「……これが、『ブレイブスナッチャー』」
デジタルワールドの英雄達の力によって、バグラモンの右腕が蘇る。
「その力で奴を……、クォーツモン*1を倒してきてくれ」
強大な力を持つ武器が、時計屋のお爺さんとクロックモン手によって完成し、リョーマの手の中で復活する……、だけど、
「…………」
「……ん?」
その武器を、俺の後継者として、世界を救うことをあれほど望んでいたリョーマの雰囲気がおかしい。
「……リョーマ?」
「…………っ」
「
……は?
「『
「……えっ?」
何が困るのだろう?
そう思っていたその時だった。
「ーーーー危ねぇっっ!!!」
オメガシャウトモン*2が俺の前に飛び出す。
(……あっ!?)
リョーマの腕が振り下ろされるのが見える。その腕の中にあるのは、武器となった『ブレイブスナッチャー』。魔王バグラモンの腕が、オメガシャウトモンに振り下ろされる。
(間に合わない)
オメガシャウトモンが俺を庇ってくれたのはわかる。だけど、もう、オメガシャウトモンも俺も、『ブレイブスナッチャー』からは逃れられない。
「ーーーータイキっ!!!」
「ーーーータイキさんっ!!!」
「タイキッ!!!」
「タイキっ!?」
みんなの声が聞こえてくる。
だけど、もう顔の近くまで、『ブレイブスナッチャー』が近づいて来て……、
「
たった一言、たった一言だけそんな声が聞こえてきた。
(…………止まった?)
誰かの手が、『ブレイブスナッチャー』を掴んでいる。オメガシャウトモンの体にも傷ひとつない。
(……いったい、誰が?)
『ブレイブスナッチャー』を掴む『華奢』な右手の先を見る。
「ーーーーなっ!?」
俺やタギル、ユウ、……もしかしたら、ネネよりも小さな『少女』が、『ブレイブスナッチャー』を掴んでいる。
「……よかった、間に合った」
振り返った『少女』は、傷ひとつない俺の体を見て、花が咲くような笑顔を見せた。
(ーーーーっ!?)
少しだけ、胸が高鳴るのを感じる。俺よりも小さく、年齢が小学生ぐらいの少女に胸が高鳴る。それぐらい綺麗な笑顔だった。
「……君は、誰だ?」
俺の口から出たのは、ただそれだけ……それだけの言葉でしかない。それでも、
「ひさしぶりですね、タイキさん」
彼女は笑って、『ブレイブスナッチャー』を掴んでいた。
データを吸収し続け、力を増幅していく超巨大なデジモン。体の大半にあたる大邪球は、吸収したデータをクオーツモンのパワー源“ギュプト粒子”へと生成する融合炉となっている。クオーツモンの本体は最上部にあり大邪球と離れて行動もでき、さらにその姿を変化させることも可能だ。全世界のデータを欲っしており、デジモンも丸ごと飲み込み吸収する。 必殺技は、大邪球内で生成したギュプト粒子を全包囲に放射する『ギュプト粒子砲』、少しでも触れれば全身に拡がりデータを残さず消し去ってしまう。また触手で掴み敵体内にギュプト粒子を流し込む『ルーインブラスト』で、敵は内部爆発を引き起こす。
オメガシャウトモンは湧き上がる熱いソウルを解き放ったシャウトモンにオメガモンが伝説の「進化」を与え手に入れた姿だ。激しい情熱に加え、オメガモンから授かった力、オメガインフォースを全身に纏ったことで黄金に輝き、キレのあるシャープな体付きとなっている。その体のきらめきと鋭さから敵はオメガシャウトモンの姿を追えず光の残像として目撃することとなる。胸から溢れ出る友情の情熱を火力に変えた弾丸を猛射する「ヘヴィメタルバルカン」は攻撃だけではなく、敵を寄せ付けない鉄壁の弾幕となって仲間を護る。頭のV字から正義への情熱が迸り太陽よりも輝かせ突撃し敵を一掃する「ビクトライズ・バンキング」。勇気の情熱が炎となって拳にほとばしる「ハードロックダマシー」は近距離時で敵を殴り、遠距離時は炎を飛ばし状況に応じた攻撃ができる。足に闘志の情熱を込めることで刃となり「ビートスラッシュ」で敵を蹴り裂く。全身にオメガインフォースの力を引き出したオーラで包み凝縮して敵に撃ち放つ「オメガ・ザ・フュージョン」は、その輝かしさの前に見た者の士気すら消し飛ばしてしまう。
だイ!→話 前編 最終決戦! 勇気の力が振るわれるとき
俺は目の前の光景から呆気に取られている。
「ぐぐぐぐぐっっ!!!」
「ほら、どうした。力が入ってないぞ。もっと力を入れろよ」
「ぐっ、ぐぎぎぎぎぃっ!!!」
リョーマが『ブレイブスナッチャー』を全力で振り下ろそうとしてるが、『少年』は細い腕で軽々と掴んで、抑えている……うん、
「……あいつはっ!?」
「まさか、あのデジソウルはっ!?」
『一週間前』に会った少年が、夜空のような綺麗な光を腕から出しながら笑っているのが、変なふうに見えて……というかっ!?
