そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱) 作:夜月工房
メレンの事件は二隻の船が尊い犠牲になったくらいで、戦闘の方は概ね正史通りに終わった。いやまぁカーリー派は帰る船がなくなった上にメレンから出禁を食らったんで強制的にオラリオへ移住する事になったわけだが。
打ちのめされたアマゾネスたちはロキ派の屈強な雄――特に第一級冒険者の三名――にお熱だから、オラリオへの一時移転は歓迎されてるっぽい。ウルガ運んで終わったせいでモテ期を逃したラウルは泣いていいと思う。あとテルスキュラ崩壊の足音が迫ってるカーリーも存分に泣き喚けばいいと思うよ。どっちも同情はしないが。
イシュタルは切り札の春姫が行方不明になって泡食ってんじゃねぇかな。恩恵の数が減ってないから諦めずに捜すだろうし、今後はぶつかったロキ派や、昼間に目撃例のあるアタシ周りに探りを入れてくるかな?
ちなみに、そこに至るまでの一幕としてちょっとした事件が起きている。
連中が帰るには出禁になってない別の街で造船して帰るか、誠心誠意謝罪と賠償を頑張るか……他の船を奪うしかない。そして早速最後の手段を試したわけだ。まぁ奪われた船が【イシュタル・ファミリア】と懇意な商会の船だったんで、自演に近いんだが。
そして船は湖内を出ない内に水中からのウォータージェットで櫂をピンポイントに破壊されて湖上から動けなくなり、最終的に白旗を上げて港まで戻された。その途中に養殖試験場予定地に船を牽引されて、透明な水の中に沈む自分達の思い出溢れる船の末路を見せつけられた連中が未来を悟ったりしている間にアタシが到着。三人用くらいのボートでギーコギーコと奪われた船まで向かったわけだ。前世のボート部が使ってるサイクリングマシーンのボート版みたいなやつで遊んだかいがあった……ごめん、嘘。割と勝手が違うわ。もうちょい真面目に取り組んでれば違ったのかね。
連中の奪った船に乗り込んだところ、昨日の昼に起こした一件が
最後にカーリーと少しばかりの会話を経てから亀甲縛りを解いて、代わりに簀巻きにしてから船の先端にぶら下げて悠々と港に帰還した。途中、湖からカーリー巻きをジャンプアタックで食おうとした
しかしこうなると軍神または闘神らしいアレスがとことん低評価ならぬ底評価になるな。そりゃ世の中には弱いのに好戦的で無能なのに仕切りたがるやつもいるから、軍神で闘神で敗北者ってのも矛盾はしないんだろうが……。
で、帰還して早々、罪状が重なったので怒り心頭な街による簡易裁判が待っていた。
元より住民の不満や怒りは溜まっていて、気のいい一方で気性は荒くもある漁師や船乗りの街であるため、演技指導がなくても空気はそれなりにピリピリしていた。
とはいえカーリー派も毎日が同士討ちトドメもあるよな生活を送ってるので殺気を受けても平然としてはいたが。
とりあえずカーリー側がふてぶてしすぎて話にならないってんで、アタシが調停を頼まれた。やらせ感が半端ないが、誓って裁判の内容には要望を出してない。あくまでメレンとテルスキュラの外交問題って認識だ。まぁ船を破壊して陸地に取り残したのは他ならぬアタシなんだが。
ひとまず人死にが出なかった点から、カーリー派に賠償金を請求し落とし所にした。稼ぎ方は犯罪以外なら任せるとした上で、オラリオが近いんだから下層深層まで遠足して稼いで来いってヒントもくれてやったアタシの慈悲にカーリーたちは感じ入ったらしく、歯を食いしばりながら涙を浮かべてたな。拘束されてて暴れたくても暴れられないだけだったのかもしれんが。
ちなみにオラリオへの入場審査は当たり前に拘束されたままで行われたので、ガネーシャ眷族のみなさんは驚いたり引いたりしてた。そしてガネーシャはカーリーを見て顔を青くして震えていた。いやーすっかり失念してたわ神話の関係性。
まぁカーリー派はオラリオじゃまだ犯罪者扱いじゃないし、問題なく通った。要注意ではあるが、勝つまでは死んだものとして大人しく言いつけを守るそうな。一応、誇りを傷つけられた場合はその旨と理由を伝え、謝罪や配慮を欠かすようなら容赦なくやって構わないとは言ってある。オラリオの冒険者も民度は低いし、女子供を侮る価値観は割と浸透してるからな。ついでにロキ派の第一級冒険者に対する色んな意味のアタックも、少々刺激的な日常でしかないし許可しておいた。イベント潰してる分の補填になればいいなー、なんて思いつつ。
こうしてアタシは日常に戻った――そう考えていた時期がアタシにもありました。
「
「その場では突っぱねたけどね。なんかリリルカ君が言うには相当しつこいって噂だし、ダンジョン内でそれに関係してるっぽい襲撃をされたりとかもあったらしくて……」
はい、
