そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱) 作:夜月工房
受け身を取って体勢を整え、走り去るハイエルフの背中をじっとりとした視線で見送り、親子タイムを見守る事しばし。
「先生、勝ったよ……?」
「おぅ、お疲れ。そンでもっておめっとさン」
「……ん」
「はいはい。よくやったえらいえらい」
こっちに小走りでやって来たアイズの報告を受け取り、
「……クッ!」
自分には甘えて来なかったからか、ハイエルフが敗北感に打ちひしがれていらっしゃる。とはいえ回復と身だしなみを整えた後で初手詰問から入ったし残当なんだよなぁ。そういうところだぞ。まぁ、回復すら後回しにした黒ワイヴァーンの頃よりは成長が見えるが……えーと、何年だ? 大抗争の前の年だし八年か。それでこれとか、エルフの時間感覚くんさぁ。
思うに、やりたい事をやり遂げたんだしまずは認めてやらな。叱りつけて委縮させたせいで積極性を失い受け身に回るようになり成長まで伸び悩んでしまったらどうするつもりだ。エルフと違ってヒューマンの時間は短く貴重なんだぞ。
まぁおかげで飴と鞭の飴担当になって好感度が勝手に上がっていくんですけどね。
でも一般的には上げて落とすよりは下げて上げる方が好感度は上がるっぽいんだし、最初に大事な部分を注意してから認めて褒めるリヴェリアのやり方で正解なんだろうな。元より称賛される側の立場だし、するのは苦手そうだから余計に。
アタシは第一印象の補正が強いから落とされたらそのまま敵認定で永遠に好感度上げられなくなるタイプなんで共感できない話だが、割と広く使える知識ではあるから覚えてるし駆使してる……つもり。えぇねん嫌われてもいいから記憶に残って糧になって欲しい不器用な優しさの発露なん……やっぱなしで。ベートと同類扱いはちょっげふんげふん、彼のお株を奪うのは申し訳ないからな。
「けどその辺のスパルトイ、基本的に動けないだけで生きてるからな? 気を抜いたのは減点だ」
「あぅ……はい」
あぁ、ちょっと自慢気に微笑みながらも照れた感じで初々しさを失わないアイズが失敗したスフレチーズケーキのしぼむがごとく一気にショボくれた! 酷い、一体誰がこんな……いやでも真面目な話さ、こっち走って来る途中で何体か踏み砕いて撃破してんのに全く気づかねぇのはやべーんだわ。灰になってねぇ時点で気づけよ。
「……クッ!」
向こうで巻き添え食らってダメージ受けてるハイエルフ――魔力壁を利用するため(物理的に)持ち上げてた人間をまだ生きてるモンスターが転がってる中に放り捨てて、自身はまだ生きてるモンスターの中を駆け抜けてったどっかの第一級冒険者様がいらっしゃるな。
聞きました奥様、あちらの方あれで【ロキ・ファミリア】の知識担当なんですって。免許制だったら一発で免停の大ポカじゃね? まぁそれだけアイズを心配してたって事なんだろうけど。
一応、アタシが遅れを取るとは微塵も考えてなかった、とも考えられんだが……単に忘れてたとか、アイズを心配する様子見せなかったからムカついてたとかあるかね。ありそう。ポンコツの親はポンコツだしポンコツの子もポンコツなんやなって(哲学)。
「まぁついでだからスパルトイも片しとけ? 疲れてる時でもパフォーマンス落とさずに動けるように慣れておくのは重要だぞ。あと【
「うん、でも先生は……?」
「
「むぅ、私、もう子供じゃない」
「『もう』が付くなら確かに子供じゃなくなったのかもな。なら、頭撫でるのも今回で卒業か」
「……!?」
まるで食べたい味のジャガ丸くんが目の前で完売したときのような顔をしている……罪悪感と高揚のシーソーゲームで心の運動量が半端ないわぁ。ぴょんぴょんしないでおっおっおっとか言ってる感じ。
いうて考えてみても欲しいんだが、わざわざしゃがみこんで見た目幼女に頭撫でさせるとか外聞が悪すぎるんだわ。そこに【
「それなんだが、ドロップアイテムは譲るから始末を頼めないか?」
「パス。金が必要なのはそっちだろうがよ」
「それは……そうだが」
「……はぁ、仕方ねェな。自由時間が減るのもアホらしい」
というわけでダマ鞭をアメーバ状にして床に広げます。飲み込んだスパルトイから魔石を回収します。ついでに灰の中のドロップアイテムも回収しましょう。ちなみに何かを掴んだ感触はあるけど何を掴んだかはあまり判別できません。その意味じゃウダイオスの黒剣は分かりやすいですね。
つーかこれ、鑑定したらアタシが普段拾ってるのと違って名前の後ろと状態欄に(破損)って付いてるな。サイズ的にも小さめ。でも質はむしろこっちのがいいな? 戦闘中にちゃんと武器として取り出させたからか? あるいはアイズと打ち合う内に魔法が移りでもしたか? うーむ、三ヶ月後に挑むときは取り出させてから倒してみるか。
原作だと何が起きてるっけ。今から三ヶ月後……まぁほぼ原作開始から三ヶ月後がLv.4到達だし、そこから十日やそこらとなるとちょうど深層の真っ最中か? こっちじゃジュラ・ハルマーがジャガーノート知らんし両者の因縁も深くなさそうだからなぁ。つまり空き時間だから挑めるってわけだ。オッタルの武器? 知らんな。
そういやリューとベルの縁ってどうしよう。姉御的に大して育ってないの見てイラついてそうだし、訓練がてら引き込むか?