「どんなに強力な武器であろうと、『武器を扱う者』が弱ければ意味がないんだ……っよっ、とっ!!!」
「────っ!?」
「これは返してもらう。お前が持っていていいもんじゃない」
軽々とリョーマから取るなよっ!!!
「貴様は、何者だっ!?」
アスタモン*1が少年に向かって叫ぶ。ああ、そうだ……そういえば、こいつは正体を言ってなかった。
タイキさんとオメガシャウトモンが傷ついてなくて、安心なんかしてる場合じゃなかった!?
「────『マナト』っ!!!」/「────『タイト』かっ!?」
早くマナトに『ブレイブスナッチャー』を……ん?
「タイト?」
「マナト?」
マサル……って、名乗ってた人だよな? マサルと声が被った。というか、タイトって何?
「一週間ぶりだな、タギル。ひさしぶりですね、マサルさん」
マナトは笑顔でこっちを見る……うん、全身がギンギラギンに光ってるのは、……あれは、その……マナトとマサルとおんなじ力を使ってるのか?
「それとアスタモンで、いいのかな? 一度入ったから気づかれてると思ったんだけどな。案外、抜けているのか?」
「貴様のような人間、デジクォーツに招き入れた覚えはないっ!!!」
……アスタモンに声をかけて、アスタモンもなんか変なこと言ってるし……状況がっ、状況が追いつかないっ!?
「悪いけどさ、こんな『ぬるい』空間……入れて当然なんだっ、よっ!」
「────ぐはっ!?」
アスタモンを蹴ったっ!?
「────っ、アスタモンっ!?」
「……早く目を覚ませ、ドアホ」
「────っぅあっ!?」
リョーマを思いっきり殴ったっ!?
「……なっ!?」
早くリョーマを助けないと……というか、タイキさん。止まってないで、早く間に入ってくれよっ!?
「マナト、お前いったい何やってんだよ。リョーマもなんでこんなことをしたんだよっ!!!」
「タギル、悪いんだけどさ。こいつを預かっててくれ」
俺に向かってお腹を抑えたリョーマの背中を押す。
「……うわっ……って?」
なんだか様子が変だ。
うすら笑いが消えて、どこか放心するようなリョーマ。タイキさんに攻撃する前の雰囲気に戻ってるような気がする。
「……タギル、僕は何を?」
「お前は……タイキさんを襲ったんだよ」
「……襲った?」
リョーマの顔があっという間に真っ青に染まった。
「────わからないっ、僕は何をやったんだっ!?」
……本当にさっきのことがわからないみたいだ。
(タギル?)
(……これって?)
元に戻っているのか?
さっき、『ブレイブスナッチャー』をかけて戦った最上リョーマに戻ってる……そんな気がするんだけど……?
それが、さらに頭の中に引っかか────、
「
マナトからの言葉で、引っかかったものが取れた……ってか!?
「────洗脳ってっ、マナトぉっ!?」
いつのまにかアスタモンを踏みつけて、身動きが取れないように拘束するマナト。
「
……正体?
「────っ!?」
マナトの言葉を聞いて、アスタモンが必死になって身を捩り始める。だけど、マナトの手はアスタモンの顔の獣のマスクに手がかかっていて、
「さっさと、姿を表せ」
「────っ、やめろっ!!!」
ブチブチブチ、ブチィッ!!!
無理矢理引き剥がした────っ!?
「……なに、あれ?」
アスタモンのマスクの下から、たくさんのデジモンの顔が出てきてって、────っ!?
「アスタモンのマスクの下から、化け物がっ!?」
最後には白い仮面の化け物に変わった!?
「
「…………」
クォーツモン……って、えっ!?
「クォーツモンだとっ!?」
「クォーツモンっていうのは、あの巨大なデジモンなんじゃねえのかよっ!?」
あの白いデジモンがクォーツモンだってっ、嘘だろ!?
「貴様、何者だ」
「……何者って、『この世界』にはだいぶ痕跡を残しているはずなんだけど……まあ、いいか」
「死ね」
「────ガハッ!?」
クォーツモンの頭がマナトに蹴り飛ばさ……、体からちぎれたっ!?
