そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱) 作:夜月工房
ルビスの歓迎会とヘスティアの友神及びその眷属たちとの懇親会を兼ねた飲み会に関する準備はトントン拍子に進んだ。
ミアさんの理念により店の貸し切りはできなかったが、まぁロキ派と重なりでもしなきゃ席数的な問題にはならないっしょ。
来店予定の神三名についても情報を渡しておいたし、メニューとは別枠で極東料理を提供したい旨を伝えたら材料も調理もアタシが担当する条件で許可をもらった。
そんでシルには人間観察で磨いた審美眼で
と、いうわけで迎えた当日当時刻。
「いやぁ、
はい、楽しい歓迎会兼懇親会に
でも『
とはいえ乱視の場合は球面の歪みとかだし、色弱なんかは細胞の異常だし、修正されない可能性が高いからそれ系の補正としてはありなんよね。あるいは逆に魔眼や邪眼のスキルだとか、そこまでいかずとも四色方色覚みたいな異常を抑えたりの可能性もなくはない。紫外線カット的な感じで魔眼の類から身を守ってる説もあるか。
まぁどんな理由があるにせよ今生では眼鏡ってだけで
「すまない、ラジルカくん。
「おいおい、酷いじゃないかヘスティア。俺は別に奢ってもらおうってんじゃないぜ? ただ新しい出会いという名の未知に心を踊らせてるだけさ」
ヘスティアもツインテールが力なく垂れて……ヘルメスが悪びれないせいか、頭の後ろに回って絡まってるな。これは犬の尻尾でいう股の間に挟むのに近いか?
「ヘスティアの責任じゃねェだろ。テメーの都合だけしか考えねェで押しかけてくるなんざ、いかにも十把一絡げなモブ神らしい。そンなんだからリヴィラの街で手配書が回るンだよ」
「手配書?」
「おっとそいつは……」
「邪魔になったらアタシが責任持って天界までエスコートしてやっから、ヘスティアは気にせず楽しんでくれ。後援としちゃ主催が曇るのは頂けねェからな」
「あ、あれ? ちょっと……」
「……うん、そうだね! ありがとう、ラジルカくん」
「よし、じゃあ乾杯の合図を頼むわ。軽い挨拶もな」
「お、おーい?」
よしよし、これで飲み会を始められる。待たせるのは印象悪いからな。アタシも極東――実際には日本――料理で少しでも挽回できるよう気合い入れんと。むしろできるなら卍解してヘルメス吹き飛ばしたい。いやまぁアタシが斬魄刀とか鬼道系の妙な能力というか直接的な攻撃力を持たなそうではあるが。それか劣化バインバインちゃん。
ヘスティアは従業員で、アタシは雇用主。つまりヘスティアの失敗に対する責任はアタシが取ってやらなきゃないわけだ。ヘルメス如き何するものぞ。飲み物に混ぜたラピスの分身に肺を塞いでもらって窒息死させんぞ。あ、ここで死なれたら『
今のヘルメスは会社の飲み会に乱入してきた従業員の知人、しかもこちらより立場が高めで同業他社。まぁ普通に面倒な相手だ。つーか半分喧嘩売って来てる。会社の迷惑になるし、仮に部外者が目立てば目的の一つである歓迎会としては失敗だしな。ルビスを受け入れて平等に可愛がる気満々なヘスティアの心労は察するに余りある。
古の飲みニケーション世代なら見知らぬ相手ですら受け入れて一緒に騒ぐんだろうが、生憎とヘスティア派の面子は現代っ子の集まりだ。そして秘密を抱えてる以上は保守気味だったりする。オッサンと姉御も、なるべく表に出さないようにしてくれてるけど、旅神のにやけ面を見た瞬間から嫌そうな雰囲気がにじみ出てるんだよな。ゼウス・ヘラ時代に顎で使いつつも持ちつ持たれつみたいな感じで面倒押し付けられてきたんだろうか。
お人好しなベルが団長として舵取りをして、最終的な決定権も持っている以上は排他的とまではいかないだろうが、酒の席だろうと――むしろ、だからこそ――警戒心が先立つのは、前回のシル相手で確認済だ。距離の詰め方が抜群に上手いあのシルの攻勢ですらしのぎきって見せた実績は信用に値するよね。
「ヘルメス様、挨拶もなしに空々しく見苦しい言い訳から入ったせいで【
「えぇ……そういうもんなの?」
アスフィ――【
「その、申し訳ありません【
「ご配慮痛み入るよ【
「いえ、そこまで迷惑はかけられませんから。ですが、いざというときはよろしくお願いします」
「アスフィ? いざという時って何? しかも一樽って……俺どうなっちゃうの?」
深々と頭を下げる
とりあえずそこで一旦話を打ちきり、というかヘルメスはシルが引き受けてくれたのでそのまま連行されていった。視線だけで貸し一つとか訴えてきたけど、別に放置してやらかしの現場を押さえてからでもよかったんだが。まぁルビスのの正体をヘファイストスと同じ段階までなら明かしてもいいか。意識するしないで結果が変わるかのサンプル数を増やすのもいい。
