そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱)   作:夜月工房

127 / 202
127.観覧しました。ふしぎなアメ下さい。

こちら派閥対抗精霊の分身(デミ・スピリット)撃破競争大会企画運営委員会会長ラジルカ・アーデです。本日は未だに名を上げてはいないものの神会(デナトゥス)以降は間違いなく注目株になるであろう新気鋭の【ヘスティア・ファミリア】総勢三名に私の愛妹リリルカ・アーデを加えた計四名の戦い振りをご覧頂きましょう。

相手は精霊の分身(デミ・スピリット)祭壇型。第二級冒険者四名と推定Lv.7相当の独立部位が四箇所とかいうネオなエクスデスみたいなやつのマッチングです。数字の上では無理ゲーですが果たして結果やいかに。それではどうぞ。

 

『【火ヨ来タレ猛ヨ猛ヨ猛ヨ炎ノ渦ヨ紅蓮ノ壁ヨ業火ノ咆哮ヨ突風ノ(チカラ)ヲ借リ世界ヲ――』

『【永遠(トワ)ノ凍土ノ如く氷結セヨ数多ノ刃――』

『【閃光ヨ駆ケ抜ケヨ闇ヲ切リ裂ケ――』

『【闇ヨ荒ベ光ヲ呑ミ干シ夜ノ安寧ヲ――』

「詠唱速っ!?」

「【遅い(ゴスペル)】」

『『『『――ッ!?』』』』

「こっちはもっと速かった!?」

 

響き渡る精霊魔法の詠唱。その速さに驚き焦るベル。それらを黙らせる荘厳な一言(ワン・ワード)。この面子だとやっぱりベルがコメディ・リリーフになるなぁ。いや、自分のが上だぞって証明しようとして目論見通りに認められた姉御が若干自慢気だし割とボケ寄りか。前世(たましい)由来かと思ったけど血筋もそっち側なんだろうか。

なお、姉御の魔法――ぶつけられる音の魔力により詠唱が乱れ、魔力暴発(イグニス・ファトゥス)を引き起こす()()に恵まれる。

 

「喋ってねぇで走れ! 真ん中はもらうぞ!」

「リリは向かって左を!」

「あ、うん。残りの右側は任せて!」

 

会話だけだとのんびりしているようにも感じるが、ベルも含めた全員が全力で距離を詰めている。姉御に至っては詠唱の邪魔をするために並行詠唱しながらなんだが、超短文詠唱なのもあって速度低下は微々たるものでしかない。

途中から詠唱は無理だと判断したらしく床から木の根で反撃しているのだが、普通に避けられ、斬られ、弾かれる。祭壇の支柱(スピリット・オルター)は表情が変わらず淡々と詠唱しようとしては封殺されているが、精霊の分身(デミ・スピリット)の方は恐怖を抱いているようで表情を歪めていた。

あるいは繋がってる六円環が全員ピンチで恐慌(パニック)直前なのかもなぁ。今も超短文詠唱の雷を放とうとして姉御に邪魔さ(ゴスペら)れたし、実は詰んでね? つーか今ので意識飛んだ(ピヨった)な。詰んだわ。

 

「ならば私は上半身(うえ)をもらおう」

 

魔法を受けすぎて軽く意識を朦朧とさせている精霊の分身(デミ・スピリット)に向かって、他より一歩遅れている姉御が跳躍。

それに先んじて担当の支柱に辿り着いた三人がそれぞれの方法で敵を葬らんと武器を振るう。

色々食って強さがおかしい階位(レベル)詐欺なオッサンの剛剣が下部中央の顔面をあっさりと砕き陥没させる。

こっそり参加者の引率役で指揮官扱いなアタシが指揮下に入る事で全員を指揮下に置いた扱いとなり階位(レベル)詐欺な能力値を得たリリが、向かって左側の顔面を一突きし祭壇の支柱(スピリット・オルター)どころか向こうの壁まで届き亀裂を走らせる。修理の手間がー!?

