夢を聞いた。
夢を言った。
ここはどこだ?
モザイクだらけの空間。
そこに一つ一つパズルのピースが重なるように、暗く塗りつぶされたものの全体像が見えてくる。
夢を見ていた。
優しい母親。
目標の為邁進する兄に、夢に向かって努力する姉。
共に旅立ってくれたかけがえのない無二の相棒。
後ろで追いつこうと足掻く者と自身の根幹になった死。
見守って、導いてくれたたくさんの先達。
自身の先すら捨ててもいいと思えた素晴らしい世界……、そしてーーーー
ああ、なんで……俺は、僕は?
なんのために?
なぜ?
…………。
…………。
…………。
…………。
…………。
…………。
夢を見た。
家族といれて、
テトやシン、ゴールドヌメモン、ユイといれて、
トーマさんや淑乃さん達がいて、
ノルンやツルギさん、ユウさん、アグモン達がいて、
リリモンやブラックテイルモンやキャンドモンやバーガモン、エアドラモンにオメカモンにサウンドバードモン、モニタモンは、サゴモン、クダモン……あの世界で出会えたたくさんの仲間達がいて、
末堂さんやリエさん、姉さ……お嬢がいて、
ふざけたことを言い合えるあの二人も……入れておくか?
まあ、そんな人達が笑い合える世界であってほしかった。
……それでも、
『それでも』と、言える自信は『もう俺にはない』。
本当に美しいモノを見た。
どんな世界であろうと、どんなに力不足であろうと、今を生きる世界で、助け合い、救い合い……救われる果てを目指す者達の姿を。
あの姿を見ていたからこそ、『見定めたい』……そう、思えたはずだった。
今も、それを『夢』見ている。
「ーーーーっ!!!」
「ーーーーぞっ!?」
音が聞こえる?
「……た。ーーーーじゃ、ありーーーーっ!!!」
「ーーーーそ、うちもーーーは、だめーーーー!!!」
うるさい。
少しは、陰鬱な気分に浸らせてほしいものだ。
「ご主人様はっ、どう……ーーーー、なっ!?」
「言ったそばから……『ーーーー』ッ!!!」
ああ、だからーーーー、
「多いっ、多すぎるのであります!!!」
「このままだと消耗が激しすぎます!!!」
「ーーーーうるさい」
群がる紫色の蛙に蛞蝓、蛇……、まるで人のように大きなそれらを俺は『夜空色』/『闇夜色』の光で吹き飛ばした。
「……ねむっ」
口から出る大きなあくび。
体は……、なんとなく重い気がする。なんでだろうか?
思いのままに動かそうとしても、どうしても力がうまく出ていない……、デジソウルがなぜか使えるのがおかしい。全力で出せる出力はダークナイトモン戦の7/10……いや、7/9ぐらいか?
それでも動かせるように調整されてる?
……、一体誰が?
ノルン様にはしばらく会っていないし、俺は……たしかピエモンとの戦いで倒れたはず……だよな?
この世界には友好的な神はいないから……クダモンの仕業か? ……それとも、他の誰かのーーーー
「…………ん?」
目の前に飛んでいる白色と赤色の影……あれはいったいーーーーっ!?
「タイト氏っ!?」/「ご主人様っ!?」
「ーーーーのわおっ!?」
眼前にデカい鳥と馬が……って、1体はユイだとして、もう1体はスレイプモンッ!? ……ってことは、クダモンが単独で進化したのか!?
それっていったいーーーー、
「ほんとに、本当にタイト氏でありますかっ!?」
「キリハやネネなんて知らない人物の名前を出してきたりしませんよねっ、ご主人様っ!!!」
……なに言ってるんだ、コイツら?
「……なんで、キリハとネネの名前が出てくるんだよ。……ってか、暑い、うっとうしいっ!!!」
スレイプモンはここぞとばかりに、俺の体をデカい鼻で触んなっ!? キモいんだよっ!?
「……あっ、申し訳ありませんっ!?」
スレイプモンが急いで後ろに下がる……けど、なんだ、ここ? どうなってるんだ?
