様子を見て、まだ動くことができない。
「ただでさえ多かった化け物共が、……こんなにっ!?」
誰かの驚く声が聞こえてくる。
デュナスモンが私を庇うように敵に立ち塞がっていた。その背中には、私の目に見えるほどの汗が流れているのが見える。
「……これは、」
どう戦えばいいの?
聞くことのできる相手なんかいないのに、なんども繰り返し頭の中に響いてーーーー
「ええ加減にせぇっ!!!」
みなみが大声で叫んだ。
「……ミナミ?」
「ユイが言った作戦を思い出すんやっ!!!」
ユイが言っていたこと……?
昨日のことを思い出す。
『まず、ファンロンモンへの対処を説明するのですぞ』
[ファンロンモン]
そう黒板に黄色のチョークで描かれた黄色の龍。
[デジタルワールドの東西南北を守護する“四聖獣”を統べ、中央に鎮座し“大地(世界)”を司る皇帝デジモン。遥か古代に降臨した1体の天使デジモンより地中のもっとも深く暗いところに封印されていた。このため統治を失った四聖獣による覇権争いが起こったが、現在ではその均衡が保たれている。その存在は善にして悪でもあり、光と闇の“太極”と呼ばれている。8つの目と体の外に12個の「デジコア(電脳核)」を持ち、その巨大な体は絶対硬度を誇る特殊な鉱石「ファンロン鉱」の鱗で覆われ、傷一つ付ける事すら不可能である。必殺技はデジタルワールドの万物を光と闇の二極に永遠に分解し続け、やがて無きものとする『太極(たいきょく)』と、自然災害規模の巨大な土砂流の台風を巻き起こす『黄廻(おうかい)』]
ユイからだいたいの説明を聞いて、疲れた体に叱咤をうちながら、作戦を聞いていく。
『必殺技の『
簡単に言えば、巨大なビームですな。技が派手で強力なぶん、攻撃の溜めが存在するのであります。避けやすいので、射程に入らないように全力で逃げるのがオススメですぞ』
チョークに描かれたファンロンモンの巨大な口から吐き出される巨大なビームの絵が、どことなくファンシーな絵柄で驚いたのを思い出した。
『もうひとつの必殺技の『
こちらはファンロンモン自身を中心に強力な台風を発生させる技ですな。『
ユイはさっきの絵の上から、ぐるぐると黄色のチョークでバネのような絵を上書きしていく。たぶん、台風をイメージしてるのかな……って、なんとなくそう思ったのを思い出した。
『…………』
そして、
『……問題は』
[
『こちらでありますな』
やけに真剣な顔で、チョークで黒板を叩いたのを思い出した。
『ファンロンモンの防御に特化したデジタルワールドのあらゆる金属よりも硬い強力な鉱石の鱗であります。テト殿はこれを突破するのに、新たな力を得る必要があったのですぞ』
説明を見て、あの鱗を破壊しないと攻撃できないことを思い出した。
『当時のテト殿は完全体とはいえ、並以上の究極体が束になっても片手間で倒せるほどの実力を有しておりました。そんなテト殿が唯一突破できなかったのが、この『ファンロン鉱』なのですぞ』
完全体ぐらいの攻撃ならなんとかなると思った。
『並大抵の……、それどころかどんなに強いデジモンでも突破に難儀する……、戦う前に対策は必須であります』
なんとなく勝てると思ってた。
『対策としては、カオスデュークモンの突破力が鍵になるのであります』
『カオスデュークモンの必殺技である『ジュデッカプリズン』の光で、ファンロン鉱の鱗を溶かし、ファンロンモンの肉体を露出させるのであります!!!』
みなみがドヤ顔でこっちを見ていた。
『デュナスモン……貴殿の『ドラゴンズロア』は手数が多彩な技であります。それを使って敵を翻弄し、カオスデュークモンの攻撃をサポート、その後に2体でファンロンモンへダメージを与えるこれが、今回の基本的な作戦であります』
やることはわかってた。
『きっと、……いいえ、ほぼ100%、『主』の手下である蛙や蛇といった化け物達が邪魔してくるであります』
…………なのに、
『貴殿らが持つ『初代デジヴァイス』を使い手下どもを牽制、ファンロンモンの攻撃にはデジモン達で対処をしていき……、ファンロンモン対策のカオスデュークモンを中心に、敵を倒すのが作戦の肝なのですぞ!!!』
(……なのにっ、!)