右側はベルが特に何のスキルも魔法も使わずにナイフ二刀流だけで掘り進めて魔石を抜き取っていた。絵面は地味で他二人より時間は僅かにかかったが、こいつが一番おかしいのでは??? なんか【ステイタス】には載ってない魔力の感知能力持ち始めてるんよね。初見のモンスターでも魔石の位置や部位ごとの防御力をなんとなく見抜く鑑定じみた真似してる。

そうして三本あった支柱を体積的な意味でも半分以上失った祭壇型(デミ・スピリット)は、体勢を崩しながらしばし宙に投げ出されたかのようになり、無防備なところを姉御から一太刀浴びせられた結果――内側から魔石ごと破裂した。余りにも鮮やかな勝利である……怖っ。

 

姉御の一撃は、しかし単なる斬撃ではない。武器に通した魔力を保持して、攻撃に付与効果(エンチャント)のような形で上乗せしているわけだ。まぁヘスティアが頼み込みヘファイストス主体とはいえ合作した派閥専用武器だからこそ使える荒業ではある……本来は。

姉御の場合はルビスのスリケンが魔力を使えさえすれば理論上は誰にでも使える技術だと判明したせいであっさりそれを取得しただけじゃなく、何故か魔法の遠隔発動とかいう謎技術に発展させたんよね。いやホントわけわからん。もっと射程と範囲がヤバいルビスの間借り術(マガリ・ジツ)って前例があったからまぁいいかってなったが。

とりあえずそのせいで魔法の前段階な魔力を伴わせて威力の上がった攻撃をする→当たった場所に魔力が付着する→今 で す!→大抵は内側から爆散、相手は死ぬ。らしい。

元より姉御の魔法(サタナス・ヴェーリオン)は【炸響(ルギオ)】の爆散鍵(スペルキー)により、放った後も残滓として漂う魔素を再度魔法として機能させる二段構えの攻撃を可能とする。その意味じゃ遠隔発動も割と感覚的に慣れていたのかもしれんね。

ちなみに予想できたと思うが、さっきの攻撃にはまだ魔力の残滓を用いた魔法の再起動が残っているわけである。というか散った範囲内の魔素が周囲の魔素を巻き込みながら複数箇所で新たな魔法となるまであるらしい。それにより魔力の続く限り範囲を広げながら魔法が連続するというアタシの【連鎖地獄(ケッテン・ヘレ)】が名前負けしそうな地獄を作り出せるのが姉御なのだ。一応、爆散鍵(スペルキー)を使うと魔素に無理をさせる的な事態になって同じ場所を爆破できるのは二度が精々なんだそうな。ついでに精癒とかの効果が落ちるデメリットもあるんだとか。その二発を耐えてその場に留まれるやつがどれだけいるのやら。

 

「ふむ、こんなものか」

「お疲れ。なンか余裕じゃなかったか?」

「最初から最後までアスピナ様が魔法で向こうの詠唱を潰して下さったおかげかと」

「そうだね。最初の……特に上半身は魔力の高まりがすごかった」

「おっ、なんだベルの視線は女体に釘付けだったのか?」

「は?」

「ち、ちちち違うからね!?」

 

うん、本気で余裕そうだな。つーかこれ現状でも戦力的にアタシ負けてねぇか。この上もうじき階位(レベル)まで追い越されるんだぞ……くっ殺の発声練習しておこうかな。いっそ使うと【ランクアップ】できる魔道具(マジックアイテム)とか作れねぇかな。仮に作れてもアタシが使うよりベル達に使わせる方が有効だよねっていう。ぐぬぬ、威厳は投げ捨てるもの。つまりはそういう事なのだ。

しかし決着も速かったな。戦力比を考えたら一番遅くてもいいくらいなんだが、現実は恐らく最速……いや、【猛者(おうじゃ)】なら精霊の護布も使わず魔法を受けてもダメージ無視して突撃、一撃とかやりかねんな。

地面が揺れてるから終わってない場所は間違いなくある。つーか攻撃力不足が心配されるのは【ガネーシャ・ファミリア】だよな。合計値は最大だけど平均値は最低だし。

 

――というわけでどンな感じでしょう。現場のエイジャさーン

――はーい、エイジャっす。【ガネーシャ・ファミリア】は決定打が出せないんでひたすら削ってるっすね。魔法も根っこも危ないと思ったやつは僕がシャットアウトしてるんで、一番酷い怪我人は足を捻ったモナーカさんっす。多分終わるのは一番最後になるっすよ~