「……というか、ここどこだよ。俺が倒れたのは……、ピエモンと戦った海辺付近の森だぞ」
こことは似てもいない、緑が生い茂る森だったはずだ。それが、なんでこんな紫色の世界に?
「ここは元家庭科室でありますっ!」
…………家庭科室?
拠点にしていた場所、だよな……ということは、ファンロンモンの封印が解けたのか?
ルビー達はファンロンモンと戦ってる……で、倒れた俺を守ってたのがユイとクダ……スレイプモンで……、状況が全くわからん。とりあえずーーーー
「ルビー達は?」
「遺跡にて、主と交戦中ですっ!!!」
状況が悪いってことは確かだな。
「……じゃあ、こいつらは敵ってわけだ」
ーーーーぞくりっ!?
「これはっ!?」
「まさかっ!?」
俺達の周囲を囲むように現れる化け物達……、とりあえずーーーー、
バキ、ボコ、ドゴッ、グキッ、ゲコンッ!!!
悲鳴を上げる間も無く、崩れて消える化け物達。うん弱いな。
「……お前ら、こんな弱い奴らに苦戦してたのか?」
よくて、究極体の下位レベルの力しか持ってない化け物。こんなのに苦戦してるのか、と失望してしまう。
「…………相変わらず」
「化け物ですね」
いつもなら意見の合わない2体が息を合わせてそんなことを言う。
「…………化け物じゃない」
だが、訂正は必要だ。
俺は化け物じゃないし、マサルダイモンでもないので、ロイヤルナイツの攻撃は受け止められない。
「いや、化け物ですぞ」
ユイに繰り返し言われる。でもなぁーーーー、
「テトやシンならこれぐらいできる」
この程度の相手を蹂躙できないなんて弱すぎるだろ?
テトもシンも簡単に圧倒できるはずだ。QED.俺は化け物じゃない。
「化け物に比肩する為に、努力しただけなのでは? そもそも、あの方々自体、並行世界を含めたデジタルワールドでも化け物の中の化け物クラスですぞ」
ーーーーう゛っ!?
「…………」
「…………」
「…………」
「……ルビー達のところに案内してくれ」
「わかりました、ご主人様」
視界の端に紫色のなにかが這い出てくる。踏み潰しておこう。
「ーーーーぐあっっ!?」
べきょり、と音をたてながら、爬虫類の顔がつぶれて、気持ちの悪い灰が服にかかる。
「……やっぱり、化け物なのですぞ」
ユイのそんな言葉が聞こえてくる。
この戦いが終わったら、テトに頼んで修行をきつくしてもらおうと決意するのであった。
紫、紫、紫……目に見える世界が全て紫色に染まったなにもない空間。
ゲームの中なら理解できるが、現実として見ると本当に気持ちの悪い空間だ。
そして、その空間に立つ2体の龍と機械。アレがきっと『主』達なのだろう。
「……で?」
俺は背後を振り返る。
2人の少女と……、
「これはいったいどういうことなんだ?」
2体の倒れたデジモンがいた。
翼は折れ、盾は捩れ、鎧は壊れ、腕は捥げ、────それでいて、主人を守ろうと壁になった2体のデジモンがそこにいた。
「……何奴ぞ、あやつは?」
「人間が……それも素手にて、我が『
遠くから、『
ああ、俺は怒っているのだ。
でも、優先しなければならないのは、そんな『怒り』ではない。
「ユイ、治療は?」
「大丈夫であります」
「ルビー殿は骨がが外れていますな。みなみ殿は足に傷ができているだけですな」
「ミユキ殿も教授殿も気絶しているだけ、……横にガブモンとレナモンも倒れていることから、きっと庇って身を守ったのだと思われるのであります」
ユイは大きな羽を広げながら、2人の怪我の情報を教えてくれる。
「────『
「……そっか」
また、鬱陶しいものが飛んできたので、裏拳明後日の方向へと弾き返す。本当に弱い攻撃だな。ダークナイトモンの攻撃の方がまだ強かった。
「またしても弾かれたか……」
「果たして、本当に人の身なるものか?」
『
「2人とも、よく頑張ったな」
「「────っ!?」」
俺は座り込む2人に目線を合わせてそう言った。
みなみの頬が好調しているのはわかるが……、なんでルビーまでそんな顔をしてるんだ?