「
(なんで、今まで思い出さなかったのっ!?)
作戦も確認した。
思ったとおりに動くって考えてた。
でも、目の前にいるのに圧倒された。
首を振って目の前を向く。
「よしっ、ちゃんと化け物どもに効果があるっ!!!」
「ーーーーハル、こっちもだいじょぶだよっ!!!」
2人はもう戦ってる。
初代デジヴァイスを化け物達に向けると、光が発射されて、化け物達が溶けるように倒れていく。
「ーーーーごめんっ!」
「ーーーーっ、こっちにきてくださいっ!!!」
私も急いで、初代デジヴァイスを掲げて態勢を整える。全員で顔を見合わせる。
「あれ、いくでっ!!!」
「ーーーーっ、うんっ!」
それぞれが対角になるように手を伸ばす。前に『主』と戦ったときに霧の中でやった『聖なる光での結界』が私達を包み込む。
「このまま攻撃してくんやっ!!!」
みなみの声筆頭に、デジモン達が頷いた。
(大丈夫、これならいけるっ!?)
真っ暗に思えた未来が、少しだけ開けたような気がしーーーー
「……浅はかなり」
(……えっ!?)
『主』がそう声を出したとき、
「『
ファンロンモンルインモードの口から暗黒が発射される。
「んなモン、こっちに聞くわけーーーー」
みなみは初代デジヴァイスを『
「
いつのまにか、みなみの横に立っていたカオスデュークモンが、自分ごと私達を突き飛ばした。
ーーーーパリィンッッ!!!
光の結界が割れたのが見える。
さっきまで私達が立っていた場所だった。それが、簡単に壊されたのを見て、体が固まるのを感じる。
「……マジか」
化け物達がいっせいにこちらへと足を進めはじめる。
「どうやら、
「ーーーーくっ!?」
ファンロンモンルインモードを睨みつける。
「……どうやって戦えばいいんだ」
教授の言葉に、私は同意したかった。
「────走れッ!!!」
教授の言った言葉と同時に、デジモン達はそれぞれのパートナーを抱えて、いっせいに走り出した。
「ファンロンモンの攻撃には避けるか、私の『
サクヤモンのその言葉が、ミユキちゃんを守りながら錫杖で蛇の化け物を倒している。
「化け物どもには初代デジヴァイスで対応して……、ああもう、時間が足らへんっ!!!」
みなみが蛞蝓の化け物に初代デジヴァイスの光を当てる。化け物は灰と水が混ざったように、地面に溶けていくけど……、
「キシャアッ!」
「キジアベッ!」
「カシャリラッ!!!」
(まだ、全然倒せてないっ!?)
紫色の軍団が押し寄せてくる。
「如何した、羽虫どもよ! 勝利するのではなかったか!」
化け物を産み出し続けている『主』はこちらを見て嘲笑ってる。
「うっさいわっ、そのデカい目玉絶対にくり抜いたるからなっ!!!」
「では、やってみせろ、…… 『
みなみの怒声に、ファンロンモンルインモードのビームが襲いかかってくる……って、これっ、私にも当たるじゃんっ!?
「しっかり、捕まってて!!!」
「デュナスモンっ!?」
デュナスモンが私の体を掴んで、ものすごい速さで上へと飛んでいく。
「────来る」
「────へっ?」
────ズガァアアアアンッッ!!!
