そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱)   作:夜月工房

10 / 202
10.売りに来ました。返して下さい。

骨折を自室に隠してる自作エリクサーモドキで回復して、一夜明けてからも疲労は抜けなかったので丸一日を休養に当て、復活した二日後にギルドへ赴き受付担当のお姉さんに強化種の情報を報告しておく。質問もいくつかされたので、今後は紙にまとめたのを渡すようにしようと心に決めた。

その後、こっそり換金しないまま持ち出していた魔石と強化種から以外のドロップアイテムを何食わぬ顔でギルドの売却所へ持って行って換金する。

ゲーミングウォーシャドウの腕から先――爪部分は指刃という名前らしい――は自作武器に使ってもいいのだが、消費したエリクサーモドキを補充するための材料を買う金が欲しいので売りに出すつもりだ。が、強化種の様子(イルミネーション)を考えたら特別な効果があっても不思議はないし、魔石の換金で情報を提供したが食い付きは悪かったのでギルドに売るのはもったいない。というか心境的に売りたくなくなった。

 

なもんで、事情を話せば面白がってオマケしてくれそうな鍛冶ファミリアに売る事にする。

実は【ヘファイストス・ファミリア】は、その、ゲーミングウォーシャドウをピクミン化させた毒ダートの無毒版、要するにダマ鋼ダート(ダマスカス鋼)をダンジョン内で拾ったと言って評価を新人展示階の店員さんに尋ねたんだ。そしたらメッチャ迫られて根掘り葉掘り聞き出そうとしてきた。

ないとは思うが主神(へファイストス)が出張って来たらヤバいので個人的な取引として売ったのだが、迷わず初手で100万ヴァリスを提示されて危うく心停止しそうなくらい驚かされた。成分だけなら運次第だけどそこらの露天で揃うんだぞ。(ヴァリス)を生み出す方の錬金術じゃんこんなの。

そんな自業自得ではあるが抱いた苦手意識から、今回はもう一方の大手である【ゴブニュ・ファミリア】にお願いしに行く。原作リリのハンドボウガン――(ガン)の存在しない世界でどっから出てきた響きなんだろうな――を作ったのもこちらなので、将来を考えて顔繋ぎしておくのも良いと思う。フィンフォロワーな親父の槍もこっち製だったらしいし。今じゃブリューナクと名付けられたらすぐ折られ謎金属で鎌槍にされた挙げ句ネックレスとしてリリの胸元にキラリと光ってるが。なんだこの意味不明な説明。事実しか列挙してねぇのに。

 

と、いうわけでやって来ました【ゴブニュ・ファミリア】です。質実剛健が売りだが、原典で工芸の神でもあるためか原作リリのハンドボウガンよろしく一風変わった武器も作っていたりする。あとは建築も引き受けたりするんだったな。ソーマが作業する酒蔵の設備とか頼むこともあるかもなぁ。

あとゴブニュ本神は英雄の時代に精霊としてフィアナ騎士団と関係があったからかパルゥムに比較的甘いらしいが、眷族にまで浸透はしていないだろうから関係ない話だ。

 

さて、一つ気になった事がある。

 

「静かだな」

 

鍛冶系【ファミリア】であるならば、鉄を打つ音が響いているのが当然だ。それこそ前世の町工場みたいに、叫ぶくらいでなきゃ話が伝わらないと覚悟して来たのだが。

 

「まぁ、まずはお邪魔するか。こんにちはー毎度様ですー」

「あら、いらっしゃい」

 

建物の中に入って挨拶すると、カウンターに肘を乗せて頬杖突いてるややふくよか……違うな、体型としてはガッシリしてる、単純に体がデカイ女性。笑顔は柔和だが怒らせると命が危ないタイプじゃないっすかね。

 

「ども、ここって素材の買い取りとかしてます?」

「あらあらまぁまぁ、売り込みなんて珍しい。どんなやつなのかしら、見せてくれる?」

「うっす。ウォーシャドウの強化種なんですけど……」

 

第一段階はクリア。ただしウォーシャドウって言葉にテンション下がった感じを受けた。そりゃ普段からもっと良い素材使ってるだろうし、当然っちゃー当然か。

取り出してカウンターの上にゲーミングウォーシャドウの腕を乗せる。相変わらず黒色を保ったままだが、現物を目にした女性は少しだけ瞳孔が広がっていた。

 