全く意味がわからない。
「…………」
俺は2体の『主』の方へと向く。
(あれが、ファンロンモン……、いや、暴走状態のはず……どういうことだ?)
デジモンサヴァイブの記憶の通りであれば、ただのファンロンモンだった……はず、……うん、あれは特に一回しかゲームをやってないから、ラスボスがどんなのかうろ覚えだったんだよなぁ────よしっ!
「ひさしぶりに起動するか」
アプリドライブを起動。
デジモンストーリー世界以外ほとんど使わなかった機能を呼び起こした。
[ファンロンモン ルインモード]
デジモン図鑑の機能。
それも、ストーリー世界の仕様のものだ。俺やテト、シンが弱かった頃に多用していた。
(……ルインモード?)
ルインモードはシャイングレイモンの特権なのでは? ……という、うろ覚えの記憶を思い出しながら、さらに続きを読んでいく。
[素質/才能 85
必殺技: 『
ファンロンモンに恨みのエネルギーを注ぎ込まれ暴走化した姿。善と光を無くし、悪と闇のみと偏った存在となり、世界を破滅させようと暴れまわる。記録によると、四聖獣が力を合わせ暴走化したファンロンモンを抑え込むことに成功したと残っている。
必殺技は、デジタルワールドの万物を一切の光もない闇だけに飲み込ませる『無極(むきょく)』と、自然災害規模の竜巻に黒き炎を巻き起こす『晦冥葬(かいめいそう)』。]
技が……、なんか違う。
「……ゲームで、あんなんだったか?」
というか、そんな設定あったか?
最後までデジモンウェブを確認していた記憶はないし、更新されてたかも覚えてないけど……、あんなんいた記憶はほぼないんだよなぁ……っとぉ、そおじゃなかった。
「ユイ、スレイプモン」
「なんでありますか?」/「────はっ」
「しばらくあいつらの相手を頼む」
2体に
「ええっ!?」/「わかりましたっ!!!」
ユイは驚いたが、スレイプモンは素直に言うことを聞いてくれる。うん、いつもどおりの感じに戻ってきた。
「さっさと行きますよ」
「あんなのに勝てるわけないのでありますっ!?」
尻込みしているユイ……、しょうがないな。
「さっさと行けっ!!!」
「────ひんっ!?」
俺の方に向いているケツを思いっきり蹴っ飛ばしてやる。そして、俺は後ろを振り返った。
「はぁ、格下相手になにを怯えてるんだか?」
タイトが敵へと向かっていく2人を見て、そんなことを呟いていた。
「…………」
タイトが私達を助けてくれた。
病み上がりの体で、私達を助けるためにこの場所へと走ってきてくれた。そのことが嬉しくて、でも、力が足りなかったことが悲しくて……それでも、私の目の前に元気な姿でいてくれることがとても嬉しかった。
「────さて」
「…………っ」
タイトが振り返って私達を見る。
言いたいことがたくさんあるのに、聞きたいことがたくさんあるのに、私の口からそんな言葉は出ない。
ただ、タイトの顔をまっすぐ見れなくて、申し訳なくて、情けなくて、俯くことしかできなかった。
「……ルビー?」
────っ!?
タイトの顔が目の前にある。
そのことが、それが、とても嬉しくて、とっても情けなくて……でも、私は────、
「……あの、タイト」
「うん」
私は言わなきゃいけないんだ。
「ごめん、勝てなかった」
私の口から出た言葉。
私の手をみなみが握ってる。みなみも悔しそうな顔でこっちを見て、ああ、おんなじ気持ちなんだってそう思えた。
「…………」
「……っ」
タイトはなにも言わない。
失望されたのかな?
それとも期待されてなかったのかな?
そんなことばかり頭の中で考えてしまう。
「
「────えっ」
タイトの口から出た言葉はそんな言葉だった。
「探したんだぞ、……ここにあるってわかったのなら、もっと早く来れたのに、どうして持ってるんだ?」
タイトが私の首に、……ううん、首にかかってるタイトのゴーグルに手を当てながら、そんなことを言う。
「……えっと、……あの、その」
私はなんて言えばいい?
