「さあ、あのデカブツを倒しに行こうか」
「うん!」/「了解っす」/「……ここはっ!?」/「はいっ!」
…………ん?
テトが開いた空間の裂け目から、呼び出された俺の仲間達……1人だけテンションが違う奴がいなかったか?
「……おい、今なんか変な掛け声なかったか?」
「ないのですぞっ!!!」
「「「……えっ!?」」」
「……えっ?」
変な掛け声の奴が1番返事がいいってどういうことだよっ!?
「……あれはっ、キメラモンっ!?」
「キメラモン?」
「とても強くて危険なデジモンだ。人が従えられるほど温厚じゃない」
「「ーーーーッ!?」」
「……でも、タイトの様子は」
「テトはここで俺達を守れ、シン、ユイ、クダモンは取り巻きを駆除しろ。全力でタギルをクォーツモンの中心まで導くんだっ!!!」
「「……えぇ〜〜(なのですぞ)」」
「わかったっす!!!」
「はいっ、ご主人様っ!!!」
テトとユイは嫌がり、シンとクダモンは了解……2体とも嫌がった理由はなんとなくわかるが……、いちおう聞くか。
「テトとユイは嫌なのか?」
「僕だって暴れたいよ〜〜!!!」
「駄目だ。お前の空間を操る力でみんなを守ってるんだ。そのお前が前線で戦ってみろ……隙ができた途端、味方ごと俺が吸収される可能性がある。できる限りサポートにまわれ」
うん、わかってた。
能力が全能クラスに強いのに、こいつは前線で思いっきり暴れたい脳筋だというのは昔から知ってた。……問題は、ユイ。
「拙者はまだ、あの英雄の方々からサインをもらっていないのでありまーーーーはぎゃあっ!?」
「変なこと言ってないで、さっさと行きますわよ」
ありがとう、クダモン。
お前がいたことに初めて感謝したよ。
「……大丈夫だと思うけどな」
「「……なんであんなに子供っぽいんだ?」」
「ーーーーそれと、そこっ!!!」
「「ーーーーッ!?」」
さっきから聞こえてくる外野の声どもっ!!!
「テトの進化先は『ミレニアモン』だ。キメラモンなんて進化前のデジモンじゃない。ムゲンドラモンとキメラモンが合体して進化した『最強』の究極体デジモンだ。間違えないでくれ」
デジモンカイザーが作ったあんな失敗作とは違う。違うんだよ、レベルが。
俺のテトは最強なんだ。
「ううっ、タイトが最強って言ってくれた」
テトが感涙している……って、あっ!? 感動のあまり集中力が乱れ始めてるっ!? 空間に穴が開き始めたっ!?
「感激してないでさっさと防御にまわるっす、先輩っ!!!」
「わかってるよっ!!!」
シンの呼びかけで空間に補修が入る。……前とは比べ物にならないぐらい仲良くなったなぁ。
「……キメラモンと」
「ムゲンドラモンが?」
「合体?」
02組が固まり、
「……すごい単語が出てきたな、太一」
「俺達のデジタルワールドであれだけ猛威を振るったデジモン2体が合体なんて……、タイトはなんて恐ろしいデジモンを従えてるんだ」
「キメラモンと」
「ムゲンドラモン……」
01組も呆然としている。
「……頭が痛くなってきた」
「大丈夫、賢ちゃん?」
「なんかすげーデジモンだってことはわかる……味方でよかったぜ」
「……それでいいのかよ、大輔?」
デジモンカイザーとキメラモンが起こした騒動のことは頭に入ってるものの、テトと一緒にしないでほしいのも事実だ。俺の『ミレニアモン』はキメラモンから進化したわけではないし、そもそも頭がヤケになった状態で、できるかもわからない進化をした果てにたどり着いた力だ。それを否定するのはたとえ、俺の好きな主人公達であっても許すことはできない……ん?
「相変わらず、すげー力だよな。ミレニアモン……でも、『テト』ってなんだよ。クロアグモンじゃねえのか?」
マサルさんが隣に来て、聞いてくる。
「あれから少し経った後名前をつけたんですよ。クロアグモンがテトでチューモンがシン、タイキさんと出会った時に仲間になったピョコモンが進化したのがユイで、最近仲間になったのでまだ名前をつけていないのがクダモンです」
「おっ、おう……そうか、名前をつけたのか」
マサルさんがなんか動揺してるけど……そんなに珍しいことだったか?
