そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱) 作:夜月工房
「で、なんでこのタイミングで
「黙秘権を行使する。弁護士を呼べ」
「そういうんえぇから」
「好感度が足りません。イベントを攻略して好感度を上げましょう。もしくは課金アイテムを使用する事で解決できる場合もあります」
「なんやねんそのクソゲー。あと嘘やないのわかって逆に怖いねんけど」
夜のメレン――貸切状態にされた小さな酒場で、アタシはアイズに後ろからギュッとされたままロキの尋問をのらりくらりとかわしていた。
おかしいよな、カーリー眷族と遊んだのは昼過ぎだったはずなんだが。なんで夜の酒場でようやく聞き取り開始してるのか。まぁ逃がしたらダメって命じられたアイズがアタシを抱えたまま昼寝して、しかもめっちゃ寝過ごしたからなんだが。
なんかアマゾネス姉妹以外は普通に慰安旅行的な感じで連れて来られたものの、アイズはカナヅチが理由で水辺の遊びが楽しめないらしく、アタシの捕獲はちょうどいい逃げ道でもあったようだ。
で、勢い余ってというのも変だが寝過ごして夕食まですっぽかしたんで、今は逆というか変則的な二人羽織でアタシがアイズに飯を食わせてる。ここにレフィーヤがいたら血の涙を流しながら悔しがる事請け合いだぁな。しかし良い子のエルフは仲間たちと一緒に就寝前の談話を楽しんでいるご様子。青春だねぇ。男っ気がなくて喪女の集いに見えるのは内緒。
「
「ロキ……」
「いやいやいや、若気の至りってやつやで!? 計画だけして実行はしてへんって!」
アタシの言葉に、裁判官のリヴェリアが目を細める。対する
「ちなみにアタシがメレンに来たのは輸入品の受け取りだぞ。条件に合う粘土や鉱石、調味料だの、オラリオにねェもンも多い。それに折角の貴重な品々も悠長に入場待ちなンぞしてたら質が落ちっし、輸送費も高くなるからなァ」
「……はー、散々もったいぶって結局はそれかい。アホくさ……マスター、エール追加でー」
「そりゃ、メレンの抱えるゴタゴタはもう解決済だからな」
「ブフゥー!?」
「ロキ……汚い」
隠すほどでもないんで情報を開示したが、なんでかは知らんかお代わりが来る前に空にしようと飲んでいたエールを盛大に噴き出した。アイズがおそらくは素でとても嫌そうな声で反応してるのウケるんだが。
「ゲッホ、ゴホッ……鼻に入った、めっちゃ痛い。てかメレンのゴタゴタって、なんやねんそれ。うち聞いてへんぞ」
「終わったンだから伝える意味がねーだろ。むしろ脅しの材料与えてどうすンだ」
「するかアホ! でぇ、実際どんな問題だったん? ニョルズも関わっとんのか?」
「ほォ? 聞いたか【
「ほぅ……」
「邪推はやめえ、天界での同郷ってだけや」
飛び散ったエールを布巾で拭き――正規の使い方なのに駄洒落っぽくなるのどことなく呪われてる感あるよな――自らの顔を汚した部分もハンカチを取り出して拭く。噴くと拭く、どうして差がついたのか。以下略。
「まァ、知りたかったらそれこそニョルズに尋ねればいいさ。告白したい事の一つや二つはあるだろうしな」
「告白……だと……よもや既に両おm」
「だからやめーや。怒るでええ加減」
どうやら堪忍袋が温まって来たらしい。言いたい事はなんとなく伝わるけど何を言ってるのかよくわからん言い回しだよな。空気が膨張して爆発な? うーん、ポエット。
「言っとくが、こっちから説明してやる気はねェぞ。元よりメレンはオラリオじゃねーンだ。テメーらが【ロキ・ファミリア】ってだけでワガママが許される環境じゃなくなってるのを忘れてンなよ」
「チッ、しゃーない。そっちは直接ニョルズのアホ突いたるわ」
「そこでそんな言い回しすっから茶化されンだろ……」
「……ふっ」
「うがああああ!!」
「ロキ、うるさい」
「あ、はい。すんません」
そして食事を終えたアイズに叱られていた。娘の成長ぶりにママは誇らしげだったよ。アタシを膝の上に乗せて後ろから抱き締めてる状況から目を逸らすのやめませんかハイエルフ殿。