――りょーかいです、ありがとうございました。あとモダーカな確か

 

「ガネーシャ派は時間がかかるそうだ。負けもしないから後回しだな。どこか見たい場所は?」

「あのクソガキは単身(ソロ)とか言ってたがどんなもんだ?」

「あの行き遅れの集団にいるダンジョンの娘は気になるな」

「えっと、僕も【ロキ・ファミリア】が気になるかな。レフィーヤさんの事だからジル(ねぇ)魔道具(マジックアイテム)持たずに他の人に渡したり庇ったりしてそうだし」

「リリはお姉ちゃんと一緒にいますね」

「よし、じゃあ六円環と担当の印が全部載った地図渡しておくから各自で見学な。一旦解散、お疲れ様っしたー」

 

と、いうわけで余り物の【フレイヤ・ファミリア】が戦っている場所に向かったら、まだ戦闘中だった。

原作知識から考えられるフレイヤ派(ここ)最適解(ガンメタ)は白エルフの付与魔法(エンチャント)もらったツン猫が盤外から魔法使って走り始めて広間入ったら一直線線に轢き殺す事なんだよな。まず白エルフが認める段階でつまずくから実質不可能だが。

 

「これはひどい」

「リリの目には内紛が起きているようにしか映らないのですが……」

 

各自で担当部位を決めているのはベル一行と変わらない。が、魔法を止める手段がないので精霊の護布を使って弾くしかなく、その一手間により進軍が遅れる。精霊の分身(デミ・スピリット)による超長文詠唱の魔法は弾いた後の余波も大きいのでおそらくは足が止まり、そこへ祭壇の支柱(スピリット・オルター)からの魔法が間に合うので進軍が遅れ……という流れがあったのではなかろうか。単なる想像だ、すまんな。

現在は取りついてガリガリ削っているが、何しろ幹部といってもオッタルが別行動なので、残るアレン、白エルフ、黒エルフ、四兄弟で人数に余裕がない。しかもバチバチに暴言が飛び交っている。仲良しなんだね。

アタシが到着して少ししたら、黒エルフがキレたのか魔法をぶっぱして、タイミング悪く根っこに弾き飛ばされて来た。支柱はキッチリ潰したようだが、詰めが甘いな。とりあえずキャッチアンドリリースして休ませておく。陰キャな黒エルフはワタワタしてるが、とりあえず万能薬(エリクサー)を振り撒いておいたら大人しくなった。

そんで真ん中を担当してた白エルフは味方を巻き込まないように遠慮してたようだが、黒エルフがいなくなったのでこれ幸いと黒エルフが担当していた方向に魔法を放ち担当する支柱を消し飛ばした。これエルフの担当場所を左右に振るだけでめっちゃ時短できたやつでは? 参謀の発言力低くない? 白エルフはこっちを見て黒エルフの無事を確認したら、そのまま四兄弟に向かう根っこの排除に動いた。支柱には手を出さない辺り、得物の横取りはNGらしい。いやそこは協力にならんのかい。

残る支柱は四兄弟が地道に削ってるが、やや火力不足か。やっぱり自然回復のある大型相手だと小人族(パルゥム)は辛いよなぁ。なおリリ。

で、魔法少女ヴァナディースリーの黒一点(アレン)くんちゃんは上半身担当なわけだが、まぁ詠唱させないため小まめに口内へ槍を突き刺したりしてるっぽい。そのせいで木の根が暴れ気味になってるが、第一級冒険者揃いなんで特に問題はなし……いや白エルフも四兄弟もめっちゃキレてるわ。ウケる。

 

とはいえ時間の問題ではあった。四兄弟の攻撃は魔石に届き、魔法猫アレン(ディース・ブラック)も本気になったのか首に槍を沿わせたまま数周した後に頭を蹴り飛ばして胴体と泣き別れさせ、最後に中心を唐竹割りにしたら胸の魔石を破壊できたので終了。