原作と違ってヘスティアが異性として意識してない……とは言えない部分があったりもするが、原作みたいな肉食系ヘタレじゃなく遠くにあっては優しく見守り近くに寄ってはタオルと蜂蜜レモンを差し入れてくる先輩マネージャー的なスタンスになっている事もあり参加の必要性が全くない。むしろ招待が急な事もあり、既に予定が入っていると参加を見送る方向だったそうな。ちなみに予定とは眷族と一緒の食卓を囲むというものである。あったけぇ……。そういや前世の神話で炉の見張りって仕事を理由に会議の欠席をしたんだったか。いやまぁ参加中に何か起きて炉の火が消えたらガチでギリシャ世界の終わりに繋がるような設定だった気がしたから責任感の発露でもあるんだが。単純作業だけど気が休まらなくもあるよな、見張りって。門番とかも同じで真面目に取り組むと大変で大事な仕事なんだわ。
が、ここで待ったをかけたのがリリと姉御。リリはアポロンの眷族強奪やら襲撃等の嫌がらせやらの所行から、おそらくはベルが執着されている可能性を指摘して、可能性などない事をワカラセしておくべきだと主張した。
姉御はこの機会に他の神とも
オッサンはうま味がなさそうなので興味は薄かったが、姉御の気迫に
狙われてる可能性を告げられたベルはといえば、
アタシとしては部外者なんで好きにしろとしか言えなかったが、その異常な【ランクアップ】速度で悪目立ちしてはいるんで
で、緊急
戦力比で言うと、Lv.3一人の百名余りな中規模集団にLv.5が追加され、Lv.4三人の小規模派閥に気心の知れたLv.4が一人追加でトントンでは? となった。計算に入れられなかったルビスは泣いていい。ヘスティアは眷族を大事にする主神としてちゃんと訂正を求めたらしいが。いいぞ、そういう部分が慕われるいい神の条件だ。
こうして
ちなみに、準備期間は舞台となる砦の整備を含めて五日間。移動時間を除いても間に合うんで普通に深層行って来た。今回は49階層まで行って来たんで、アポロン派やイシュタル派、またはそれらに依頼を受けた派閥からの襲撃は起こらなかった。帰り道は許可もらって倉庫に収納して、アタシ自身はいつもの姿隠しと、神酒をふんだんに使って嗅いだものを酔わせる効果を付与した新作ローブで移動したし。
それと何故かアポロン派は
つーか
あと原作ならこのタイミングでリリやヴェルフ、命といったベルの築いてきた絆が『
で、当日になり、
「おいおい向こうの団長はLv.4じゃなかったのかよ!? 【
「団長の妹とかいうのもやべぇぞ!? は? 【静寂】の関係者……ふざけんな勝てるかあんなの!」
「
「巫女しゃま尊い……しゅき……」
「あの幼女Lv.1とか嘘だろ? つーかなんだあれ」
オラリオの各地から、主にアポロン派に賭けた連中から嘆きの声が上がる。そしてそれでも神々は規定路線を引っくり返す未知の大盤振る舞いに大笑い。
なお、バベルで観戦していたアポロンは途中から真っ白に燃え尽きており、ヘスティアは初めて見た戦場における
補足しておくと、蹂躙といいつつ各々の切り札は完全に伏せたままの白兵戦オンリー。それを把握しているのが戦場にいる当人たち以外だと
あ、ベルが完封勝ちしたな。
いやね、ベルって武器がナイフだから大型相手にちょい不利なわけじゃん。強みである脚を活かす意味もあって、蹴りは蹴りでも地面を蹴る方の蹴りで敵の体を足場に使いつつ破壊できたら楽できるかなって思ったんよ。足技はアタシの体型が
他に接戦はなく【ヘスティア・ファミリア】の宣伝して終わった感じだな。アポロン派は団長の【
アポロン側の全滅で幕を閉じた
なお、地味にデカい影響としてリリの活躍が明るみになった事で【ソーマ・ファミリア】の
まぁ、いくつかの不祥事を揉み消してやった代わりに公表させてる決算を見るに接待費や旅費、その他雑費は抑えられてるし、街並だけでなく路地裏も整って来ている。最低限と評価するのは難しいくらいしっかり仕事はしてるんで多少の小遣いになる程度は許しておくか。
ダイダロス通りはまだ貧民街のままだが、あの場所はまず九龍城砦も顔負けな建築を切り崩していかないとな。本音を言えば平和を勝ち取った暁には文化遺産に認定されてもいいくらいの価値があると思うんで、住民の衣食住が不自由しない程度に支援して放置が安定でねーかな。労働の対価って形はしっかりさせんといかんが。
ギルドとは別口で行う手に職をつける仕組みは考えてっし、それこそダイダロス通りの孤児院中心に展開予定。近く『
ナーロッパ御用達な読み書きできるだけで有能って水準はオラリオでも通じるからな。仕込む内容は前世で言う小、中の義務教育を若さに任せてギュッと凝縮するんで、部分的には学区よりも高等な教育をできるんじゃないかな。さすがに規模は負けるが。
十年先を見据える意味があるのかは知らんが、いつの世も事務員は引く手数多だ。誰にでもできる仕事とか言って見下してる視野が狭いやつは大抵ゴマすりで出世してるから見限り推奨な。一部尖りすぎただけの
つーかむしろ平和になればこそ管理社会になって事務員の仕事が激増するんだよ。記録とか言ってる余裕ある生活を保つためにも黒竜討伐やり遂げんとな。