そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱) 作:夜月工房
明くる朝。戦闘の準備を済ませたベル一行と共に
「おー、いたいた。ンだよ、結局は愉快なオブジェにされてンじゃねェか。元気?」
「あぁ、やっぱり君の仕業か【
「お久しぶりです。タナトス様」
『
現在のタナトスは、二体の
「別にここまで追い詰められたら逃げたりできないからさ、この拘束どうにかならない? せめて子供たちみたいに柔らかくて温かいならいいけど、鎧だから硬くて冷たいんだよね」
「想像力でカバーしてくれ。まァ、その状態を甘ンまァじて受け入れてくれれば眷族を失った他の神も溜飲を下げられるだろうさ」
「えっ、もしかして撮影してたりするの? ちょっと止めてよ。下手な辱しめより恥ずかしいんだけど……ところで、神は連れて来てないのかい? いくら君でも神殺しは避けると思ってたんだけどな」
要求を突っぱねられたタナトスだが、完全に送還されると思っているらしい。普通に考えればそうだろうな。あるいはここに至っては望みとしてもそうしてほしいのか?
魂を漂白する趣味に没頭できないから供給拡大のために流行させようってある種の布教を目的に下界へ降りてきたんだし、それが叶わないと思ったら少ない供給で食いつなぐしかなくなるけど、下界にいたらその少ない供給にすらありつけないしな。還りたい気持ちはあるのかしらん。
その意味じゃ大抗争の目眩まし送還に立候補する辺りがこいつにとってのベストチャートだったんじゃなかろうか。失敗して残党集めてもう一度、なんて半端に欲張ったから今に至るって考えれば、こう、投資の難しさを実感するよね。あの時(買/売)っておけば……的な。
「そりゃな、アタシは別にテメーを送還するつもりなンてねェし」
「……は?」
「天界に還しちまったら、テメーの大好きなお仕事に戻れちまうだろうが。一度きりの機会使って来てンだ、もう少しゆっくりしていけよ。ちゃんと次の機会をちらつかせてやれば希望にすがって生きていけンだろ?」
「俺が言うのもなんだけど、趣味が悪いにも程があるよ【
表情は余裕そうなんだが、声は微妙に疲れたというか投げやりな感じがあるな。元から気だるげではあったっけか? リリ奪還しようとして邪神たちから神威重ねがけで潰されたときは限りなく記憶が曖昧だし、アイズのときは割とやる気出してた風だし、普段は付き合いなかったし、ようわからん。
なんつーか、綺麗にするのは好きだけど、綺麗な状態が好きなわけではないってのが難儀なとこよな。綺麗にするためには汚れてる物が必要だから汚す方に回るぜってのが起きうる。でも汚れてくのを見て綺麗にしがいがあるぜってワクワクはするかもしれんが、汚す事そのものが好きってわけでもないから失敗が重なればどうでもよくなる可能性はそれなりに高い。
「まーバルカが寿命迎えるくらいまでは付き合ってやれ。近く解呪試すから自害まであるかもしンねーけど」
「うーん、まぁそれくらいなら待てるけどさぁ。あと、二度も失敗したんだからぶっちゃけもうやる気ないよ。確かに時間があれば計画もそれなりの形にはなるけどさぁ、正直面倒なんだよね。取引とか根回しとか」
「めっちゃわかる。終わった後を見据えて利益がどうとか権利がこうとか足の引っ張り合いして失敗とか間抜けすぎて笑えもしねェし」
「でしょ~。この短い間に二度は、ねぇ?」
「まーその辺は永遠を生きる
「ふぅん?」
やっぱり面倒に思ってたか。それでもなんだかんだ
つーか死別――有無が不明な運命――を忌避するある種の傲慢さというか優越感というかさえ消してまえるよう価値観を変えれたら、限りなく遠い未来であっても再会を約束して笑顔で別れられると思うんだがな。神がいて転生もあるんだし。
タナトスだってそれを自分の名において誓って死兵を量産してるんだし。上手いよな、自分は約束を理由に眷族だけじゃなく眷族の願った相手の分も仕事をキープできる。眷族は会いたい誰かと来世で会わせてもらえる。願われた側は悲しむかもしれんが転生時に魂は漂白済だからセーフ。実際に出会えて添い遂げられるかは適用外。未来を約束した前世の恋人が来世では血縁だったりするかもしれんが、その辺はむしろ絆としては固くなるからオッケーですって感じ?