デジモンのゲームでは当たり前だし、アニメでは出ないけど……、そういや、俺の身近にもデジモンに名前つけてる奴はいなかったな。
「……今、聞き捨てならないことが聞こえてきたような?」
「あんなにかわいかったピョコモンが……あのオタクっぽいトリデジモン?」
「月日が流れるものだが、結構残念な成長を見せたな」
ユイの過去を知っているキリハとネネは、あの残念な変わりように愕然としている。
うん、気持ちはわかる。俺も、ダークナイトモン戦で目が覚めたらいきなりあんなんになってたから、唖然としたし……今は慣れたけど。
「……俺達は全然話ついていけてないな」
「だいたい、世界が突然滅ぶ寸前って言われてから、別世界の英雄に操られてたけど最上リョーマの裏切り、マナトがタイトで突然現れる……私達みたいな一般人がこんなにいろんなことが起きてついてけるわけないでしょっ!!!」
「……そりゃそうだな」
アカリさんと剣さんは話についていけてないみたいだ。
ルビーも寿も話についていけてないみたいだったし、俺の説明不足のような気がしてならない。
「……タイト、話がある」
背後から声をかけられる。
「……タイキさん?」
タイキさんが真剣な面持ちでこちらを見ていた。なんだろうクロスローダーを持ってるけど……、あれオメガシャウトモンは、どこに……?
「……タイトはこれから忙しくなるってのに、なんのよう?」
「いや、何……俺からの君へのプレゼントだ」
いや、テト、そんな邪険にするなよ。タイキさんも何か……?
「……プレゼント?」
タイキさんから俺へのプレゼントってなんだ?
俺そんなに物をもらうようなことはしていない気がーーーー、
「
タイキさんがクロスローダーを掲げると同時に、
「なんでっ!?」
「俺達のクロスローダーもっ!?」
「ベツモン*1!?」
この場にいる全員のクロスローダーからデジモンが現れる。
ーーーードンッ!!!
多くの光が溢れ、収束すると……、
「「「
俺の仲間達がそこにいた。
「……リリモン?」
「はい」
キリハ達と一緒に戦ってるときに、あんまりおいしくないジュースをよく配ってくれるデジモンだ……それに、
「ブラックテイルモン*2にキャンドモン*3、バーガモン達にエアドラモン、サウンドバードモン*4、モニタモン、サゴモン……なんか見たこともない奴がいるけど、みんなっ!!!」
「ひさしぶりです!!!」
「我ら貴方の元まで戻って参りました」
「私達は貴方のことをずっと、ずっと待っておりましたのっ!!!」
「我々はタイキ殿や別のジェネラルの軍に下り、密かに貴方の到来の為ずっと力をつけておりました」
……みんなっ!?
感極まって泣きそうになる。
俺達なんて別世界から来たジェネラルでもなんでもない、ただ巻き込まれただけの人間だったのに……こんなにも慕ってくれてたなんて……ん?
「というか、俺だけ扱いひどくないっ!?」
なんか見知らぬ……いや、既視感はあるが、記憶にないデジモンが暴れ始める。
「勝手に進化してるのが悪い」
「別に強くなってないしな」
「俺だけ扱い酷いんだけどっ!!!」
……進化?
強くなってない……、そして、この扱いの悪さ……どこかで、……あっ!?
「ーーーーっ、お前、オメカモン*5かっっ!?」
テトが前線に出る前から、戦場でただ逃げ回ってただけの、根性なしっ!!!
「そうだよっ、進化に立ち会ったアニキも言ってくだせえっ!!!」
「……そいつの進化前は、たしかにオメカモンだぜ?」
「疑問系じゃねえかっ!!!」
「本当に立ち会ったの? 嘘じゃないのっ!?」
「嘘じゃねえよっ!!!」
ガムドラモンにフォローされてるけど、キャンドモンに煽られてる。ああ、オメカモンだった頃が懐かしいな。
「……そっか、進化したのか」
本当に、本当に進化できたのか。
クロスウォーズの世界で進化できるようになったんだ。
「……タイトっち、懐かしいっすね」
「……そうだな」
シンの言葉に涙ぐんだ顔を無理に手で擦って笑って見せる。
「タイトの周りをうろちょろしてた奴ら奴らじゃん。ジェネラルって言ってるけど、本当に使い物になるの? タイトが傷を負ったの……、何やってるシン?」
「タイト氏が傷ついたのはオイラ達が弱かったからっすよ。後輩いじめすんなっす」
「ーーーーちっ」
テトの憎まれ口にも少しだけ棘がない。シンに諌められても舌打ちだけ……なんだかんだ言って懐かしいのは、テトもシンもおんなじだ。
「……マナト……いえ、タイト様がその姿になったのは、我らが敵を見逃し、ピョコモンが人質に取られたことが原因だったのですね」
ブラックテイルモンに気づかれた。
テトととシンが余計なことを言うから……、まあ、
「過去のことだよ。それにほら……」
「ーーーーいったぁっ!?」
「ーーーーっ!?」
テトの足をデジソウルを纏った拳で軽く殴った。
「全盛期とはいかないまでも、今の全力でもテトにダメージぐらいなら与えられるから、さ」
テトは弁慶の泣き所に拳が当たったのか痛みで呻いている。
「痛いよ、タイトぉっ!?」
「酷いこと言った罰だ。俺のパートナーなら、俺の部下になる奴らにきちんと見本になるようなことができないとまずいだろ。できないようなら、しばらく肉抜きにするからな」
「肉抜きっ!? それは嫌だっ!!!」
「なら、頑張ってくれよ」
「うん、がんばるっ!!!」
でも、俺は大丈夫だから……大丈夫、だけど、
「……それと、ジェネラルって言った件だが」
俺はお前達を本当に仲間にしてやれるかな?
