2015/8/1 PM15:00
「……はぁ」
あれから数時間、ミユキちゃんの力を使ってこの世界に戻ってきて、タイトを探したけど、2時間かかってもタイトの姿は見つからなかった。
『悪い、迎えが来たみたいだ』
そう言って、巨大な腕に掴まれて、タイトはどこかに消えてった。すぐに私達も追いかけたけど、見つからなかった。
「……タイトはどこに行ったんだろう?」
「……知らんわ、そんなん」
私達は林間学校のキャンプ場所である校舎を目指して、山道を歩いている途中だ。
「あれからチコモン達はどう?」
「ガブモン達はデジヴァイスの中に吸い込まれた後、中で個人のスペースができたみたいだ……神城製のデジヴァイスのはずだが、……これはいったいどういうことなんだ?」
「……タイトくん」
いろんなことが一度に起きて、
(……こんなときに、タイトがいてくれたら)
タイトがいてくれたら、どんなに楽か……、そう思っていたそんなとき、山道が抜けて、森じゃない道路が見え始める。
「みなさん、もう山を出ます。それぞれの場所へーーーーっ!?」
ミユキちゃんの声が聞こえーーーーえっ!?
「おい、ルビーっ!!!」/「ーーーー寿っ!!!」
「妹尾くん?」/「平田くんかっ!?」
「いったいどこに行ってたんだよっ!?」
「こっちは探してたんだぞっ!!!」
二人は顔を真っ赤にして怒り始める。
(……ああ、そっか)
ひさしぶりに、タイトやここにいる人間以外の『人間』に会えた。そのことが無性に嬉しくなった。
「……ごめん」
「すまんかった」
私達は謝って、
「
「ーーーーえっ!?」/「……は?」
『……何言ってんだよ。マナトは少し前に連絡がきて、『カミシロの仕事で戻ってこれなくなった』って連絡がきたぞ』
『……連絡では今、九州の方にいるらしいですね。飛行機もヘリコプターもなしにどうやって行ったんだか……カミシロ専用の秘密ルートがあるのでしょうか?』
二人の言ってることがわかんない。
(…………マナト、が?)
(九州に?)
ケモノガミの世界から戻って数時間。
私達のデジモンはこの世界にいられないのに、どうやって新幹線も空港もない場所から、九州まで飛んだの?
しかも、なんで私達じゃなくて、目の前の2人に……、
『それに、それを伝えにきたのは……あっ!?』
坊主頭のの妹尾君の頭が光る。
その光は、目線の先にいる女性に焦点が当たって……、
『あっらぁ〜〜、貴方達ねぇ……マナトちゃんの言ってたのは』
『『────っ!?』』
…………、今、この人『マナトちゃん』って言った!?
『マナトちゃんから聞いているわよ。貴方達のおかげで、『行方不明者が見つかった』ってぇ〜〜』
『リエお姉様っ!?』/『お姉様がなんでこんなところにっ!?』
横にいる
・『カミシロ』
カミシロ・コンポレーション 社長健在 政府主導のもと、EDEN計画が始まる。岸辺リエに注意 社長に俺と同年代の兄妹がいる
・岸辺リエ
性格最悪の女 化け物 社長を殺す
私は記憶のそこにあったタイトの資料のことを思い出す。
(この人があのっ!?)
(岸部リエ!?)
緑の髪にオレンジ色の派手なスーツ、二十代後半ぐらいの見た目で、グラマラスな体つき、歳に似合わない化粧の濃い女性。
『こんな山にどうしてっ!?』
『そうですよ、校舎で待ってていただければ、いつでも連絡をしたというのにっ!?』
目の前で興奮する目を血走らせた
((というか、この2人……))
女関連であれだけタイトと一緒に痛い目を見たと言うのに、なんでこんなに発情し────、
『
────その表情を見たとき背筋が凍った。
芸能界に少なからず関わってきた私にはわかる。
この女……
(年齢考えないんか、このオバハン?)
横からそんな声が聞こえてくる。
全身をめぐる危険信号、ケモノガミの世界で身についた警戒本能が全力で目の前の『異物』にアラームを鳴らしてくる。
(だめ、みな────
『────ん?』
(────ッ!?)
