さて、時期的には原作ベルがリリの一時的な救済イベントを済ませヒロインと殺し愛をする前、外伝なら59階層を目指して遠征に出発してるはずなんだが……先日の討伐作戦をもってアタシの知ってる外伝のストーリーが終わってしまったんだよな。一応59階層の精霊の分身とレヴィス、それとメレンの【カーリー・ファミリア】との抗争はあるか。
既に戦神を呼びつけた後であろうイシュタルはまだ人造迷宮に来てないっぽいけど、闇派閥が人知れず店を畳んでて内部を謎の全身型鎧が闊歩する別世界に変わり果ててるのを知ったら乱心しそうだな。切り札なはずだった牛型はコハクに生まれ変わって姉妹のような何かと元気に楽しく暮らしてるし。
とはいえカーリー派のトップ二人に春姫の魔法があれば、数値上はオッタルや幹部に食い下がれる計算なんだよな。あと一応【男殺し】も幹部と同格になるか。
いうて精霊の分身の討伐作戦で【ランクアップ】できる幹部が出たらそれもご破算だが。つーかフレイヤ派幹部はもっと冒険しろ。あいつら実は内心じゃ女神の一番になれないのを理解して心折れて……違うか、不貞腐れてるんじゃねぇかって疑惑あるんだよな。推し活に夢中だから黒竜とか見えてなさそうだし。
その意味じゃディース・ブラックは妹観察とかしてる場合じゃねーだろ。そんなんだから残る二人がゴールドとシルバーなんだぞ。自分で作ったのを棚に上げて追加戦士枠しかいねーじゃねーかってキレたからな、アタシは。
ちなみにシルバーは変身アイテムを二つご所望だった。おっちょこちょいだから無くしちゃったとき用に予備も下さい、じゃねーのよ。怪物祭で財布忘れたまま出かけた実績とか持ち出さんでいいから。
まぁそんなわけで唯一の勝ち筋になり得る春姫関連のガードが原作以上の堅牢さになりそうな感じはあるが、まぁそもそもイベントに介入する余地がなぁ。
バイトに雇ってる【タケミカヅチ・ファミリア】に情報流して、確認してもらったら戦争遊戯を申し込むか? 歓楽街に直接出入りしてないけど取引のある娼婦から噂を聞いた事にして、輝夜経由で三条家の情報を得てたって事にすれば通る気がするし。勝手に名前使わせてもらうのも正義のためだから許してくれるっしょ。最悪の事態になった場合でも殺生石の破片を集めて【終憶】すれば何とかなると信じたい。
そういやヴィトーとやらに関する相談すんの忘れてたわ。ヘスティアに厄介事を押しつけるのも慣れて来たなぁ。
あるいは神会でベルたちが話題になって、フレイヤが声を上げたのに対抗しようとイシュタルが動くとかか? でも【ランクアップ】自体はギルド本部から発表されてるから現時点だと【ヘスティア・ファミリア】の噂ってそこそこ広まってると思うんだよな。
それもLv.2到達時点だと前積みありって言い逃れできてたけど、Lv.3到達時は通らなくなって、でも絡んできた神も冒険者も姉御が返り討ちにした上にパーティーメンバーにいるリリの存在からアタシの関与が判明したんで触れるな危険らしいが。
まーヘスティアにも神会ではいっそ開き直ってアタシに弱味を握られてるって体で強気にいけって助言してるしな。
その意味じゃイシュタルは【男殺し】による襲撃に遭った件で借りがある相手だし大人しくしててほしいもんだ。アタシらの存命中は。
つーかそもそも普通に考えて妖術目当てなら混血でもいいから狐人の繁殖を計画しないんだろうか。混血同士の交配で血を濃くしていくのも神なら待てるだろ。隠せなくなるからダメですかそうですか。
よくよく考えたら春姫イベントって事前にヘルメスがベルや闇派閥を知るフラグ立ててないと、殺生石を初回で渡しちゃいそうなんよね。イシュタルは黒だから潰すわ、ちょうどいいからフレイヤ動かすついででベルのエサにもな~れって裏話にだったよな確か。
その前段階なアポロンは戦争遊戯してくれると思うが、アタシが丹精込めて育ててる時点で【ソーマ・ファミリア】は陰険眼鏡派だろうと動かねぇぞ、タブンネ。仮にしても誤差だし。そしたら後は向こうの団長よりも格上が三人にLv.4相当の人形兵を百体単位で操るニンジャですよ。しかも中位精霊まで追加される。形式にもよるが大した経験値にならないからサクッと潰して終わりかね。