「我らのジェネラルは貴方だけです」
ブラックテイルモンが、
「俺達は貴方に着いて行くために、力をつけていました」
エアドラモンが、
「だから、マナ……タイトさん。私達もテトさんやシンさんと同じように仲間になりたいんです」
リリモンが、
「ーーーーッ!!!」
サウンドバードモンが……、全員が俺についていくと、覚悟を見せる……だけど、
「……俺の仲間になるってことは、バグラ軍のように手を汚すかもしれないぞ」
俺は今、『カミシロ』にいる。
この三年間必死になって理解した。金と権力の暴力は人を変えると……礼儀も法も守らない愚者がいることを、全部全部『俺』が学んでしまった。
好き勝手に暴力を行使するのは『バグラ軍』と同じだとわかっていたのに、それでも俺は変わってしまったんだ。
それでも、そんな俺についてきてくれるのか?
「「「…………」」」
全員が顔を見合わせる。
全員その場で頷いて……、
「
「
「
……みんな、本当に、いいのか?
「「「お願いします!!!」」」
ここにいるデジモン達、全員が俺に頭を下げた。
もう、ここにいる全員が覚悟が決まったと言っていた。
「……タイト?」
テトが俺に聞く。
でも、その言葉には俺に対しての気遣いのような、気後れのようなそんな意味が感じられて……ううん、そうじゃない。
「……わかったよ」
俺はこいつらを受け入れなければいけなーーーー、
「ちょっと待ったぁーーーーっ!!!」
黄色の髪の女が叫ぶ。
「私達のデジモン奪ってくのっ!?」
「そうだ、俺達のデジモンだぞっ!!!」
「俺達が捕まえたんだっ!!!」
「なんで、ぽっと出のお前が僕達のデジモンを取ってくんだよっ!?」
「第一、なんでリョーマが裏切ったのに、私達に『ブレイブスナッチャー』が渡ってこないのよっ!!! あいつだけ特別扱いずるいんじゃないのっ!!!」
ブラックテイルモン達を捕獲したハンター達全員が文句を言ってきた。
「…………」
うん、気持ちはわかった。
同情もしよう……だからこそ、
「お前ら」
「「「はい」」」
だからこそ自分俺は指示する。
「奴らを倒して俺に力を見せつけてみろ。そうしたら軍門に入れてやる」
「わかりましたっ!!!」
戦場を戦ったデジモン達の力を見せつけろ、と。
「死ねっ、雑魚の癖に命令しやがってっ!!!」
「俺達のジェネラルはあの人だけだっ!!!」
「『フラウキャノン』ッ!!!」
「『ツッコミパンチ』ッ!!!」
「『ネコパンチ』ッ!!!」
「……アレ、いいのかよ」
タギルに声をかけられる。
「いいんじゃないか? デジモンにすら慕われない雑魚だぞ?」
わざと捕獲されたことにも気づかず、自分の思うとおりにデジモンを動かそうとしている末路だ。俺も気をつけないといけない。ユイには思いっきりやっている気がする。
「……そんな言い方」
「言われて当然だろ、タギル? 少なくとも、デジモンを自分のコレクションだと思ってるハンター達だぜ? この戦いに参加する権利なんかないだろ?」
ガムドラにさえ言われている、本当に残念な奴らだ。
「……それも」
「そうだな」
笑っているところ悪いが、もうそろそろ戦いが終わりそうだ。
「全員、終わりましたっ!!!」
背後には倒れたハンター達が山のように積み上げられている。
「……、ずいぶんと早かったな」
「はい、弱かったのでっ!!!」
ブラックテイルモンが笑顔でそう言った……うん、そっか……弱かったんだ。
「……そっか」
かわいそうに……って、そうじゃない!?
