そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱) 作:夜月工房
遥か彼方、星の海を征く船が飛んで行く。煙の柱は高く、どこまで高く伸びていき、やがては船そのものも小さな星の一つになって消えていった……少なくとも、そのように映った。
『……長かったっす』
『そして人は揺り籠で空を飛び続ける、か』
かつて航行中の事故により墜落した船。偶然出会った原住民である不思議な生物の力を借りて、飛び散った部品を回収しては船体を修理する毎日。それは同時にその敵対的な原住民との過酷な生存競争を繰り広げる日々でもあった。
仲間を増やし続け、しかし戦いの中で失っていった。
そして宙に浮かぶ黄金の立方体が現れてからは友好的な原住民に大きな変化が訪れたのである。
ニンジャ――それはかつて世界を支配していたと言われる半神的な……しかし人々にとってはこの上なく邪悪な存在。何の因果か、彼らは現代に蘇った……原住民に魂を憑依させるという、驚異的な方法で!
こうして生まれたのが『ピク
いやもうホント【
ちな、本来ラスボスを張るはずだった大王で出目な巨大ガエルは、何故かピクニンたちの相対するボスとしてリサイズされた【
最終的には他の六騎士の連携により弱ったところを、ソガ・ニンジャが爆発四散してなお形を保ち残っていた超自然タタミによる断頭台めいた一撃により首を断たれてガマガエルは爆発四散した。ハイクを残す事も叶わぬスピード爆散だった。
最後の部品――生存とは無関係な金庫――を回収した(修理済の)ロケットは、冒頭の通りに宇宙へと旅立っていった……このまま2とかに続いていくんかねぇ。
そして残るピクニンたちは倉庫内で第二の平安時代とかを始めるんだろうか。すぐ近くに桁違いな性能を誇るボーグ軍団がいるんで、喧嘩売ると即鎮圧されると思うんだよな。多分Gレッド一体で片付くぞ。チェイサーされたらそれだけで百体単位で蒸発するだろ肉体強度的に考えて。
さて、そんな倉庫内のトンチキ事情はさておいて、久方ぶりの深層狩りである。いやね、いよいよベルたちの方がLv.5になって、こう、焦りがですね。当のベルたちは数日前にグランド・デイやったにも関わらず早速課せられた
地味にヴェルフの【ランクアップ】が早まった分だけラキアの宣戦布告も前倒しになりそうなもんだったが、所属が【ヘファイストス・ファミリア】のままなので奪還方法の検討が立たないらしく、少しばかり余裕があるらしい。
あの国も
「こうして二人だけでダンジョンに潜るのは初めてですね」
「だなァ。大事にしようと思って遠ざけてたら誘拐されるとかダセェわアタシ。おかげでこンな遅くなるとは」
まぁ、おかげでこうしてリリを伴って深層45階層で火炎石集めをしていられるわけだが。リリも【ランクアップ】の資格は満たしてるんだが、力と耐久がSで止まってるらしい……十分ではと言いたいが、Lv.5からは対応する敵に出会うのも一苦労でアビリティを伸ばしにくくなるからな。高みを目指すなら
リリの場合は【
ファイアーなエムブレムやタクティクスなオウガの形式だと必要経験値が固定だからレベルを上げずに経験値を貯めておけるなら実に楽なんだろうが、さすがにJRPGの伝統的な曲線を描く必要経験値だと思うからなぁ。レベルを上げて強い稼げる敵を倒す方が早いでしょ。
しかしリリのスキルを思い出すに、熟練度の高補正と中補正が重なってるはずなんだよな。それを中補正もらってるとは言え突き放す早熟効果の恐ろしさよ……そういやなんで主従契約で魂繋がったのが反映されてるっぽいスキルがリリにはあるのに、アタシにはないんだろうな。アタシもほしいぞ早熟とか熟練度の補正。
「お姉ちゃんとしてはリリに冒険者じゃなく普通のお仕事をさせたかったのでは?」
「まーその気持ちがなかったわけじゃねェな。自分でダンジョン潜ってひーこら言ってたから余計に、な」
当時は今以上に原作知識に引っ張られてたからなぁ。リリは冒険者適性がなくてサポーターが精一杯だとしたらやっぱり傷つくかなぁって思っちゃいたんだ。単純に死ぬ率も高いし。
なら教育に力を入れてギルド職員を目指してもらうのもありかなーとか思ってたんよね。まぁ、槍を扱わせたら完全にアタシより捌きがよくて自信喪失させられたわけだが。思えばあのときにソーマヘ頼んで『
「リリはずっと、お姉ちゃんのお手伝いがしたかったですよ」
「あァ、ありがとな。それにごめン。その上で気持ちだけで十分……って言ってやれりゃ良かったンだが、事実として手伝ってもらわにゃねェわ。割と無理ゲー」
リリの気持ちは伝えられちゃいたが、当時の年齢を考えたらどうしてもまだ早いって思っちゃったのよな。こっちは前世の常識に引っ張られたな。自分の来歴を見ろって話だわ。5歳やぞ、5歳。いやまぁサポーターでも死にかける環境ではあったから同じ目に遭わせるのは前世の常識抜きに気が引けたんだが。
