そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱)   作:夜月工房

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147.明晰夢を見ました。プレゼント下さい。

さて、図らずも最強派閥として台頭する事になった【ヘスティア・ファミリア】だが、アポロン派蹂躙やフレイヤ派圧倒を目撃した以上は異論など出るはずもない……どっかで見た目だけならヴィトーの血縁で通じそうな平たい族の女神が異論を唱えてる気もするが、文句があるなら戦争遊戯(ウォーゲーム)を提案してくればいいだろって話だ。【経験値(エクセリア)】的にまず味なんで拒否するが。

そしてフレイヤ派がヘスティア派の傘下になり、そのヘスティア派が実質アタシの傘下にあるってことは、だ。アタシから見て傘下の傘下の傘下に相当する豊穣の女主人でバイトをするのは外聞が悪いから当然禁止される……そんな風に考えていた時期がアタシにもありました」

 

「声に出てるニャ」

「ミアお母さんが許してくれないと思いますけど……」

「くっ、だが努々忘れるな……例えアタシがバイトから抜け出せないとしても、いつか第二第三のアタシが……」

「へぇ? そりゃ英雄候補の坊主たちがバイトに来てくれるって意味かい?」

「グワーッヤブヘビ!」

 

無心に皿洗いをしていたはずが、いつの間にか声に出ていたらしい。まぁ言い方は悪いが、アタシだってこんな所でこんな事してる余裕は本来ないんだわ。ダンジョン行きてぇ。せっかくLv.7になったんだから深層の深くまで潜って新素材と出会いてぇ。穢れた精霊関連の調査もしてぇし。ロキ派へのテコ入れがてら遠征でも提案してみるか?

そういやLv.7と言えば、オッサンと姉御も今回の戦争遊戯(ウォーゲーム)後に【ランクアップ】した。対戦経験のない同格の相手って事で新鮮な【経験値(エクセリア)】がザックザクってわけだな。

ただまぁ、これで二人は前世の階位(レベル)に追いついた事になり、転生特典とも言うべき【迎逝想起(メメント・モリ)】の効果を失ってしまった可能性が高い。それを裏付けるかのように、代わりのスキルが生えてきたからだ。

 

風雲再起(ヘーロース・レナトゥス)

・早熟する。

・誓いを果たすまで継続。

・『幸運』『強運』『豪運』を得る。

 

 

ヘスティアは同じじゃないかってツッコミ入れたらしいよ。でもホラ、二周目以降限定の早期達成ボーナスみたいな発現条件したスキルかもしれんし。役にしか立たないつよつよ効果だからありがたいっしょ。

うん、文字だけ見て脳内でお馬さんがパカパカしてたのは内緒だ。いっそ二人ともそのまま流派東方不敗を……流派東方不敗を修めたベル? うっ、頭が。

しかし、ふと思ったんだが、メメモリの過去って階位(レベル)じゃなくオラリオ最強派閥の座だった……あるいはその両方って可能性もあるんよね。いやまぁヴィトーもLv.4の段階で生えてたから階位(レベル)で間違いないんだろうが。『神の恩恵(ファルナ)』があくまでも戦闘関連特化な武器な以上は階位(レベル)なんだろうなぁ。なおアタシの魔法や発展アビリティ。

 

「まぁここで働かせろとまでは言わないけどね、たまには気分転換させときな」

「あー、まァ、お気持ちはありがたく。とはいえベルに関しちゃ逆に火が点いて修行が楽しくて仕方ねェらしいンだわ」

「ふふ、ベルさんは一刻も早く黒竜をやっつけて私とラブラブしたいんですよね」

「黙ってろ色ボケ娘」

 

ベルは【猛者(おうじゃ)】相手に試合で勝って勝負に負けたってんで、そりゃもう再戦に向けて燃えに燃えてる。なんせ、当の【猛者(おうじゃ)】は戦争遊戯(ウォーゲーム)を経て先んじてLv.8に到達しちゃったからな。

今までは単なる都市最強って薄い関係の遠くにいる住人だったのが、公式試合で土をつけられたって因縁が生まれて明確に越えるべき相手に変わった。そりゃもうラルさんに対する艦出少年みたいな気持ちで次は完全勝利するぞってやる気を出してたら、向こうは興味ないと言わんばかりに一人で階段を上って行ったわけだ。そらベルとしては置いてかれた感もあってピキるよね。

