そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱) 作:夜月工房
今ヘファイストスが問題にしてるのは見た目か、種族か、それ以外か、アタシにとって重要な部分はそこだ。そこを濁してしまうと見当違いの答えが返って来て説明が二度手間になる率が高いんだけど、分の悪い賭けがお好きなタイプだったりするんだろうか。買い被りされてる? アタシは凡人だぞ神の基準やめーや。ついでに勘違いしたまますれ違うコントなんざ披露したくない。とりあえず情報を引き出す必要がある以上、玉虫色の回答をするしかないよねっていう。
「とてもじゃないが神には明かせないワケありな期待の新人だが?」
「また随分な説明するじゃない」
先に随分な質問されたからなんだよなぁ。これこっちから踏み込まねぇとダメなやつ? まぁダンジョン潜りたいし早めに切り上げたくはあるから漢解除といこうじゃねーの。
「逆に聞きたいンだが、ヘファイストス様としては何が気になるよ?」
「何が、って……あんたねぇ、いくらなんでも小さすぎるのよ! しかもわざわざうちの新人が打った武具を使わせて、何を考えてるのよ一体!?」
ふむ、呼び出されるまでは気にも留めなかった要素ではあるが、予想からは外れなかったか。これで精霊由来の謎効果というか神に愛され体質みたいな無自覚で弱い魅了効果とかあったら面倒な事になるなーとか思いついちゃったんだが、それはない感じだな。
いやまぁここは念のため踏み込んでおくか。ヘファイストスなら都合の悪くなる情報を知らなかった事にする処世術は身についてるだろうし。
その意味じゃ
「それこそワケあり部分が関係してるンだが……実際、こいつの外見以外で気になる点とかってあるか?」
「外見以外? うーん、特にはないけど。それで? 何があるのか話せないの?」
「端的に言えば精霊と縁があるンよ。遅れたが鍛冶神ヘファイストス様だ。挨拶」
『ドーモ、ヘファイストス=サン。ルビス・ニンジャです』
「あっさり明かしちゃってるじゃないの……それはそれとして、また濃いキャラ当ててきたわね」
「本当に申し訳ない」
「しかし精霊、ねぇ……」
普通に挨拶しろって言っても古事記にも書いてあるとか言って聞きやしねーの。果たしてこれは誰に似たのやら。素の性格かアタシのせいかの酷ぇ二択なのはさておき。
つーかアレだな、自分が義憤に駆られて動いたはいいけど実際は勘違いして先走りしすぎたって気づいて顔を赤くしてらっしゃる。かわいいね。クール系姐さんタイプの赤面からしか摂取できない栄養素がある。暴力がワンセットになりがちなので摂取の際は予め対策しておくのを推奨。
んで、ヘファイストスは改めて明かされた情報を念頭に置くと、唸り声を上げつつ前のめりになってルビスを凝視する。が、唸るのを止めると姿勢を戻しつつ瞳を閉じて首を横に振る。その後で肩もすくめた。
「んー、聞かされても不自然な感じはないわね。本当に幼いだけで普通のヒューマンにしか思えない」
「そうか。ならまァ、見た目以外で変に絡まれる心配はなさそうか」
「それだけで十分に心配しなきゃダメな部分でしょ……今更だけどあんたにヘスティアを預けて良かったのかしら」
「元気に農作業してっし、
「はぁ……」
とりあえずヘファイストスの目をすり抜けれるんなら、他の一般モブ神に疑問を抱かせる事はなさそうだな。わざわざ下界で思いつき以外の計画を立てる酔狂な神は少ないし、基本は場をかき回すために凸してくる連中だ。
今更だけど補足しておくと、ヘファイストスとタメ口なのは、敬語のアタシがキモいから止めろって頼まれてるから。解せぬ……と言いたいが、実際わかる。フェルズもウラノスの手前どうにか我慢してたが体が痒そうにしてたしな。骨なのに。
「とりあえず、だ。見た目はこれで設定も10歳のヒューマンだが現実は生まれたてホヤホヤな0歳児なんで安心してくれ」
「何一つ安心できる要素がないわよ……」
「アタシとしても予想外だからなァ……軽く戦わせて、もしダメそうならヘスティアの助手やらせる予定だし、鍛冶師の打った装備にケチがつく事はねェさ。上層なら間違いを起こす可能性は限りなく低いし」
軽く訓練場で動きを見た感じだと、少なくともリスペクト先のアニメイシヨンよりは動いてたから多分へーきへーき。魔力でカラテを再現してるっぽかったし。その内に3DダンジョンRPGの大御所や干支忍、火影とかの要素も混じりそうで怖いくらいなんよ。少しは忍べ。
「そこはないって言い切りなさいよ」
「いやァ、例えばフレイヤ幹部が総出で襲ってきたらもしかするかも知れンし」
「どんな想定よ、それ……余波でバベルが崩れるんじゃないかしら」
でもベルたち向けの試練としてやりかねないんだよなぁ、幹部によるかわいがり。原作でもアイズとの早朝訓練に嫉妬して幹部けしかけてるし。こっちでも既に
「そこは美神の気まぐれ次第だからな、アタシは備えておくだけだ。とりあえず聞かれた事には答えたつもりだし、もういいか?」
「えぇ、そうね……そういえば、買ったのは誰の作品なの?」
「これだな。あとそれで思い出したんだが、こいつらの性格ってどんなもん? 物は良さげだが人はどうなのか気になってな」
