そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱)   作:夜月工房

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120.ダンジョンに向かいました。慣れて下さい。

さて、色々とあったがあれから数日後。やって参りましたルビスと【タケミカヅチ・ファミリア】の合同探索~鍛冶師(ヴェルフ)を添えて~のお時間です。

まずは自己紹介。武器と戦法な。最初から連携できる【タケミカヅチ・ファミリア】が中心になるんで指揮をよろしくって感じ。ルビスはスリケン誤射しないように。ヴェルフは……大刀っていうの? まぁパワーファイターか。防具がない以上は守備じゃなくHPで受けるタイプか……いやダンジョンなめてんのかこいつ。まぁそんなん言ったら【タケミカヅチ・ファミリア】も似たようなもんだけどさ。

 

「うーむ、全体的に防御が不安だな」

「だがよ、耐えるよりは避けたり受け流したりが主流だろ? 休憩時間で足引っ張るのも問題になるし」

 

そう、全身鎧とかの冒険者が少ない理由は正に体力の問題なんだよなぁ。走り込みが足りんのよ。もっと走れ。足が棒になるまで走れ。なんなら鎧を着込んだ上で。汗臭くなるからアタシは遠慮するがな! 整備めんどい。

 

「まァ、それもあるか。とりあえず今回はヒーラーとサポーターを任せてくれていい。即死しねェ限りは元通りにしてやっから思い切り暴れていいぞ」

 

むしろ離れた場所で同時にピンチとかじゃない限りは適度に威力を弱めて耐久上げの糧にしてやるから安心してほしい。

本来ならヴェルフの言った受け流しとかで上げるのが正しいっぽいんよね耐久。原作ベルは普段から割と直撃受けて吹っ飛んでたが。格上相手が多すぎるんよ。まーアタシも耐久上げしたくてわざとキラーアントに噛みつかせたまま食料庫(パントリー)狩りしたりなんかもあったが。今となっては狂気の沙汰すぎて完全に黒歴史だわ。笑い話に昇華できる気もするが、さすがにLv.1で真似されても危ないだけだし伝えない方がいいわな。アタシの名誉的な意味でも。

 

「そこはかとなく不安になる事を言わんでほしいんだが……」

「が、頑張ろう、桜花?」

「目的地は上層7階層でしたか。油断は禁物ですが、一撃で持っていかれる可能性は低いかと」

 

【タケミカヅチ・ファミリア】の面々は仲間が多いのと慣れてるのとで緊張はなさそうだな。ヴェルフもソロでそこそこ潜ってるから問題はなさそうだし、ルビスは緊張とは無縁だろこいつ。今も念話でエイジャたちと格好いい口上とか考えてっし。貴様らに名乗る名前は無いってモンスター相手には使わねぇだろうがよ。そんなん言ったら口上そのものが使い所さんに困るけど。

 

「まーヤマトの言葉通りだな。Lv.2だったり目前だったりな諸君なら目的地までは安全に辿り着けるだろうが、それでも油断だけはしないように。何せアタシがソロで潜る理由の一つは疫病神かって言いたくなるくれェに高くなる異常事態(イレギュラー)の発生率があるかンな」

「そんな事あるのか?」

「噂は聞いた事あるかも」

「タケミカヅチ様が聞いてきた噂ですね。怪物進呈(パスパレード)に対する注意をして頂いた際に、その、する側になったときの注意として」

 

なにそれこわい。まぁ実際問題、5階層以降になったら自然と怪物進呈(パスパレード)受ける機会は多くなるとは思うが。

 

「まァ、信じる信じないに関わらず嫌でも思い知るさ。その分だけ武器の損耗には注意な。ヴェルフ、手入れ道具は?」

「おう、バッチリだ。手入れは任せてくれ」

「俺たちも自分の得物は手入れできるようにしちゃいるが、本職には敵わんだろうからな。是非頼みたいところだ」

「へっ、望むところだ。しっかり仕上げてやる」

 

うむうむ、それぞれ役割分担もきっちり意識できてるし、この分なら目的地までは苦戦らしい苦戦もないっしょ。

 

 

「……そんな風に考えていた時期がアタシにもありました」

「くそっ、硬い!」

「だぁぁ、ふざけろっ! 関節でも通常の甲殻より上だぞ!」

「嘘っ、矢が弾かれた!?」

「眼まで硬いのですか、このキラーアントは!」

 

はい、食料庫(パントリー)に向かう道中でキラーアントの強化種です。群れを統率する個体みたいになってて、雑魚相手でも割と歯ごたえが感じられた。しかも強化種がフェロモンだけじゃなく完全に鳴き声を上げて次々と仲間を呼ぶせいで、しばらく数の優位が覆せない状況だった。

