そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱)   作:夜月工房

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103.遭遇しました。ドロップアイテム下さい。

恥ずか死した鬱憤を晴らすため、アタシはダンジョンに突撃した。雑魚じゃ釣り合わねぇって言われて恥辱を覚え奮起した原作ベルと比べて更に恥が倍プッシュなんよ。いやまぁ怪物祭(モンスターフィリア)が近いんで余り遠くには行けなくて到達階層の更新は無理があるんだが。非公式記録は58階層だし。公式はオッタルって証人がいるから51階層にしてるが。

そもそも59階層はシナリオ上の重要なポイントだろうから迂闊に立ち寄れないし。つーかあの芋虫っつーかキモ虫はロキ派の遠征時に51階層までは確認できて……50階層の本陣襲撃してたか。あれはレヴィスが指揮してたからか? むしろあの辺の動きは調教師(テイマー)の指揮ありきかね。

以前58階層まで行ったときは既にアイズの魔法覚醒から数年が経過してたんだし、レヴィスが芋虫けしかけてもおかしくなかったんよな。そうしなかったのは……まぁ、火柱ボンバーしながら高速で走り回る謎の人型物体とか、溶解液が強みなキモ虫や植物っぽい食人花とは相性最悪っぽいか。むしろ接近すると爆発に巻き込まれるのに高速で突っ込んでくるとか誰が相性いいんだ。全身が最硬金属(オリハルコン)並に頑丈で爆発に耐えながら押さえ込んで圧殺できる壁役? それなんてエイジャ?

極彩色の魔石は確認しておきたいところはあるんだがな。精霊の分身(デミ・スピリット)の餌になる性質から考えると、マトモな低位精霊の強化に使えるか気になる。

まーでも、それこそ怪物祭(モンスターフィリア)でいいかなーって。堂々とエイジャの賢さと愛らしさをオラリオに広める大事な機会だから逃すわけにはいかないし、そのためには重症の可能性は減らすに限る。逆に芸を披露してる最中だと初動が遅れて食人花に間に合わない可能性もあるか? 手間取るのはロキんとこのネームドも変わらんからへーきへーき。

 

そんな考察にもならない雑な思考はさておき、ストレス発散に最適な闘技場(コロシアム)で無限湧きする骨と戦士の終わらない戦いに身を投じたわけだが……向こうがLv.4並でこっちはLv.6だから通常も上位も【経験値(エクセリア)】としてはほぼうまみがない。それに物を壊す事でストレス発散はできたが、今度は区切りがないんでイライラが溜まってくる。我ながら理不尽だなーと思いつつ、何か戦果が欲しいとも思ったのでここは一つ情報を選択する。

闘技場(コロシアム)は減った側から補充される性質を持つが、上限一杯のモンスターを減らすことなく捕縛して別の場所に移した場合、新たに補充され始めるのか。される場合、どれくらいの距離で補充が起きるのか。これってトリビアになりませんかね? ある時を境に突如出現した闘技場(コロシアム)の調査そのものは価値があると思うんで無駄知識ではなくなりそうなのが難点か。意見を聞ける専門家がいないのも痛い。こんなときは、そう。

 

「私自らが出る!」

――XEXEXはいいぞ、っす

――じょ、冗談じゃ……

 

というわけで、実際にやってみた。闘技場(コロシアム)のモンスターは侵入者が来たら争いを止めて仲良く襲いかかって来るから、数を減らさず動きを止めるのは比較的楽だった。ダマ鞭の形状変化で個々に拘束して大名行列みたいに。うむうむ、特製超硬金属(アダマンタイト)合金を継ぎ足し続けて全長1.2K(キルロ)まで伸ばしたかいがあるってもんよ。おかげでめっちゃ重いが。市壁の上から海釣りしたいとかいうアホな理由で作り始めて、持ち運びできる重さから途中(ここ)で断念したんよね。筋肉が足りない。もしくは常時戦闘モードで手加減を完璧にするかすればいいんだろうが、それはそれで待機電力的な感じで疲れそう。

 

で、そいつらを引きずり回して時間を潰したら闘技場(コロシアム)に戻ってきたんだが、もぬけの殻ってやつだった。つまりダンジョン内の通常モンスターとは別枠で管理されてると見て良さそうだ。

そうなると今連れてる闘技場産のモンスターを各所で解放した場合、通常モンスターとも同士討ちするのかも気になるな。極彩色の魔石って改造品の存在を思えば、人間が使う範囲においては影響のない特性が闘技場産のモンスターやその魔石に備わってる可能性はある。闘技場産の魔石から絞り出せる魔力が少ないとしても、魔石自体に個体差があるから怪しまれる可能性は低い。つーかアタシだって今考えて初めて気にしたし。