んんん、早くダンジョン行きたいのに引き留められるぅ! だがしかし、まさかそっちから話を振って来るとはなぁ。ぐっへっへ、せっかくだから情報収集させてもらうとしようじゃねぇの。
「ふぅん? なるほどね、確かにこちらでも目をかけてる有望株揃いだわ。性格はどの子も職人だし多少癖はあるけど……へぇ、そう……買ったのはこの子の鎧、ね。でも貴女なら知ってるんでしょう?」
「クロッゾか? 美術商から結界魔法を撃てる魔剣の製造依頼が来たとき話題に出たな。その後で調べたら没落貴族に現れた魔剣を打てる跡取りが確認されたと思ったら国外に逃亡して、神フォボスが送還されたまでしか追えなかったが。あー、言っとくが、物が良いからって手に取ったのが先だぞ」
「ふふ、そこは疑ってないわよ。というか結界魔法の魔剣? 詳しく話を教えなさい」
「おっと用事を思い出した。この辺でお暇させてもらうわ、ンじゃなー」
『オタッシャデー!!』
「あ、こら! 待ちなさい!」
「客に茶も出さねェようじゃなァ!」
神は嘘がわかるんで、原作知識の絡む話題は気疲れするなぁ。とりあえず主神に尋ねたし答えも頂いた……つまりこれは既に話を通したようなもんだから、青田買いのとっかかりを得たも同然だ。後で個別または集団相手に面談の依頼して、人格的に問題なさげならまとめてルビスのついでに【ランクアップ】目的のパーティー組んで引率して恩を売れば一石二鳥よ。他派閥内に派閥を生み出すのは嫌がられるだろうから、その辺の調整はしないとだが。
とりあえず今日はこのままダンジョンへゴー。ルビス・ニンジャ=サンよ、イサオシだ! モンスターにカラテを示しイサオシを勝ち取るのだ! ガンバルゾー!
と、気合を入れたはいいが、なんつーか、思った以上に……普通。
「可もなく不可もなく、って感じだな」
『カラテは一日にしてならず。エアモト・マサシもそう言っている』
「
動きだけを見れば、階位詐欺とまではいかないが基本アビリティ詐欺ではある。高い水準でまとまってはいるのだが、攻撃手段はチョップやスリケンといった一般的なニンジャのそれであり、ニュービーの域を出ていない。秀才であって天才ではないと言ったところか。なお外見。
いやまぁスリケンとかカラテを再現するために詠唱なしで魔力を操作してるし、その上で極小規模な障壁を作り出して飛ばしてるわけだから相当高度な真似をしているんだが。割と感覚が麻痺してるな、アタシ。
ジツに相当する魔法は開発中らしいが、再現のために全部速攻魔法にするつもりらしい。魔法自作とか天才じゃねーか。前言撤回させるの早すぎだろ。ちなみに『
「まぁいいや。距離関係なく戦えるのはわかったし、後はパーティーを組んで他人を意識して戦えるかどうかだな」
『ベイビー・サブミッションです、メンター』
「うん、まぁ期待はしないが信じるわ。今日は帰るぞ」
『ハイヨロコンデー』
こうして新たな仲間の初ダンジョン探索は無事に終了し、その後はギルド本部に戻って換金の手続きを教え、教会に戻った。
ルビスの歓迎会については一も二もなく賛同してもらえたし、場所を豊穣の女主人にするのも反対意見は出なかった。
唯一難色を示しそうな姉御も特に文句を言わなかった。あの店の料理や果実酒は気に入ったようだし、雑音も
まぁ、病気で常時体調不良なのに周囲で騒がしくされたらそりゃキレるだろって話だし。アタシの場合だと前世でインフルエンザに苦しんでる最中、隣の部屋から聞こえてくる幸せそうな家族の笑い声がとことん恨めしく思えた経験はある。病は気から、ただし原因でなく病状の話、みたいな?
後はヘスティアの参加に関してだが、原作と違ってバイト先の予定とかないからいけるやろって思ってたら貧乏派閥の集会が組まれていたんよね。要はタケミカヅチとミアハだな。日数的にはリリイベの途中だが、あるいは
「つーか、せっかくだからその貧乏派閥も呼んで眷属同士で顔合わせの一つもさせてやれば? どうやったってベルたちと足並み揃えンのは無理だが、逆にルビスを預かってもらえるかもしれんし」
ルビスのお供にヘファイストス派の新人鍛冶師引率ツアーを考えてるのは変わらんが、向こうを【ランクアップ】させたら上級鍛冶師になるわけで、容易に連れ歩けなくなるからなぁ。
その意味じゃ探索系との縁も必要になるだろう。幸い、【タケミカヅチ・ファミリア】は主神のおかげで
「いいのかい?」
「タケミカヅチ派はバイトの件が回答待ちだったろ? このまま神の時間感覚任せだとアタシが寿命迎えた後に回答してきそうだしな。それじゃあ困るンだわ。なら、ここらで直に話詰めるのもありだろ?」
「あぁ、うん……さすがにボクだちもそこまでのんびりではないけど、確かにあれからタケには会えてなかったしなぁ」
「まー前向きな答えを引き出すための賄賂みたいなもンだ。奢るからありがたく食らっとけ」
「うーん、そこはかとなく罠にはめるみたいで心苦しいけど、ラジルカくんの厚意に甘えさせてもらおうかな」
そういう事になった。
明日はヘスティアに一筆書いてもらったお誘いの手紙を各派閥に渡して回って、日程調整したら豊饒の女主人に予約入れてか。ルビスには延々マラソンしてもらいながら