「きゃぁああああ────っっ!?」
ものすごい熱波が顔に当たる。髪の毛が少しだけチリっとしたのを感じた。その原因は────
「……チッ、危ないわっ!!!」
カオスデュークモンに抱えられて、『
(…………)
頭のどこかでイラッと音が鳴る。
「みなみ、煽んないでよっ!!!」
「あんなんにバカにされて、黙っとれっちゃうんか、ああ゛っ!?」
つい、そんな言葉が出たが、みなみの怒りがこっちに向いてくる。
「二人とも喧嘩してないで、足を動かしてくださいっ!!!」
ミユキちゃんに言われて背後を見る。迫ってくる紫色の化け物……って、あれはっ!?
────どすんっ!!!
「うわっ、っ!?」
「ミナミっ!?」
みなみ達の目の前に大きな鬼が現れる。
「がきゃあっ?」
「────っ!?」
突然現れた鬼はみなみとカオスデュークモンを見て驚く。
(鬼達が動いていない……、今ならっ!!!)
(────わかったっ!!!)
みなみ達を助けるようにデュナスモンに近づいてもらうとしたそのときだった。
「がきゃぁああっっ!!!」
鬼達が発狂して襲いかかった。
(────危ないっ!?)
「うっさいわっ、どけっつっとるやろっ!!!」
「きりゃあっ!?」
みなみの手のひらにある初代デジヴァイスの光で、鬼達が次々溶けてなくなっていく。
(……って、なんとかできたのっ!?)
動いてないって思ったから近づいたのに……、ううん、それよりも大事なことがある。
「走って!!!」
「狙いをつけさせるなっ!!!」
デュナスモンと一緒に大きな声で下に向かって私は叫んだ。
「うっさいわっ、わかっとることをいちいち言わんでええっ!!!」
みなみからは罵声が飛んでくるけど、他のみんなは頷いてもう一回走り出した。
(……問題は)
「……如何した、その程度か?」
「やはり、我らが供物となるために参っただけではないか」
「左様だな、ファンロンモンよ。奴らを一刻も早く喰らうとしよう」
「急ぐぞ、彼の世へ戻るためにな」
嘲笑うようにこちらを見続ける『主』二人。
「────ギリィっっ!!!」
奴らを見て思いっきり歯軋りしてしまう。
嘲笑われたからじゃない。
絶望に負けそうになっからじゃない。
(私はっ、……弱いっ!!!)
今の自分の状況がようやくわかったから、……本当に目の前の敵に怒りが増してくる。
「……ルビー」
弱い、弱い、弱いっ!!!
今までの自分達がどれだけタイトやユイに支えられて来たのかが、ようやくわかった!!!
自身に十分勝てる敵しか相手にして来なかった。
あのとき、一緒にピエモンと戦っておけばよかった。
後悔だけが今襲いかかってくる。
「────ルビー、下を見てっ!!!」
「────っ!?」
デュナスモンに言われるまま、下を見ると……、
「メタルガルルモンっ、一面に『グレイスクロスフリーザー』、周囲にいる敵を一掃するんだっ!!!」
「わかった、『グレイスクロスフリーザー』っ!!!」
『主』の化け物達が氷の息吹で凍結し、メタルガルルモンがその横を通る頃には粉々に砕けている。
「これで、少しは時間を稼げる」
「……違う、まだやで」
教授のその言葉をみなみがすぐに否定する。
「如何に、如何に! 如何ほど抗おうとも、我が力は永劫不滅! 貴様らごときに朽ち果てる道理などあろうはずもなし!」
ザッザッザッ!!!
ザッザッザッ!!!
ザッザッザッ!!!
無限にも思える数の化け物の軍勢。
いつでも倒せるようにファンロンモンルインモードが力を溜めている。
その姿を見て、足を止めそうになる……だけどっ!!!
