そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱) 作:夜月工房
そんなわけで冒険者登録を済ませてから、今度はダンジョンアタック前の準備。
種族はヒューマンで年齢は10歳って事にしておいたが、割とあっさり受理された。まぁ事前にウラノスに謁見してるわけだし、ある意味で根回し済な扱いなんかね? 派閥違いも指摘されなかったのは割と不自然。それを踏まえて周囲の冒険者や神はまた何かやらかしたのかって視線だった。またヘスティア派に関する変な噂が広がるだろうなーこれ。
寄り道して【ディアンケヒト・ファミリア】と【ミアハ・ファミリア】の店舗部分を外から紹介しつつ、やって来たのはバベル8階。【ヘファイストス・ファミリア】の新人鍛冶師たちの作品が並ぶテナントだ。
「そんじゃ品物を見て回るか。元を考えれば後衛な気もするが、戦闘スタイルがわからん内はどっちにも転用できる軽装だな」
『ハイヨロコンデー!』
「声がでけェよ」
『アッ、ハイ。すみませんケジメします』
「いらんいらん、ふざけてねェで行くぞ。後で遊んでやっから」
【
鑑定は物の良し悪しを数値化して判断できるけど、作り手の込めた想いとか将来性なんかは反映されないからな。武器の説明というか背景とかのフレーバーテキストがほしかった。新宿エンドで有名なマルチバッドエンドシステム採用してる鬱ゲーの武器物語とまではいかんでいいからさ。いやまぁ極めて稀にだがゲーム的なアビリティっぽい付与がされてて、その説明にそれらしい物が書かれてる事もあるんだが。
「……これなンかはどうだ?」
『ハイカラでがすね』
「ははーん、さてはテメー意味わかってないな?」
お値段8000ヴァリスの
「さすがにサイズが合わないか。頼めば制作者に調整してもらえそうだが……まぁ後だな」
『そっとしておこう』
「はいはい、さてと……おっ」
見つけました。数値が高く安定もしてる、これが期待の新人と見せかけて長年Lv.1のままくすぶりすっかり鳴かず飛ばずなヴェルフ・クロッゾ作の軽鎧――
しかし、これが原作で見覚えのあるベルの鎧か。感慨深い……と言いたいところだが、着てるところ見ないとよくわからんな。
『なんとなく、いい物の気がしやがるです。存在しない記憶が溢れ出てくる感じ』
「ほォ、直感か。そういうのは大事だぞ」
普通の鍛冶してても精霊の血が反応する何かが込められてるのかね? 鑑定には出てこない隠しパラメーター。あるいは銘か? 見えない部分に刻まれた制作者の名前に精霊パワーが残り香みたいになってるとか。
「で、買うか?」
『お願いするでやんす』
うーん、キャラがブレブレで扱いにくい。基本的には年下の格下を思わせるムーブなんだけど時おり妙に強気というか。まぁライブ感? 残ったほんのわずかな精霊要素なのか、神に近いその場のノリで反応してる感じはする。意思疎通はできてるし、こっちが態度を変えなきゃ問題ないか。
あとは見た目がアタシより一回り小さいガチ幼女なんで、ベルにぴったりだったこれは一式丸々サイズ調整必須――下手すると打ち直しなんだが、これ制作者に直接依頼出せたっけかな。会計ついでに聞いておこう。うまくいけばヴェルフとの繋ぎができる。
「お買い上げありがとうございましたー」
制作者にリサイズ依頼可能って事だったんで予約しといた。支払いを済ませて、後は装備できる部分は装備していざダンジョン……と、思っていたんだがここで
「ねぇ、ちょっと話を聞かせてほしいんだけど?」
おっふ。
「りょーかいだ、ヘファイストス様。こっちからも話があるし、全く嬉しい誤算だァな……まさかこのテナントに来るとは」
「全くの偶然だけどね。さぁ、案内するから来なさい……キリキリ吐いてもらうわよ?」