で、飲み会側に戻ったら乾杯が終わって軽く料理をつまんで互いの自己紹介が始まった辺り。司会はヘスティアに任せてるが、どうして中々そつなくこなしてる。ぐーたら神とはなんだったのか。
最初は神から、次に団長、そして派閥ごとの順番。ついでにリリとアタシもヘスティア派の関係者扱いで挨拶しておく。
そして大トリのルビスがニンジャとしての挨拶をキメるも、極東の忍とは全くの別物だと発覚して膝を突いていた。幼女ながらも悲鳴は「グワーッ!」派らしい。あるいは学びが足りないとの理由があったりするのかもしれんが。
むしろ幼女すぎてヘスティアに冷たい視線が向く一幕があり、本神は必死に弁明してた。タケミカヅチもミアハも淡々とガチ説教するからヘスティアもガチ凹み。ギャグ補正はあったから致命傷で済んだな。
まぁ事情があるし本人の強い希望もあったから保護目的で眷族にしてもらってるとだけ伝えておいた。むしろ本人の前で選択を否定してくれるなと言ったらそれは確かにと反省してたんで、善神だなぁ、って。
しかしこれで
食事という共同作業、そして美味という快楽がもたらされてるんで、参加者が打ち解けるのはこっちの予想よりもだいぶ早かった。
割と空気悪くしそうで心配だったナァーザもタケミカヅチ
そんな中で【タケミカヅチ・ファミリア】と【ミアハ・ファミリア】の財政状況が話題になった。【ヘスティア・ファミリア】は中層下層の環境アイテムや魔石、ドロップアイテムで右肩上がりだけど参考にならんからな。
タケミカヅチ側には極東の工芸品は珍しいから可能性が眠ってる事は伝えてみたが、武神の眷族だから反応はイマイチ。掛け軸の書なんかは精神修行にもなるし、いい線いくと思うんだがなぁ。そいで以前打診したバイトの話を振り、条件を詰めた結果、ヘスティアと同様の教会隣の倉庫内で収穫する係と、外部へ出荷する用の検品する係を確保できた。
んで、ミアハ側はナァーザが
ブルー・パピリオの翅はタケミカヅチ側が
地上のブラッド・サウルスの卵はベルとヘスティア、タケミカヅチが受注。こちらは近場とはいえ都市外に出るので、ギルド長向けに一筆したためてミアハに渡しておいた。内容? 部下の横領記録。
ベルをソロで送り出すんでヘルメスの介入があるかもしれんが、まぁベルには策士の上手なあしらい方を教えておこう。力業っていうんだけど。世の中には制御できるタイプの馬鹿とできないタイプの馬鹿がいて、ベルは後者だからな。やりたい事とやるべき事がわかってるから後は迷わず進むだけ。ただそれだけで罠も障害も無意味になる。
つーか、なんだかんだヘルメスはベルの進む道を整える手伝いにはなるし、そのために必要な運び屋としての顔の広さはアタシ以上なんで無駄に敵対する必要もない。気に入らない部分は多分にあるんで邪険に扱うくらいはするが、それくらいは神故の大らかさ図太さがあるから問題ない。主神に似る眷属連中の方は多少神経を使う必要があるものの、そっちはぶっちゃけ戦力外なんで使う気がないしテキトーでいいかなって。
神造の英雄がどうこうって自分の好きな方向にレールを敷くのは難点だが、そもそもベルは兎なので普通にレールなんて無視して野山を駆けたり飛び跳ねたりで進むっていうね。ヘイトタンクしつつ道化としての役割も期待できておいしいキャラだよなぁ。それでいて自分自身は計画を潰されても予想を超えた事実に未知最高って恍惚とするから、ベルが明確に失敗しない以上はどう転んでも勝利判定になる。無敵か。
そんなヘルメスだが、現在は既に店を出ている。というのも、シルが飲ませた新種の神酒ですっかりあーぱーになって、ベルに突撃インタビューしそうになってるのをアスフィが気絶させたってのが真相だ。シルもアスフィもGJ。眼鏡込みでも人並の好感度に上がったぞ。これって偉業になりませんかね?
結局、問題らしい問題は起きずに歓迎会兼懇親会は終わった。アタシの目的はほぼ達成されたし、男共は貴重な知人友人ができてこれも良かったんでねーかな。
こっちのベルは地味にハッキリスケベだから桜花とも話が合ってたし。まー守備範囲が広くて性的な要素であっても褒めるポイントとして話題に上げるせいでいやらしさは抑えめなんよね。耳にした女性陣も割とあらあらおませさんねうふふって感じになるお得なやつ。これにはクロエも大興奮。なおぽんこつ系潔癖妖精から向けられる
余談だが、アタシはミアさんに確保されて片付けを手伝う羽目になった。解せぬ。