みなみに賭けの商品にされたから?
ゴーグルの意味を知ったから?
その場のノリと勢い?
どれもあってそうで、どれも間違ってる気がする!?
どうしよう、どうしよう、どうしよう!?
「────ルビー?」
ヤバイ、もう言うしかない!?
なんとか、理由だけでも、うーん、えーと……そのっ! これだだ!!!!
「
「……はぁ?」
違った!!!
タイトの顔が意味がわからないってそんなふうに書いてある!? なんとか説明だけでもしないとっ!?
「だって、タイト全然起きないし」
言いたいことはそうじゃないっ!!!
「イグドラシルって変なのがタイトの体乗っ取るし」
さっきとは違う意味でタイトの顔が見れないっ!!!
「みなみが……言い出しっぺで、主人公の証だって……言ってたから…………」
なんて、なんて言えばっ!!!
「
タイトは一言私の名前を呼んだ。
「…………」
タイトは黙って私の顔を見る。
「…………はぁ」
タイトは呆れたようにため息をついて、でも私の頬を優しく撫でて…………、
「…………ごめん」
そんな言葉が、私の口からこぼれ落ちた。
「しばらくお前が持ってろ」
「────えっ!?」
タイトは私の首にかかったゴーグルを指さして、私に持っていろと言う。
「そのほうが都合がいいしな」
都合、がいい?
「……都合って、なに?」
「お前らが戦うんだろ?」
「────えっ!?」/「────はっ?」
私とみなみが驚いた。
「なに言うとるん、マナ────っ、タイトくん?」
「その『
「────っ、でも、デュナスモンは後ろであんなに、ボロボロになってるんだよっ!!!」
「そうやっ、カオスデュークモンだって、あんなに怪我して……っ、戦ってっ、それなのに戦えって言うんかっ!!!」
デュナスモンもカオスデュークモンも、もう戦えないぐらいボロボロで、立ち上がるどころか、反応だってしてくれない。それなのに、タイトは私達に戦わせようとする。
「…………お前ら、なぁ」
呆れたように立ち上がり、私達を見下ろすけど、でももう戦えないことぐらい私にはわかってる。だから、絶対にここだけは引けない。
「だって、しょうがないでしょっ!? 私達、タイトがいない間も頑張って戦ったんだよっ!!!」
そうだ、私達はタイトが倒れてる時も戦ってたんだ。
バイフーモンの攻撃にだって耐えて、スーツェーモンの攻撃にだって耐えてきたんだ。もう戦わなくていいんでしょっ!!!
「カオスデュークモンは頑張って戦って……、それで、あんな怪我をしてもうて……っ、ウチは、確かに負けたくないけどっ、それでもっ、これ以上はっ!!!」
みなみだってそうだ。
ブイモンもギルモンも今まで頑張って頑張って戦ってきたんだ。だから、タイトが来たんだから、もう────
「
タイトは私とみなみを見てそう言った。
「────なにを、根拠にっ!!!」
「手を取れ」
「……えっ!?」
私とみなみの無理矢理手を握る。
「あいつらのところに行くぞ」
「……なにをっ!?」
握った手で思いっきり引っ張って立ち上がらせる……ん、『握った手で思いっきり引っ張って』?
「────ほら」
タイトは私の肩を、みなみの足に指をさした。
「────っ!?」/「……なんで、立てるんや?」
私の肩は治ってて、みなみの足から血は流れてなくて、怪我がなかったように、私達は立ち上がることができた。
「……なんで?」
さっきまであれほど痛かったのに、今はどこも痛くない。むしろ、体の痛いところがなくなってくみたいで、変な気分になってくる。まるで、最初から怪我がないみたいな……そんな感じ────
「違うっ、怪我はあったんやっ! タイトくんなにをしたんやっ!?」
そうだ、タイトが来てから怪我が治り始めた。タイトがきっとなにかしたんだ! そうじゃないとおかし────
「────えっ!?」
タイトは首を振った。
「……、手元を見てみろ」
タイトは私達の握ってない方の手を指を指す……そこには、
「「────っ!?」」
「これ、
究極体に進化する時に出た光。
それも、みなみとギルモンの光が私の初代デジヴァイスに、私とブイモンの光がみなみの初代デジヴァイスを輝いている。
「なんで、どうして?」
「タイトくんはなにか知っとるんか!?」
タイトは再び首を振った。
「俺にはわからない…………、でも」
「デュナスモン?」/「カオス、デュークモン?」
「お前らはこいつらを見てどう思うんだ?」
デュナスモンを? /カオスデュークモン?