猛者(おうじゃ)】のランクアップに関しては単純に新鮮な同格との対戦って意味でも偉業ポイント稼げただろうけど、考えてみれば主神命なフレイヤ眷族なんだからフレイヤを夢中にさせるベル相手に因縁が生まれてないわけないよねっていう。原作だとベルとフレイヤ幹部の間に階位(レベル)差があるから上位の【経験値(エクセリア)】もそんなに望めないとは思うが、こっちじゃ同格だったわけだし。

あるいは他の団員も嫉妬や憎悪から羨望や敬意みたいに、向ける感情の種類が変化すれば精神的な成長扱いで上位の【経験値(エクセリア)】はガッポガッポな可能性もあるよな。まぁ無理だとは思うが。

 

 

 

ところで、だ。恐れていた事が現実になった。

 

「三番テーブル、()()()()()ケーキセット三つです。お姉ちゃん!」

「こっちは六番テーブルにラテアートの注文が二つ。配膳とお絵描きはリリよろしくね」

 

そう、サザエさん時空というかスマホゲー時空の到来である。女神祭からの戦争遊戯(ウォーゲーム)終了直後なんだからまだギリ晩秋ぞ? 聖夜祭にはまだ早いですよ!

いやまぁ厳密には違うというか、そもそも夢オチだとは思うんだ。さすがに面子が揃う行事(イベント)のタイミングでバイトはしねぇしさせねぇよ。なお女神祭。

あ、あれはベルがデートでリリや他のみんなも護衛兼出歯亀にノリノリだったし、アタシのバイトに至ってはある意味じゃ神意なんでノーカンだ、ノーカン。別に聞いてやる必要はなかったから言い訳としちゃ弱いが。

つーか恋人がいなくても大切な家族と幸せを分かち合う明るく楽しい行事(イベント)だってのに、非モテのオッサンが集まって暗く淀んだ雰囲気を醸しながら自棄酒するような場所に取り込まれて堪るかってんだ。そういうのは億単位の借金抱えてて、雀の涙な給金で馬車馬の如く働かなきゃなくて、住み込みだから男を連れ込む事も難しい、そんなお可哀想な恋なき喪女(4バカ)共に出会いの場とか適当に言いくるめて相手させとけばいいんだよ!

 

「せいニャ!」

「踏み込みが足りん!」

「ニャニャ!?」

 

おかしい。口には出てなかったはずだが……女の勘か? どっちかってーと野生の勘か。アホ猫……恐ろしい子!

 

 

そんな感じで仕事終わり。一日の締めに店の掃除をしていたら、まぁ食材の買い出しに行ってたシルがやらかしてくれました。

 

「……ぁぅ」

「えーっと、あはは……」

「うーん、ここで面倒見たいって?」

「ミャーは子供の面倒なんて見れないから反対ニャ」

「面倒見るが文字通りになりそうね。面倒事のにおいしかしないわ……ショタならまだしも」

「私はミア母さんの判断に任せます」

 

髪は伸び放題のボサボサ、服はヨレヨレで裾が擦り切れたりでボロボロ。どっかで転んだのか汚れもそこそこ……そんな感じの見た目幼女を連れて来たのでありました。

ダンジョン帰りの冒険者も利用するから大して変わらんが、飲食店やぞここ。衛生観念さんに仕事させてもろて。

 

「ねぇ、ジル(ねぇ)。あの子の雰囲気って……」

「あァ、アルテミス(テミさん)たちのご同輩だァな」

「あれだけハッキリとした姿という事は……」

上位精霊(そういうこと)だ」

「うわぁ……さすがシル様」

「すごく……運がいい(もってる)……」

 

はい、店員とは別にこそこそ話と洒落込むバイト一同です。【異界信仰(ヴェルト・グラオブ)】が自信を持って名前:なしって鑑定結果出してる時点でほぼ確定だが、無知無垢な感じからすると生まれてからそんな時間が経ってないと思った方がいい。

防衛力のない場所じゃないが、仕事の忙しさからすると子供の面倒を見るのは難しいだろうな。ここは一つうちで引き取るって申し出ようかね……とか思ってたら今晩は豊穣の女主人の離れにシルと一緒に泊まるらしい。離れとか寒そうなんだが。暖房あったっけ? 湯たんぽ要る?

