そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱) 作:夜月工房
ティとヒが混じってフィになったのでAMSから光が逆流してそこからマナフィになれなかった下位互換の悲哀を受信したのだ、メイビー。ちなみに先日電子書籍で検索したときにもヒュリテ姉妹って誤字ってたのは内緒。こっちの間違いは原因不明。発音のしやすさだろうか。ダンまちが海外の神話伝承なら日本伝来に伴ってヒリテ姉妹とかヒルテ姉妹とかってコンパクトに訳されてそう。
バイトを終えて酒場を後にしようかと思ったら土砂降りだった件。
通り雨な気もするんで、無理して雨の中を帰ってリリを心配させるのは心苦しい。とはいえ片付けを終えた店内ではロキ派の打ち上げという大一番を乗り越えた店員たちもまた明日に備えての早寝……と思わせてささやかなお疲れ様会を開いていたんで、リリに念話で連絡してからそっちに巻き込まれといた。雨粒を避けながら濡れずに帰る事すらできない不甲斐ない姉ですまない……。
まぁ、賄い飯ってやつ?
いやまぁ、真っ先に代打を買って出たのがベル相手にしてほとんど仕事サボってた余力ありのシルだったせいなんだが。雨が止むのを待って擬似的な密室と化した店内で異臭騒ぎただし鼻だけじゃなく目もやられる可能性ありとか、避けれんなら避けるだろそりゃ。
他の店員? 疲労困憊で
あるいはこの有能ブチキレ案件と対価の支払いが前世における神と供物の始まりなんだろうか。当時の奉納された物と現代の金銭じゃ稀少性が段違いなんだから、ある意味じゃ随分と神も安くなったもんだ。生贄文化を考えると命は高くなったのか安くなったのかわからんな。価値が高すぎて支払いには使えないのか、逆に底値だから支払い足り得ないのか。
「つーわけでなンかねェの?」
「なんでおミャーはそんな偉そうなのニャ」
「屈辱ですがアーニャに同意します。貴女には相応の給金が支払われるはずだ」
「そうか、ならテメーらの追加注文は終いだな」
「「!?」」
アーニャ、リュー、アウトー。ケツバットがないだけありがたく思え。タイキック代わりにルノアの肩パンでもいいぞ。食らった事ないけどそこそこ痛いはず。ミアさんの拳骨に比べりゃ余裕かもしれんが。
そのミアさんだが、用事があるとか言ってシルを連れてどっか行った。
つーか
「お、おーぼーニャー! こうなったら反乱ニャ、革命ニャ! 今こそミャーたちの絆を見せつける時、みんな立ち上がるのニャー!」
「アーデ、私ピラフとビールと塩キャベツ追加でー」
「ミャーはドドバスの揚げ物を頼むニャ。あと炭酸系のカクテル」
「あいよー」
「ニャニャ!? う、裏切り者ー!?」
「あんたらが勝手に自爆しただけでしょ。巻き込まないで」
「ねーならねーで流せば終わるのに反応するからニャ。しかも力関係逆なのに
「ウニャー!?」
「わ、私は……正義が……クッ!」
アホーニャが革命を呼びかけるもあっさり流される。人望はないが可愛がられてはいるようで何より。なお年齢と勤務年数。
いやまぁ正確な誕生日とか知らんから自称の年齢ではあるし、その上で地味に21か22の同年代なんだが。
なお外見は種族を差し引いてもアタシが断トツに
でもその理屈だと
はい、そんなわけで飲んで食って騒いで完全にできあがったのがこちらの馬鹿共です。結局ラストオーダーにされた二人は他の店員から分けてもらう形で飲み食いしてた。ユウジョウ!
しかしその分け合う行為から奪うに発展したせいで悲劇は起きた。つーか現在進行形で起きてる。
「だからアイツはダメなのニャ。ダメダメなのニャ。あんな事したらフツーのやつは死ぬのニャ」
「ダンジョンでわざと強化種を作る、ねぇ」
「イカれてるとは思うけど効率的でもあるニャー」
「しかし止めるべきだ。万が一倒しきれなかった場合は他の冒険者を危機に晒す。血塗れのトロールの話は記憶に新しい」
うーん、秘密だって散々言い聞かせて契約書も誓約書も書かせたんだが、駄目でしたね……。酔い潰して記憶が消えるか試すか。
「はいよ、酒追加」
「おー、来たニャ諸悪の根源! このアーニャ様が正義の名の下に三枚に落としてやるのニャー!」
「三枚は下ろすンだよアホ。しかも
「む、正義ですか。ならば私も参加しましょう」
「座ってろ酔っ払い」
「おうおう、やるならさっさとやるニャ。ついでに酒の肴がなくなったから作って来いニャ」
「どっちもほどほどにがんばれー」
「止めろや店員共」
ここはいっそ乗って対昭和家電の伝統奥義、叩いて直すを実行する方がいいんだろうか。でも普通に考えてLv.6同士がぶつかったら建物がもたんよな。そこにLv.4も混ざるわけだろ、平行詠唱で魔法ブッパしそうなの。なんなら観客も空気に当てられて混ざるのは可能性あるし。
この事態を収拾できるやつは素面のアタシだけしかいないし……どうにかして矛先を逸らせねぇもんかな? つーか外雨止んでんじゃん。捕獲用麻酔玉バラ撒いてそのまま帰るか? ミアさんたちもそろそろ帰って来てもいいのよ? そうか、ミアさんか。
「考え事とは随分と余裕だニャ?」
「違ェよ。店壊したらミアさんが怖ェなって思ってな」
「「「………………」」」
「アタシはバイトで喧嘩売られた側だからお咎めは軽くなるだろうが、店員の皆さまにおかれましてはどうなる事やら」