まぁ結局は黒竜討伐のメインプランに組み込んじゃってるんでなんとももどかしい。ベル村での七年間もオラリオに同行させてダンジョン潜っておけば良かったか? でも少なくともでもその七年間があったからスキルが発現したんだろうしな。倉庫内じゃGFエナジーをGFエナジーで洗う仁義たっぷりなボーグの抗争してたから指揮の経験も積んでるし。ゲームと違って2対2じゃなく合戦形式だったもんなぁ。ガチでゲームが違ってた。
「ふふっ、その言葉が聞けただけでリリは満足です。さぁ、もっとペース上げていきましょう! ふんす!」
「あいよー、了解。倉庫から在庫食わせる方向に移行すっから三倍速くらいになるぞー」
「……え゛」
リリの向上心には頭が下がる思いだ。肝心要の黒竜とタイマン張って弱点の位置を割り出す役割を任せなきゃない以上、アタシにできるのはリリの強化に全力を尽くす事。万能薬の貯蔵は大丈夫なので今日は存分に戦い、一生分死にかけてくれ。
「あ、ちょ、待……アッー!」
「り、リリー!?」
こうしてアタシたちは姉妹の絆を深める事ができました。そしてリリも無事にLv.5到達です。フレイムロックという割と硬い相手(の強化種。格上)と殴り殴られしたから伸びがエグかったっぽい。
あとは消耗を抑えながら進む必要がある普段と違って潤沢な支援を受けられるから無理をし通しだったのもあるんだろうな。これには『
唯一の問題があるとすれば、リリの癒し担当から外されてエイジャとラピスに下剋上されたことか。
『やりすぎたんだよ。お前はな!』
「むむむ」
『何がむむむっすか』
はい、ラピスとエイジャの反応も塩いです。アタシはただ、リリに少しでも強くなってほしかっただけで……おろろーん。
ちな、お気づきの通りラピスには先日ダンジョン内の『
つーか装備の代わりに道具を取り込んで消化吸収する風来人の印みたいな仕様で特殊能力得られるの強くない? 限界はあるけどコスト制で強化種としての
『謝るにも時間をおかないと意味ないわ。その間に私を強化しなさい』
頭をペシペシ叩きながら正論で的確なダメージを与えてくる
精霊の強化ってなんじゃろなと思ったものの、元が魔石を持っていた
『もう少しでデン・ジツ初級に届くのよ。今度こそあのアンポンタンに吠え面かかせてやるわ!』
「懲りねェな、テメーも」
『最後に勝てば勝ちなのよ。勝つまでやれば負けじゃないのよ。おわかり?』
うん、こいつも微妙に染まってるんだ。程度の差はあれ教会利用者は例外なくヘッズとか軽く地獄なのでは? アタシは訝しんだ。なおアタシが記憶頼りに文書化したせいなのは公然の秘密である。極東勢まで染まりつつあるのは、なんていうか、すまん。
まぁ、アタシや主従契約組は忍殺やネオ・サイタマのトンチキ具合がわかるが、こっちの世界からすれば完全な異世界の物語であり、未知で溢れてるからな。どこがおかしいとかの段階にはなく、こんな発想どこから出てくるんだって感じらしい。21世紀に生きる日本人でも七割くらいは同じ気持ちだよ。タブンネ。
なお、ルビスは【
「まぁ、深層帰りでそれなりに稼いできたからな。ほれ」
『そうそう、これこれ。いい感じいい感じ……気が高まる……溢れるぅ……!』
「唐突な超野菜人化するのやめーや」
主従契約ないはずなのに若干壁越えしてる気がするんだよな。本人(?)たちは無意識らしいんだが……まぁ、十中八九【
アルテミスだけはポンコツ化によるキャラ崩壊済なので余計な手を加えず素材の味を活かしたらしい。GJと言っていいのだろうか……いいよな、きっと。
『来たわ、ついに私の時代が! 勝負よルビス!』
『サンをつけろよこのデコ助ヤローナマッコラー!』
『アイエェェェェェ!?』
おそらくは雷系の攻撃魔法が解禁されたんだろうが、喧嘩の売り方を間違えて2秒で沈められてた。ソンケイが足りなかったな。もっとクエストをこなして集めておかんと。
こんな感じに賑やかだが穏やかな数日間。ようやくラキア王国出兵の報がオラリオに届いた。そしてアタシは
ヘスティア派は直近でこなしたばっかりだし、今回は参加命令なし。まぁ全く【
所属が違う以上はヘスティア誘拐イベントが起きる可能性は限りなく低いと思うが……アポロンの一件で修正力っぽいの働いてる可能性が出てきたからなー。マジめんどい。
考えつく範囲だと、ヴェルフの主神であるヘファイストスの友神だからってものっそい遠回りした理由でヘスティアが誘拐される可能性はあるんよな。頭ラキア王国とかいうアホの総本山だからどれだけ警戒してもすり抜けて来そうで怖い。
もういっそ商人の要求とかアホな理由をガン無視するために先んじてオラリオ出て迎え撃とうかな……ロキ派に許可もらう必要あるか?