そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱) 作:夜月工房
さて、なんのかんのと小説にない細々とした事件が立て続けに――あるいは重なって起きたりはしたが、その多くは愉快な日常の延長でもあったと言えなくもない。概ね平和だったよ……少なくともアタシは、な。
うん、アタシの知らない間にベルたちが巻き込まれて、大きな流れの果てにどうにか解決できたって感じ。夕食時の報告会が最早叙事詩の朗読会みたいな有り様だったわ。
アタシがダンジョンの引率とか強化種素材や酒の納品をしてる間に、下らねー神の悪ノリとか振り回される眷族とか商人の暗躍とか、そんなんが奏でる
そして気づけば『
うん、大切な人がほとんどいなくて、その中で故人は更に少なくて、その数少ない括りに入る両親を
つーかダンジョン内で死んだやつってワンチャン『
いうて原作の前世人間疑惑ってリドの沈む夕陽が怪しいくらいか? それだって前世が大穴時代だったり、
いや待て。原作フレイヤがベル死んだら後追い送還するとか宣言してたって事は、ダンジョン内で死んでも魂は天界に上ってなきゃおかしいのか。いやでも個人に執着したのが初なら今まで魂の行方を見届けて来なかったから知らない可能性も……仮にも全知なんだよなぁ
でも『
その場合、ラキアが馬に『
つーか人間社会に暮らしてて『
いっそ被差別民として人類の結束を固めてくれるならお勤めご苦労様ですって言えるんだが、当然そんなつもりもないので文句だけは一丁前。むしろ周囲まで腐らせる元凶なんで排除するべきなんだわ。見た目や塩基配列のパターンが同じだとしても精神的な部分が違うから別種の生物なんだよアレ。
つーか相互理解も共存も不可能なモンスターが闊歩する弱肉強食の世界で弱者の守られる権利なんか存在するわけないのに、どうしてそうできるのか。コレガワカラナイ。
あるいは外伝のペニアがアイズに漏らしてた嘆きは、そういう部分でもあったのかもしれんね。怠けたり責任転嫁したりは、それをできるだけの余裕がなけりゃ起きない……いやまぁその場合に起こるのは略奪や更なる弱者の使役と搾取が精々で、底辺同士の足の引っ張り合いなんだが。アイツら精神構造に欠陥あるから物質的な貧富とかじゃねぇのよ。
そんな連中から謂れのない暴言や投石を浴びせられながらも各地の問題を解決しつつ人材や物資を集めてくる学区は大変よな。いやー実に頭が下がるわ。とてもロキ、フレイヤと同じ地方の出身には思えない。なお半巨人とヴァン神族。北欧神話的にはアース神族しか勝たんとでも言えばいいんだろうか。ニョルズ……は、無自覚に
とはいえアース神族の主神オーディンからして半巨人ではあるんだよな。つまりバルドル辺りも霜の巨人族の血を引いちゃいるんだわ。結局は種族なんて傾向でしかなく、個神差でいくらでも引っくり返るって事だな。そもそも北欧神話の創世からして最初に生まれた生命が巨人の祖ユミルだしな。血を引いてない方が少ない。
話を戻して『
そんな厳かでしめやかな地上の空気とは無縁なこちら、お馴染み教会の地下である。文明の利器最高ー! イエーイ! こちとら羽目を外したい民衆と財布を緩めさせたい商人の思惑が
一応、ベルやヘスティア、リリは善に偏っているので弔いに参加してきたし、姉御とオッサンもダンジョンで失った仲間の墓に酒を捧げてきたりしてきたようだ。
アタシはどうにも気が乗らないので、目立ちすぎる精霊組や外に出す選択肢がない『
つーか、天界で浄化されて神の気分で転生したりしなかったりする仕組みが判明してるんだから、来世や来来来世で再会できるよう――天界の神が人間に転生させてくれる可能性に祈る方がまだマシだろ。
現にベルやリリみたいな挽歌捧げられてる英雄の転生後がゴロゴロしてるんだぞ現在のオラリオ。下手したら自分の前世に挽歌捧げてるとか間抜けすぎん? 可能性としてはフィン辺り。いやまぁ個人にだけ捧げるわけじゃないだろうけどさ。知人の前世でも十分道化に映るわ。
どちらにせよ、日本の地獄みたいな遺族からの弔いで刑期やら獄卒からの評価やらに影響が出せる概念を持たないなら祈りなんぞ無駄でしかないと思うわ。天界の神々には届かねぇんだから。
しかし、なんだ、
自分の気持ちを切り換える効果を考えれば無意味とは言わんが、同調圧力とかいうクソ面倒なもんがあるので近寄りたくはない事に変わりはない。自宅警備万歳。
なお、帰宅したベルの不謹慎では的な意見に対するアタシの
なもんで掲げている志を再確認しつつ、礎になった死者たちへの感謝と悲願達成による報いを与える誓いを胸に、いつもより上の水準にある料理を食べたとさ。
さて、この【ヘスティア・ファミリア】は仲良し家族であり、個人で出歩く事が非常に少ない。いやまぁなくはないんだが、本来なら冒険者が休養日にやっておくべき装備や道具、日常生活に必要な衣類や食材なんかに関してのアレコレをアタシが【