で、次の日もアタシはアイズの付属品扱いだった。昨日と違う点を挙げれば、街中を走り回って聞き込み調査をしている事か。アタシを抱えているアイズには奇異の視線が向けられるが、本人はどこ吹く風で黒の
レフィーヤは軽く発狂しながら体を小さくできる魔法が発現しないかと願うも、自分の魔法スロットが埋まっている事に絶望しつつ、
そんなリヴェリアはロキと一緒にニョルズの
あとは昨夜に酒場の
カーリーと直接のドンパチこそなかったが、それでもアマゾネス姉は思い詰めた感じらしい。同室の妹が朝起きた時点で姿がなかったんだとか。書き置きの一つも残さないとか上級冒険者としての自覚がうんぬん。まぁまだ小娘にすぎねぇからしゃーない。その小娘が素手で建物規模くらいまでなら破壊できる暴力装置な危険性からは目を背けるとして。
「アイズさん!」
「あ……ティオネ、いた?」
「まだです。でもそれとはまた別の問題が発生して……」
そうこうしてる内に探索班の一つが襲われ、レフィーヤが強奪されたって情報が流れて来た。アイズは高台――近くの建物の屋根上に向かって行った。アタシはペシッって感じで放り捨てられた。解せぬ。いやまぁ少しでも身軽になるとなるためで、元よりオラリオアタシがメレンを破壊する可能性は限りなく低いのを承知の上でアタシの捕獲が遊び半分な行為だったって事なんだろうけどさ。後でアタシの事は遊びだったのねとか叫んだらめっちゃキョドりそう。試してみよう。
ちなみに情報を知らせに来たロキ派の団員は困惑してたが、仲間が大事って事でそのまま頭を下げてから走って行った。言葉はなかったが、きっとそれくらい信頼があったんだなって。名前も顔も知らんモブ団員だったけど。
しかしまぁ、これでようやく自由になれたわけだ。レフィーヤを誘拐したカーリー派には感謝の気持ちを込めて、滅びを着払いで送りつけてやろう。
「先に喧嘩売って来たのはそっちだ。恨むンならノコノコ外に出て来た自分達の迂闊さを恨むンだな」
港に停泊している巨大なガレオン船が、 湖の端へ進んで行き、唐突に真ん中から真っ二つに折れて湖に沈んでいく。知らんだろうが停泊してたそこはついさっきから一時的にアタシの私有地なんだわ。不法占拠してたからちゃんと丁寧に理由を説明して沈みたくなかったら移動しろって通告したのに、返答がなかったからな。内部を改めて誰もいないのは確認したし、中身も倉庫に収納したし、被害は最小限。仕方なく……そう、仕方なく実力行使したまでだ。アタシは悪くない。沈めた場所は養殖試験場として隔離される場所だし、ちょうどいい漁礁候補ができたなーだなんて考えてないとも。あとはモンスターの巣にならんような工夫を考えんとな。
魔力どうこうじゃなくストレートに魔石を通さない結界を開発できればモンスター対策にならんかね。極小サイズだろうと残ってるはずだし、引っかかるのは体内の魔石だから進んでたら突然体内の魔石が結界に衝突、粉砕、モンスターは死ぬ。みたいな。
とりあえず湖の中で試験運用中な水中型……と見せかけて水陸両用型
いやまぁ試作型だし生産性を度外視した高級品だから余計になんだが。頑張ってLv.5に届かせようとしたけど今の腕じゃ無理だったわ。一応Lv.4の上位にはなったと思うんで、数体いればアンフィス・バエナとも善戦できるはずだ。
アイツの炎ってガソリン由来なせいで水中だと吐き出された端から浮上するはずだし、三体以上でぐるぐる周回して背後や下から三叉槍ツンツンしてればいずれは倒せちゃうと思うんよね。水中って環境で人間相手に優位を取っても、水中適性の高い相手だとそんなもんよ。
つーか誘拐事件起きたし、この流れだとその内にロキ派の足止めを任されたイシュタル派も街中で暴れ出すはずだよな? よっしゃ春姫捕獲するぞ。護衛してるだろう【
魔法を使うタイミングはガマガエルの近くにいるだろうし、効果時間を考えれば襲撃のタイミングと重なる。ガマガエルは周囲への配慮ができないタイプだから派手に暴れるだろうし、相応に目立つとは思うが……さて。