「奴らはお前らの大事な人を殺しにくるぞ」
『主』達を指さした。
ユイが化け物を倒している。/スレイプモンがファンロンモンルインモードを相手に戦っとる。
「奴らはお前の幸せを踏み躙るはずだ」
踏み躙られる?
ママとミヤコさん、斎藤さんに……アクアとの日常が? /……タイトくんとギルモンやられるんか?
「奴らは築き上げた幸せを壊しにやってくる」
幸せ……、私の願い、……もし、あいつらを倒せなかったら、ママとタイトを合わせることができなくなる。/タイトくんが殺される? ふざけんなっ、それだけは絶対に嫌やっ!!!
「目の前にいるのは誰だ」
目の前にいるのは、/目の前にあるのは、
「目の前にいるのはお前に取ってどんな存在だ」
私にとって、大切な相棒。/ウチに力を貸してくれる存在。
「目の前で傷ついたのは誰のせいだ」
……それは、/……それは、
「
「────私は」/「────ウチは」
「「
『主』をファンロンモンルインモードを許すことができない。/奴らの息の根を止めてやる。
「あんな奴に負けたくない」
負けて、踏み躙られる?
そんなのは絶対に嫌だ。
「このまま、やられっぱなしは、……腹の虫が治らへんな」
ウチらが踏み躙るんや。奴らの目的を、手段を、未来を踏み躙って、ウチらが塗り替えるんやっ!!!
「それで、どうする?」
「デュナスモンと一緒に戦う。そして、『主』を倒す」
初代デジヴァイスが紫色の光を、『紅色の光』が塗り潰す。
「戦う。……戦って、奴を……、ファンロンモンルインモードを倒す」
初代デジヴァイスが紅色の光を、『宵色の光』が掻き消した。
「どうやって?」
「……それは」
「……そう、やな」
考えろ。/考えるんや。
奴を倒す為に私に必要なことを、/奴に勝つ為にウチが尽くさねばならぬ、最大の手段を、
「お前らはどうすれば勝てると思う?」
「どうすれば」
デュナスモンは傷だらけで、
「……でも、カオスデュークモンは」
カオスデュークモンはもう立ち上がれへん。
「お前の力はどこにある?」
────それでも、
それでも私は、/それでもウチは、
戦わないといけないっ!!!
……でも、どうすればいい?
どうしたら、戦える?
どうしたら、勝てるんや?
私の/うちの
力はどこにある?
「「
紅色が光った。/宵色が輝いた。
「「────えっ!?」」
目の前の2体は太陽よりも輝いている。
「ルビー」/「ミナミ」
「デュナスモン?」/「カオスデュークモン?」
「……はじまった」
2体の傷が消えていく。
「
力を得る為に、飛竜は姿を変える。
「
闘う為に、勝つ為に闇の騎士は光に包まれる。
「
目の前にある守りたいもの、/目の前にあるともにありたい場所、
「「
それを守る為に2体は────、
「
騎士は飛竜の
「
飛竜は騎士の姿を覆った。
「「────
────だからこそ、
「「────
紅色の兜と緑の装飾、暗黒の騎士が紅蓮に染まり、本来の姿に近しい進化へと変化。
自身の背丈よりも遥かに大きな
紅と金の力は混合し、『デュナス』に込められた十のエネルギーはやがて、四つの魔術に統合される。
「デュナスモンと」/「カオスデュークモンが」
「「合体したっ!!!」」
そう、そこにいるのは、ただの現実ではない。幻想と呼ばれる異世界の騎士がそこに降り立ったのだ。
「「────、これは?」」
「やっぱり、か」
メディーバルデュークモンが驚く。タイトはただ納得したようにそれを見つめている。
「……やっぱりって?」/「タイトくん、なにか知っとるんかっ!?」
「初代デジヴァイスを見てみろ」
デジヴァイスを見ると、そこには────
「点滅しとる」
ルビーは紅色にみなみは宵色に強く、強く光り輝いている。
「そのデジヴァイスは、初代と名付けられたように『一番最初に作られた』デジヴァイスだ」
