そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱)   作:夜月工房

12 / 202
12.運命に出会いました。火炎石下さい。

時の流れは早いもので、あれから三ヶ月。長巻でウォーシャドウ相手するのも慣れたもので、アビリティに変化がなくとも動きの最適化、技術というものは磨かれた気がする。まぁ対モンスターのであって、対人で通じるかは微妙だが。単調な相手に後の先取るの楽しいです。

その間、珍しい武器を担いだソロのパルゥムという事でそりゃあもう狙われた。幸い、そんな条件に食い付いて来る様なのはいつかのコボルツに完封された食い詰め者達みたいな雑魚だったので罠ごと食い破れる程度でしかなかったが。

怪物進呈(パス・パレード)とか日常過ぎてあんまり気にならなくなったし、辛さが自慢の微毒持ち雑草から作ったスリンガースパイス弾でのたうち回ってる所をサクサクですよ。戦闘中の乱入でもないなら、まず連れてきた奴に撃ち込んでやると優秀なデコイに早変わりするのでオススメ。まぁ基本モンスター優先なんでMPKはなるべくしないつもりでいるが。つもりでしかないので結果的に死なせる事は多々あるが、一応死なせたときは気分次第で遺品をギルドに届けてる。

 

で、どうにも多過ぎるからわざとやってね? って疑惑がかかってて、そうでなくても冒険者の数を減らしているからギルドとしては不都合らしくブラックリストに載りそうだと担当から警告が来た。ならばと監視を兼ねたパーティーの斡旋を頼んでおいたが。渡りに船ってやつだな。針の筵になりそうな予感がビンビンだが、襲撃が減って安全が確保されるならそれに越したことはない……謀殺されないかだけ心配だけど。

パーティーを組むにしても、一応の身内である【ソーマ・ファミリア】の連中は掃き溜め化が加速しているので、組んでも陥れられる率が高いからパスで。

実は最近になって酒作りのステージが進みテンション高めなソーマが色々と試しているせいで、出費が多くギルドの運営資金に影響が出ていると団長(ザニス)に叱られたらしいのだが、そこで収入アップを目的に眷族に奮起させるため『神酒(ソーマ)』を振る舞う事を考えたらしい。それを聞かされたアタシは【ランクアップ】のお祝いにしたらどうかとさりげなくソーマに進言しておいたんだが……しかしその通りに発表したソーマの言葉を聞いた連中が無理する様になって治安を乱す側になったんだわ。ザニスがこっそり極少量を飲ませて回ったって説もある。単純な冒険(むちゃ)に関してもそうだが、それを可能とするアビリティを得るために【ステイタス】の更新資金を稼ぐ必要があるとギルドの買い取り額に文句を言ったり粘ったりと原作に近いムーブが見られるようになってしまった。

 

それにより【ファミリア】の評判が落ち、正当な理由だとばかりにちょっかいをかけてくる連中が増えた。ほぼ怪物進呈(馬鹿の一つ覚え)ではあるが。そいつらを捕縛して、掲げる名目はさておき本当の理由を聞き出したら珍しい武器やソロパルゥムってカモ要素意外に面白い……いや、面白くねー案件があった。いつぞやのアマゾネスからの依頼というものだ。

どうやらあのアマゾネス、ウォーシャドウに後れを取る実力の割にそっちの実力はあるのか虜にした男を支配、使役(言いなりに)しているらしい。そんな連中から毎回の様に怪物進呈(パス・パレード)を受けていたのだが、何度か乱入でピンチになった事があり、つに先日また重傷で寝込む事態になって愛しいリリを心配させてしまった。

じゃけん処分しましょーねー。何かアマゾネス一行でダンジョンに潜ってるみてーだし適当に追い詰めてMPKしますわ。

 

 

で、その決意が果たされようとしているのが現在だ。監視がついてたら確実にアウト判定だが、リリの笑顔は全てに優先する。姉の殺人に曇らんかって思うかもだが、それに関しては命の軽さや自衛について教えてあるのでリリもシビアな感性を持ってる。考えたくはないがアタシが死んだ場合は原作みたいに一人で生きてかなきゃないかんな。

 

「放しなさいよ! こんなことしてただで済むと思ってんの!?」

「来る日も来る日も手下に怪物進呈(パス・パレード)させといて、何でそんな要求が通ると思ってんだ雑魚」

 

現在、アマゾネスと取り巻き三名はダンジョンの袋小路に追い詰めて、そのまま昏倒させてから縄で縛り付けてある。一番最後に意識を取り戻したアマゾネスの開口一番が先程の解放要求と脅迫だ。

 