「────ッ!?」
グロテスクにちぎれたクォーツモン。その体は緑色のデータの塵に変わって消えてった。
「クォーツモンは倒したし……、キリハ、ネネ、ひさしぶり、元気にしてた?」
「……お前、本当に」/「……っ、ほんとに」
……って、ネネさんやキリハさんと知り合いなのかよっ!?
そういえばタイキさんを助けた時も、『ひさしぶり』って言ってたし、なんならユウとも知り合い────、
「ああ、俺だ────って、うわっ!?」
「ひさしぶりだな、タイトっ! でかくなったじゃねえかっ!!!」
「マサルさんもひさしぶりですね。元気に……っ、あっ!?」
マサルがマナトの頭を力いっぱい撫で始める。
でっかくなったって言ってたことから、相当前に会ったことのある人なのか……というか、
「「「……タイト?」」」
「……あちゃー」
タイキさんが頭を押さえている。タイキさんはマサルがマナトのことを『タイト』って呼んでることを知ってるのか……あれ、でも、なんでキリハさんとネネさんは知らないんだ?
「……てか、『マナト』って呼ばれてたけど、お前の名前は『星野タイト』だよなっ!? なんで、そんな名前で……むぐっ!?」
「黙っててください。『偽名』を名乗ってることぐらい察してくださいよ。ただでさえ、男性にはひさしぶりに呼ばれたんですから」
偽名ッ!?
「……マナトって名前、偽名だったのかよっ!?」
俺はマナトに詰め寄る。
マナトは困ったように頬をかいている。後ろにいるキリハさんとネネさんの顔を見ろ。なんか驚いた顔して固まってるんだぞっ!?
名前ぐらい正直に言った方がいいに決まってるだろっ!!!
「必要だから名乗ってただけだ……それに」
恥ずかしそうに、言うのを躊躇って……うん、ちょっとだけドキッと胸がなるようなことをするなよ。男だって忘れ、男だよな?
いや、そんなことはどうでもいい。今は────
「『
本名を聞かないと……?
「……たーふぇ?」
「……あいと?」
ターフェアイト?
それが名前?
「……ぷっ、くくくっ!?」
「ふふふ」
……あの、キリハさん?
ネネさん?
「「あははははははははははははは────っ!!!」」
2人が大きな声で笑い出した。
「……だから言いたくなかったのに」
……それは言いたくないよな。
「なんだ、その名前っ!?」
「恥ずかしくて言いたくなかったのっ!?」
2人ともマナ……タイトの偽名について聞いてるけど、それ以上にマ……タイトの名前を笑っている。後ろにいるメタルグレイモンやスパロウモンも同じだ。
なんだか、偽名を話したくなる気持ちがわかってしまった。かわいそうだろ。
「俺の母親は、今の俺達とほぼ同じ年齢で
タイトの母さん、アグレッシブ……だなぁ……って、そうじゃないっ!?
「……『ルビー』はいいけど」
「『アクアマリン』って、……うわぁ」
「……ネーミングセンスがないって話じゃないだろ」
「……でも、恥ずかしくて名乗りたくないって……ぷっ」
「気持ちはわかるけどな……、ふっ!?」
「「「あはははははははははははは────っっ!!!」」」
今度は他の人達まで笑い出す始末……さすがに、それは酷いだろ。
「……っ、なんていうか」
「お前も苦労してるんだな」
「太一さんも大輔さんもやめてください。惨めになります」
八神太一と本宮大輔が慰め……、
「「────ッ!?」」
タイトこの人達のこと知ってるのかっ!?
「太一さんのこと知ってるのっ!?」
「俺はここにいる全員のことを知っていますよ。松田タカトさん」
「────っ!?」
黄色のゴーグルの……そうだ、松田タカトさんだ……って、なんで俺よりも詳しく知ってんだ!?
「少しやりかえしであげましょうか」
「……えっ!?」
隣でボソリとタイトが恐ろしい呟く。
「ちょっと待」
タイトの手によって、クロスロー……いや、あれは、そうっ、『アプリドライブ』だ! いや、そうじゃなくて、アプリドライブが起動して……、
「『勇気を翼にして、今すぐ飛び立とうよ。どんな時だって、君を信じてる』」
「────ッ!?」
「この声って」
「……まさか」
たしか、この声はこの人の……、八神太一の声だっ!?