さらにその前段階の、ヘルメスがベルを見定めるイベントも、ベル一行が既に深層探索許可を出せる強さだから誤差にしかならない。これの成果と言えそうなリヴィラの街やモルドの好感度だって前者はアタシの被験者なおかげで最初からかなり高いし、後者は別にいらなくね? 黒ゴライアスのドロップ品は代替品がわんさかだしなぁ、ヴェルフの鍛冶経験としてもルビス経由で次々と発注していく予定だし。
『異端児』は既にエイジャとラピスを通して派閥丸ごと友好的だしな。ただし【イケロス・ファミリア】は完全に息の根を止められたか不明なんで、探し出してサクッと殺っちゃう必要はあるかもしれない。
続く深層編はジャガーノートの有無と【アストレア・ファミリア】健在の関係でキャンセル。その後は……あれ? 前世知識はここまでか。いや、確かベルとシルのデートが色んな意味で失敗して、正体バレして……めっちゃ続きが気になるところで死んでるじゃん前世。
多分アレだろ、フレイヤが負麗邪に名前を改めて「【負麗邪・不亜美利亜】でオラリオの“頂点”取んゾ!!」とか言い出して大規模な戦争遊戯始めるんだろ。オラリオ全体がリングだ的なバトロワ形式で。
邪魔になりそうな【ロキ・ファミリア】は真っ先に奇襲で……いや、違うな。きっと闇派閥殲滅の後始末を終えて、資材の調達も終えて、今度こそゼウスとヘラに追いつくぞって三度目の正直精神で到達階層を更新する目的の大遠征をしてて不在のタイミングと重なるに違いない。
もちろん連絡取れないように地上居残り組は潰して、バベルも封鎖。だけど人造迷宮とダンジョンの繋がりを知らなくて遠征組へ連絡が届いて、必死の抵抗を続けるベルたちの絶体絶命のピンチに間一髪で間に合うんや。
そんで最後はなんやかんやあった後でベルとアイズが幸せなキスをして終了、ダンまち完。いやねーわ。途中から飽きて妄想すらぐだぐだになってたわ。打ち切り漫画じゃねーんだぞ。反省、反省。
しかし実際のところどうなるんだろうな。こっちのベルはアタシらのせいでキラキラフワフワした綺麗なお花畑を卒業してさつまいもやスベリヒユみたいな救荒作物を栽培する畑にされちゃってるんだが、果たして美神のお眼鏡に適う魂の輝きをしてるんだろうか。
シルはわかりやすくアピールしてたし、かなり気に入ってるのは間違いないんだが……不変を変える偉業に届くのかは気になるところ。まぁ、ヘスティアが拗らせ処女じゃなく慈母の顔してるからなぁこっちの世界。所変われば人変わるの神バージョンもあるっしょ。
つーか神の不変って肉体的な意味が強いだろ。精神の方は永遠を義務に縛られながら同じ面子しかいない中で生きる神が退屈に殺されたり、殺されまいと縮こまったり、外から見たら枯れ果てて見えるってだけなんじゃねぇかな。ぶっちゃけ殻にこもった種の形態で過ごしてたようなもんだろ。
そんなやつが連中の感覚からすれば超大型の地震と台風が頻発してるみたいな慌ただしい下界に降臨したら、そりゃ土に埋まり水を得て芽吹きも花開きもするわなって。そもそも未知とか言っちゃう全知全能とか何を言ってるかわからないってのはこの際だからそっと横に退けておこうか。
直近のイベントとしてはとりあえず59階層なんだよな。それに関連する事として、ロキ派はレイドイベの報酬を動画の魔道具にしようとしてたけど、他ならぬロキに悪用される未来しか見えないからって涙を呑んで現金と遠征用品のセットに変えたんだよな。おかげで遠征の準備がほぼ終わって開始がほぼ正史通りになりそうっていう。でもヘファイトス派の上級鍛冶師派遣の交渉とか間に合うんかね。ヴェルフ連れてかれたりもあるんだろうか。
さすがにロキ派の遠征ともなれば食料やテント、武器の予備とか色々な物資を持ち運ぶために荷台とかを使うから、爆破移動は使えねぇしノータッチで済むはずだ。
つーか59階層の羽化したてホヤホヤな精霊の分身の方が昨日潰した――外伝ならもう少し後に相対する――祭壇型より強いって感じた理由がよくわからん。誰の見立てだっけかな。理由として考えられるのは、ダンジョンで毎日ご馳走たらふく食って育った59階層の個体と、粗食でギリギリ食い繋いでた祭壇たちの差か? 余計な機能が搭載されて戦闘力自体は落ちたら可能性もあるか。ま、どっちにしろ関係ないな、目的が相容れない以上は潰すし……【ロキ・ファミリア】の連中がな!