「それじゃあ、ここで見ていろ」
俺はアプリドライブを手に取って掲げる。
「本気のテト達を見せてやる」
ここからが、最終決戦だ。
あらゆるデジモンになりすまし敵を翻弄する奇行デジモン。エテモンやもんざえモンと同じくパペット型だが、デジモンスーツ(?)を着替えることで、色々なデジモンに化けることが出来る珍しいタイプ。必殺技は打撃力としてはつっこみ程度の威力しかないが精神的に相手を脱力させる『つっこみパンチ』と、怪しい視線と理解不能のギャグで相手の動きをぴたりと止める、凍りつくような攻撃『コールドギャグ』。
真っ黒な毛なみが印象的な、ウィルス種のテイルモン。完全なる悪の申し子で、ブキミな闇を渡り歩いて生きている。テイルモンの変種であるブラックテイルモンが生まれるのは非常に稀で、その個体数は少ないと言われている。また、性格は意地悪でプライドが高く、弱いものいじめが大好きな困ったデジモンである。基本的には堕天使型のデジモンへ進化する暗黒系デジモン。必殺技は、テイルモンと同じく『ネコパンチ』。
デジモンの心臓部ともいえるデジコアを頭につけ、激しく燃焼させている火炎型デジモン。頭の上で燃えているデジコアの火が消えると、キャンドモンは生命活動を維持できなくなってしまう。一説には頭上の炎が本体で、体の部分はダミーではないかと言われている。火炎型のデジモンにしては性格はおとなしく、自ら回りに危害を加えることは無い。必殺技は小さな火球を吐き出す『ボンファイア』。
スピーカー内蔵の羽が特徴の鳥型デジモン。警戒心が強く普段は静かにしているが、不審なデジモンが近づくと大音量で鳴いて相手を追い払う。
必殺技は、ボリューム全開で鳴いて衝撃波を与える『ギガスクリーム』と、超音波を発して敵を動かせなくする『サウンドフィニッシュ』。
とあるコンピュータの設計図面のデータから誕生したパペット型デジモン。自分が何者かを知らず、とりあえずデジモンの中でも有名な聖騎士“ロイヤルナイツ”の格好をしてみている。背負っているペンをロケット弾にして放つ『ラクガキロケット』は、体に色が付いてしまうので他のデジモンからヒンシュクをかっている。そのペンは、とあるコンピュータのお絵描きソフトの中で拾ってきたらしい。必殺技は意外と威力のある『オメカキック』。
「シン、ユイ、クダモン……進化だ」
タイトがアプリドライブを掲げる。
でも、アプリドライブは光らない。その代わりに……、
[レオモン ワープ進化]
[ムーチョモン ワープ進化]
[クダモン ワープ進化]
デジモン達が光出した。
(この光はまさかっ!?)
ついさっき見た光。
デジモン達が自分の力で、究極体に進化しようとしてるのが肌で感じられる。
「『バンチョーレオモン』ッ!!!」
「『ヴァロドゥルモン』ッ!!!」
「『スレイプモン』ッ!!!」
そして、シンって呼ばれたレオモンが、ユイって呼ばれたムーチョモンが、クダモンが、究極体に進化した。
「……すげぇ、すげえよっ!!!」
「究極体がこんなにっ、しかもたった1人の人間がそれを従えてるってのが何よりすげぇっ!!!」
クロスローダーやデジヴァイスの代わりになってるアプリドライブも使わねぇのに、究極体に進化させられるなんて本当にすげぇっ!!!
「……そう、かな?」
タイトは顔を掻いて恥ずかしがってるけど、俺は本当にすげぇって思う。
「かっこいいぜ、しかもこいつら本気のアレスタードラモンよりも強えんだろっ!?」
「────タギルッ!?」
いや、そうだろ?
この前完全体に進化したクダモンに、アレスタードラモンは思いっきりやられてただろ?
究極体に進化したってことはそれ以上にすげぇ強くなってるってことじゃねえかっ!!!
「……まあ、当然だな」
タイトはなんでもないふうに言うけど……、
「……っ、────すげぇっ!!!」
俺はやっぱりすげぇって思うんだよ。
学ランを着た強そうなライオンのようなデジモンが、神々しい光を放つ大きな鳥のようなデジモンが、赤い鎧を纏った騎士みたいな馬のようなデジモンが……全部、全部アレスタードラモンより強くて、俺達の味方になってくれる。
これ以上アツい展開なんてないだろっ!!!
