そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱) 作:夜月工房
時が経つのは早いもので、ベルたちがオラリオに来てからもう大体二週間が経過しました。現在アタシは豊穣の女主人でウェイトレスをしています。
「団体様入りますニャー!」
店先でリューがテラス席云々と丁寧な対応をする一方、アーニャが店内へ雑に団体の来訪を告げる。はい、【ロキ・ファミリア】ご一行です。それを聞いた我らがベル一行の反応は以下の通り。
「あ……」
「チッ」
「ハァ……」
「お姉ちゃん、このページの品物を一通り順番にお願いします」
あらマイペース。
ベルは昨日ダンジョンで一悶着あった面子を見て固まり、姉御は分かりやすく不機嫌になって酒をあおる。オッサンはそんな姉御が癇癪を起こさないよう祈りながら溜め息を一つ漏らすと、肉を切り分け口に運ぶ。そしてリリはデザートを全品注文していた。団体が来たって聞いたから先手打ったな、賢い。
「あいよー、まいど。お飲み物は?」
「ソーダフロートでお願いします」
「かしこまりました、っと。ミア母さーんデザート全品一つずつとソーダフロート一つ注文ー!」
「手が離せないからアンタがやりな!」
「マジか……りょーかーい! じゃあ後は頼んだぞシル。頑張って盛り上げてくれ」
「はーい。ほらほらベルさん。今日は【ランクアップ】のお祝いなんですから、ぐいっと!」
まさかの甘味製作係に任命されてしまったが、まぁこれから忙しくなるのは間違いないんだし、使えるものはバイトでも使うのは当然か。
原作と違ってベルは複数人で、シルの台詞通りに祝いの席でもある。そこに健啖家のオッサンがいて、地味に食い道楽に目覚めていたリリが大量に注文している事もあるんで、連れてきた責任だと早々に対応を一任されてたりする。
ちなみに、原作イベントの朝シル酒場誘致キャンペーンはなかった。四人いて三人はしっかり者だから騙せないもんね。ベル自身も常に
それでも店に来てたのは、ロキより早くこっちの予約を入れといたから。カウンター席に四人分。食べ放題コースと銘打って一日分の売上に相当する額を先払いしてあるので文句は少ししか言われなかった。
売上額を把握してる理由? 売上の確認作業を手伝う機会があったんだよ。例えば最初はそう、リューが店に馴染めてない頃にアーニャがフォローに入るも全く、全く! 歯が立たず、そこへ酒を納品に来たアタシ……当時Lv.4までは戻ってたが、Lv.5に育てちまってたアホーニャにホールドされて帰れなくなったから仕方なく、ね。ミアさんは何を考えてこいつらに担当させたんだろう。アタシを引き込む計画にしちゃミアさんらしくないし。立案侍女監修女神とか? 今度からまとめてシルシルって呼んでやろうか。
ちなみにそこから少しして店員になったクロエとルノアは、仮にも仕事して生計立ててたからか最低限の計算はできてた。だが冒険者として派閥に属していたネコエルフは……いや、二人の名誉のためにもここは言葉を濁しておくべきだな。アホとポンコツに帳簿触らせんな。
酒場ってのは騒がしいのが常なんで、姉御には音声を軽減する結界の魔道具を渡してある。周囲の騒音――正確には一定以上の音量――を設定値まで落とす調整をしてるんで、大声の会話内容とかはそれなりに聞こえてしまうが。
まぁそれを打ち消せるくらいの料理と酒の味、なりより外食ではしゃいでたベルで不満を呑み込んでいたわけだ。
それでも酒場ってのは騒がしくて【静寂】には苦痛な場所だろうから、最初から全力でもてなして機嫌取ってるアタシ偉い。一応、これがお前らの託した
ちなみにベルの側に居座ってお酌してるシルは、予約客に対する配慮(笑)で名前だけのメニュー表から内容を解説する役割を買って出たのでここにいる。あざといキャラとかめっちゃ気に入らなそうな姉御のセンサーすり抜けてるのすごくね? まさか姉御がアタシの顔立てて我慢するとかは考えにくいし。
クソ忙しい中で手が一つ減るのは中々に痛いので働けと言いたいが、お店の事情が事情なんで強く言えない。ぶっちゃけ予約取ったのは原作イベントの状況再現を試したかったのもあるし、フレイヤからの評価を見ておきたかったわけで。
まぁシルとしてはベル一行まとめて高評価っぽい。つーか魂見れるなら
「はいよー昇天ペガッサ星人MAX盛りパフェお待ちー」
「わぁ……」
「「これはひどい」」
「うぷっ……」
「ベルさん!?」