その間もアタシは【タケミカヅチ・ファミリア】の連中や【ヘファイストス・ファミリア】の有望株を強化種とイチャイチャさせるお仕事があるんで暇にはならん。むしろ時間が足りない。その前に一応ヴィトーの案件を相談か。
「……と、言うわけなんだわ」
「うーむ、今までのやらかしがひどかったせいでボクの感覚が麻痺してる気がする」
「まー最初の内は『神の恩恵』なしの無力な一般人やってもらって、合わないと思ったら【ガネーシャ・ファミリア】に漏れてたって引き渡すだけだし」
アタシの【終憶】は魂を引っこ抜いて予め用意した別の肉体に移し変える都合上、対象の【ステイタス】は失われるんよね。神がする魂の浄化はできんから【経験値】はある程度まで残るが、雰囲気的にはお風呂に入らず着替えだけする感じかな。潔癖症の人なら聞いただけで発狂して死ぬまである。多分タナトスなんかは該当する。
「それはそれで良心が痛むんだけど……君はそれでいいのかい?」
「えぇ、問題ありませんとも。このような私を生み出した世界に、神に対する憎しみが消えるかはわかりませんし……こういった希望にすがってしまう事に嫌気を覚える自分がいるのも、確かなのですから」
「ん、わかったよ。それでもボクは君が幸せになる権利を認めるよ。いや、他人が認めたからってどうにかなるもんじゃない。その権利を認めてあげるべきなのは君自身さ」
「はいはーい、湿っぽいとアタシ、手元、狂う。始めンぞー」
「ラジルカくん、君ってやつは……」
はっはっは。まだ身内じゃないやつの重い話とかどうでもいい。場合によっちゃ呪いを吐き出す最後の機会になるかもしれんが、それがどうしたって話なんだわ。
「それじゃ始めるぞ。寝台に横になって楽にしてくれ」
言いながら、隣に予め造っておいた等身大改造ヴィトー素体を寝かせる。並べると歳の近い親子みてぇだな。
「なんだか兄弟みたいだね」
「まァ、基本は同じ材料だからな。さて――」
気持ちを切り替える。この魔法って使うとトランス状態になるから記憶が曖昧になるんよね。神に見守ってもらうのは初だから感想を頂きたいところである。
「【我、表裏無き輪を廻る者。三千世界を渡る者。騙る者、祟る者。転じ変じて返り還るその先こそは語る者、崇む者。地球は回る。季節は巡る。宇宙は廻る。いつかまた会うその日まで――永遠のその先へ。どこまでも優しい嘘を】」
あ、やば。落ちるこれ。
そんな確信を抱いた次の瞬間には視界が暗転。遠く、ヘスティアの声が聞こえたような、ないような。なんていうこの意識も目覚める頃には覚えてないんだよなぁ。まー【異界信仰】がなんとでもしてくれるってな。リューさん並にやりすぎてしまうかしらん。