そういやネームドキャラは大体前世も同年代っぽいよな。
でもフィンとリリみたいな年齢差もあるから、担当者や順番で多少の誤差はあるっぽいか。そう考えると逆にフレイヤのとこの四つ子兄弟ってどうなんだろ。転生作業時にラーメンの湯切りみたいな職人技で頑張って揃えたのかと思うと変な笑いが込み上げてくるな。仮にその担当がフレイヤだったら……よし、忘れよう。今度見たときに思い出して吹き出したら殺される。光を一切逃さない暗黒のスープに油膜みたいな分布で綺麗な虹色をした麺が浸かってる冒涜的なラーメンなんてなかった。
まぁでも神のほとんどがロクデナシだってわかっちゃったからこそ余計に来世を迎えられるか不明な恐怖を巻き起こした気もするが。そりゃ効果の有無は不明だけど先に逝った大切な人共々転生の約束してくれるタナトスとか救世主だろ。いやまぁ神だが。
つーか、どうせならロキもディオニュソスも天界で頑張ってくれてよかったのにな。クズ同士をぶつけて綺麗にしたら後は念入りにリスキルして心折ってさ……あれ、クズ神が揃って下界降臨してるなら残ってる神は比較的マトモだろうから、転生できる可能性に託して死ぬなら今がチャンスなのでは? なお大抗争等で送還された邪神共。天界と地上で性格違う可能性もあるから一層怖い部分はあるか。神は言っている……ここで死ぬ定めではないと。
その意味じゃタナトスもなー、人間はもうちょっと死んでもいいの適用範囲を神にも向けてくれてもよかったはずなんだよな。神が減れば仕事増えるぞ。どうせ人間の魂なんぞ人生が後悔の連続なんだから多かれ少なかれ汚れるし放置安定でいいんだよ。
あれ、この説得って割と本気で使える内容してるのでは? クズをぶつけ合わせるための面倒は人間相手にするよりもデカそうだが、最終的には誰も不幸にならない気がする。
でもあの辺の罪悪感なしに転生させない選択肢を取れちゃうクズがいないと、それはそれで困る可能性も考えられる。間引かないと魂が溢れて世界の均衡が崩れるとかはありがちな設定だし、難しい問題ではあるのかも。魂はどこから来るんだろうな。そこで真面目な神が泥を被って病んだりするくらいならクズの有効活用した方がマシってのはあるっしょ。クズ任せな部分に心を痛めるとかまでは面倒見きれるかボケの精神な。
「いずれにせよ、
「……なんか君って視点が神に近くない?」
「元より神が二十年そこらで辿り着ける程度にしか離れてねェってだけだろ。人も神も自分を特別扱いしすぎなンだよ」
「お姉ちゃんは逆の意味で特別視しすぎている気が……」
「自己評価からして低いもんね……」
身内がチクチクしてくるけど努めて聞こえないようにする。難聴といえばギャルゲ主人公の特権にも思えるが、現実でも自己評価が低いとあからさまなアタックに対しても勘違いするなって自制するから擬似的な難聴系というか朴念仁になるんだよな。恋愛に興味ないけどバッサリ斬って泣かれたり逆恨みされたりが嫌だって流す場合もあるが。人の心は難しい。
実際問題、アタシからすればこの世界は確かにアタシを含めた皆が生きてる世界ではあるんだが、一方で前世の影響から人の考えた物語としての側面もあるわけで。早い話、人が想像できた範囲に収まる以上は真の意味で人を超える事なんてできないんよね。
仮に自分にとって倫理だの道徳だのって精神的な働きとは別の部分で理解も納得もできない物があった場合、まとめてシュールとかギャグに分類されるし。神話とか七つの母とかあの辺り。そう、アタシにとって神話や伝承といった神秘は、ツッコミ不在のギャグに分類される。
いやまぁ考えてみろよ。例えばアテナの誕生。ゼウスが予言されたからって運命覆すために妻を飲み込むとか、後日ゼウスが頭痛に悩んで頭を割ってもらったら完全武装した成人済女神爆誕とか、もうこれどうやったって完全にボーボボの世界だろ。成立年代は逆だけどさ。直後にアテナがゼウスとゼウスの額割ったプロメテウスもしくはヘパイストスをまとめて攻撃したらまんまボーボボだろ。あくまで神話のエピソードだからこっちの世界じゃ起きてないだろうけど。ギリシャのお家芸な神が気に入らない相手を呪って動物や醜い姿にして悲劇起こすとかもほぼボーボボだろ。当時の価値観とかあるのはわかるけど、そういった前提知識なけりゃ話の流れとか変化先のチョイスとかツッコミどころしかねぇもん。