「腕が丸ごと、とはね。大きさも……このまま握り(グリップ)を付けるだけでちょっとした槍として使えそう。どうやらただの強化種じゃなかったようだね、こいつを手に入れた流れを聞かせてくれるかい?」

「うっす。まずこいつの持ち主だった強化種は――」

 

そうしてダンジョンの中で出会った天然のイルミネーションなゲーミングウォーシャドウの説明をする。女性は聞き上手で、的確な相槌と質問を挟んでくる。話の流れでダマ鋼ダートの話題を漏らしちまったが、護身用に無毒のやつしか持って来てなかったのでセウトだった(ダメじゃねーか)。鞭もあくまで武器って表現で通したしへーきへーき。

 

「なるほどねぇ。触った感じだと普通のウォーシャドウの爪刃よりもずっと頑丈ではあるけど、話に聞いた感じじゃ生きてた頃はこれ以上かしら。こっちの変わった金属で作った矢を逸らしたりしてたわけでしょ。こっちも気になるわねぇ。でもこれだけ上等な武器をってことは……上昇補正(バフ)でも使えたのかねぇその強化種は。ドロップアイテムはモンスターの特徴を備えてるから、魔石を取り付ける機構を組み込んだら再現できるかしら……光り出しそうだけど」

 

今更だけど職人なんだなって。早口で結構な量の言葉がスラスラ出て来る。てか、魔石を取り付けるって要は電池だよな。戦隊ものや変身ヒーローの玩具みたいなのができ上がって来そうで恐怖なんだが。光る、伸びる、音がなる、デラックスウォーシャドウ! みたいな宣伝される感じの。

とはいえ好感触っぽいのには違いない。価格も期待できるか? あぁ、一応聞いておこう。

 

「通常のとは大分違う感じで?」

「そりゃもちろん! いい? 通常種のはウォーシャドウの指刃って言って柄の無い刃だけの短刀みたいなやつが三本セットで落ちるの。これはこれで駆け出し用の武器に使える素材なんだけどね。この強化種のドロップは今のままでも下手したら指刃を使った武器よりも固くて鋭い。少なくともこの矢と同等ってなれば、生きてた頃はミノタウロスやライガーファング……中層のモンスターにも引けを取らなかったかもね。そもそも肌の部分がそれなんだから指刃部分は……うーん面白い。軽く押し当てただけなのに、凄く自然にプッツリ切れてる。並の防具じゃ太刀打ちできないわねこれ。しかも――」

 

オーケーオーケー。聞き方を間違えた。正解は分からんが。そもそも売るつもり満々な、二度と会えるかわからん相手の素材に興味なんて持つ必要がなかったんだわ。ゲーミングウォーシャドウの強さの目安が中層のモンスター(Lv.2)だって予測は聞けたし、ダマ鋼の強さもそんくらいまでなら通じそうってのも知れたから損ではないが。てかまだ喋ってる。

 

「今帰ったぞー!」

 

と、そんなところへガヤガヤと団体様がやって来た。内容的には【ファミリア】の構成員(メンバー)なんだろうが……あれ、先頭のドワーフ然とした頑固そうなマッチョ爺さん、めっちゃゴブニュでは?

 

「あー親方! お帰りなさーい!」

「おう、ただいま。そっちの嬢ちゃんは……入団希望には見えねぇな。客か?」

「はい! 素材を売りにって、ホラ見て下さいよこれ!」

「あぁ? なんだそれ――ウォーシャドウか、指刃じゃないってことは稀少種か!? 強化種か!?」

「強化種っぽいです。魔石食ってたっぽいのをこちらのお嬢ちゃんが見たって」

「マジか! 初めて見たぞ、腕ごととか。ダンジョンパねぇな!」

 

 テンション高ぇ。てか主神より先に団長? っぽい人に挨拶すんのこの受付。当の本神は気にした風もなくこっちをチラ見してから奥へ入って行ったんで平常運転っぽいが。

 

「なんだ楽しそうだな、どんな話だ?」

「ウォーシャドウの強化種らしいんだが、光ってたらしいぞ」

「なんだそれ。俺にも聞かせろー」

「この変な矢は? 使われてるのなんだこれ」

「うわマジだ。見た目から面白いな」

 

……収拾つかなくなってきたな。一応まだ売るって言ってねぇのにダートもドロップも奥へ持ってかれたんだが。受付のやつも一緒に行ったし。どうすんだこれ。

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