それはデザートと呼ぶにはあまりにも大きすぎた。大きく、分厚く、重く……そして大雑把すぎた。それはまさにチャレンジメニューだった。
はい、ノリで考案して採用されました。前世の昇天ペガサスMIX盛りを参考に作られた、生クリームとチョコレートの祭典。そこからモンスター要素を省こうとペガサスをペガスス座由来なペガッサ星人に置き換えたらなんとなく昇天の意味が変わったよね。MIXしてないからMAXに変えてボリュームを更に増やした結果がこれだよ! そら甘いのが苦手なベルは視覚嗅覚だけでダメージ入るわな。
なお制限時間内に完食すると特典として代金無料、先着三名様限定で手のひらサイズなペガッサ星人のソフビ人形が付いてくる。これがまた何の間違いか、地味に
「おい、あれ……」
「なん……だと……」
「(もっきゅもっきゅ)」
カウンター席なので人目につく事なく運ばれたパフェであったが、全く気づかれないわけでもない。というか、リリの座高と大して変わらない高さを誇るパフェは視界に入ってさえしまえば普通に目立つ。
ダンジョンに潜りモンスターと戦う屈強な荒くれ共であっても、むしろその多くが男であるからこそ食いきれそうにない
自然と注目が集り、波及していくざわめきは当然のようにバカ騒ぎしているロキ派の面々にも届く。まぁ、だからといって何かが起きるわけでもなく、当事者の仲間であるヘスティア派の面子はそれぞれ食事と歓談を楽しみ、そしてリリは当たり前に完食した。制限時間を半分近く残して。
伝説の瞬間を目の当たりにした客たちは大いに沸き立ち小さな英雄の誕生を讃えたが、すぐに追加で持って来られたチョコアイスで口直しをしつつ運ばれて来るバケツプリンに目を輝かせるリリの勇姿に閉口した。ベルはお腹いっぱいになるまで飲み食いしたところを甘い匂いに包まれ昇天していた。
なお、酔ったベートが原作イベントに近い感じの発言をしていたが、周囲はリリの偉業に夢中だったので一人相撲に終わっていた。アイズはアイズで厨房からデザートを運んで来たアタシをガン見してたので話しかけられてる事に気づかず無視する形になり、ベートは無視された原因に因縁をつけようとガンを飛ばした先にいたのが
ついでにロキはリリに萌えてたが、フィンの命令を受けた団員たちに黙らされていた。当のフィンはやや引きつった営業スマイルを浮かべながらティオネの酌を受けてハイペースで酒を飲んでいたが、アタシとしちゃ別に初対面時に助けてもらった恩があるくらいで含むところはないんだよな……あるいはライラに既成事実の作り方を伝授したのがバレたか? もしくはダンジョン内の件から
結局、リリがデザート類を完食したタイミングでベル一行は帰って行った。ロキ派との絡みはなく、姉御がキレる事もなく、そんな事がどうでも良くなるくらいリリが笑顔だったので、オッケーです。ぶっちゃけデザート全部アタシお手製なんだし店で頼まずに
原作の恥知らずな棚上げ自爆は不発したし、二次創作におけるある種のお約束であるベートをボコして最強派閥にツッコミ説教入れるイベントも起きなかった。なんだろうな、この……寂しい、のか?
ちなみにリリが完食したのを見たティオナが昇天ペガ(略)に挑戦したが撃沈され、メニュー表を見て中々にいいお値段だった事に気づいた幹部勢が揃って顔を青くしていたのはいい思い出。まぁ他の客は盛り上がってたし、ミアさんはいい笑顔してたからヨシ!
ベル一行が帰った後はフリーになったんで、一般バイト店員としてロキ派閥の注文も取ったり食器を下げたりする事があった。その際にアイズや幹部を相手に雑談する機会もあったんだが、アイズはダンジョン内で見かけたベル一行が新人集団な事を聞いたらしく強くなる方法について改めて尋ねてきたし、幹部はやはりオッサンと姉御に七年前オラリオの敵となった最強の姿を見たらしくシリアスな感じで詳細を尋ねてきた。
とりあえず平たい胸族として同族意識を持っているっぽくて妙に馴れ馴れしい態度のロキを番傘の上で転がす芸に巻き込みつつ、上級冒険者が他派閥の情報漏らすわけないだろって呆れた表情で
本当なら無様に返り討ちに遭った最強派閥なんて醜聞への口止めに今いる客の分奢るくらいするよな~って追い討ちかけるんだけど、誰からも援護がなかったガレスが不憫なんで黙っておいた。ガレスは泣いていいと思うよ、うん。迷惑料の名目で私物のウィスキー数種類贈呈しといたわ。
wi-fiが死んだのでスマホ投稿。改行とかいつも以上に雑だから後で直せたら直す……かも。元よりチラ裏クオリティなので多くは求めてくれるな皆の衆。