「ちょっと待て、俺はこんな歌、歌ってないっ!?」
当の本人は歌ってないって言ってるけど、もうサビまで流れ出している。
「……太一の声なのに、太一の歌が上手……だとっ!?」
「太一、そんなことやってたの?」
……あれ、オメガモン*2の反応よりも、メタルガルルモンを連れてきた相方のヤマトさんの方が、当たりが強い。
「────誰が俺の歌が下手だってっ!?」
「事実だろうがっ!!!」
その言葉に反応して、2人は喧嘩を始め────、
「
また、アプリドライブが動き出す。
「『
「────ッ!?」
情けない叫びが、大声で聞こえてくる。その声はさっき太一さんを馬鹿にしてた……、
「……今のって?」
「ちょっと若いけど、ヤマトさん?」
石田ヤマトさんの声だ。
「いや、違うんだ! あのときは必死で、探し回らなくちゃいけなくて……っ!?」
どうやら言った覚えがあるらしい。
「……なんだ、ヤマトには『言った覚え』があるんだな」
「────太一っ!?」
太一さんに今度は煽り返される。だけど、俺以外の周囲は気づいてなかった。
「
「『L・O・V・E、LOVLY、ヤマトッ!!!』」
響き渡る女性の嬌声。
「────なんで知ってんだよっ!?」
「────ひえっ!?」
崩れ落ちる2人の少年。
本宮大輔さんと先程情けない声をあげていた石田ヤマトさんの2人である。
「これ、大輔のお姉さんだよな?」
「ああ、そうだ。なんで姉貴の……その、なんていうか、なんで姉貴のこと知ってんだよ!? ……それに、やめてくれっ! ヤマトさんに対する姉貴の言動は俺にとって黒歴史なんだよっ!!!」
インペリアルドラモン*3が大輔さんに聞く。
「……いない、アイツはいないんだっ!?」
「ヤマト、大丈夫……あの子はここには来てないよ」
「そうだ、そうだよなぁ……でもっ!?」
二連続で精神攻撃されて、ヤマトさんメンタルがやられているっ!?
「2人とも惑わされないでくださいっ!!!」
今度は大輔さんの相方が……あっ!?
「
「『やれっ、キメラモンっ!!!』」
「『いいぞ、握りつぶせキメラモンッ!!!』」
「『僕はデジモンカイザーだぞっ!!!』」
「────がはっ!?」
「賢ちゃぁああああんっっ!?」
厨二臭いセリフと共に再び犠牲者が増える。
「……ねえ、この展開まさか?」
「『緊急事態SOSっと』」
「なんで、知ってるのっ!?」
「『ああっ、まずいっ────
「ちょっと止めてよっ!!!」
タカトさんがタイトを止めようとするけどタイトはなんなく避け続ける。そして、アプリドライブからタカトさんの声が聞こえ続ける。
「『SOSだけど、みんな全然大丈夫です』」
仲間の家族に連絡してるのか?
でも、仲間の声は1人だけ、────あっ、こいつ仲間が近くにいないのに、仲間のフリして家族に連絡入れてやがるっ!!!
「────うぐぐっ!?」
ついに転んでしまうタカトさん。
「……ギルモン、それ知らない」
パートナーのギルモンもいなかったのかよ。当時のこいつ何やってたんだ?
「……次」
今度は映像が映し出された……ん?
仲間が連れ去られていってるのに、2人は喧嘩を始めて────
「『拓也は料理センスないもんな』」
「『おい、輝ニ。人にそんなこと言うんだったら、もっとマシなもん作ってみろよ』」
「『作ってやろうじゃないか』」
「『おぅし、料理対決だっ!!!』」
「『ボコモン、ネーモン。どっちがうまいか審査してくれ!』」
もう食えないって言っている相手に、ハンバーガー対決の審判を任せやがったっ!?
