そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱) 作:夜月工房
ひょんな事から手に入れた、火炎石の破片。その数なんと五十四。総量で言えば五つ相当になるが、破片そのままを使う場合はダマ鋼武器で良くね、となる程度の威力しか出せない。
【
と、いうわけで作ってみた爆弾がこちら。これからダンジョンのモンスター相手に威力確認したいと思いまーす。それじゃイクゾー。
「やべぇ」
欠片一つの爆弾はウォーシャドウが消し飛んだ。魔石は残らなかった。
二つの爆弾は到達階層を更新して7階層のキラーアントに呼ばせた群れへ放り投げたら軒並み消し飛ばしたが、外側にいた奴が瀕死で済んだので大勢に仲間を呼ばれてしまい恐ろしい数のおかわりが出てきた。
欠片三つの爆弾をそいつらに使用したら……床が抜けた。キラーアントは虫だけあって頑丈さの割に軽いので、重量による影響は少ないだろう。純粋に爆弾の仕業だ。
爆風のダメージもあったし落下ダメージも重傷で済んだので、ジャガーノートが産まれてこないかビビりながらエリクサーモドキで回復した。周囲は特に目新しい変化は見えないので、上り階段を目指す。言うまでもないが、無事な魔石は残っていなかった。
結論として、現在のマージンを取れる階層では欠片一つの爆弾すら過剰な火力で、魔石も消し飛んでしまうのでどうやっても赤字になる。ついでに欠片三つの爆弾は自傷を含めた二次災害を誘発するので使いどころからして難しい。推奨とはいったい……うごごご!
まぁ、最後の手段に持っておくのは悪くない。背中にタワーシールドでも背負っておけば爆風もそれなりに耐えれっかなー。怖くて試す気にならん。
ちなみに帰り際キラーアントと長巻で殺り合ってみたが、丸みを帯びた甲殻を直に斬るのは難しかった(できないとは言ってない)。
これを冒険者登録から三週間ちょっと、
キラーアント相手の定番、間接部は狙うのが多少難しいけど面白いように斬れる。突撃を避けて首を落とすのがマイブーム。ただ、それをするとスタミナの消耗が大きいので狩りのペースが悪くなる。虫なんだし罠に掛けれねーかなーなんて思いつつ、空腹具合と相談して狩りを切り上げた。
後から思い出したんだが、ブルー・パピリオが出現するのも7階層なんだよな。そこから
数日後、ギルドの受付担当からパーティーの申請が受理されたと知らされた。ソロ終了のお知らせである。さらば
なんて事を考えてたからか?
「そらそらぁ! 気張って逃げな!」
「あっぶな!? ちくしょうアタシが何したってンだ!」
「それだ!」
「何が!」
「キャラが被ってんだよ!」
「知るかぁ!」
「お喋りとは余裕だなぁ!」
「ぐへぇ!?」
「良く受けた! だがこれはどうだ!?」
「避けるわボケェ!」
「その動き、やはり
「テメェらアリーゼとアストレアにチクってやるからな!」
「「その前に殺す!!」」
「ぎゃあああやぶへびぃぃぃぃ!?」
アタシは今、何故かクエストを受けてくれた【アストレア・ファミリア】所属のLv.2【
どうしてこうなったか、それを知るため我々探険隊は南米アマゾンの奥地へと飛んだ……!
なんて振り返る余裕はない。シンバルの代わりにナイフが付いたタンバリンみてーな武器を振り回す
「ライラ! 少し控えろ、技が見られん!」
「ハッ、お断りだな!」
避けるのが間に合わず受けるだけで精一杯なんだが、着物美人――輝夜は何故か斬り合いをご所望らしい。何でもアタシの磨いてきた技が故郷、というか実家の
で、そんな技を引き出したい輝夜の要求を蹴ったのがライラ。こちらは何故かアタシがフィンと面識を持ってるのを知ってて、何故かフィンがアタシに関心を持ってると言ってて、狙ってる玉の輿の邪魔になりそうだからワカラセ目的らしい。いや知らんがな。前世でパシってたの知ってんだぞこっちは。ツンだけで押すから逃げられるんだよ恋愛ド素人め。
それから時間にして数十分。アタシは既に切り傷のない露出部分が眼球くらいというザマで地に伏していた。
ライラも倒れているが、これは譲らないせいで輝夜に急襲されて後頭部を鞘でぶん殴られたからである。【アストレア・ファミリア】って殴ってボコれる芸人集団だったりすんの?
「立て! まだ技の全てを……チッ、時間切れか」
「そこまでよ!!」
指一本動かすのも難しいアタシに対し、出資者でもないのに無理難題を仰る残念美人だったが、何やら感じ取ったらしく舌打ちをした。
直後、響き渡る制止の声。多分団長のアリーゼだと思うのだが、顔を動かせないし眼球だけじゃ白面の者みたいな見上げる眼をしても視界に入らないので断定できない。
というかですね、単純に血を流しすぎて、やば、意識……が……。
「この川を渡ってはなりません。御身の上には未だ光があり、汝を
アタシが気付くと、大きな川の岸にいた。川の上には黒尽くめで目隠しをした……堕天使? 二対四枚だからそれなりに格が高いのだろう。
「汝の力とならんたがめ、この岸に姿を現す。ご覧下さい……」
堕天使の指し示す方を見やれば、川が泡立ち影が浮かんでくる。それは徐々に大きくなり、やがて水面を割り姿を現した。それは――なんか緑色の、その、雄々しいモチーフがありそうな頭部と触手を持った、タコやイカを思わせる異形だった。
「さあ、陸へお戻りなさい。再び立ち上がった時、汝は何かいい感じの力で生まれ変わるのどぅわぁ↑」
叫びたいのに、逃げたいのに、動けない。ゆっくりと迫ってくる緑の異形。よせ、やめろ、来るな、助けて、い、嫌だぁぁぁぁ!!
「おー、激しい」
てめぇ覚えてろよこの真っ黒目隠し堕天使ぜってぇ許さにょあー!
「……知らない天井だ」
気付いたら知らない場所だった。悪夢を見た気もするが良く思い出せない。だけど今、アタシに分かるのは懐かしい……それこそ前世の記憶にまで遡る感触。これは、そう――ベッド。ただし高校受験のために遠征した時に泊まったビジネスホテルの固いやつ。ちょっぴり残念。
「眼が覚めました?」
「ッヒョォォウ!?」
寝起きの働かない頭で前世にまで遡る懐かしさから物思いに耽ったところにかけられた声。意識外からの一撃にアタシは口から心臓が飛び出しそうなくらい驚いた。
「あ、えぇと?」
「ごめんなさいね。驚かせちゃったみたい」
声のした方に向き直れば、胡桃色の艶やかな長い髪と星のような瞳の女性。自然と漏れ出している神威が人ならざる者だと主張しているが、威圧的な感じはなく、むしろ柔らかく包まれているような安心感を覚える。
「あー、いえ」
「私の子供達がごめんなさいね。ちゃんと反省するように言っておいたから」
「はぁ」
マイペースなのか、こちらの反応は気にせず自分の要件を済ませる推定アストレア。なんだろう。この辺はやっぱり神なんだなって。とりあえず
「アタシはラジルカ・アーデと言います。お名前を伺っても?」
「え……あら、そうだったわね。私はアストレア。しがない女神よ」
挨拶は大事。古事記に書かれているのはアイサツなので間違えてはならない。