強化種についても闘技場産魔石で育てたら魔力量の差でより多く食わせる必要があるかもしれんし、闘技場産魔石を食った事で闘技場特性とも言うべき性質を引き継ぐ可能だってある。その意味じゃエイジャたちに食わせる前に鑑定せんとな。

で、最後に景気良く内側に閉じ込めるお仕置き系の結界魔道具(マジックアイテム)に大量の時限爆弾と一緒に放置して距離を取る。どれくらい離れれば人間絶対殺すモードから同士討ちモードに切り替わるのか……本来なら何度か確認するべきなんだが、まぁ次回未定だ。アタシの場合は隠形があるんで参考記録にしてもちょっとなぁ。

で、少しずつ離れてたら時間切れ(タイムアップ)。無事に爆弾が起爆しましたとさ。結界ごと吹き飛んだな。中々の威力だ。

 

――母親(かーちゃん)がタンスの角に足の小指ぶつけたみたいな悲鳴上げてるっす

――大袈裟なんだよ

 

モンスターの備える感応性からか、ダンジョンの状態を説明してくれるエイジャたち。今、アタシの脳内ではぶつけた足の小指を保護するように手を添えようとするも片足立ちになった事で崩れたバランスを取ろうと片足跳び(けんけん)するも叶わず転んでしまい途中ついでとばかりに後頭部をタンス側面の角に強打するコミカルな女性の姿が浮かんでいる。これがダンジョン……ッ!

しかしアタシにも不自然で甲高い音は聞こえていた。ダンジョンが哭いたという事は、凶事の前触れでもある。エイジャとラピスを【異界倉庫(ドラッヒェン・マーゲン)】から出して、自分でも魔道具(マジックアイテム)で魔力壁を張る。

変化はすぐに訪れた。ヒビが入る不吉な音の発生源は……天井。

 

――エリック! 上田!

『ラピスが喋ったっす!?』

「落ち着け、最初から喋っちゃいンぞ」

 

細かくツッコミする余裕がないんでコントはさておき、現れたのは、紫色の骨。頭部は角を持ち、鋭い牙が見える。大きさは……インファント・ドラゴンとどっこいか? つーか頭の後ろ側に伸びたその角は何に対する備えなんだ。ビジュアル的な格好良さはあるけどよ。ちょっとダンジョンと話し合わなきゃねぇな?

つーか原作だとジュラ・ハルマーの出したら結論が……あかん忘れた。まぁ階層崩落させる規模だったり、蒼の巨滝(グレートフォール)で繋がった25~27階層みてぇな共有する区域を爆破したりで出てくるはずなんだが、何故この規模で? わざわざ急遽こさえるだけあって、闘技場(コロシアム)は何か特別な意味が込められてるのかね。

例えるなら待機状態の電池寿命を見るために耐久試験をしてる最中どこからともなく部外者がやって来て勝手にいじって消費量を変えちゃったからデータが無駄になっ……おえっ、めっちゃ邪悪だなアタシ。だが清々しい気分だ……普段から馬鹿高い出現率や怪物の宴(モンパ)仕掛けやがって。いい加減に慣れはしたが、仕返ししねぇとは言ってねぇ。この程度でご破算にできるならコスパは最高だよなぁ?

つーかジュラは一人で条件を割り出したって言ってたが、よく生き延びたな。ダンジョンってそんな甘いもんじゃねぇと思うんだが。まぁどうでもいいか。縁も所縁もない相手、仮に出会って敵対するならその場で殺せばいい。

つーかむしろ原作と違って例の悪夢が小規模だったから確認されてねぇのか。え、じゃあ何か、これ初観測? やっべやらかした感。いえーいウラノス君見てる~? 今からダンジョンの防衛機構ちゃんと濃厚接触しちゃいまーす! てか割とマジで大丈夫? 息してる?

まぁ原作のはそれぞれアストレア派と相討ち、ベルとリューのLv.4コンビに敗北。アストレア派は消耗してたのを除いてもLv.4が三人と3が八人と相討ちでしょ。事前情報なしなせいで魔法反射が刺さった事を踏まえれば……うん。まぁ、なんだ。総合的にはLv.5だけど長所の攻撃と速度はLv.6くらいって見ておけばいいかね。なんなら防御は魔法反射頼りのLv.3程度かもしれんが。

 

「とりま様子見なしで潰そう」

『了解っす』

――アナトリアの傭兵か。できる、と聞いている

 