「お・い・た・は・だ・め・よ・♡」
(────っ!?)
岸部リエは言葉だけで、みなみに注意を行う。
「はぁぁあっ!?」
(エッロッ!?)
バカ2人は何を言っているかすら気づいてない。……むしろ、この場にいるあの世界を経験してない人達はわからないと思う……ただ、
(気づかれとるっ!?)
みなみや私に気づくように、それもバカ2人に見られていても問題ない……そう言うように、私達の動きを止めた。
『マナトちゃんからね。貴方達のお願いを聞いてほしいって、お願いされちゃったの』
一歩、
『みなみちゃんはこっちにいらっしゃい。話をつけてあげるわ』
二歩、
『ルビーちゃんの方は、お・う・え・ん……してるわよっ、がんばってねぇ♡』
三歩進む頃には、私は地面に座り込んでいた。
圧倒的に、『存在のスペックが違う』……ピエモンやファンロンモンよりも、私にとって遥かに危険な存在が目の前に立って、……『
あの後、みなみは岸部リエに連れていかれ、林間学校も終了した。先生にはものすごく怒られる……かと思ったけど、注意されるだけだった。
理由は、……きっと、岸部リエが何かしたんだろう。
怒るに怒れないような先生達の顔がなんとなくだけど、……ようやく本物の学校の先生なんだなってそう思えた。
その後、すぐにバスに乗って家まで行って……それで、家族で話をしていた。
前世の話はしない。
ただ、ケモノガミと名乗るデジモン達と戦って、『主』という悪い奴をやっつけてきた……そして、
『……って、ことがあってね』
『……タイト、戻ってこなかったけど』
『タイトを連れ戻す手掛かりは掴めたって話か』
『……にしても、『ルビーをアイドルに』……か』
おじさんが悩む。
『難しいの?』
『私の知り合いをあたってみるのはどうかな?』
私は聞く。
ママがアイドルをやってたし、2世芸能人は今までたくさん芸能界で見てきた。アクアだって、今は芸能界を休止してるけど、『2世芸能人』のうちの1人だ。
(なんで、おじさんは悩んでるんだろう?)
おじさんは私の質問とママの言葉におじさんは頭を悩ませる。
『駄目だろ……、お前のアイドル時代の悪評は業界……特に、仕事を共にする職場の連中には警戒されている』
『社長の言うとおり、『星野アイの娘がアイドルデビュー』なんてことになったら……、誰が邪魔してくるかわからないわ』
『……あはは』
おじさんとミヤコさんに怒られ、ママは笑うしかない。
(……そっか)
ママはアイドル『アイ』の名前に泥を塗ったんだ。
日本一と名高い最強アイドルB小町の『アイ』。
その名前に泥を塗り、アイドル業界に唾を吐き、それでも芸能界に居続け、成功を収め続けた。
そんな女の娘が、『アイドル』なんてやれるわけないじゃん。
芸能界、特に『アイドル』業界では恨みを買いまくっている。だけど、才能とネームバリューとファンの後押しで、芸能界長生きし続ける『化け物』……それが、今の女優『星野アイ』。
『……ん?』
そんな化け物が目の前にいる。
私が『アイドル』になるには、全盛期のこの女に勝たなくちゃいけない。途方もない壁が目の前にあった。
『正直に言えば、こんなところでつまずいてなんていられない。むしろ、難なく、メンバーを集められないと話にならないはずだ……だがな』
この女の娘に、この女の『会社』に、果たして『アイドルグループ』なんてできるのだろうか?
『…………』
『…………』
『…………』
『……何かな?』
あはは、と困ったように笑う女。
(((……無理だっ!!!)))
えっ、全盛期のこの人に勝たなきゃいけないの!?
歳不相応に笑って誤魔化す美女……っ、いや世界最高の美少女を相手に勝って、アイドルとして完成しなきゃいけないのっ!?
むり、絶対に無理っ!!!
(どうするっ、デジチューバーならいけるっ!? ……でも、それはアイドルじゃねえっ!!!)
(ムリッ、この女優に勝てる女なんているのっ!?)
(私、タイトに無茶振りされてるっ!?)