「いや、あれは違うんだっ!?」
「俺達だって必死にハンバーガーを作ってたんだっ!!!」
「拓也兄ちゃん?」
「輝二、食べ物で遊んじゃいけないよ」
「「────ぐはっ!?」」
仲間に問い詰められ、2人は撃沈。どうやら、スサノオモンの中身の人達まで2人を煽り出す始末……おい、これって────
「俺はあんなことになりはしない……そうだよな、アグモン?」
「アニキはかっこいいからな。恥ずかしいことなんてしてなんかないはずだ!!!」
慢心するマサルとアグモン。
「これだったっけ?」
「『
不穏な言葉が響き渡る。
「『男の喧嘩は常に命がけ! 死ぬ事を恐れた時点でソイツは既に負けてるんだよ!!』」
普通に名言が流れ始めた。
「これは……アグモンと初めて会った時の、セリフ……だよな?」
「懐かしい……けど、どこがおかしいんだ? あのときのアニキはすっげえかっこよかったぜ?」
「……普通のセリフじゃない?」
アカリさんも普通だと言っている……だが、それ以上に嫌な予感がする。
「『なお、この言葉はデジソウルが使えないただの人間が、デジモンと戦ってる時に発したセリフである』」
アプリドライブからのアナウンスが追加された。
「こんの、化け物ッ!?」
アカリさんがマサルの頭を思いっきり叩いた。
「────化け物っ!?」
「アニキは化け物じゃねぇ!!!」
次々と増える犠牲者。特に、笑った人達は酷い目にあっている気がする。
「……まさか、俺達も」
「標的じゃないわよね?」
むしろ、あんた達が笑ったのが原因だと、俺は思います。
「そうだ、これだよ。これ」
再び映像が流れて……、変な歌が聞こえてくる。
「『はぁああ、だりいねぇ。いい子ちゃんのフリは疲れたっきゅよ』」
「きゅうううっっ!?」
映像のキュートモンがやさぐれている。
「……あれ、キュートモンだよな?」
「そうみたいだけど」
タイキさんの方を見ると、
「そうだ、キュートモンがやさぐれて……がはっ!?」
「ドルルモンっ!? キュートモン、そんなこと言ってないっきゅ!」
「……オレーグモンと初めてあったときのことかぁ、そんなこともあったなぁ」
「懐カシイ」
懐かしそうに笑ってる2人と、明らかにダメージを喰らってるドルルモン。それを介抱するキュートモン。オメガシャウトモンは耳と目を塞いで聞こえないようにしている。
「『ネネは怖いからここでおさらばさ。前から思ってたけど、髪型が変だし』」
スパロウモンがやさぐれ……本音だと俺は思った。
「私、怖くないし……変な髪型じゃないし……ただ、ちょっと大胆なだけだし」
「大丈夫だよ、ネネ。僕は今はそんなこと思ってないし、今の君は世界で人気のアイドルじゃないかっ!!!」
焦ってるのが余計に嘘っぽい。
「でも、アイドルになってもそんな髪型続けてるんだよなぁ」
タイトのこぼしたその言葉が、
「────ッ!?」
「ネネぇええええ────ッ!?」
ネネさんとスパロウモンを倒してしまった。
「キリハは……」
「────ッ!?」
次の標的はキリハさんらしい。
「特筆して言うことがないな。強いて言うなら影が薄い」
「────影が、薄い……うすい、うすいうすい……そうか」
「キリハァア────ッッ!?」
「影が薄い。そうだよな……だから、ネネに振られたんだ。タイキに好きな人もとられて……俺の人生っていったい」
キリハさんは体育座りで落ち込み始める。
「……うん、すっきりした」
「先輩達、あんなふうになってるけどな」
歌を歌ってとせがまれる者、虚空を見つめ笑ってる者、当時の言動が恥ずかしくて後悔する者、仲間に問い詰められる者、女は殴れないが、少女と怒鳴り合う者、その他諸々……英雄と呼ばれた人間達の死屍累々がそこに並べられていた。
「……ところで」
目を逸らしていたことを思い出す。
「
「────ひっ!?」
タイトの登場から、木の影に隠れ続けているユウに聞いてみる。
「ああ、そういえば」
タイトも身に覚えが────、
「
ものすごい怖い顔でユウを睨みつけた。
「────ふぎゃああああああっっ!?」
「ユウゥ────ッッ!?」
怯えて逃げ出すユウ。そして、
「……殺しって、えっ!?」
俺はタイトの言葉に動揺していた。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいっっ!!!」
「ユウ、大丈夫だよ。昔みたいなダメだった頃のユウじゃない。今のユウが話をすれば、きっとわかってくれる」
土下座して謝りながら、怯えるユウ。……こいつがこんなことをするとは思えないけど、
「────お前、ユウに何したんだよっ!?」
「こんなにこいつが怯えるなんてありえないぞっ!!!」
ユウの様子は明らかにおかしかった。俺とアレスタードラモンは怯えるユウを庇うようにタイトの前に出る。
「
…………んっ!?
「タイトがやられた?」
もしかして、タイトの方が被害者?
「こいつはデジタルワールドを支配していたバグラ軍に所属して、俺の体に十八箇所穴を開けたんだよ」
…………?
「じゅうはち、かしょ?」
「マジかよっ!?」
「おおマジだよ」
どうやってそんなに体に穴を開けられるんだっ!?