「……そんなことより」
ヴァロドゥルモンが……ユイがタイトに何か聞くようだ。
「我が同志よ、これからどうする?」
これからの戦いについてだろうか、ヤケに真剣な気がする。
(でも、さっき指示されてなかったか?)
タイキさんが用事を済ます前に、現れたデジモン達にタイトが指示を出していた気がするんだけど……どうしたんだ?
「さっき指示したとおり、敵はクォーツモン。奴が生み出す劣化コピーどもを蹴散らし、本体への道を作れ。タギルとアレスタードラモンが本体まで接近、フルパワーの『ブレイブスナッチャー』で本体をぶっ叩く」
「わかったっす」
「わかりましたわっ!!!」
確認の為に聞いたのかな……それにしては、
「…………」
「…………ユイ?」
『なんか違う』って言いたげな顔をしてるけど……本当にどうしたんだよ?
「……違うのであります」
「何が違うんすか?」
違うって何が……っ!?
「
場違いな言葉が耳に入ってきたような?
「……挿入?」
「……歌?」
いやいやいや、こんな神々しいデジモンがそんな変なことを言うとは……、聞き間違いだよな?
「我らの同時進化と我らの主人公である我が同志タイトが戦うのだ。挿入歌……『brave heart』を流すべきだ────のわっ!?」
「いいから黙れ」
「さっさと行きますわよ。このおバカ」
「帰ったら修行の時間三倍にするっす」
「……我が同志ぃぃいいいい────っっ!!!」
聞き間違いじゃなかった。
「はぁ、タギルが主人公なんだから、流すのは『タギルチカラ』一択なんだよ。これだからにわかは困る」
…………?
聞き間違いかな?
間違いだといいな。
聞き間違いじゃなかったら、俺の中のタイトのイメージが著しく損なわれる気がする。
「……あの、タイトさん?」
「何かな、タギル?」
うん、そういう感じだよな?
聞き間違い、聞き間違い……うん、聞きたいことを聞こう。
「……ええっと、……とりあえず俺は何したらいいんだ?」
俺はどう戦えばいいんだ?
「…………っ!? ああ、そうだったな」
タイトは俺の言葉に、『そういえばお前にも言わなきゃいけなかったな』とでも言いたげに、まるで忘れていたとでも言うように笑っていた。
「クォーツモンの攻撃はどうなってるかわかるか?」
……クォーツモンの攻撃?
さっきから、クォーツモンとクォーツモンにコピーされたデジモン達の攻撃はこちらには一切とおっていない。何かに阻まれて、攻撃を当てることができないみたいな……壁みたいなものを感じる。
「……なんか、壁……みたいなものに阻まれていっさい攻撃が通ってないように感じる……これは、タイト達がやってることなのか?」
タイトは頷く。
「テトの種族名は『ミレニアモン』。空間を操り、時と空間の狭間を行き来し、支配するデジモンだ」
「空間を操るだって!?」
そんなすごい力を持つデジモンがいるなんてっ……って、タイキさんから聞いたバグラモンもすげぇ力を持ってたし、なんか、こうタイトはそんなデジモンを相棒にしてるってことがすごかった。
「その力を使って、この周辺の空間を圧縮してクォーツモンの攻撃を完全に防いでいる……だが」
空間を圧縮……圧縮ってえと、理科の授業で習った気がする。水の密度を集めてぎゅうぎゅうにすると、氷になるって奴だよな……つまりテトは、空間そのものの密度を集めて壁にしてるってことか。
それなら、この中は安心だよな。
テトの攻撃以上の威力の攻撃を放たないと、この中にいる人達に傷をつけられないってことだから……でも、俺が行かなきゃいけないのは、その外なんだよな。
「この場所を離れたら、その攻撃が当たるようになるってことだよな?」
「そうだ」
クォーツモン達の攻撃に当たるかもしれないってことだよな。
「……俺が、行かなくちゃいけないんだよな?」
「そうだ」
タイトが頷くたびに不安が増す。
俺はタイトに言われて、あのクォーツモンのところに行かなきゃいけない。
かつて、タイキさんとシャウトモンはバグラモンと戦って、世界を救った。
今はその責任が俺の手の中にある『ブレイブスナッチャー』を重くさせる。
俺にはタイキさんみたいにできる気がしない。でも、アレスタードラモンはどうなんだ。
「アレスタードラモン、俺にできるかな?」
アレスタードラモンはどうしたいんだ?