よし、今度また夕飯で豊饒の女主人を利用しよう。説得するべきはシルかヘスティアか悩みどころだが。そしてそこで店員の恥ずかしい過去エピソードを写真と共に上映しよう。特に監視カメラに映ってた、ルノアとクロエが雇われる事になった事件のラスト。庭に並んで正座してミアさんに説教されてるやつ。多分これでリューは釣れる。後は口八丁手八丁でダンジョンアタックに引きずり出す。
ちな、建物の重要部分は
そうだよ普通に【アストレア・ファミリア】定期的に戻って来るんだから、【ランクアップ】できる訓練、いやさ特訓を間に合わせねぇと。まぁ後だな。
「とりあえずこれは渡しておくわ」
「これ、って……」
「ウダイオスの武器か。これも初めて……いや、昨日リヴィラの街で似たような物を見たな」
「目敏いねぇ。ありゃアタシがソロで狩った時のドロップアイテムからできてンのよ。ただまァ、破損してンのに質はこっちのが良さげなんだよな」
「ふむ……貴重な品には違いないし、何よりアイズが偉業を成し遂げた証だ。ありがたく頂いておこう」
「そうしてくれ。あと
「バックパック……? わ、魔石がいっぱい」
「既製品は深層種の革を使ってンだが、お前はモンスターのドロップアイテムから作った防具とか嫌がりそうだし
アイズに
「本隊と合流すンのは二人でもできンだろ? アタシはこのまま下に行くわ」
「えっ」
構ってもらえなくなった子犬のような瞳でこっちを見てくるアイズがいるけど、さっきもう子供じゃないとか年齢差カップルの片割れみたいな事言ってなかったか?
「合流したら復活したやつからまた突っかかって来られるだろうしな。逃げさせてもらうわ」
「そっか、ティオネ……」
「さすがにダンジョン内では弁えると思いたいが……可能性は潰しておくに限る、か」
「そーゆーこったァな。ンじゃ、またな、アイズ。格上相手に挑んだ姿、格好よかったぜ」
「……うん! 先生、またね」
こうしてアタシは無事かつ穏便にロキ派から逃げる事に成功したのでした、と。下手すると39階層で一泊するからそこまで一緒に……とか言われてズルズル連れ回されかねなかったからな。
まぁスパルトイのドロップアイテムも持ち運びしやすいようにまとめて梱包したのを渡したし、魔石も収納したランドセルをアイズに背負わせる事に成功したからそのまま地上に帰るっしょ。もしかしたら地上で
惜しむらくはチューリップ型のひらがなで名前の書かれた名札つきのスモックとスカート、黄色い女の子用通学帽子がなかった事か。それだと幼稚園児になるからリュックサックじゃなく赤いポーチのが
……はい、集まりました。地味に二日ほど経過してるので連中も帰った可能性がそこそこ。後は忘れずに24階層の
あるいは既に
そもそも食人花や食人花を生産できるデカい花に指示できる
戦いは数だよってのはどんぐりが背比べしてるから成立する話で、この世界はどっちかって言うと質の暴力がまかり通るんだ。
いやまぁ現状だとメインプランはアタシが長距離ミサイルしこたま打ち込んで、ダメならオラリオ以外の諸々も含めて丸ごと指揮下に置く事で【
その『死なない程度』に精霊がどこまで寄与できるかって話なんよね。リリやベルに力を貸してもらう精霊には質を求めるけど、他は援護であろうと参戦できる数を増やした方が色々とできるし。アイズは精霊アリアのイベント期待だし、そもそも強制出撃だけど、スポット参戦だから改造なしの