「まだ、諦めちゃだめだよっ!!!」
「前向きぃ、敵はまだ目の前におるやろうがっ!!!」
私の……いや、私とみなみ声この場所に響き渡る。
「ルビーの言うとおりだ」
「ミナミ、うんっ!!!」
デュナスモンとカオスデュークモンが動き始めた。
「デュナスモンっ!!!」
「ファンロンモンルインモードは放置っ! ……『主』本体に攻撃するよ!!!」
「りょーかいだ、ルビーっ!!!」
私はデュナスモンに『主』へ近づくように指示をする。
「こっちは、ファンロンモンルインモードを引き付けるんやっ!!!」
「わかった!!!」
みなみはファンロンモンルインモードを、
「メタルガルルモンは化け物を一掃するんだっ! 彼女達の邪魔をさせるなっ!!!」
「サクヤモンは私達を守ってっ!!!」
「────はあっ!!!」
「走れッ!!!」
教授とみゆきちゃんは化け物達の相手をする為に、軍勢へと戦いに向かっていく。
「小癪なり。羽虫ごとき、いかに群れようとも、この我らには敵わぬわ」
私を見て、傲慢な『主』がそんな言葉言った……だけど、
「それは、どうか、なぁっ!!!」
私とデュナスモンが『主』の本体の上に張り付いた。
「──ーなにをするつもりかッ!?」
『主』は私達を振り下ろそうと、
「────キシャアッ!!!」
「────ジャバラッ!!!」
「────ドゲラッッ!!!」
化け物達を呼んだ……だけど、
「こうするんだよっ!!!」
「がぁぁぁああああああああ────っっ!?」
もう遅い。
「────よしっ!!!」
『主』と化け物達にダメージを与えることができたっ!!!
「貴様、いったい何をしたっっ!!!」
怒る『主』。
一泡吹かせられたのだと、胸が空く気分だ。
「化け物に通じるなら、あんたにも通じるでしょ?」
「────その光はっっ!!!」
タイト曰く、『聖なる光』が邪悪な『主』に傷を負わせたのだ。
「奴を止めろ、ファンロンモン!!!」
「グギャアアアアアアアアアアア────ッッ!!!」
『主』へと向かって走り出すファンロンモンルインモード……でも、そっちには────
「隙だらけやで?」
ファンロンモンルインモードと『主』の間に、『盾』を向けるカオスデュークモンがいる。
「『ジュデッカプリズン』」
「────っ、グァアアアアア────っ!?」
カオスデュークモンの盾から出る光が、ファンロンモンルインモードの鱗……『ファンロン鉱』を一部溶かして、顔筋肉を露出させることができた.。
「ユイの、言うとおり、やなっ!!!」
追撃を加える為に走り出すカオスデュークモンとみなみ。
「その程度の攻撃でっ!!!」
ファンロンモンルインモードの口から光が漏れ出す。『』が出る動作だ。
「やれっ、メタルガルルモン!!!」
教授とメタルガルルモンがファンロンモンルインモードの頭の上を飛んでいる。
「わかってるさっ、『ガルルトマホーク』っ!!!」
「『無、──っ、つあっ!?」
メタルガルルモンの胸から発射された巨大なミサイルが、ファンロンモンルインモードの傷跡に直撃、傷に大きな凍傷を刻みつける。
「────ええいっ、うっとうしいっ!!!」
「────っ、撤退だっ!!!」
そんな状況でもファンロンモンルインモードの攻撃から逃げて、ミユキちゃんのいるところまで戻る教授達。
「そんな役ばかり、……悪いな」
「いいさ、……ハルのことを恨まざる得なかったあの頃よりかはマシ、……だっ!!!」
二人は落ち着いた様子だけど、ファンロンモンはそれを見逃さなかった。
「舐めるなっ、『
2人を狙って、『
「サクヤモンっ!!!」
「────っ、守らせてもらう『
彼女達がいる。
『』の結界でファンロンモンルインモードの『』を少しだけ止めて、結界が壊される前に攻撃から逃げ切る。
「────小癪なぁっ!?」
ファンロンモンルインモードがもう一度、『』を放つ為に力を溜め始める。
「ルビー、スピードを上げる、身を縮めて、呼吸を止めてくれっ!!!」
────私は頷く。
私達は『主』から離れて、ものすごい速さでファンロンモンルインモードに向かって飛んで、……そして、
「『ドラゴンズロア』っ!!!」
デュナスモンの『ドラゴンズロア』がファンロンモンの顔に当たった。今のは水の力が込められている。
「その程度攻撃、通じるわけがなかろうっ!!!」
ファンロンモンはこっちに
「『ドラゴンズロア』っ、『ドラゴンズロア』っ、『ドラゴンズロア』っっ!!!」
「ぬるい、ぬるいぞっ!!!」
土、木、金の力を込めた『ドラゴンズロア』。ファンロンモンルインモードはその力を物ともせず力を溜めていく……でもっ!!!