「やめて、命狙わないで、地面割れた。あはは、人間じゃない、あれは人間じゃないんだ……、化け物が殺しにくる。やだ、やだやだ……誰か助け、て?」
「ユウ、しっかりっ、ユウ? ……ユウゥウウ────ッッ!?」
ユウは怯えてやがる……けど、タイトの言ってることも信用できるんだよな。……んっ、アプリドライブとは違う、携帯電話か? そんなようなもののアルバムを俺達に見せてくる。
「これ見ろよ」
3人の少年少女とスパロウモンやグレイモン、サゴモンいろんなデジモンが載った写真を見せられる。というか、真ん中の夜空のような紫色の髪の少年は?
「……まさかっ!?」
「ネネの家で見た!?」
アレスタードラモンと顔を見合わせる。
なんか身長、違くね?
顔つきも違うし、近くにいるのはクダモンじゃない……それでも、なぜか、そう思った。だけど、雰囲気はそっくりで、
「そうだよ、俺だ」
真ん中にいる少年が星野タイトその人だった。
「当時はもっと男の子っぽい顔つきだったのに、今じゃこうだ」
女顔だけど男の子らしさもあった見た目が、今はもう完全に女の子に変わり果て、ボーイッシュだった雰囲気も美少女に変わっている。ああ、これは、どうしてこうなったって思うよな。
「どうしてそんなふうになったんだ?」
アレスタードラモンが聞く。
「デジタルワールド内で、身体中に穴を開けられたせいで肉体を構成する遺伝子が少なくなってな。その代わりに、別の遺伝子をぶちこんで、表面は血のつながった母親に似るように、肉体を改造したんだとさ」
ユウが体に穴を開けなきゃ、こんなことにはなってなかった……のか?
肉体改造までしないといけないなんて、どんだけ酷い目に遭わせたんだよこいつ。
「……だから、そんな女の子っぽい顔立ちなんだな」
「おかげで、俺の体は当時の年齢の8歳の頃から、いまだに成長していない。第二次性徴だってこないし、身長だって伸びない。それまでは肉体だって、順調に成長したってのに……っ!!!」
恨みの視線がユウに当たる。
「────はっ!? ごめんなさい、ごめんなさい、ゴメンナサイッッ!!!」
「ユウゥウウ────ッ!!!」
嘆くユウに、なんとか落ち着かせようとするダメモン。
(……なあ、アレスタードラモン?)
(わかってるぜ、タギル)
((流石にこれは擁護できねえ……))
謝り続けるユウに俺達は助けようとも思えなかった。
「これで、挨拶回りは終わったかな?」
すっきりした顔で笑うタイト。
「周りを死屍累々にしてどうするっ!!!」
「────あいてっ!?」
その頭が杖に思いっきり叩かれてしまう。そういえばいたな、おっちゃん。
「……貴方は、『時計屋』さんでいいのかな?」
「『今』は『時計屋』で良いぞ」
「おぬしを探す為に、結構時間かけたんじゃがな……結局見つからんかった」
「悪いんだけどさ、世界が違うんだよ。あんたが『コレ』を見てもわかんないように、さ」
「────っ、これはっ!?」
「『アプリドライブ』」
「ここより未来に生まれる『英雄』達が持っている『デジヴァイス』の代わりのアイテムだ……、ここにいる英雄は『工藤タイキ』よりも前に活躍した英雄達、……あんたは過去しか観測できないんだよ」
「……痛いところを突いてくれる」
「当然俺の『アプリドライブ』じゃ、『これ』は反応しないだろ?」
「たしかに、『ブレイブスナッチャー』は反応せんな。お前にも資格があるとは思えんがな」
「俺のは特別性の上、『星野タイト』はまだ世界を救ってないから……、資格なんてなくて当然だ……それに」
時計屋のおっさんとタイトの会話をボーッと買いたいけど、
((……わかんねえ))
わけわかんねえ話ばっかで、話についていけない。難しい話をしないでほしい。訳がわかんないんだけど……、
「
タイトに突然指を差される。
「────俺っ!?」
「タギルッ!?」
何の、なんの適任者の話っ!?
「……むむむ、じゃがな」
いや、待て……話の流れ的に、たぶん『ブレイブスナッチャー』の使う奴の話だよな……でも、それは、
「俺に勝ったリョーマじゃ駄目なのかよっ!? アスタモンに洗脳されてたとはいえ、あいつは俺に勝ってる。俺じゃなくて、あいつのほうが強いんだぞ!!!」
「アレは……、最上リョーマじゃだめだ」
アレって呼ばれ……リョーマ。
「…………」
「……アレって」
白い灰になってるっ!?
「『時計屋』さん、これはあんたの責任だ。あんたは『アスタモン』がどういうデジモンかって知っていたはずだ。それなのに、最上リョーマを信じ、明石タギルを信じなかったことが原因だ」
「……そう、じゃな」
アスタモン!?