その場にいる全員が諦めたそのときだった。
『
金髪の美少年が階段から降りてきていた。
『『『────アクアッ!?』』』
『お兄ちゃん?』
最近、引きこもりがちだったお兄ちゃんが、階段から降りて来た。
『こっちも、……用件は済んだ。アイが、タイトを連れ戻したいって言うのであれば、芸能界の復帰もしよう』
覚悟を決めたような表情で、何か機械を片付けるアクア────っ!?
(……あれって、タイトが『……ギリ違法じゃない』って言ってたデジヴァイス関連の部品だったような?)
『────ほんとっ!?』
『アクア本当にいいのかよっ!?』
(ママとおじさん、ミヤコさんが喜んでるから、今話すことじゃない……か)
『一人目星がついている。そいつにツテを……』
アクアは今、芸能界で働いている。
ええっと、よくアクアとつるんでた重曹を舐める天才子役の……あの子に役をもらったって話で……、ママ達はいつもどおり仕事をしていた。
そして、私は今、
2015年 8月3日
「「……どうしてこうなった!?」」
EDENの郊外、クーロンの『ガラクタ公園』にて、一人の少女と1体のデジモンが頭を抱えていた。
「デュナスモンに進化できないどころか、ブイドラモンに神できなくなってるっ!?」
「一昨日、一昨日までは進化できたんだ。本当なんだっ!!!」
(角張った形から、『EDEN』に入った途端に、変なケータイみたいな形になってるし……)
訳がわからず、笑うしかない。
「……あれは、何? 夢、……あはは?」
「……ルビーっ!?」
そうだ、夢に違いない。
「あんなにがんばったのに、あんなに戦ったのに、全部……ぜんぶ、なくなっちゃったよぉ────っ!!!」
ケモノガミの世界で戦った経験が全部無駄になった。
戦って、戦って、戦って……辛い思いもしたのに、全部全部なくなってしまった……夢だ、夢だよこれは。
「ルビーが大変なことに、タイト、……戻ってきてくれっ!!!」
「タイト、カムバッ────クッ!!!」
その日以来、ガラクタ公園の中心で、頭のおかしな金髪の少女と蒼色のキャラクターが叫んでいると、『クーロン』の七不思議に追加されるのであった。
────────────────────────
2015年 8月31日 PM10:00
「……くそったれっ!!!」
鏡を割る音が部屋の中に響き渡る。
「……ミナミ」
ギルモンが心配する声が聞こえてくる。
(……ウチはあの女を舐めとった)
8月1日のあの日、
岸部リエに連れられて、カミシロコンポレーションへとやってきたあの日、その日の夜中に残った夏休みの宿題を終わらせられた。
そんなのはどうでもいい。
ただ、その日からはきついことの連続やった。休憩なんてあらへん、仕事以外のあらゆることなんて気にする余裕はない。
ただ、岸部リエの『暇』ができる時間の為に、自身の生活を切り詰める毎日。サバイバル生活で培った精神的な体力がなければ……きっと、耐えられなかったやろう。それぐらい時間に追われ続けとる。
(……それに)
ギルモンの奥の手まで無理矢理引き出された。
『……嘘、やろ?』
カオスデュークモンがたった1体のデジモンに倒されていた。しかも、相手はほとんど無傷……むしろ、一撃入れられたのが運がよかったまである。
『ほう、ロゼモン*1にダメージを与えるか』
口調の変わった岸部リエが立っている。
『我が騎士の1体に傷をつけるとは、……タイトが見込んだことはある……だが』
『
『技術が伴わない力なんて邪道。……才能だけで勝ってきたようだな、貴様らは』
『夏休みのうちに戦闘技術も叩き込む。寝る時間以外、まともに休めると思うな』
あの女に言われたとおりやった。
カオスデュークモンの攻撃は全て見切られ、ロトスモンの攻撃は全て当たる。そんな実力差を見せつけられ、ウチのプライドはバキボキにへし折られた。
『…………最後に』
キャピっと、腕だけでぶりっ子ポーズをとり、
『そんな実力じゃぁ、マナトくんのことはぁ、任せられないぞ♡』
最後に言われたその一言で、ウチの残ったプライドは粉々に砕け散った。