娯楽もアタシが自分用に前世の記憶から引っ張り出して編纂した小説やら、倉庫内の冒険を撮影した動画やらがあるし。リリとルビスに至っては倉庫内で活動したりもする。
他の面子が羨ましがる事もあるが、現状だと資格を付与できる人数が限界に達してるからと断ってる。せめてデートの後にフレイヤ派と決着、できれば和解した後だな。多分だけど、原作知識を得たらベルとヘスティアがギクシャクしちゃうだろうし。
特にこっちのベルは元の優しさと察知能力に加え周囲の評価を反映させる形だが自己評価もちゃんとできてるスーパーなベル。恋愛の経験値も高く朴念仁からは遠いのだ。何せ……アタシが思い出せる限り内容を再現した前世の名作を読んでるからな! 言ってみれば模擬戦のプロである。ダメじゃん。
いや、恋愛なんぞは古今東西で話題に上らない時期がない娯楽の一つで、既にパターン化されきってるからな。それでも廃れない辺りはさすがと言えばいいのか。
まー、当事者として恋の衝動に振り回されている場合はその限りじゃないが、原作と違って劇的な出会いがなかったからなぁ、こっちのベル。もちろん、幼馴染系の一緒にいるのが当たり前でいつの間にか好きになっていたって微妙に洗脳を疑うタイプな恋もあるが。
つーか仮に原作のあの場面が起きて一目惚れしても、吊り橋効果って知識を持ってるとあっさり冷める気がするんだよな。でも恋に恋する感覚に浸りたいから見ない振りをする可能性もあるにはあるか。アイズがかわいい系の美人なのは間違いないし。
えーと、それで休養もベルは目的を持って行動――主にオラリオ観光――するんだが、当然のように家族を誘うし、保護者側も喜んで同伴するんで結局はまとまって行動する事になるわけだ。姉御は完全に
その意味だとダンジョンに通う回数を抑えてるヴィトーが一番単独行動してる回数は多い。主な活動場所は孤児院でほぼ固定だが。それでもベルに誘われた際はホイホイついて行って、五感に振り回され気味なのでリアクション担当として場を沸かせている。これには天界のエレボスもニッコリなはず。
むしろ自分が隣にいない事を寂しく思ってたりするんだろうか。
で、何が言いたいかと言うと、外出中にベルがデートに誘われました。シルに。手紙じゃなく直接出向いて、みんなの前で。日時は原作通りに女神祭。天を仰ぎながら深く息を吸い、ゆっくり息を吐きながら下を向くヘスティアの心中お察し致します。仕事あるだろ豊穣神って言いたいよな、わかるわぁ。
姉御は、ふむ、と思案顔。オッサンはベルを茶化したいけど頑張って抑えてる。リリはソイツ恋より先に愛に到達しちゃってて家族最優先するけど平気? って憐れむ顔してるんだよな。
アタシは子供できない神相手なら性欲発散の相手としては申し分ないが、溜まりに溜まった
全くの余談だが、こちらのベルは――具体的な年齢は避けるが――村にいる頃、無知から来る夢精の報告……というか謎の症状にすわ不治の病ではと命の危機を覚えて泣きじゃくりながら相談して来たので、精通は確認されている。
まぁ何も知らんと朝起きてそんな未知の現象が起きてたらビビるわな。寝てる間に初潮迎えて朝起きたら股間が血塗れなのと果たしてどっちがマシかって話なんだわ。
ちな、遅きに失した感はあるがすぐさまその日の内に性教育と恋愛における脳の動きを覚えてる限り教え込んだ。ベルは恥ずか死んだ。なんかそれに繋がる夢を覚えてたみたいなんよね。夢に関する知識というか情報の混線による混沌とした内容になる可能性を告げておいたので、変に現実のお相手へ態度を変えるような事はなかった。なお夢の内容は知ったらむしろ気まずくなるって口外禁止しといたんで、ベルの初めてを捧げたお相手はベル本人しか知らない。
一応、性教育に際してリリと姉御とオッサンにも同席させたが、それぞれ初耳だったり間違えて覚えていた情報があったっぽいんで、割と実りある講義になったと思われ。なお途中から同席していたゼウスは余りにも淡々と性知識を披露し合うアタシたちの枯れ具合にドン引きしていた。
……知識量による価値観の違いを擦り合わせるために、改めてヘスティア派の新規参入組と傘下一同にも性教育ってしておいた方がいいんだろうか? いざとなれば『最早攻略本』とか『間違いなくエロいのに読んでる内に性欲が夜逃げしてた』とか言われそうな
そういやシルがアタックかけたわけだけど、他のヒロイン候補はどんな塩梅かね。確かミアハ派に移った【
結局、ベルは少しだけ間を置いてから、デートの申し込みを快諾した。歯の浮くようなキザったらしい台詞と共に。これにはシルも思わず胸を押さえて生まれたての小鹿のように足を震わせる始末。姉御やヘスティアは後方腕組み師匠面して頷いてた。
そして流れるようにアタシは女神祭に合わせてバイトのシフトを入れられていた。解せぬ。