「俺はタギルを信じるぜ」
────俺を?
「……だけどよぉ」
だけど、なんだ?
「
「────ッ!?」
アレスタードラモンの言葉に俺の不安は消え去った。
そうだよな、そのとおりだ。
今、ここで、ここで俺が引いちまったら、この世界が終わるってときに、俺が逃げちまったら、かっこわりいじゃねえかっ!!!
「そのとおり、そのとおりだぜ、アレスタードラモンッ!!!」
「どうやら覚悟が決まったみたいだな」
覚悟なんかとうに決まってたんだ。俺はただ不安に押し負けそうになってただけだ。
「俺達はやる。俺達がやるんだっ!!!」
「その息だぜ、タギルッ!!!」
俺は覚悟を持ってタイトの方を見る。
「俺、やるよ」
「君ならできるって信じてる」
信じてる……か、いい言葉だよなっ!!!
「いくぜ、アレスタードラモン」
「おう!」
俺達は空間を飛び出した。
「『ヴェノムインフューズ』」
「『パンデモニウムフレイム』」
「『カタストロフィキャノン』」
「『デッド・オア・アライブ』」
「すげぇ攻撃の雨だっ!?」
『ブレイブスナッチャー』を持つ俺達を狙って、全力で攻撃してくる敵。
「しっかり捕まってろっ!!!」
アレスタードラモンの言葉どおり、俺はアレスタードラモンにしっかり捕まって、振り落とされないようにする。
「────まずいっ!?」
敵のデジモンの攻撃が目の前にやってくる。
「『ニフルヘイム』」
目の前を炎の矢が通り過ぎた。
「……この程度で怯むんじゃありませんっ!!!」
スレイプモンが敵の攻撃を弾き飛ばしたんだ。
「『フラッシュバンチョーパンチ』ッ!!!」
「────ッァ!?」
今度はユイの背中から、光の拳が飛び出してきて、何体も敵を倒していく。
「道は空いているっす! そのルートどおりに行けば、オイラ達が全力で守ってやるっすよっ!!!」
バンチョーレオモンがクォーツモンへの道を切り開いていく。
「小癪なっ!!!」
「『ギュプト粒子砲』」
クォーツモン本体からの巨大なビーム。
「『パージシャイン』ッ!!!」
ユイの強烈な光がビームを完全にかき消した。
「タギル殿、この後サインもらっていいっすかっ!!!」
「────えっ!?」
場違いな言葉に、一瞬だけ集中力が切れてしまう。
「こんなときに欲望出してんじゃねえっすっ!!!」
「いい加減にしませんと、殺しますわよっ!!!」
「────ひでぶっ!?」
こんな戦場でも仲間から殴られるユイ……、そっか。
「……あはは、タイトの仲間はこんなときでも余裕あるなぁ」
こんな戦いでも余裕があるなんて……、ちょっとだけ嫉妬したまうぜ.
「俺達も俺くらい力があればよかったんだけよぉ」
アレスタードラモンもおんなじ気持ちみたいだ……でも、
『時間がなかったんだしかたないさ』
タイトの声が突然聞こえてきた.
「タイト、……っ、いったいどこからっ!?」
『テトに頼んで空間を操作して、俺の指示が、声が届くように空間を繋げた』
「そんなことができるのかよっ!?」
『敵の影響が強くなればなるほど、難しくはなる……がな。でも、テトの力量なら、並大抵のラスボスなら掻い潜れる』
「そりゃ、すげえなっ!!!」
ほんっと、うらやましいぜっ!!!
『……そんなことよりも、もう少しで敵の体内に入る.『ブレイブスナッチャー』の準備をっ!!!』
「────了解、だぁあああっ!!!」
ブレイブスナッチャーを起動、腕のような形に変わっていく。
「入らせはせんっ!!!」
「『ギュプト粒子砲』」
クォーツモンの足掻きが見える……だけどな、
「『プリズムギャレット』ッ!!!」
俺達だってやるときはやるんだぜっ!!!
「俺達も負けてられないぜ、タギルッ!!!」
「そうだ、俺達がやるんだ」
「「俺達がスーパースターになるんだっ!!!」」
クォーツモンの目の前で叫ぶ。
「『フラッシュバンチョーパンチ』、なら、叫んでる場合じゃないっすね」
「『パージシャイン』、我が同志の元、全力で導いてやろう」
「『ニフルヘイム』、ふんっ、なかなか甘々な動きですが……認めてやらないこともないでしょう」
タイトの仲間達の攻撃によって、クォーツモンへの道が開かれた。
「本体が見えてきたぜっ!!!」
「タイト、どうすればいいっ!?」
どうすれば中に入れるんだっ!!!
