そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱)   作:夜月工房

125 / 202
125.レイドボス戦企画しました。気軽にご参加下さい。

次の日。モブ闇派閥(イヴィルス)の引き渡し第一弾を終えて、そのまま精霊の分身(レイドボス)に関するお知らせとお誘いをしたら【象神の杖(アンクーシャ)】がキレた。そして泣かれた。

エイジャのアニマルセラピーで回復させて色々となかった事にしたかったが、ダメだった。オラリオを揺るがす脅威は去ったって言っても聞き入れず、駄々をこねて参加を表明した彼女は――退行を引き起こしていた。(アーディ)の気の毒そうな視線が忘れられない。

とりあえず相手はLv.7相当だろうからエイジャを主軸にするようにと言い聞かせておいた。

 

そのまま豊穣の女主人に赴いて、ミアさんにフレイヤへの手紙を届けてもらおうとしたら断られたのでシルに愚痴りつつ、外で(いもうと)の見張りをしてた拗らせ猫(アレン)と軽く武器を合わせながら深層階層主並の敵と戦う気はないか幹部への伝言を頼むも拒絶されたので涙ながらに気絶させて豊穣の女主人に押し込んだ。割と全力を注ぎ込んで作り上げた開発名:魔法少女変身用ペンダントを使用させた上で。(アーニャ)がやけに瞳をキラキラさせながら抱えて、そそくさ寝室に向かってたよ。ありゃミアさんの拳骨が落とされるな。元凶のアタシにも落ちるんだろうな……よし、逃げよう。

 

最後に【ロキ・ファミリア】の本拠(ホーム)に立ち寄り、門番へアイズ宛の手紙を届けてもらうように頼んだ。ちゃんと袖の下も忘れなかったぞ。蜂蜜飴だが。

ちなみに二次創作界隈で見かける【ロキ・ファミリア】の門番がベルを門前払い案件だが、この世界でもベル――正確に言えば一行は門前払いをされている。が、その裏にはとても深く悲しい事情があったりする。

具体的には肝心の主神(ロキ)が幹部不在をいい事に連日羽目を外して酒浸りになり、こんな無様な姿を身内以外に見せられるかという事で留守番役の上級冒険者から絶対に誰も通すなと厳しく言われていたらしい。この件は当然のように遠征から帰った幹部に報告が上がり、ロキは幹部陣から搾りに搾られたそうな。

ちなみに門番は律儀に日を改めてくれとは返したのだが、ベルからは今日しかタイミングがないと返されてしまったので、縁がなかったと追い返さざるを得なかったわけである。仮にも最大派閥なので、周囲の耳目を気にする必要がある以上はへりくだるわけにもいかず、そこそこ高圧的な態度になったのは門番としても心労になったようだった。

追い返した少年少女の背中を見送る門番の目には哀愁とやるせなさが満ちていたからな。直後に現れたアタシのネタバラシで多少は胸の支えが取れたようだが。それはそれとして後日ベル一行とダンジョン内で偶然会った際はいい主神に出会えたらしい事を察して素直に祝ってくれたそうな。なお、その時点で既にLv.3集団だったベル一行の明らかに洗練された動きに金の卵を逃したと盛大に胃を押さえたのだとか。彼の今後に幸あれ。

 

そんで昼からは人造迷宮(クノッソス)に戻って牛型の精霊の分身(デミ・スピリット)と約束通り戯れた。メタを張らずに戦ってみたら厄介にも程があったわ。

まず牛が、突進(チャージ)が元気すぎる。壁や床を砕く硬さと重さのせいで爆弾や罠がほとんど効果なくて全然止まらんどころか勢いすら落ちない。速くとも単調なのが救いだった。