確かに懐いてるというか、シルにべったりではあるんだが……神と精霊の関係かね? しかしシルに子供の世話ができるかと言われると……うん、無理だろ。学習能力ならまだしも、初期の料理の腕を思い出せ。他の分野も習ってないなら壊滅的に決まってるだろ、どうせ。美神なら外観を整えるのは知識も腕もありそうか。

 

 

「つーわけで風呂に入れて着替えさせた結果がこちら」

「わぁ、可愛い!」

「うんうん、おミャーはやればできる子だと信じてたニャ」

「オールバックのポニーテール……カハッ!?」

「クロエが血を吐いた!?」

「部屋に捨てて来ましょう」

 

はい、店員たちの反応もそこそこ良くなりましたね。見た目の清潔感は大事。

いやしかし、風呂に入れてる最中いくつか怖がらせないよう注意を払いながら聞き取り調査(インタビュー)してみたが……なんだろうね、正規の過程(プロセス)で生まれてきた精霊は、ようわからん。誰が何を考えて送り出したのかさっぱり。

いやまぁ比較対象がアルテミスしかいないから全く参考にならんが。鑑定結果は上位精霊だけど、ゲームでいうなら没データとかデバッグ用の未実装なタイプだろ。いやだって融合アンタレスの行使してる『神の力(アルカナム)』ぶんどってこねこねした器に不具合(バグ)起こしてポンコツ化した魂の一欠片未満を仮想神格としてぶち込んだ代物だぞ? けつばんとかの系列じゃん。

使命もない、事前知識もない。何故か受肉した人型をしてる。あれかね、寝惚けて本神も知らん内に遣わされた可能性。強いて言うなら送り先がオラリオだから、例えば大抗争で送還された神の誰かだったり、あるいは地上に降臨しておきながら世界の中心とは無関係に過ごして送還された悔い持ちの神だったりか?

 

まぁ、様子見でいいか。神連中は聖夜祭の近くで浮かれてるから注意力散漫になってっし、他にちょっかい出しそうな怪人(クリーチャー)勢力は地上に出て来るもんじゃない。ついでに闇派閥(イヴィルス)はもういないじゃない。とりあえず帰って報告して、可能なら引き取りも視野にって事で。

 

「そんじゃアタシらは上がるぞ。明日までに名前くらいは決めとけよ」

「……え、名前ないの?」

「さぁ……えっと、お名前、言える?」

「……なま、え……?」

 

よし、今の内に帰るぞ。アタシはネーミングセンスでバカにされたくねぇからスタコラサッサなんよ。

 

 

「つー事があってな」

「へー、精霊かぁ。ボクは天界でお世話してくれた子達しか縁がないからなぁ」

『私は何度か子供達の力になってくれるように下界へ送り出したが、上位精霊を生み出す事はなかった……気がする』

「まァ、気になるなら聖夜祭の奇跡にかこつけて様子見に行ってみるか? 約一名明らかに秘密を抱えてるご同輩がいるのを見逃してもらう必要はあるが」

「ボクはいいかなぁ。最近は外が寒いし」

『私も他の神に見つかるとオリオンの迷惑になりそうだから止めておくよ』

 

あら殊勝。まぁシルが面倒見ると決めたんなら、他の神が出張る必要はないか。あの精霊を混乱させる事にもなりそうだし。

 

『しかし私が言うのもなんだが、実体を得て人の姿を取るのは、それなりに消耗が激しいはずだよ。気にかけてくれると嬉しいかな』

「そうなんですか? ノームは実体化してるみたいですけど……」

『あぁ、うん。彼らはそういう風に決められた存在だからね。変わりに浮いたり透けたりはできないんだ。ネーゼムも実体化してるけど、宙に浮いたりしてないだろう? コハクは……下界の未知だな』

『お姉様、酷くない?』

『お腹減るから、嫌』

 

初台詞がそれでいいのかネーゼム。ただでさえ言葉少な系の天然クーデレ幼女なのに肉と酒で生きてるオッサンみたいな嗜好で困惑してるのに。

つーかコハクは自我がハッキリしてて喋れる時点で下位精霊としては珍しい、力ある存在だと見ていいはずだしな。実体化までしてるのは意味がわからんらしい。浮遊の際は半透明になるんだが、空気は絶縁体で半透明な電気の状態でいいが、接地(アース)する際は実体化してないと地面に力が流れ出して死ぬみたいな感じなんだろうか。

言語や実体化の代わりに魔法がポイントで解禁されるまで使えんかったから、キャラクリの段階で戦闘能力を捨てて人間社会への適応に極振りしたようなもんなんかね。結果的に取り込み成功してるからヨシ!