「────っ、これで、どうだっ!!!」
……ぴちゃり、ニョキっ、ニョキニョキっ、シャルシュルシュル……ガキィンッッ!!!
「────んんん《これは》っ!?」
泥水中に埋もれた種が成長し、ファンロンモンの口、肩、前脚を完全拘束、そして、それが金属へと変わって、拘束具が完成する。
「そのまま動きを止めていろっ!!!」/「カウント、終了やで」
「『ブレス・オブ・ワイバーン』ッッ!!!」/「『ジュデッカプリズン』ッ!!!」
私達の準備は完了した。
「ファンロンモン、やれぇぇえ────ッ!!!」
「『
……だけど、
「────なっ、きゃぁああああ────っっ!?」
「────っあっ、ルビーィイイイイイイ────ッッ!!!」
「……かはっ」
「……ミナミぃっっ」
強力な飛龍の一撃も、
全てを溶かす光も、
ファンロンモンルインモードの『
私もデュナスモンも、
みなみもカオスデュークモンも、
教授もメタルガルルモンも、
ミユキちゃんもサクヤモンも、
みんな、みんな倒れている。
「よくもやってくれたものよ」
「この我が『主《力》』に傷を負わせるとはな……」
『主』達が近づいてくる。
「「然れども、その身の有様では、もはや戦う術もあるまい」」
『主』達に嗤われる。
「どんなに抗おうが、巫女も、血族も、ケモノも、ヒトも、……所詮、我が前には羽虫と変わらず」
「我が血肉とし、かの世界に復讐をする力とせん」
『主』達に殺される。
「「さあ、贄にしてやろう」」
……だけど、
「「
「私達は、負けてない」/「好きにほざくな負け犬如きが」
私達は立ち上がる。/ウチ達は立ち上がる。
「……なにっ!?」
左肩が痛い。/右足が痛い。
「私は贄になる為にここにいるんじゃない」/「ウチはまだ戦える」
ああ、さっきので骨が折れたんだ。/足から血が出とる。
「私達は戦って来たんだ」/「ウチ達はあんたを倒す為に今ここおるんや」
でも、どうでもいい。/そんなの知らへんわ。
「私は勝って、タイトをママに会わせるんだっ!」/「ウチは勝って、マナトくんに褒めてもらうんや、ここで負けるわけにはいかんっ!」
私の願いのために、奴を倒す。/ウチの欲望のために、奴らを殺す。
「立って、デュナスモン」/「抗え、カオスデュークモン」
立て、/抗え、
「私は」/「ウチは」
そうだ、私は、/そうや、ウチは、
「「勝ちたいっ!!!」」
そう、勝つんだ。
目の前にいるこいつらを倒さなくちゃいけない。
「ミナミ、わかった。敵を前に膝をつくどころか倒れるなどあってはいけないのだと、このカオスデュークモン、今思い出した……全力で抗って見せようっ!!!」
「そうだよな、ルビー……勝ちたいよな」
2人は立ち上がって────っ!?
デュナスモンの鎧がひび割れてる/カオスデュークモンの兜がへし折れてる。
「いくぞ、カオスデュークモン」
「やるぞ、デュナスモン」
でも、2人は/戦ってくれる。
「いくよ」/「いくで」
「うん」/「わかった」
私達は覚悟を────
「『
ドゴリ、と音が鳴った。
横を見ると、
「「────っ」」
デュナスモンが倒れてる? /カオスデュークモンが倒れとる?