『奴の体は物質化してない。体は固まっているように見えるだけで、本質はデータの塊』
なんか難しいこと言ってるけどよぉ!!!
「つまり、どうすりゃいいんだよっ!!!」
『つまり、このままクォーツモン体内に突っ込むんだっ!!!』
突っ込めばいいんだな?
「いくぜぇぇええええ────っっ!!!」
「オラ、オラオラ、オラァッ!!!」
俺達はクォーツモンの中に入っていく。
「……ここが、クォーツモンの体内?」
「緑色の……水でも血でもない何かが、集まってるだけ?」
緑色の四角い液体でも固体でもない何かがウヨウヨ蠢いている。
『そうだ、奴の体内はただのデータの塊だ。それも……』
タイトの説明が聞こえてきたそのときだった。
「
白い体に黄色の仮面をつけた巨大な化け物が現れたっ!!!
「クォーツモンっ!?」
アスタモンのマスクの下から現れた顔は、こんな顔だった方をおもいだした。
「どうした、タギルゥ……ここは俺の体内だ。俺の意思が介さない場所はどこにもない」
俺は急いで周囲を見回す。
(これが、全部クォーツモンっ!?)
外ならどこから攻撃が来るかわかってたけど、こんなかだったらどこから攻撃が来るかわかんねぇじゃねえかっ!?
「落ち着いてくださいましっ、まだ敵は目の前におりませんっ!!!」
「でも、奴はっ!?」
奴を早く倒さねえとっ!?
奴の言葉が正しいんだったら、この緑色の四角いウヨウヨはこいつに吸収された人間とデジモンのデータだ。早く助けねぇといけねえだろうがっ!!!
「奴はこの空間の奥、クォーツモン本体を『人間とデジモンのデータの塊』で姿を隠しているっすよっ!!!」
そうだ、本体を倒さねえといけないんだったっ!?
「ふふふ、よく知ってるな。化け物の手下ども」
「先に知られていなきゃ、対策のうちようがないっすからねっ!!!」
クォーツモンの顔が光った。
「『ルーインブラスト』ッ!!!」
「『
シンの剣が弾き返した……て、危ねぇっ!?
「危ないっすね、危うく当たるところだったじゃないっすか」
「この一撃で葬るつもりが、むしろ跳ね返されるとは……でもいいのか?」
……何が、ってまさかっ!?
「
「────ッ!?」
この世界の人間を攻撃に使ったのかっ!?
「どうした、手を出してこないのか?」
「手を出すも何も……っ」
シンの動きが止まった。
(タイトっちが大事にしてるのはこの世界の人間達じゃない。『この世界のデジモン』達っす。迷うな、……でも)
このままクォーツモンの言いなりになれば全滅、だけど、攻撃なんかしたら母さんや父さん、クラスのみんなやデジモン達のデータが入ったクォーツモンの体を傷つけてしまう……どうすりゃいいんだっ!?
「……どうする? お前達の求めるものは────
クォーツモンの体から生えた腕、その手のひらが開かれる……そこには、
「…………」
「ここにあるぞ?」
眠ってる母さんの顔がっ!?
「────っ!?」
「────お前ぇっ!!!」
「────外道がっ!!!」
アレスタードラモンとスレイプモンが攻撃をしようとする。
『待て』
……タイト?
「……ほう、我の本体を一度倒した人間か」
タイトならこの状況でもなんとかできるかもしれねぇっ!?
「タイト、どおすりゃいいっっ!? この人達を助けるために俺は何をすればいいんだっ!!!」
……ん、返事がない。
『ちょっと借りますね』
『おっ、おいっ!!!』
剣さんの声が聞こえてくる……ってか、何をやってるんだっ!?
『シン、ユイ』
ドタバタが終わったかと思ったら、今度はやけに真剣な声。解決策があるのかっ!?
『……少し賭けに出る。やれるな』
「……了解っす」/「覚悟はできている」
覚悟って、何をやるんだよッ!?
『シン、ユイ』
『デジ……
「────
突然、クォーツモンの方から声が聞こえてきた。
「クォーツモンから?」
「声が聞こえる?」
クォーツモンに顔が浮き上がってる……これはっ!?