たしかにアスタモンは強いデジモンだけど、それとこれとは話が違うだろっ!? まずは俺が一発言って、
「アスタモンがなんだって言うんだっ!!!」
せめて、2人でやれるように言って────
「『
やる?
「かつてこの世界を滅ぼそうとした『バグラモン』。その配下の『リリスモン』に工藤タイキの『ベルゼブモン』、……本宮大輔の世界でインペリアルドラモンを圧倒した『デーモン』に、神原拓也の世界で暗躍し続けた『ルーチェモン』。それらが属する『魔王型デジモン』の1体。それが『アスタモン』だ」
タイトの口から出る言葉。
バグラモン?
リリスモン、ベルゼブモン?
デーモン、ルーチェモン、アスタモン!?
「魔王型」
「デジモン」
ええっと、バグラモンはこの世界を滅ぼそうとした悪い奴ってのは、タイキさんから聞いているが……リリスモンにタイキさんの仲間のベルゼブモンまでっ!?
頭がこんがらがるっ!!!
「世界を滅ぼし、悪意に呑まれ、多くの犠牲と混沌を生み出す元凶達……それが、なぜそこにいる木っ端のガキの言うことなんか聞くんだろうな?」
「「……っ!?」」
たしかにっ!?
世界を滅ぼそうとしたことのある悪い奴が、世界を救ったことのあるタイキさんじゃなくて、ポッと出のただの子供に従って、そこらを歩いてたら、俺だって警戒するよっ!!!
「……アスタ、モン」
リョーマのこぼした後悔の声に、同情しそうになる、なるけど……、
それってしかたなくねえかな!?
しょうがないよ、リョーマの気持ちわかるしっ!!!
あのタイキさんの後を継げるのなら、俺だってアスタモンに従っちゃうかも……
(────タギル?)
(いや、違うんだよ、アレスタードラモン!)
アレスタードラモン。もしかして、今思ったことがバレたのか?
「『時計屋』さん、あんたはアスタモン……いや、クォーツモンのパートナーの言うことを信じすぎたんだ。あんたは初めから『白』だと確定している工藤タイキとその後輩である『明石タギル』、『天野ユウ』以外信じるべき人間はいなかったのを、余計な判断をして、取り返しのつかないことになるはずだった」
「……どうするべき、だと?」
「明石タギルが『ブレイブスナッチャー』で世界を救う……その為に、もう一度全力を尽くせ」
いや、だから、バレてないと思、うん────、
「────っ、俺ぇっ!?」
「────タギルッ!?」
2人でタイトを見る。
「……おかしいことを言ったかな?」
首を傾げる仕草がかわいい。
こいつは男、こいつは男なんだよ!!!
「結局、俺がやることになんのかよっ!?」
「そこまで啖呵切っといて、お前は何もしないのかよっ!?」
そう、俺が言いたいのはそこなんだよっ!
あんだけ派手に立ち回ってて、『ブレイブスナッチャー』を使うのは俺なのかよっ!?
あんたがやるべきことなんじゃないのか!?
「『
「「────っ!?」」
夕陽の中、一週間前のあの日のことを思い出す。
『なるんだろ、タイキさんみたいなスーパースターに?』
俺はその言葉にたしかに頷いた。そして、それは……
「そんなの決まってるだろ!」
「俺達こそが最強のハンターだってことを証明してやるっ!!!」
アレスタードラモンと一緒に『ブレイブスナッチャー』を受け取った。
「サポートは全力でしてやる。全力で倒しに行け」
タイトはそう言って笑っていた。
完全体でありながら、究極体を凌駕する力を持ち、悪魔デジモンの軍団を束ねるダークエリアの貴公子である。敵に対する残虐性と味方に対する慈愛を持ち合わせており、そのカリスマ性から従う悪魔デジモンはかなりの数に登ると見られる。自慢のマシンガン「オーロサルモン」から放たれる弾丸は意思をもっており、まさに「地獄の果て」まで敵を追尾する。必殺技は、「オーロサルモン」の弾丸を全て撃ち尽くす『ヘルファイア』と、自身の暗黒の気を貯めて放つキック『マーヴェリック』。
ウィルスバスターであるウォーグレイモン・メタルガルルモンが、善を望む人々の強い意志によって融合し誕生した“ロイヤルナイツ”の一員である聖騎士型デジモン。2体の特性を併せもつデジモンで、どんな状況下でも、その能力をいかんなく発揮することのできるマルチタイプの戦士である。ウォーグレイモンの形をした左腕には盾と剣が、そしてメタルガルルモンの形をした右腕には大砲やミサイルが装備されている。背中のマントは、敵の攻撃を避ける時や、飛行するときに背中から自動的に装着される。必殺技は、メタルガルルモンの形をした大砲から打ち出される絶対零度の冷気弾で敵を凍結させる『ガルルキャノン』。また、左腕には無敵の剣『グレイソード』が装備されている。