それでも円陣組んで背中を見せないようにしながらセオリー通りに撃退していき、一同揃って例外なく息は上がり疲労にふらつきながらも残るは強化種のみ。今も継続して仲間を呼ぶ動作を繰り返しちゃいるが、既に届く範囲にはいないようだ。もちろん、しばらくすれば範囲内に入る野良モンスターもいるだろうが。

とはいえこのキラーアント強化種、単体でもしっかり強い。顎も爪も鋭く、なんと尻からは酸まで飛ばす。遠距離攻撃ないから中層より楽やろって思ってたアタシの目論見があっさり崩れて草なんだが。

機動性こそ多少劣るものの速度そのものはLv.1上位だし、苦戦している最大の理由である守備力に関してはLv.2の桜花が苦労する程度には高い。戦車までいかずとも装甲車くらいはある。打撃武器が欲しいけど刀剣や槍、弓なんよね。唯一ルビスは打撃だが、なにぶん【ステイタス】が最も低いハンデがある。

素で太刀打ちできそうな桜花が他の仲間に攻撃を通さないよう前衛壁役(ウォール)を買って出てるんで、決定打に欠ける感じ。最初の酸を――狙われた千草を庇うためとはいえ――武器で受けたのも痛かった。おかげで攻撃を受け流すにも細心の注意を払ってるし、下手に攻撃して逆に武器が破壊される事態を防いでるわけだ。

 

『イヤーッ!』

『ギィーッ!』

『グワーッ蟻酸!』

 

割とジリ貧だった中、背後から奇襲したルビスが尻から放出された酸により撃退された。不意討ちで声を出すな、声を。いやまぁ狙ったかどうかは微妙だけど結果オーライか。

 

「使え、大男!」

「応!」

『ギィィィッ!!』

 

キラーアントの注意が背後に逸れたその隙にヴェルフが大刀を桜花に渡し、桜花がしっかり前脚を切断。そのままの勢いで中脚もスッパリ。Lv.2で関節を狙ったからか、今までのは何だったのかと言いたいくらいあっさり形勢が傾いたな。ヴェルフお手製の武器が良質だったのもあるか?

 

「ふっ!」

「えい!」

 

バランスを崩した所に桜花が進んだのと逆の側面から接近していた命が居合で脚を斬り飛ばす。ついでに千草も槍に持ち換えて楔みたいに脚の関節へ打ち込んでいた。他のタケミカヅチ派も、今ばかりは周囲警戒よりも畳み掛けを優先していた。うんうん、参加しないと【経験値(エクセリア)】入るかわからんもんね。

機動力を失った元つよつよアントは多勢に無勢な事もあり、ろくな反撃もできないまま目から光を失った。タイムは四十分弱。内訳は雑魚ラッシュとボス戦で半々くらい。死傷者なしで切り抜けたのは十分な成果だったと思う。

 

「お疲れ。見張りと対処はしとくから一旦休憩にしとけ」

「ぜぇ、ぜぇ、助かります」

「うへぇ、もう一日分戦った気分だ」

 

アタシの言葉を聞いて緊張の糸が切れたのか、桜花は膝を突き、ヴェルフに至ってはその場で仰向けに倒れ込んだ。他の面子も似たり寄ったりで、せっかくの強化種解体に挑む者はいない様子。なんでこっちでやっといた。

魔石の大きさからして結構長く強化種やってた感じだなこれ。普段は正規ルートを外れて食料庫(パントリー)から食料庫(パントリー)へ渡り歩くとかしてたんだろうか。取り巻きを引き連れて指揮もしてたし、Lv.1オンリーのパーティだと即逃げしないと壊滅もあったんでねーかな。

ちな、ドロップアイテムは触覚。蟻酸袋とかだったら面白かったんだが、残念無念。

 

回復薬(ポーション)です。ドーゾ』

「ありがとうございます、ルビス殿……ところで大丈夫なのですか? 酸を浴びたようでしたが」

『鍛えてますから』

「そういう問題なのですか!?」

 

ルビスは普通に動き回ってるが、これは単に他の面子よりも運動量が少なかった事が主な要因なんよね。雑魚散らしはスリケンで済ませてたし、ボスは通じないから近接攻撃をしたけど比較的相性のいい打撃ながらも文字通りの力不足。魔力でナックルダスターを作り出してたけど、それでも足りなかった。まぁいい経験になったと思うよ。スリケンの応用というか本来の魔力壁を体に沿うように張りながら突っ込んで隙も作ったし貢献度も上々だろ。ちょっとばかり仲間への刺激は強かったかもしれんから、そこはマイナスな。