「か、か、かちゃーんが怖くて酒場の店員は勤まらないニャー!」
「呂律回ってねェぞ。母ちゃんって言えてねェじゃん」
「う、うるさーい! こうなったらみんなに証言してもらっておミャーに責任全部おっ被せてやるニャ!」
「最強派閥の幹部と同格なのに、何を間違えてそこまで残念なンだ、テメーは」
「う、ウニャアァァァァン!!」
「…………?」
ぐーてんもるげん皆の衆。アタシだ。なんか気づいたら知らない部屋に寝かされてたんだが。
とりあえず現状把握も大事だが、こんなシチュエーションは中々にない。やはりお約束はこなしておかねばなるめぇ。
「知らない天井だ」
特に感慨もないが、言ってみたい台詞上位だよな。うんうん。じゃあ現実逃避は止めようか。何せ隣に丸出しというかモロ出しなアホーニャが寝てやがる。悪態の一つも吐きたくなるがこの状況だとなんとなくF○ckの意味が変わっちまうんだ。
つーか何が起きたマジで。記憶を遡っても酔っ払いの相手をしてたのしかわからん。なんだろうな、最後の自分の発言が聞き方によっちゃアレンと比較してるようでアーニャの地雷を踏んだとして、実は背後に帰って来てたミアさんの拳骨でも落とされたか? あるいはシルが声で魅了振り撒いた? 大穴で実はこっそり【ランクアップ】してたアレンが妹を泣かす相手に天誅かましたか。でもその場合はこの状況には繋がらねぇわな。いや逆にどんなルートならこうなるってんだ。うーん、わがんね。
とりあえずアタシは普通にエプロンドレス着たままなんだが、これはこれで料理の油が染み付いてにおいとかが……あー、ベッドまでにおい移りしてやがるな。これはマズい。ミアさんの説教を避けるためにも【
つーか【
そもそもこの場合、性犯罪者扱いされるのは合法ロリを連れ込んだアーニャなのか、妙齢の女性の寝室で全裸の部屋主の隣で寝てた着衣のアタシなのか。個人的には連れ込もうが押し入られようが部屋に上げる方の責任だと思う。相手の陣地に入るって事は生殺与奪を握られるのを許したって事だし、部屋主の圧倒的な優位なんだし。
しかしこいつすげーアホ面晒してんな。油断しきってるというか……これ見てるとアタシ悪くねぇって気持ちにさせてくれんな。お礼にネコヒゲでも落書きしてやろうか。眉毛も植毛するか? あ、駄目だこれ起きるな。
「むニャ? ふわぁー、もう朝か……ニャ……」
「……よォ、全裸猫」
「ニャ、ニャ……」
「叫んでもテメーの全裸大公開して終わりなンだが? つーか隠せや」
「……ニャアァァァァ……」
この世の終わりみてぇな顔して萎びたんだが、これはどのルートなんだ。こんなんゼロシステムも五飛も教えてくれねぇよ。叫ぶのを我慢したところを見るにパニックを起こさなかった……何かしら自覚があると見ていいのかね。いやもうその辺どうでもいいから割と全力で無かった事にしたい。大嘘憑きでも時間遡行でもいいから下さい。
この後めちゃくちゃ話し合いした。
結果わかったのは、叫び声に
服に染み付いたにおいへの対策で全員ひん剥いてベッドに突っ込んだらしいが……髪の毛は? 何も考えてなかった、と。はぁ。
で、アタシはなんか戦利品として持ち帰られそのまま抱き枕になっていたらしい。あぁうん子供って体温高いもんな。猫も大概高いと思うんだが。料理のにおいは慣れちゃって気にならなかった、と。自分は全裸になったのに、か。そんなもんなんかね。酔っ払った事ないし酔い方も個人差あるしなぁ。交通標識だの三角コーンだの見知らぬ異性だの持ち帰る話は溢れてるからそんなもんか。
とりあえず一線は守り通した。記憶はないがそういうことにしておこう。鏡見たらめっちゃ首筋に虫刺されみたいのあるけど、ノミか何かと思っておこう。このままリリに念話で連絡したら直接ダンジョン行って
なんて悲壮な覚悟を胸に秘め、準備に向かうアホ猫と一緒に店へ顔を出す。無断でお泊まりしたからミアさんと宿泊費の話しといた方がいいだろうし。ところでこれって同伴出勤みたいになるんだろうか。
なお、店先の会話で判明したのはアーニャ以外の面子からは生意気だけど有能なマスコット認識なので性的な事態に発展する可能性は全く考えられてなかった事。そしてアーニャの場合は兄に甘えられない妹の甘えたい欲求がバーストして雑に扱いつつも手の届く位置までしか突き放さない絶妙な距離感を保ち無茶振りにもちょくちょく応えてくれるアタシに頼りがい――姉的なものを見ていたとか何とか。
え、じゃあ何、こいつ姉のように思ってる相手の首にマーキングしたの? 病んでません? アレン一度はこいつに捕獲されたはずなんだけど……まぁ、実の兄妹の問題だからね。げに麗しき兄妹愛。仲良き事は美しき哉。
とりまトウモロコシの皮でも剥くみたいに一枚一枚丁寧に二十二歳の複雑な妹心を
店を出た後で、エイジャとラピスから昨夜の詳細を聞かされてアタシまで恥ずか死ぬ羽目になったんだが、まぁ詳しくは語るまい。
ついでにそのエイジャたち経由でばっちりリリに伝わっていた模様。お願いだから慈母の微笑みを浮かべながら今夜はお赤飯ですねとか言わないでほしい。
見上げた空は、嫌になるくらい晴れ渡っていて。
どこまでも広がる青の下、あぁ、アタシはどこまでも異邦人なんだな、と。
ぼやける視界をそっと手で隠すのでありましたとさ。