「……カオス、デュークモン?」
「えっ、デュナスモン?」
デュナスモンの翼がへし折れて、鎧は粉々に砕けてて、ドラゴンの……ブイモンのような顔が半分見えてて、
カオスデュークモンの槍がへし折れて、鎧は穴だらけで、盾が右腕ごと地面に落ちとって、
「
近づいてくる『主』達。でも、そんなことはどうでもよかった。
「……うそ、うそや……うそに決まっとるっ!?」
「……私のせい?」
カオスデュークモンが、/デュナスモンが、
「デュナスモンっ、デュナスモン!!!」
「立て、立つんやっ……カオスデュークモンっ!!!」
息をしてない。/立ち上がらない。
「「…………」」
うそ、うそだよね。/これは、ほんまに……、
「クハハハッ、命尽きしことすら気づかぬとは……やはり、羽虫どもは愚かなる存在よ」
『主』の嘲笑う声が聞こえる。だけど心はもう揺れない。
「「…………」」
私はデュナスモンの隣にいる。/ウチはカオスデュークモンのそばにおる。
「ファンロンモン、トドメを刺せ」
「死ね、『
ああ、いやだっ!!! /こんなの、こんなのっ、おかしい!!!
「まだや、まだ戦えるんやっ! だから立つんやっ!!!」
「いやっ、まだ死ねないっ、タイトをママに合わせてないっ、死んでっ、死んでたまるかっ!!!」
死ねない、死んでたまるかっ!!!
「勝ちたい、勝つんや、褒めてもらうんやっ、認めてもらうんやっ!!!」
「ねえ、立って、立ってよ、デュナスモンっ、……いいから、立てっ! 私の力になるって言ったでしょ!!!」
戦え、戦うんやっ!!!
「ウチは」/「私は」
「……えっ?」/「……は?」
「
肩まで長く伸びた艶やかな夜空色の髪に、はためく茶とオレンジのジャケット。
少女らしい肉体に似合わない黒の短パンと、それでも映えるほどの強烈な美貌。
手元にあるのは、形の変わった『デジヴァイス』。
「
戦局はひっくり返った。
「「だまれ」」
彼女達の手のひらが光る。
「私達は、負けてない」/「好きにほざくな負け犬如きが」
足らない。
「私は贄になる為にここにいるんじゃない」/「ウチはまだ戦える」
もっと。
「私達は戦って来たんだ」/「ウチ達はあんたを倒す為に今ここおるんや」
「私は勝って、タイトをママに会わせるんだっ!」/「ウチは勝って、マナトくんに褒めてもらうんや、ここで負けるわけにはいかんっ!」
もっと、もっと!
「立って、デュナスモン」/「抗え、カオスデュークモン」
「私は」/「ウチは」
「「勝ちたいっ!!!」」
これだけじゃ足りない。
光は消え去ってしまった。
「まだや、まだ戦えるんやっ! だから立つんやっ!!!」
「いやっ、まだ死ねないっ、タイトをママに合わせてないっ、死んでっ、死んでたまるかっ!!!」
そうだ、もっとだ。
再び、手のひらに『紅色』/『宵色』の光が灯る。
「勝ちたい、勝つんや、褒めてもらうんやっ、認めてもらうんやっ!!!」
「ねえ、立って、立ってよ、デュナスモンっ、……いいから、立てっ! 私の力になるって言ったでしょ!!!」
欲望を掻き立てろ。
少女達は気づかない。
死にたくないと叫べ。
デジモン達には届かない。
己が意思を証明しろ。
それでも『光』は彼女達の思いを足らないと、十全じゃないと声無き叫びで吠える。
敵の攻撃はすでに目の前であった。
「ウチは」/「私は」
今回もダメ。
前回はいいところまでいけた。
答えまで、あと少しなのに。
2つの『意思』は『互いの光』を合わせはじめる。
瞬間、夜空と闇が世界に舞った。
また、足らなくなった?
まだ、足らなくていいの?
諦める?
諦めた?
彼女の『決意』は、/貴女の『闘志』は、