はて、何を吐けばいいのか微妙に判断が難しいな。ルビスの搾りカスほどにも残ってねぇ精霊要素を見抜かれたんだろうか? ウラノスは何も言わなかったし、他の神も道中じゃ別に注目しちゃいなかったと思うんだが……いや、一部の
ん? あれ、今のアタシって善悪の判断もできてなさそうでいかにも無力な感じの囮くらいにしか使えなそうな年端もいかぬ幼女をダンジョンに連れて行く気満々の極悪非道な
冥界で思い出したけど、エレボスは英雄を生み出すための踏み台として
エレボス以外でも、ブリギットは身を呈して庇うくらいには男を愛したわけだし、フォボスだってヴェルフの活躍を天界から見守るだけじゃなくてもうちょっと干渉をさぁ。本人以外には些細にしか映らないきっかけを与えるサポート役みたいな感じでもいいから。
エレボスはもちろん原初の幽冥で大神級だろうし、ブリギットだって神話じゃダグザの娘だし場合によっちゃヘスティアと同一視される女神だから上位精霊送れるっしょ。フォボス? えーと、うん、頑張れ。アレスの従属神って時点で一気に格が落ちて見えちゃうんだわ。とはいえあの戦争バカはこっちでもオリュンポス十二神だったろうから扱い的には大神級なんかね。戦時中に正面から忍び込もうとしてたから神威を抑え込めてたって事だろうし。それの下なら中級のくらいは生み出せねぇかな。
まー神の価値観とかよくわからんし、自分が味わえない下界を精霊が味わってるのが許せないとか言っちゃえそうなのが人々から見た神だしな。後は単純に神界の取り決めとして、下界旅行経験者の精霊派遣禁止令なんてのがあってもおかしくない。
でもエレボスの性格だと気にせずルール違反しそう。唯一の眷族を気にしてそうだしな。なにしろあの命とか惜しくなさそうな気配してた歪な薄っぺらだからなぁ。抗争を生き延びてるかもわからんわ。オッサンの話じゃ五感死産ニキみたいな感じだったらしいし、幸せにするにも相当苦労しそう。ただでさえエレボスだぞ? あの気遣いの方向音痴な神なら、人生に彩りを添えるならやっぱ花だよな的な感じで嫁候補みたいな精霊送ってそうじゃね? そして広まる誤解で外堀を埋められ極めてプラトニックにゴールインするに違いない。アタシは詳しいんだ。
「それで? その子はどういう事なのかしら?」
アタシとルビスは小脇に抱えられて執務室っぽい場所に連行されると、来客用ソファーの上に乗せられる形で解放された。体面に座ったヘファイストスは、わかりやすく怒ってますオーラを出しながら尋ねてくる。おう、アタシは客だぞまずは茶でも出せ。
つーかこういう場合って、まずは自分の認識を述べた上で正否だとか正当性だとかを尋ねるべきだと思うんよ。知りたいのは自分の側なんだから、その内容にもっとコストかけて説明して解釈違いの幅を狭めろよと言いたい。不和の神か何かでいらっしゃる? どういう事に対する等価な回答なんざこういう事の一言で十分だぞ。それで満足できるならいいんだがよ。そうじゃねぇだろ。
言葉足りなすぎなのは職人だからか? 神だからか? 手先は器用なのに人付き合いは不器用とかそれでバランス取ってるつもりなのかね。つーか職人ってその傾向が強いけど、技能持ちって優位性を鼻にかけてるみてぇで印象悪いと思います。まぁヘファイストスは職人な上に神だから偏屈なのは仕方ないんだろうが。ゴブニュだと爺さんも加味されて倍プッシュ。その分だけ孫に甘い属性でン億歳から見た人間全体に甘くなってそうではあるが。つーか神話のヘファイストスも――個人的にはヘパイストスのが馴染んでる名前だが――爺さん属性なんよな。ロキはまだスレイプニル産んでるから納得できるとして、こっちはどうして
さて、話を戻すとして、どう返したもんかね。神意ってやつはほとほと面倒よな。
15巻ショックで吹き飛んでましたが、UA50k突破してました。ここまで続いてるのは閲覧頂いている皆さんのおかげです。いつもありがとうございます。