 

 

「ここが食料庫(パントリー)か……」

「初めて来たぜ……こう言っちゃなんだが、ダンジョンらしくねぇな」

「なんだか不思議……モンスターがあんなに大人しいなんて」

「あれはブルー・パピリオですね。稀少種(レア・モンスター)が群れで過ごしているとは驚きです」

 

休憩を少し長めに取った後、やって来ました目的地(パントリー)。道中は今度こそ問題なく平坦だった。何やらキリがないとか何故こんなにもとか聞こえてきた気もするが何も問題はなかった。

しかしどうやら連れて来た面々は初来訪らしいな。景色に感動したり、モンスター掃討に尻込みしたり、まぁ大変初々しい。ルビスは一人チョップの素振りをしていたが、これはこれで前途有望なので。

 

「さて、景色を楽しんだところで本番といこうか。ちょうどさっき予行練習もしたしな」

「え?」

「予行……練習?」

『強化種でやんすか。ふふ、震えて来やがりました』

「おいおい、マジかよ……」

 

アタシの言葉に嫌な予感を覚えたというよりは薄々理解してしまった一同。ルビスが言葉に出した事でトドメになった感があるね。だが【ランクアップ】を目指すなら覚悟を決めてもらわんと。

 

「中層まで行くと当たり前に石斧だの炎だのが飛んできて厄介だからな。その点、上層のモンスターを強化種にするならLv.2相当まで強化しても獲得するかしないかは個体差があったりするんでまだやりやすい。その意味じゃさっきの蟻は割と珍しかったな。で、なったばっかの強化種は急激に上がった能力(スペック)に慣れてないから基本的には同じ戦法で対処もしやすいわけよ」

「なる、ほど……?」

「納得できるような、できねぇような」

 

んー、まだ現実感がないようだな。まぁ、すぐに慣れるべ。凡人(アタシ)でもそうだったんだし。

 

「まァ、まずは前哨戦だ。準備はできてるか?」

「うげっ、こ、心の準備が……」

「一丁やるか!」

『ガンバルゾー!』

「おい、てめぇら!?」

「そんな大声出したら……あぁ、やっぱり」

「気付かれちゃいましたね……」

 

賛成多数により可決されました。これより食料庫(パントリー)殲滅戦を開始しまーす。

アタシたちの戦いはこれからだ! ただしアタシを除く!!

 

 

 

結論から言うと、今回の探索で死傷者は出なかった。だが、食料庫(パントリー)の掃討が終わりこっそり作って隔離してあった強化種との連戦――最後は二体同時――を行った結果、軒並みダウンしてしまった。死力を尽くした感があったな。ヴェルフなんて今度からは魔剣持って来るって叫んでたし、一歩前に進んだ感じかね。

初めてだし結構熱中してたからいい時間だったし、いつまでも休憩させとくわけにもいかんので、仕方なく高級回復薬(ハイポ)与えて歩けるまで回復させて、帰り道はアタシがモンスターを散らして帰った。

本当に歩ける程度でゾンビ映画みたいになってたせいか、それを見た他の冒険者はまるで奴隷商人のようだったと証言したそうな。うん、酒場経由でまた一つ噂が立ったんだ。なのにその後も当たり前のように怪物進呈(パスパレード)はしてくるんだよなこいつら。謎だ。

 

あと、生命の危機は無かったはずなんだが、普通にヴェルフが【ランクアップ】してた。黒ゴライアス云々には到底届かんはずなんだが、これ魔剣と向き合う覚悟とかの精神的な成長も上位の【経験値(エクセリア)】に含まれてたりせん? 要検証だな。場合によっちゃアイズに『異端児(ゼノス)』でショック療法を試す必要があるぞ。思えばアーニャもダンジョン連れて行く頃には完全に吹っ切れてたもんなぁ。

そんで【タケミカヅチ・ファミリア】は【ランクアップ】こそ出なかったが、アビリティの伸びは良かったそうな。強化種が桜花メインになってた分だけ上位の【経験値(エクセリア)】が少なめだったのかも。精神的な成長もそれらしいきっかけなかったしな。桜花と千草くっつければ変化あるか? さすがに悪趣味か。それはそれとして、やっぱり安全に無理させるのが効率的っぽいな。

ついでにブルー・パピリオの翅も拾えてたんで冒険者依頼(クエスト)も達成できてウハウハだったそうな。ベルの側もブラッドサウルスの卵を大量に確保したらしく、ナァーザとミアハは早速レシピ探求に移ったんだとか。期日までは余裕あるし材料の在庫も潤沢。借金の返済も原作より速いかもしれんね。

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