それから、連日連夜仕事に修行、休みなんかありはしない。タイトくん達の抜けた穴を塞ぐように仕事が割り振られる。
そうして、いつのまにか休みはなくなり、夏休み最終日の夜、…………ウチは、
「……マナトくんはいったいどうなったんや?」
「わかんない。九州の……『タイトが行ってた山の付近にとても大きな土砂崩れが起きた』って、リエが言ってた。……あのタイトが死ぬとはギルモン、思わないけど……」
「あれから音沙汰もないんやな」
「…………うん」
マナトくんのことを考えとった。
あの日以降、マナトくんの姿を、連絡を受け取ったものは誰一人おらへん。
カミシロのお嬢様もマナトくんが戻ってきとらんことを心配しとる。カミシロ以外からも、そのことの連絡がおさまらへん。
ただ、岸部リエと末堂アケミだけが、その居場所を知っとると喧伝しとる。
「行方不明だと知っとるのは一部の人間だけや。岸部さんの言うとおりなら、明日からは忙しゅうなる……なるのはわかっとるんやけど────
ただ、マナトくんの安否だけは知りたかっ────
「『
そのとき、『どこかで聞いたことのある』誰かの口調が、ウチとギルモンしかいないこの部屋に響き渡る。
「────っ!?」
……というより、
「ミナミ、いったい何をっ!?」
「ウチの口が勝手にしゃべって……、────っ!?」
「ねえ、鏡に写ったミナミが笑ってるっ!?」
ひび割れた鏡のウチは笑っていて、焦っている『今』のウチの表情とは似ても似つかない、気持ち悪い笑い方をしとる。
「いったい
ウチは鏡に向かって言う。
「『
ウチの口からそんな答えが飛び出して……一月?
「……っ!?」/「……まさか!?」
たった一人、この口調の『存在』を思い出した。
「「
ウチの大好きなマナトくんの体を乗っ取った存在。
「『そうだね、『イグドラシル』だよ』」
鏡に映ったウチは……いいや、イグドラシルは嗤いながら、肯定する。
(いったい、何が目的でっ!?)
あのにっくきイグドラシルが、なんでウチの体を乗っ取ってるんやっ!?
「『流石に、『彼女』にバレるのはまずいからね。『タイトよりも都合のいい』君の体に乗り移らせてもらったよ』」
────彼女?
「────お前っ!?」
「落ち着きぃ、ギルモン」
「────ミナミッ!?」
イグドラシルは今意味深な言葉を言うた。
『彼女』って、誰のことや?
少なくとも体の寄生先であるウチやない。
ルビーか?
ミユキちゃんか?
それとも、マナトくんの昔の知り合い?
……わからへん、考えたところで、ウチには関係あらへんしな……ただ、
「イグドラシルは何か思惑があって、ウチの体に乗り移ったんやろ? ……やったら、好き勝手やるはずがないんや。むしろ、『彼女』って奴を警戒しとるみたいやから、ウチらを思い通りに操ることはできないんや」
「『……へえ』」
ウチの体の中におるってことは、ウチの考えとることは丸聞こえの可能性が高い。やから、正直言って、イグドラシルに対策を考えるだけ無駄なんや。
「なんで、ウチの体に乗り移ったんや?」
やから、嘘をつかれても正面切って話したほうが得策……むしろ、
(岸部リエへの『切り札』になる)
そう考えたほうが得やろ?
なあ、イグドラシル。
「『……ふふ、そうだね』」
鏡の中のウチは笑って顎に手を当てる。
「『…………』」
少しだけ考え込むような動作をした後、ニヤリと頬が吊り上がった。
「『────うん、おもしろいことを思いついた!』」
「おもろいこと?」
ギルモンが警戒しながら、鏡を見る。
「『契約しよう。寿みなみ』」
「……契約?」
鏡の先で手を伸ばす
「『タイトの『今』を教える代わりに、君の体に留まらせてくれ』」
「────っ!?」
今のウチにとって一番知りたいことを持ちかけてきた。
「だめだっ、ミナミッ!!!」
ギルモンの声が遠くに聞こえる。
「ホンマに、ホンマにマナトくんのことを知ることができるんかっ!?」
「『アプリドラ────、僕が作ったデジヴァイス越しに情報が送られてくるからね。ある程度のことはわかるんだよ』」
なら、ウチの知りたいこと……ううん、嘘でもそれでも知ることができるっ!?