「人間ども、いったい何をっ!?」
「ずっと話は聞いてたぜっ!!!」
「坊主、俺たちは何をすればいいっ!?」
「私達はあんたに人質にされるためにここにいるんじゃないっ!!!」
「タギル、俺が、俺達が────」
「「「
「……、みんなっ!?」
クォーツモンの体から今までデジモンの事件に関わってきた人達の、デジモン達の顔が浮き上がっている。みんな、みんな俺達の事件に関わってくれた人達だ。
「バカなっ、人間ともデジモンのデータ如きが、我が肉体を勝手に動かす……だとっ!?」
クォーツモンが驚いている……だけどよぉ、
「俺達をバカにすんじゃねえっ!!!」
「人間もデジモンも、みんなの力を合わせて戦ってきたんだっ!!!」
「それを、お前の好き勝手で、お前の一部になるなんざ……俺はぜってえに、認めねえっ!!!」
俺達は未来を切り開くんだ!!!
『…………』
「……タイト?」
タイトの声が聞こえてこない。また、何かあったのだろうか……、
「禁錮字が」
アレスタードラモンの声が聞こえてくる。
(……これはっ!?)
たった一度だけ、たった一度だけ応えてくれた新しいアレスタードラモン。その力が今、もう一度使えるんだっ!!!
「いくぜ、アレスタードラモンッ!!!」
「おっしゃぁっ!!!」
俺達は禁錮時に手を伸ばす。
[アレスタードラモン モードチェンジ]
アレスタードラモンの姿が変わる。
黄色から白へと腕の鎧が変わり、
赤い鎧から生える大きな蝶のような羽。
封じられていた顎は、竜の力を解放し、牙が連なる。
変じた姿は間違いなく、竜、強力な竜……その者の名は、
「『アレスタードラモン スペリオルモード《ref》レベル:完全体(クロスウォーズ) タイプ:竜型 属性:ワクチン種 必殺技:『ブレイズスパイカー』『マッハフリッカー』『フロッグショット』『スピンカリバー』『スパイラルシュレッダー』『プリズムギャレット』
より強くありたいと願い現れた緊箍児によって更なる力を得たアレスタードラモンの強化モード。飛行能力が増した大きな翼、切れ味に磨きがかかった巨大なテイルアンカーに加え、バグラモンのものと思われる右腕がアレスタードラモンに強大な破壊力を授けた特徴的な姿である。
通常は力が制御される役割である緊箍児が、力を与える逆の役割となって現れたのも、アレスタードラモンは力を正しきことに使うデジモンであると認められた証とされる。飛躍的に増したこの力を持って凶悪なデジモンに立ち向かう。
必殺技は炎の掌底打ち『ブレイズスパイカー』。全力で振り抜けばどんな堅い守りも貫通させてしまう。《ref》』ッ!!!」
「アレスタードラモンが」
「進化した?」
「その姿はっ!?」
「違う、モードチェンジでありますっ!!!」
アレスタードラモンがスペリオルモードになった姿であった。
「行きます、タイキさん。やるぜ、タイトッ!!!」
俺は、俺達は誓う……この世界の全てを救うと。
「行け、坊主っ!!!」
「やって、タギルッ!!!」
「やれっ!!!」
「いけっ!!!」
『…………』
ここにいるデータに変わったみんな、
後ろにいる今まで手伝ってくれた英雄達、
俺達に力を貸してくれたハンター達、
この戦いの中、俺を近くで支えてくれたタイトとその仲間、
俺ともに戦ってくれた仲間達、
俺の先輩であり、越えるべき壁でもあるタイキさん。
その声援が俺達に力を与えてくれる。
俺はやる。やってやる!!!
「「「いけぇぇええええええええ────ッ!!!」」」
クォーツモンの前で俺達はブレイブスナッチャーを振り上げる。
「バカなっ、やめろっ!?」
「俺と手を組もう。そして、世界を支配しようじゃないか?」
「お前と俺なら世界を統べることができる」
その脅威を肌で感じたのか、命乞いをするクォーツモン。
「お前達が望むスーパースターになることだって────ッ」
ああ、こいつだけは許せねえ。
俺達の思いは一致した。
「終わらせるぜ、アレスタードラモン」
「わかってるさ……これが、終わったら俺達は」
そうこれが終わったら俺達は、
「「新しいスーパースターだっ!!!」」
ブレイブスナッチャーを振り下ろした。
「やめろぉぉおおおおおおおお────っ!?」
クォーツモンは弾けて消えた。そこに残っているのは、データの滓だけで……クロスローダーの中に、1つのデジタマだけが残っていた。
『…………』
『…………』
『…………』
『…………』
「あはははは」
「ははは」
「……あはは、は ……はぁ」
「戻りたくないなぁ」