そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱) 作:夜月工房
さて、責任者の話し合いが終わったのでリリたちに合流して、まずはリリを抱き締めて頭を撫でながら誉め倒す。
一通り誉め尽くしたら、ベルたちにも評価を告げる。まぁこちらもほとんど誉める部分しかなかったわけだが。そして疲労の具合を確認して、念のため一泊する方向で話がまとまったんで街の貸倉庫からテントを引き出して街の外へ。
で、休憩を済ませて片付けもして準備もバッチリなんで改めて下に向かう事になったんだが……。
「よっ、よろしくお願いします!」
何故か【
何でもLv.3で伸び悩んでいる最中らしいんだが、根本的な原因として精神的な未熟さ、格上への依存癖のようなものが推測されるんだそうな。
なもんで身内から離れた同格のパーティーで荒波に揉まれて来いって話だったんだが……まぁベルはともかく他はいい顔しないわな。姉御は露骨に舌打ち、オッサン溜め息、リリは無言だがアタシの背に隠れて服の裾を掴んでいる。
このパーティーはあくまでベルと愉快な仲間たちであり、メインはロキから一方的に敵視されている主神の新興派閥である【ヘスティア・ファミリア】だ。なのでアタシにどうこうする権限はないし、アタシに口頭で依頼したアイツらは……端的に言って、アホだ。伝手のない派閥への紹介料だけでなく、不仲な主神の派閥との仲介料まで払わなきゃなくなってるしな。今さっき契約書にレフィーヤ直筆のサインもらったし。
契約自体は天下の【ロキ・ファミリア】とアタシ個人の法人である【ファイアワークス】の間で結ばれるんで、支払い代わりにレフィーヤをベル一行に派遣する系の手段は封じてある。付け入るとすれば一般眷族に過ぎないレフィーヤのサインでは派閥相手の契約として成立させられない部分だが、その場合はサインして貰った二枚目の書類であるレフィーヤ個人とアタシ個人の契約に切り替えさせてもらい、レフィーヤには
まぁ、そんな経緯なので普通に蹴ってもらってもいいんだが……あの
アイズの機嫌度が急降下してたのはきっと見間違いだろう。直後のウダイオスソロチャレンジ前の深層狩りに駆り出されない事を祈る。なんか宴会でアイズとリリの会話中に売り言葉に買い言葉的な感じで漏らしちゃったっぽいんよね爆破落下ショトカの存在。申し訳なさそうな落ち込むリリ成分を補給できたし慰め励ます権利までもらえたので必要経費だと割り切ります。
最終的には頼れる相手がいなくなって涙目になりながら右往左往するばかりの
いやLv.3なら普通に戻れるだろって思ったけど、おろおろする姿に威厳のいの字もなかったせいか、反論理由として挙げられなかった。それでいいのか第二級冒険者。
一応、リリのスキルを隠す意味で指揮はなしフリースタイルでの狩りって事にした。慣れるまではアタシがフォローする。とはいえ万能型を含めた実質前衛四人である。指揮を投げ出し思い思いに振る舞うとどうなるか、その答えが目の前に広がっていた。さながら獲物を奪い合う
「魔法を撃つ前に戦闘が終わるんですが……」
「だったら殴ればいいだろ。武器貸すか?」
「いえ、遠慮します。ぐすん……」
アタシの
そんな中、アタシはサポーター役でダマ鞭をアメーバ状に伸ばしながら死体から魔石とドロップアイテムを回収してる。大きめのリュックサックはとっくの昔にそれらでパンパンよ。二個目も半分近くになったぞ。
レフィーヤ? 彼女ならアタシの隣で震えてるよ。内股になってプルプルしてる。たまに中央の床や天井に湧くんで、そいつ相手に魔法を撃たせちゃいるが。
「つーか詠唱終わらせたのを待機させておけねェの?」
「そんな高等技術できませんよぉ~!」
「なら圧縮言語や早口だな。つーか魔力を直接操作すりゃ詠唱なンぞいらなくなンぞ?」
「できませんってば~もうやだこの人達全然常識が通じない~助けて下さいアイズざ~ん、リヴェリア
「ふーん、大変だねぇ後衛は。まぁその分、全力で撃ったら昨日のデカブツも消し飛ばす威力出せんだろ?」
「
なにこいつめっちゃ面白いんだけど。すげー泣くじゃん。前世知識だとアイズに尻尾振ってベルに突っかかっていく姿しか覚えてねぇからなぁ。後は【