イグドラシルは『星野タイト』の味方……つまり、ウチを手駒にしても問題ないと考えたんやろ?
やったら、この話は乗るべきやっ!!!
「ミナミっ!!!」
「ギルモン?」
ギルモンがウチの手を引っ張る。
「そんな言葉に乗っちゃいけない。ミナミも知ってるはず……、タイトのこといろいろ関わってるのこいつのせい、そんな簡単に決めていいことじゃない!」
ギルモンの言いたいこともわかる。
「────でもっ!?」
ウチはマナトくんの安否が知りたいんやっ!!!
「『……なら、『タイトと
「────ホンマかっ!?」
「……ミナミッ!?」
悪魔のような誘い。
それでも、イグドラシルとの契約はウチにとってかなり有利な方へと進んどる。これは絶対に受けるべきやっ!!!
「『契約はどうするかな?』」
ウチの思考を読むように間髪入れずにイグドラシルは聞いてくる。
「受けちゃ────
「契約するでっ!!!」
「────っ」
「『契約成立だね』」
ここに、少女と神の『契約』はなされた。それが、どのように影響するかは『神』でさえわかることはなかった。
草花の女王と呼ばれる薔薇の様な姿をした妖精型デジモン。美しい大人の女性の姿をしており、常に美しくあることを願っている。性格は多少、自意識過剰なところもあるが、その実力は他の究極体とも引けを取らないほどである。また、胸元には愛と美のシンボルが刻まれた宝玉「ティファレト」を身につけている。このティファレトを持つものは、永遠の美しさと強さを約束されると言われている。必殺技は電気を帯びた棘の鞭でどんなに狂暴なデジモンでも手なずけてしまう『ソーンウィップ』。この技を受けたものは、身も心もロゼモンの虜になってしまうと言われている。また、鞭の切っ先で敵を仕留める『ローゼスレイピア』。そして、ロゼモンの究極にして禁断の誘惑『フォービドゥンテンプテイション』を受けたデジモンは、無数のバラの花に包まれて美しくデータ破壊される。
2015年 9月15日
夏休みが終わって、二週間ほど経った火曜日。
私の方は順調にことが進んでいる。
アクアの協力のおかげで、フリーランスの『有馬かな』が壱護プロに所属、アイドルになってくれた。
うちの事務所に所属してる『ピヨえん』のおかげで、私達はアイドル候補生から新生『B小町』としてアイドル活動することができるようになった。
タイトとのあの旅のおかげで、
夏休みが終わったのに、タイトはまだ帰ってきてない。
カミシロの仕事を手伝ってる……って、みなみは言ってたけど、当のみなみもカミシロの仕事の勉強で忙しいみたい。
学校の一部……というより、お金持ちの子供のグループでは、『末堂マナト』が社交界に現れなくなったことで、行方不明になった/死んだ……なんてうわさが流行ってる……先日、タイトの婚約者候補だった2人の少女との婚約破棄が決まったという話が証拠だって、有力者のお坊ちゃんが話していたって、私の友達が言ってた。
「……マナトの野郎、まだ戻ってこないつもりかよ」
「次の19日の入学説明会……どうするつもりなんでしょう?」
平田くんも妹尾くんも、タイトのことを心配してる。
カツン、カツン、カツン、カツン。
靴音が鳴る。
靴音が鳴るたびに、ざわざわと生徒達の騒ぐ声が聞こえてくる。
AM8時30分……もうそろそろ、先生がやってくる時間だだから、先生が廊下を歩いているのが見えて、急いで教室に戻っているのかな……と、考えていた。
ガラガラガラ、と扉が開くまでは、
「ーーーーえっ!?」
「……は?」
「マジか!?」
「
タイトがいた。
タイトが帰ってきた。
扉を閉めるタイト、その姿を見て走りーーーー
(……あれ?)