魔法に関しては、普通に使う雷撃は避雷針代わりに銀製の槍を荒れた地面に突き立てておくだけで避けれたが、牛部分を帯電させる付与魔法(エンチャント)は接触範囲を広げるし速度もやや上がったしでヤバい。その上で爆散鍵(スペルキー)なのか放電しやがるし。ゲームならそのタイミングで帯電が終わったり、オーバーヒートして隙を見せたりまであるのに……それがねぇの。思わずクソゲーって叫んだよね。避雷針が一本じゃ間に合わなくて被弾するし。魔力壁で防げたけど数発で魔道具(マジックアイテム)の稼働限界になりそうだったから人相手なら十分な威力だよね。

しかも更にそこから某キッスだのしょうゆだのをテーマ曲に持つ御方のサンダーなストームみたいな攻撃にまで派生した時は手加減しろ馬鹿と全力で泣き叫んだともさ。魔道具(マジックアイテム)は稼働限界を迎え沈黙した。

最終的にメタを張らないと無理って結論に達したんで、セラミックの籠手(ガントレット)を作り出して絶縁した上で、牛の頭と生えてる上半身の繋ぎ目ギリギリくらいを狙ってダマ鞭でぶった斬った。さすがのアタシも電子が流れるよりも速く通りすぎればいいとかの脳筋戦法できるワザマエはなかったわ。

牛側はそのまま上半身の繋がってた傷口から潜り込ませたダマ鞭で体内を抉り進めて機能を停止させた。外皮ドロップアイテムにならんかなと思ったけど灰しか残さなかったな……まぁ上半身が生きてる最中だったから倒した判定にならなかったんかもね。知らんけど。

無事とは言えないものの死なずに残った上半身だけで痛い痛いと嘆きながら自己再生する精霊の分身(デミ・スピリット)を、栄養補給として極彩色の魔石を食わせつつ慰めて待つ事しばし。そこには上半身のサイズが人間の少女大まで縮み、下半身を取り戻すも何故か仔牛っぽくなっていた精霊の分身(デミ・スピリット)の姿が! しかもどう見てもホルスタインなのだ! 思わず牛乳搾れるのかなって考えが浮かんだけど、人型上半身のせいで絵面が最悪だなって思ったんで即座に疑問を振り払った。ついでに言えば、普通は妊娠してないと乳は出ないんだ。エロ触手の可能性はここじゃ捨てろ。

人間の下半身生えるかなーって期待してたんだけど、そっちのアテは外れたな。その後で勝者の権利として浄化を実行したら下半身も人型な少女サイズになったけど。牛部分? ドナドナされたんじゃないかな。

しかし幼女脱却ですよ、これは人類にとって大きな一歩。しかし悲しいかな、それでもアタシより背が高い。そしてやっぱり記憶が欠けちゃってたんだよなぁ。微かにご飯をくれた気がする、遊んだ気がする、くらいの薄ぼんやりした感覚で懐いちゃくれるが。ちなみに鑑定したら種族は下位精霊だった。魔力残量のせいなのか、胎児の質なのか、どうにも不憫な個体である。でもまぁ下位だけど自我はハッキリしてるのでとりあえずヨシ!

 

帰り道、自分より大きな少女を肩車する幼女という色んな意味で悪い噂が立ちそうな状態で夕暮れの街を歩いていたら、教会に辿り着けず近くをウロウロしていた【猛者(おうじゃ)】に出くわした。ウォロウォロだったら殺されてたな。用件としてはレイドボスに参戦希望なので情報を貰いに来たらしい。

主神にいいとこ見せ隊(フレイヤ・ファミリア)は幹部が全員参加希望なのだが、そこで自分がより目立つための役割を勝ち取ろうと内紛が起きたらしく、結果的に【猛者(おうじゃ)】はハブられてソロでやれとなったのだとか。故にできれば二体欲しいとか言い出したので、浄化予定の一体を泣く泣く手放す事にした。