「一番?」
「最初に?」
「そう、一番最初に、だ」
「そのデジヴァイスを持つ少年達は、世界を混乱させる凶悪なデジモンと戦い、先程のデュナスモンやカオスデュークモン達のように戦場で深い傷を負った」
「負けたら死ぬ。勝たなければ多くの人が、多くのデジモン達が死ぬ……そんな時に、デジヴァイスが応えた」
「それが、この『
「「『
紅色のマントが翻った。
「────タイト氏っ!? これ以上は持ちませぬっ!!!」
「ご主人様、教授やみゆきさん達をっ!?」
全員を守りながら戦っていた2体。たった1人を守るのにも手間取っていた2体は今、先程よりもさらに多い敵と戦わされている。
「「『ファイナル・クレスト』」」
だが、それももう必要ない。
「────っ!?」
「化け物達を、一瞬で」
化け物は一掃された。
「「…………」」
「これが、デュナスモンと」
「カオスデュークモンの」
「「合体した力」」
幻想の騎士の手によって。
「メディーバルデュークモンッ!!!」
「────ッ!?」
タイトは叫ぶ。
「お前が、『主』達を倒せたらっ!!!」
「
「「────っ!?」」
「────えっ!?」/「────ほんまかっ!?」
衝撃の一言だった。
「だから、頑張れっ!!!」
タイトからのエールが耳に入ってくる。
なんでも
なんでも
ええっ、と、なにっ、聞けば、あわまっ!?
思わず転びそうになるが、なんとか踏みとどまって、タイトに近づ────って、タイトの体に寄りかかってるっ!?
「大丈夫か?」
タイトに肩を掴まれて、支えられて、ってそうじゃな────、
「────ルビー」
みなみの恐ろしい声が聞こえてきたので、すぐにタイトから離れる。
「……タイト、本気で言ってるの?」
「ほんまに、ほんまになんでそんなことを?」
みなみのジト目が酷いが、私はタイトに向かって聞いた。みなみもそれに続いてタイトに聞く。
「────だって、こうすればお前らのやる気が上がるかな……って思ってさ」
『やる気が上がるかなって思って』
『やる気が上がるかなって思って』
『
「……みなみ」
「……なんや、ルビー?」
「これは負けられないね」
「ここまでケツを叩かれたんじゃ、ウチも黙っとれんなぁ」
「「────ふっ」」
私とみなみは覚悟を決めた。
目の前の許せない敵だけじゃない。敵に向かって勝つ報酬まで手に入れたのだ。だから、私とみなみは────
「「────メディーバルデュークモンッ!!!」」
「「────っ」」
「────勝ってっ!!!」/「────勝つんやっ!!!」
「「────わかったっ!!!」」
私達を背に飛んでいくメディーバルデュークモン。
「なんと、小癪なることかぁッ!!!」
大きく手を振り上げるファンロンモンルインモード。だが、今の俺/我にはその攻撃は遅く感じられる。
(今ならわかる)
ブイモンとしての自分が、風を操りその攻撃を防ぐ。
(コイツを止める方法、……それは)
ギルモンとしての自身が体の動きを理解し、最短の距離で敵へと詰めていく。
「「『主』の力を奪うっ!!!」」
ファンロンモンルインモードの頭の上に俺/我は立ち上がった。
「────なんとっ!?」
「ファンロンモンっ!?」
弱点が見える。
「「化け物を産み出してるのは『主』だけど、その力を貸しているのは『ファンロンモンルインモード』、お前だ」」
『主』に繋がるファンロンモンルインモードのエネルギーの動きが、エネルギーの繋がりが完全に見えた。
「「だから、お前をまず倒させてもらう」」
魔槍『デュナス』を突き立てる。
「「火よ、水よ、大地よ、風よ」」
十に分かれたエネルギーが本来の姿を取り戻した。四つの強力な元素の力が今、俺達/我等の手中にある。
そして、それは俺達の、我等の力となりて、振るわれた。
「「我が力に応え、敵を蹴散らせっ!