古代竜型デジモンのインペリアルドラモン:ドラゴンモードが全てのパワーを解放し、伝説の竜戦士(ファイターモード)へと形態を変化させた姿。制御の難しかったドラゴンモードから、人型になることで高い知性を身につけた究極のデジモンである。その攻撃は惑星をも破壊するだけのパワーが宿っていると言われている。必殺技は右腕に装着した『ポジトロンレーザー』とポジトロンレーザーを胸部の竜顔にはめ込み、全身のエネルギーを放射する破壊のエネルギー波『ギガデス』。その威力はドラゴンモードの『メガデス』の十倍の威力を持っている。また、完全なる正義に目覚めたとき更なる別モードになることができると言われている。
これで、タギル達の手に『ブレイブスナッチャー』渡ったな……あとは、
緑色に蠢く巨大な柱を見続ける。
思ったとおり、クォーツモンの姿は変わらずそこにある。
続々と増える『同じ』気配。
本来のデジモン達ならもっと強いはずだが……、弱体化してるような、劣化してるようなそんな気配だ。
「……でも、本体はお前が倒したんじゃなかったのかよ!?」
「そうだぜっ! クォーツモンだってさっきから動か、ねえしよっーーーーッ!?」
タギル達が俺に文句を言おうとしたそのときだった。
「ーーーーキシャァアアアッッッ!!!」
ーーーードンッ、ドンッ、ドドンッッ!!!
ヴェノムヴァンデモン*1が『壁』を叩き始める。
「なんで、こんなに敵がいるんだっ!?」
「本体はマナ……タイトが倒したはずだろっ!?」
シュィイイインッッ、ズバンッ!!!
ベリアルヴァンデモン*2の攻撃が始まった。
「俺が倒したクォーツモン自身が偽物だったか、クォーツモン本体自体のをバックアップでも、あのでかい緑の体に中に入れてただけだろ? 別におかしいことじゃない」
「おかしいことじゃないってっーーーー、この状況、どうすんだよっ、囲まれてんだぞっ!!!」
「おい、ユウ、目を覚ませっ、危険なんだよっ!!!」
「ネネもしっかりしてくれっ!!!」
次々と復活していく子供達。……だけどさ、
「……大丈夫だ」
「お前、何をっ……、ーーーーッ!?」
だって、ここは、
「
「「「『ヴェノムインフューズ』」」」
「「「『パンデモニウムフレイム』」」」
「「「『カタストロフィーカノン』」」」
「「「『デッド・オア・アライブ』」」」
クォーツモンの劣化コピー達の総攻撃。それが、一切この空間内に入ってこない。
「……うそ、だろ?」
「見えない壁……か? なにかに阻まれて、攻撃がいっさい通ってない。むしろ、弾き返されて、倒されてる?」
どうやら、彼らも気づき始めたようだ。
(もういいか)
俺は手を挙げ、サインを送る。
「
俺の愛する
「うん!」
「遅いっすよ!!!」
「うーん、サインは誰から……はっ!?」
「ご主人様っ!!!」
それぞれが、俺の呼びかけに答え、姿を現す。
「さあ、あのデカブツを倒しに行こうか」
「うん!」/「了解っす」/「……ここはっ!?」/「はいっ!」
1体、状況を理解してない奴がいるな?
獣の下半身と甲虫のような外殻の上半身を持つ魔獣であり、闇の王ヴァンデモンの進化した真の姿。秘めたるパワーを解放したヴェノムヴァンデモンにあるのは破壊と殺戮の衝動だけであり、本来、紳士的に振るまい、理性や知性を保っているヴァンデモンは、この醜い真の姿をさらすことを嫌っている。必殺技は敵デジモンの体内に破壊型コンピュータウィルスを注入して構成データを全て破壊して機能を停止させる『ヴェノムインフューズ』。
ヴァンデモンの最終形態と言われる、魔王型デジモン。パワーを追求しすぎ、獣のように知性を失ってしまうヴェノムヴァンデモンとは違い、知性も兼ね揃え全ての面でヴェノムヴァンデモンを超えることに成功した。残虐非道で冷酷な性格を持ち、自らの欲望のためには手段を選ばない。左右の肩にはそれぞれ生体砲の「ソドム」と「ゴモラ」を寄生させている。必殺技は両肩のソドムとゴモラから発射される超高熱線『パンデモニウムフレイム』。