とりあえず決行は夜だと思うし、わかりやすい混乱が起きるまでは待つしかない。なのでやる事は簡潔に、マードック家と【ニョルズ・ファミリア】の連名で【カーリー・ファミリア】を指名手配してもらった。
今回の誘拐事件についても山吹色の髪をしたエルフという特徴を出して目撃情報を集めてもらい、ついでに昨日もメレンに富をもたらす【ニョルズ・ファミリア】の団員と問題を起こしたテルスキュラをメレンの街は絶対に許さないし、協力者は最悪出禁とする旨を含んだ非常に強気な声明とセットだ。
同時に【カーリー・ファミリア】の乗ってきたガレオン船が何の報告もなしに離岸し侵入禁止区域に警告を無視して侵入したので有志の手によって沈められた事実も公表された。港側から案内されて停泊してるはずなのに、我ながら非道な真似をしたと思ってるよ。
まー昨日喧嘩できなかった以上は犯罪者に仕立て上げて賞金稼ぎとして狩りに行くのが正攻法でしょ。メレンは外に威を示せるし、アタシは【
莫大な利益をもたらすオラリオに繋がる海路唯一の玄関口である港街メレンの領主と、その街に深く根差す漁師のまとめ役。ここで商売したいなら絶対に敵に回したらダメな相手だ。仮に【イシュタル・ファミリア】と縁があっても、オラリオに続く海路唯一の玄関口と言ってもいいメレンを出禁になってしまえばその時点で意味を失う。今頃は協力してる商会も顔面蒼白になってるんじゃなかろうか。
そんで街中が騒がしくなる可能性高いから避難よろしくって勧告も出してもらった。後は避難場所の公民館やギルド支部、メレンの役場等々に魔力壁の
そして戦慄の夜が訪れた……。
アマゾネス姉妹はメッセージもらって行方不明になったし、捜索する【ロキ・ファミリア】の面々に向かって【イシュタル・ファミリア】と【カーリー・ファミリア】の混合部隊が襲撃した。食人花がいない分、カーリー側からも戦力が駆り出されたらしい。世知辛いね。
で、見張り台の屋根の上に陣取って街を俯瞰してたら、めっちゃわかりやすい金色の魔力光が漏れ出してる場所があった。なので、その場へと向けて跳躍する。この距離なら途中で魔力壁を足場にしなくてもよさそうだ。アタシとしても
「【ウチデノコヅチ】」
魔法の発動が終わり、光で形作られた槌が落ちる。光に包まれキラキラと輝いているずんぐりした全身型鎧という光景は中々に笑いを誘うが、さすがに笑って気取られるのは間抜けなんで心を無にして耐える。
「ゲッゲゲゲゲゲゲ! 行くよぉ~!!」
いかにも超重量な物体が衝突しましたと主張する破砕音を残して、ひたすら趣味の悪い土偶の失敗作みたいな物体が発射される。さっきまでそれの乗っていた地面が砕け、巻き上がる破片や埃に付近の者が目を閉じたり袖で庇ったりしてやり過ごす中、アタシだけが普通に動いていた。
まずは脚の長い女傑の首に腕を回し気道を潰す事で意識を奪い、そのまま付近にいたローブ姿の素敵尻尾も優しく絞め落とす。
後は気絶した二名を【
と、外に出て倉庫の屋根に飛び乗ったところで【
しかし、あんなのいたっけ? 記憶にないんだが。でも
――ドーモ、ラジルカ=サン。ルビス・ニンジャです
――ドーモ、ルビス・ニンジャ=サン。どうした?
――カーリー・ニンジャクランの船が例の場所に近づいたので沈めておきました。
――そうか。クルシュナイ
船が養殖試験場の上に来たから沈めたのな……これ後で【
いやまぁ本人は『潜水』持ってるし、
国外遠征に出るなら【ランクアップ】は済ませてるだろうし、地上というか海のモンスター相手なら傷つかないっしょ。
って、ルビスの報告に気を取られてる内に
とか思ってたら灯台の辺りから魔法が飛んで、船の沈没した辺りまで少し広めな氷の足場が生まれた。リヴェリアだな。ギルド支部の糾弾と制圧がない分だけ援護も早かったか。船も沖まで出てないから上手く噛み合ったな。時間的には男衆まだ来てない気もするが、各戦場の状況はどうだろうな。つーか当人同士が氷の上で元気いっぱいに儀式再開してるし。
これ【