生まれ落ちた骨は威圧感バッチリな咆哮を上げると、左右へ飛び跳ねジグザグの軌道を描きながら突っ込んで来た。

とはいえLv.6の動体視力だと普通に追える範囲。サイズを考えれば素晴らしい速度ではあるんだが、ぶっちゃけ抗争ラストで見たアレン未満でしかない。これだと力の方も抗争ラストのオッタル未満だろう……いやまぁそんだけあったら大体の冒険者を防御の上からでも一方的に殺せるんだが。

 

「速いってのも考えもンだよなァ」

『盛大な自殺だったっすね』

――無謀だったな、アナトリアの傭兵

 

はい、ダマ鞭を形状変化させて仕掛けた鋼線罠(ワイヤートラップ)は爪で引きちぎり食い破って来ましたし、アタシが魔道具(マジックアイテム)で張った魔力壁も片方の爪と引き換えに破りました。が、そのまま高速でエイジャの張った透明で捻くれた針山状の魔力壁に突っ込んで全身を貫かれ、動けなくなったところをそのまま変形させた魔力壁に包み込まれ全身……全身(?)を磨り潰されて終わりです。骨粉のまま少しの間存在してたけど、そのまま灰になって終わったわ。

小竜サイズがメディシンボールくらいのサイズに圧縮されるのは、こう、前世で見た戦争をテーマにした作品の親が骨壺の形で帰って来たってやつを思い出すな。あれは遺体がなかったから中身が石ころだったっけ。実際に家族や知人の葬儀に参加した経験があるならそっちを思い出したかもしれんが、幸か不幸かアタシが一番最初だったしな。場合によっちゃ高校生の身空でキッズに混ざりながら三途の川のほとりで石積みしてた可能性と考えると転生したのは救いだったかもしれん。

 

「さて、倒しはした。が、ドロップアイテムはなかったな?」

『っす』

――やはり周回か……いつ回る? 私も同行する

「何院って言えばいいンだよ」

『Let's jo院っすかね?』

「賢い」

 

と、言うわけで再現です。闘技場(コロシアム)が修復されるのまーだかなー?

……はい、なんかめちゃくちゃ目に見えて分かるスピードで修復されました。やっぱり重要な施設なんですかね。そしてモンスターもわらわら湧いて来ましたが人間(アタシ)がいるのでこっちに向かってきます。はいはい湧き上限まで大人しくしててね……済んだな? よっしゃ爆弾と隔離結界でグッバイ! 来世では『異端児(ゼノス)』になって来るんやで!

 

――上から来るぞ! 気を付けろ!

『下からじゃないっすか!?』

「なンでそこ対応してンだよダンジョン」

 

二度目はアタシ達の足元から現れた。が、ちょっと横にどけたらエイジャの魔力壁でまず床を砕いて現れた頭部を砕かれ、そのまま床の内部へと侵入した魔力壁により残りの部分も粉砕されて灰に変わった。

本当なら一度敗北したんだし復讐(リベンジ)のために強化して再来するのかも確認したかったんだが、仮にそうなっていたとしてもエイジャの魔力壁はダンジョンの想定以上だったらしい。

今更だけど、魔力壁って反射されないんだな。こう、斥力的な感じでぐにゃ~ってなったりパリーンと割れたりする可能性も考えてたんだが。思えば初回の魔道具(マジックアイテム)でも爪で砕いてたな……相討ちだったけど。初めて会った時のオッサンより弱いってこったな。

 

「なァ、思ったンだが、この倒し方ってドロップアイテムになれなくね?」

『言われてみればそうっすね』

――許しは請わん。恨めよ

 

ふと浮かんだアタシの疑問だが、ラピスは既に認識していたらしい。ネタ台詞でなければ喋れない縛りの弊害がこんなところに……いや普通に喋れよと思わずにはいられないが、個性は大事だからな。先に思いつかなかったアタシの落ち度だ。

 

「つーわけで三度目の正直、イクゾー」

『デッデッデデデデ……』

――な! どうなってんだ、おい!

 

まさかそこで切るとは思ってなかったんだよ言わせんな恥ずかしい。なので言わなかった。

そんなわけで三回戦、気のせいでなければダンジョンの慟哭がどこか力なく諦観を感じさせる哀愁すら漂わせるものになってた気がするんだが……エイジャたちが言及してないからヨシ!

 

「ふむ、普通にやっても割とあっさりだな?」

『爪以外は脆いんすね』

――できれば、違う形で出会いたかった……

 

はい、戦闘シーンは変わらずカットです。今回は正道を行くという事で倉庫から爆弾をひたすら射出してみました。赤字覚悟の大盤振る舞いは、しかし確かな効果を発揮。魔法じゃないから反射できず、脆さが仇となって瞬殺だった……やり方間違えた感が半端なく、事実ドロップアイテムは残さなかった。悲しみ。

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