つーか24階層それがあったかー。並行詠唱のコツ教えてもらったり、長短文詠唱の結界と雷撃も教えてもらってたよな。本人強化イベントと敵の弱体化に関わってたってことだわな。でも24階層の悪夢不発だし嘆きレスで主神未覚醒だろうし、そもそも新種の
一応、今度
他の
しかしアジトに攻め込まれるって、黙って
「【ヒュゼレイド・ファラーリカ】ッ!!」
「おぉ……」
「なるほどな、秘蔵っ子と呼ばれるのも頷ける」
壁も天井も床も傷だらけになった大広間で、ちょうど締めの
さすがに相手は冒険者じゃなくモンスターな、念のため。冒険者の方はちゃんとアタシに麻痺させられて転がってるよ。リリに
ベルは初めて間近で見る
「だが詠唱の速度は課題だな。後は並行詠唱を早期に習得する事と近接戦闘術か。杖術や素手の格闘術はそこのに学べば同格までなら対応できるようになるだろう。並行詠唱は……魔力の流れを感じ取り、それを支配するには自分なりのやり方を見つけねばならん。こればかりは才能と閃きに寄る」
「べ、勉強になります」
「今のって【
「そ、そんなわざわざリヴェリア様のお手を煩わせるなんて畏れ多い! あ、いえ、もちろんあなた方なら問題ないとかは言いませんけど」
「まー必要だと判断したら教えるか。現状だと歩行も覚束ない子供がお茶汲みしてるようなもんだしな」
「あうぅ」
「そうだな。貴様は類稀な魔力の持ち主だ。そいつの例えに習うならバケツ一杯に張った水を持っている。溢さぬようにするなら止まるしかないが……そうだな、それでも運びたければ、やはり中身を減らすのが最適解だろうな」
「へ?」
「なるほど。じゃあちょっと集めてくるから詠唱してろよ」
「へ?」
「他は休憩な。お代わりは各自で処理していいぞ」
「「はーい」」
事態を飲み込めていないレフィーヤを残し、その辺を走り回ってフリーなモンスターを捕獲、広間で解放。以下繰り返し。
なんだかんだで姉御も性分なのか、すっかり見込みのある
天才は教えるのが下手って傾向はあるが、姉御の場合は教える才能まで天から与えられてるっていうね。リヴェリア以上の
「ぜひー、ぜひゅー」
「よーし、じゃあ並行詠唱の練習ついでに杖術もやってくぞー」
「ま、待って……や、休みを……」
「モンスターは待っちゃくれねーの。ほれ、寸止めするけどなるべく避けたり弾いたりしろよ」
「ひっ! わ、ちょ、ふぉぉぉ!?」
モンスターのピストン輸送を十数回繰り返し、中には一度で殲滅できず二度撃ったりもしたんで、今日だけで何日分もの魔法を撃った事になる。もちろん
今のレフィーヤは疲労困憊だし、魔力も底を尽きかけている。だが、だからこそ
「慣れてきたら詠唱しながら動けよ。並行詠唱の練習だからなァ」
「ぶ、無理でずぅ」
「ブリもハマチもあるか。いいからやれ。【
「ぴぃぃぃ、とっ、【解き放つ一じょ「はい、そこ歪んでる」ブボォ!?」
結局この後は何度かの暴発を披露したが、途中でコツを掴んできたらしく動きながらでも次第に長く詠唱できるようになっていった。発動にこそ至らなかったが、外部の邪魔が入らなければ移動砲台もやれるんじゃないかな。身のこなしもまぁそこそこ。割とそっちも才能あるやん。
「よし、一旦ここまでにすっか」
「あ、ありがとう……ござい、まし、た……」
終了の合図を受け、レフィーヤはお礼を言い終わると同時にその場で崩れ落ちた。
「存外粘ったな」
「いや、アタシとしちゃ終わったのは並行詠唱の練習だけなンだが」
「それはさすがに……」
「鬼かお前は」
「ですが、一日に詰めるとなればこうなりますよね?」
姉御が健闘を称え、なんか周りもよく頑張ったよ的な暖かい視線を向けてたんだが……ここダンジョンぞ? 帰るまでが遠足。ただいまが言えてこその外出。持久力やスタミナは『
つーか小休憩したらモンスター相手に実践形式で杖術の訓練予定だったんだがなぁ。これガッツリ気絶してない? まぁいいか。今日はもう切り上げるか。【
「つーわけで【千】は台車に載せてアタシが引くから、みんなは帰り道も狩り続行な」
「略し方がダイナミックすぎる!?」
「そいつにネーミングセンスは期待してやるな」
「大した芸術家だよ、全く」
「さすがです、お姉ちゃん!」
見ろよこの抜群のコンビネーション。ロキ派どころか
そういやフェルズって紹介しといた方がいいのかね? 『
ちなみに24階層の