────『ファイナル・クレスト』っ!!!」」
「グィ、ギャアアアアアアアアアアアアア────ッッ!?」
突き立てた『デュナス』から繰り出される『』。
それは本来のギルモンが進化することで得られる『聖なる光』の力が込められた強力な一撃。その力はファンロンモンルインモードの頭部の『ファンロン鉱』を容易く砕き、聖なる力を『
「────なにっ!?」
『主』はファンロンモンルインモードへと近づこうとするが、ファンロンモンルインモードが暴れ回り、近づくことすらできない。その間にも、聖なる光がファンロンモンルインモードの『恨み』を打ち砕いていく。
「「お前の頭に直接『聖なる光』のエネルギーを送った」」
聖なる光はファンロンモンルインモード……、いや、その黒い姿は少しずつ金色へと変化していく。
「「その力で、貴様は浄化される」」
その姿は浄化されつつある。
「まだだッ!? 立て、戦え、ファンロンモンよ!!!」
「────ッ、『
黒い『恨みの炎』を繰り出そうとするファンロンモンルインモード……しかし、
「「────無駄だ」」
「────なっ!?」
魔槍『デュナス』を振るうことで、『炎』は消えてなくなった。
「「我が力は全ての元素を操る。お前の操れる『火』など、この世に一つもありはしないっ!!!」」
『火』の力はメディーバルデュークモンが支配している。ファンロンモンでは操ることすらできない。
「──ーええい、黙らぬかッ! 我が眷属どもよ、あやつを蹴散らせッ!!!」
『主』が残りの化け物に命令して、メディーバルデュークモンを倒そうとするが、
「────そうは」
「いかないのですぞっ!!!」
光の巨鳥と紅の馬が現れる。
「『パージシャイン』ッ!!!」/「『オーディンズブレス』ッ!!!」
暗闇を照らす光と全てを凍てつく息吹が、化け物の姿を灰へと変えた。
「────眷属どもっ!?」
『主』に化け物はもういない。
「ご主人様の前でこれ以上恥はかかせられませんわっ!!!」
「究極体の力、フルで使ってみたかったのでありますっ!!!」
「────貴様らぁっ!!!」
ファンロンモンルインモードが最後の力で、『主』に答えんが為力を払おうとする。だが、それはもう遅い。
「────『『
その姿は完全に『金色』に染まっていた。
「「────終わりだっ!」」
聖なる力が消え、荒々しい竜達の力が目覚める。
2体の竜が天を崩し、金色へと向かう。
千年を超える時を支配した神へと向かい、振り下ろされる魔槍『デュナス』。
そこにあるのは、竜の叫びが、竜の息吹が、竜の怒りが込められたその一撃の名は、
「「『レイジ・オブ・ワイバーン』!!!」」
一千年の神を打ち滅ぼすのだった。
別次元のデジタルワールド“ウィッチェルニー”において“伝説の英雄”と称えられている戦士型デジモン。魔術(高級プログラム言語)がまだ未成熟であり、外敵の侵略から身を守る術が無く、滅びの道を辿っていた古代“ウィッチェルニー”に突如現れ、外敵をことごとく撃退し、時を超越して今も尚存在しているというが定かではない。魔術によって創られた武具で戦い、炎・大地・水・風の魔術体系の中でも、風の魔術によって創られた武器で戦う“ヴォルテクスウォリアー”と呼ばれるデジモン達を束ねていることから“旋風将”の異名を持ち、飛竜の力を秘めた最強魔槍「デュナス」を持っている。“デジタルワールド”ではその姿を見た者は皆無に等しいが、全身に煌びやかな装飾を施した甲冑に、紋章を付した荘厳な姿から“デジタルワールド”では“幻想の戦士”と呼ばれているデジモンである。必殺技は「デュナス」より放つ『レイジ・オブ・ワイバーン』と、『ファイナル・クレスト』。
次回、『エピローグ』