「ちなみに今日と明日で
「えー、特にはいないかなぁ。ヴァレッタちゃんもヴィトーちゃんも元はよその子だしね。こうして失敗しちゃったけど、それまで真面目に協力したんだからさ、元の主神に対しても義理は果たしたでしょ」
「りょーかい。そンじゃまァ、適当に治療して捕縛だな。テメーも同行して、ちゃんとヘラヘラ笑って悪びれねェ態度で連中の神経逆撫でしろよ」
言われてみれば最初からタナトス派閥の面子って大抵はタナトス自身か信奉者のどっちかと近い性質持ちなはずだから、ほとんどは大抗争で自爆済ななんだよな、多分。
そう考えりゃ物騒な孤児院みたいなもんだったのか
「えー、気が進まないなぁ。せめてご飯食べさせてよ。聞いてるよ、料理上手なんでしょ?」
「増えるワカメって知ってるか?」
「なにそれ?」
「よし、決まりだな。たンと食え」
「待って、説明、説明して? ねぇ!?」
ただでさえ海藻類って日本人とか一部の人類しか消化酵素持ってないんだよな。そこに胃の中で膨れる乾燥状態のワカメを摂取させたら……情けない送還理由ランキングの第何位になるんだろうな。ワクワクが止まらねぇわ。
で、この後は
もちろん酔った振りして油断させようとした構成員もいたが、悲しいかな、トリモチを受ける段階で少しでも反応できてたのを
名前の上がったヴィトーとやら――エレボスの眷族は、何やら無気力になってた。でもオッサンと姉御の姿を見たら驚愕してたな。でもって自分にも治療というかの可能性はないか聞いてきたんだけど……【
ちなみに踏み込んで尋ねた結果、今なら【ステイタス】の消費は基本アビリティを各200程度と大変お安くなっております。ただ治した後でどう役立つかって部分がなー。印象薄いのも魂の状態が関係してるみたいだし、治療したら一般冒険者と変わらんのよな。とはいえ【
なんだかんだオッサンと姉御はエレボスに対する仲間意識とちょっぴりの引け目があるみたいだし、それを払拭できるなら一ヶ月くらい深層で過ごせば取り返せる【ステイタス】も安いもんではある。なお、その一ヶ月でベルたちに追いつかれる可能性。予定調和で誤差ではあるからいいんだけどさ。
【
ちゃんと
勝負の後でネタバレしたやったら憤死するんじゃねって勢いでキレてたけど、実力を隠す部分まで含めて努力の成果なんだよなぁ。
あとすっかり騙されてたわけだけどねぇ今どんな気持ちって言いながら左右に反復横飛びしてるのを見たタナトスが吹き出してた。
この後はベルたちを
ついでだしと思ってフェルズにも連絡をしたら、今度はものっそいお叱りを頂いた。解せぬ。別に計画的な犯行じゃないから連絡して取り逃すよりずっとマシだろうに。事前連絡がほしかった? 八つ当たりじゃねーか。喧嘩別れすんぞ。
まぁ、主神のタナトスは逃がしたって報告したから当然の反応ではあるんだがな!
これで後日モブ構成員をわんさか追加で持って行くわけだが、果たして【
その【
ガイア「メティスの子はお前から王位奪還するやで」
ゼウス「マジかよ、なら儂は……メティスを丸呑みする!」
メティス「解せぬ」
~数日後~
アテナ「出せ~出せ~ここから出せ~(ガンガンガンガン)」
ゼウス「なんかめっちゃ頭痛い……ヘパやんちょっと頭かち割って?」
ヘパイストス「よっしゃ任せろ……死ねやぁ!(ガスッ)」
アテナ「よっ」
プロメテウス「なんか女神出てきたー!?」
アテナ「この恨み晴らさでおくべきか……」
ヘルメス「しかも完全武装してるー!?」
アテナ「食らえ! 妬み真拳奥義、積年の恨みボンバー!」
ゼウス親子「「グワーッ!」」
プロメテウス「何で俺までー!?」
ヘルメス「ふぅ、やれやれとんだお転婆ちゃんだぜ」
ゼウス「何一人だけ避けてんだてめー!」
ヘルメス「ぎゃー!?」
ボーボボだろこれ。