猫は魔法を使わんでも勝ったのは成果として大きいようにも思えるが、弱さと向き合えない逃げにも映るんだよなぁ。上位の【経験値(エクセリア)】的には微妙かもしれん。

ちなみに途中からオッタルとオッサンが見学組に合流してた。向こうの現場に到着した頃には既に終わってたらしく、オッサンとしては不服そうでもあり嬉しそうでもありといった感じか。正体バラしてねぇだろうな。

 

あとはロキ派がどうなったか。開幕の精霊魔法を妨害できるとしたらフィンの槍投げくらいだが、一ヶ所だけだしなぁ。逆に上手く決まれば魔石を破壊して瞬殺になるが。

確か精霊の分身(デミ・スピリット)だけで見れば59階層のが祭壇より強いんよね。それでもリヴェリアの結界は超長文詠唱を相殺しきれないだろうが。支柱の魔法なら……三発持つのかね。まぁアイズとベートとアマゾネス姉妹が精霊の護布で弾けば進行できるはず。木の根はレフィーヤ以外なら対処できるし、レフィーヤは魔道具(マジックアイテム)が防ぐ。

あー、そもそも精霊の分身(デミ・スピリット)アリア(アイズ)に夢中だろうから、開幕の超長文詠唱はキャンセルできるのか。代わりにアイズの気力下がりそうだが。ついでに祭壇型は移動ができないから木の根でアイズを捕獲しようとするんじゃなかろうか。

その点を考えれば難易度は下がりそうだが、代わりにレヴィス乱入とかないだろうな? ルビスたちの操作してる個体含め人形兵(ゴーレム)から報告上がって来てないし、大丈夫だと思いたい。まぁ仮にそれが起きてもベルと姉御が向かってるから安心できる。Lv.3時点で【英雄決心(スキル)】の限定的な許可は出してるし。それでも万一の可能性を考えるとしたら、戦闘中は常時スリップダメージを受けてる姉御の回復手段枯渇くらいかね。

 

で、ガネーシャ派がもう少しかかりそうらしいんで、ロキ派の担当場所に向かったんだが……辿り着いた先では既に戦闘は終了していた。残念無念。

アイズはちょい元気ないな。呼び名(アリア)関連で、あるいは疎外感とか覚えてたりするんだろうか。そういやヴェルフが話してくれたんだが、庇って瀕死になったのを助けてもらう形で精霊の血を与えてもらった初代クロッゾは魔法が使えるようになって寿命も延びたらしいんだよな。精霊は子を産めないとかの話と絡めれば、アリアの血を与えられて死を免れた養子またはアリアが継母って可能性も出てくるんだよなぁ。いやまぁ神時代と数年しか離れてないとしても千年以上だから長すぎるとは思うが。いつか語られる日も来るはず。備えよう。

ちな、こっそり聞いてみた姉御とベルからの評価は割と辛口だった事を補足しておく。姉御は予想通りだが、ベルまでとは……見抜けなかった、このアタシの目(ふしあな)をもってしても。

 

で、軽く幹部と応答したらガネーシャ派の担当場所へ向かう。当たり前のようにエイジャが参加していたのを見て、後をついてきた戦闘狂共が驚いていたようだが、別に気にした事ではない。表向きはテイム済モンスターなんだし。

で、肝心の戦局は押し気味ではあった。集団の強みというかを活かして攻撃役(アタッカー)が詠唱阻害を兼ねてダメージを与えつつ、前衛壁役(ウォール)が木の根が届かないよう防ぎ、治療師(ヒーラー)が回復させる。お手本のようなパーティープレイだな。

いざ支柱が一つ落ちれば後は比較的早かったが、突出した火力のなさが課題っちゃー課題か。まぁ、元より憲兵は大型モンスターに対して討伐のために立ち向かうよりは避難誘導に尽力してほしいんで、その意味じゃエイジャから下されるどれくらい楽できそうかの評価が重要になるかね。人前じゃ喋れねぇから後だが。

 

とりあえず、こんな感じにレイドボス討伐イベントは終了した。報酬はヴァリスを提示していたのだが、案の定と言うべきか、動画撮影・再生の魔道具(マジックアイテム)を所望された。試作品一つの権利を巡って後日トーナメント戦を行う事で合意が得られたので、解散後にフェルズへ連絡した。討伐イベントの時点でしこたま叱られた。残当。

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