 

あとヴィトーが春姫および守り隊と中層を探索してたら、17階層の行き止まりで休憩中に『未開拓領域』を発見したらしい。進んだ先には雪原と見間違えるような水晶の空中庭園を思わせる広間(ルーム)があったそうな。そして広間の奥には封印されている人型の上半身が生えた未知のモンスターがいたので撤退して、18階層で果物狩りをしてから帰って来たのだとか……いやそれ精霊の分身(デミ・スピリット)やん。ヴィトーがLv.4になってても逃げて正解。とはいえ封印されてるのは気になるな。発見者連中に【麗傑(アンティアネイラ)】を混ぜて【経験値(エクセリア)】稼ぎに利用するか、それとも【異界信仰(ヴェルト・グラオブ)】で下位精霊を追加するか……レア度を考えると後者だよなぁ。ついでで怪人(クリーチャー)勢力を引っ張り出せたら御の字か。

 

 

 

そんなわけでヴィトーから地図情報をもらい夜中にこっそり出かけて来たんだが、怪人(クリーチャー)勢力は全く――モンスターの一匹すら出てこなかった。精霊の分身(デミ・スピリット)も水晶漬けの封印ごと【異界信仰(ヴェルト・グラオブ)】であっさり終了しちゃったし、ぶっちゃけ肩透かしな結果よな。

ただし精霊の分身(デミ・スピリット)からは自我をほとんど持たないふわふわ浮かぶ光の玉みたいな姿をした下位精霊が火、水、光、闇の四種類に分かれて生まれた。ネーゼムが地精霊(ノーム)の系譜っぽいし、これで六属性をコンプした事になるんだろうか。とりあえずアルテミスが精霊の奇跡を使って作った矢を見せたら何かしら察したらしく、べったりくっついてきたのでそのまま懐に入れて持って帰った。

次の日の朝に紹介したら、ヘスティアが遠い目をしてたのが印象的だった。そして恒例の難航しがちな命名式が終わった頃には、光の玉が少女の姿に変じていた。どうしてこうなった。どうしてこうなった。大事な事(ry

中位精霊なのに幼女サイズなネーゼムが無言で蹴りを入れて抗議してくる中、アタシはヘスティアの真似をして遠い目をする羽目になったのでありました。

 

 

あ、シルが連れて来た精霊はノエルって名前になったらしい。つまりはクリスマスであり、聖夜祭でもある。人型の負担とか嫌な予感しかしない情報を得た中で一夜限定季節イベントの名前って役満だろ。

というわけで【異界信仰(ヴェルト・グラオブ)】が火を吹いたよね。具体的に言うと、体をちょちょいと弄って栄養吸収効率を高めた。見た目的にはアウトだが、即席で造った栄養剤(おさけ)を一日一回お猪口サイズで飲ませときゃ問題ないかと。ジュースに混ぜてカクテルにしてもいいし。

それを説明したらめっちゃシルが怪しんで来たけど、のらりくらり対応させてもらった。明確な秘密を握ってるのはこっちですし?

 

とりあえず、豊穣の女主人はノエルという無知無垢幼女の看板娘を得て一層繁盛したそうな。ちゃんと聖夜祭の終わりと共に消えるなんて事もなく、豊穣の女主人という家族の一員として元気に無自覚なエグい接客で売上に貢献しながら暮らしている。

ただ、シルがノエルに自分をお母さん、ベルをお父さんと呼ばせて外堀り埋めてきてるのはどうしたもんかね。いやまぁイベント時空の夢オチなんだが。




なお次の日の夢ではソーマがオラリオメリーを作って愉快な事件を起こす模様。
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