「何よ! 獲物を譲ってあげたんだから感謝しなさいよ、常識ないの!?」

「あるわけねェだろ馬鹿が」

「はぁ?」

「常識あったらソロで潜らねーし何度も見逃してやらねェ。それすら分からンなら頭の出来はテメーも大概だよド畜生」

「な……なんですってぇ!!」

 

とりあえず反省する感じはしねぇし、かといって正攻法で【イシュタル・ファミリア】を相手取るのは無理がある。何よりやっぱりキャラが合わない。

なのでこちら、原作リリも使っていた魔物寄せの出番です。脂身たっぷりギットギト、血も滴る一品となっております。おえっ。

 

「ちょ、ちょっと、嘘でしょ」

「謝罪も反省もなし。女王様気分は十分味わったンだ、今度は死刑囚気分を味わう番ってわけだ」

「あっ、謝るから! お願い助けて!」

 

ようやく自分の立場を理解したのか、一転して弱気な態度を見せるアマゾネス。だが悲しいかな、時既に時間切れ。というか謝るからと言ってごめんなさいだのすみませんだのでなくお願い助けてだぞ。謝ってねぇじゃん。

問題が一つ片付く喜びにとびきりの笑顔を浮かべて、無言のまま首を掻っ斬るジェスチャーを最後に、アタシはその場を後にした。背後から必死な叫び声が聞こえる気もするが、最近疲れてるからな。幻聴に違いない。

袋小路から手前三つまで一本道なので、そこを狩り場にする。声は耳を澄ませばギリギリ聞こえる程度なので、聞き付けた冒険者が助けに駆け付けることもないだろう。あのアマゾネスから狙われてるって知ったときからダマ鞭は常備してたけど出番なかったなぁ。

 

何度か休憩を挟みながらその場で狩りをしていたら、その内に袋小路の側からモンスターがやって来た。ところどころ……何体かは顔全体に赤黒かい汚れが付いているのは中々にグロいが、すぐに蹴散らして終わった。ダレダカシランガカタキハトッタゾー。

つーか、てっきり持ってた魔石を食った強化種の集団を想定してたんだが、一匹も混じってなかったな。まさか覗き見してて狩りしてなかったのか?

念のため確認に向かったら、防具の残骸やヴァリスが入った皮袋といった細々した物が残されていた。武器は離れた場所の床に転がしといたから無事である。遺品として持って帰るのもだるいから放置で。

 

「……なんだこれ」

 

遺品の中に、液体の入った瓶だとか、乾燥した葉っぱなんかが入った皮袋だとか、見た事のない道具があった。葉っぱは煙管もあったから燃やして煙吸うんだろうが、あんな弱い連中がダンジョンに持ち込むって事はバフアイテムなんかね?

とか考えてたら【異界信仰(ヴェルト・グラオブ)】が何故か気まずそうなイメージで効能を伝えて……あ、その気になる薬と元気が続く薬なんすね、これ。すげーなダンジョンの中でか。まさか初対面の時もこれ使ってワッショイしてる所を教われて全滅したんだろうか。その後の狙われる理由は検討もつかんが、終わった話だ。にしても最初から最後まで迷惑しか被ってない事件だったな。助けて損したがテーマのイベントとか誰得なんだ。

 

 

 

すっきりしたようなもやもやが残っているような、曖昧な気持ちの帰り道。露天で何故か投げ売りされてる運命(火炎石)を見付けた。正確には砕かれた大量の破片だが、買い占めない理由はなかった。

名前からも分かる通り、単体で爆弾になる代物だ。【異界信仰(ヴェルト・グラオブ)】を使えば某一狩り行こうぜなゲームの爆発属性を持たせた武器も夢じゃないし、そうでなくとも大きさで威力を調整できる爆弾を製造できるはずだ。スキルからもやる気が伝わって……来ないな? まぁいい。もちろん携帯性との兼ね合いはあるので、いつかは素手で殴る方が強いとなるわけだが、そんな未来はどうやっても十年単位だ。それまでの間、爆弾は力のアビリティが伸び難いアタシにとっての救世主となりうる第一候補であり、火炎石の存在は渡りに船というやつだった。後で調べたら44層のドロップアイテムとかなってて悲しみに包まれてた。二級級冒険者(Lv.4)以上がパーティーどころか集団組んで行く場所じゃん。自力採取不可能とかやってらんねーわ。

手に入らない物、けど一度知ったら病みつきになる……あると思います。でもそんなんなったら神酒(ソーマ)求めて無茶苦茶してる連中を馬鹿にできねぇ。リリに顔向けできねぇのは嫌だからな、我慢我慢。

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