そして次の日の朝には同じように彷徨いていたアイズの姿。ロキ派の第一級冒険者と案の定レフィーヤが参戦希望だったので、自動で多重展開される魔力壁の魔道具(マジックアイテム)を数個預けておいた。ダメな子呼ばわりされた牛型でアレやぞ。六円環用の動けない代わりに迎撃用のガチ砲戦仕様にされたやつから三段撃ちみたいなのされたら避けきれないし、上半身も魔法攻撃に参加してくるし、多分だけど地面に突き張り巡らせた枝で槍だの鞭だのに似た触手攻撃してくるぞ。Lv.3じゃ普通に死ぬわ。魔法で死体も残らず消し飛ぶし、木の根に捕まって牛裂き刑みたいに引きちぎられるぞ。

 

とりあえずこれでフレイヤ2ロキ1ガネーシャ1ヘスティア1の分配が終わったわけだ。人数の多い二大派閥はどうやっても負傷者が出そうなんだよなぁ。七年くすぶって後は偉業待ちなオッタルのが被害少ないまである。

しかしこの時期で参戦となると、アステリオス誕生のフラグは本格的に折れたかなぁ……最初の5階層フラグからして折れてるからしゃーないか。ベルがLv.1でタイマンした個体が光堕ちしてくれてるならワンチャンあるか? なんか最後の方は言葉を交わさずとも通じていた気がするらしいし。

でもそれで生まれた場合、格上狩りを達成してきたのに相手の情動を動かせなかった自分が惨めに思えて来なくもないんだよなぁ。いやまぁ別に奇妙な友情やら敬意やらを感じるモンスターとかいなかったから別に不思議はないんだが。それに考えてみたら好敵手(ライバル)枠より相棒(パートナー)枠を獲得したアタシのが稀少な体験だろうし。

 

決行は二日後で、それまでは闇派閥(イヴィルス)残党を引き渡してから人造迷宮(クノッソス)簡易苗花(プラント)や極彩色モンスターといった怪人(クリーチャー)勢力の痕跡を消して回り、夕方以降は教会でまったりする日々を過ごす事ができた。

地下の訓練場で将来的に第二の黒竜になれそうな竜の『異端児(ゼノス)』を解放して、ご飯を与えながらベルたちと顔合わせたり。中位精霊になった元精霊の分身(デミ・スピリット)と就職面接をしたり。どこがまったりなのかと言いたくなるが、世の中こんなもんである。

名前はそれぞれ黒竜候補がジータ。精霊の方がネーゼムとなった。ちなみに元牛型はでんきタイプのイメージが強かったのでコハクと命名した。現状では三者とも主従契約はなしの方向で考えている。

ジータはサイズがでかいのでダンジョンの同胞(ゼノス)に預けたとしても木竜(グリュー)と同様の自由がない暮らしになるのでどうしたものかと思いながら尋ねてみたら、眠るのが好きなので気にらないとの事だった……逆に危機が迫ってても呑気に眠ってそうなので、しばらくは【異界倉庫(ドラッヒェン・マーゲン)】に退避というか待機してもらってる。

ネーゼムは中位精霊だけあって戦闘力や魔力は高いのだが、やや常識に欠け好奇心が旺盛なので目が離せない。ヘスティアが面倒を見ると張り切っており、ネーゼム自身も母力の高めなヘスティアのそばにいるだけで満たされるらしいので任せてよさげ。農作業の手伝いにも積極的だ……熟してるとか間引きとかわからずに収穫しちゃったりするけど。

コハクは……まぁ一番手のかかる新入りだな。人懐こいが欲望に忠実でもあり、やや頑固。言ってしまえばめっちゃ幼児。見た目は一番成長してるのに……そんなんだから長女を名乗る一番幼い見た目のルビスからお仕置きされるんだぞ。まぁルビスがヘッズなせいでコハクとしてはごっこ遊びの一種と捉えてるらしく、全く堪えた風がないが。当然改善もしない。つーか精霊って成長するんだろうか。




2023/12/03:ネーゼはアストレア・ファミリアにいるのでネーゼムに変更。イスマイルからネーゼリアになったぞー。
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