そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱) 作:夜月工房
うむ、目が覚めてもハッキリ覚えている。しかし確実に夢だった。夢は本人の記憶がどうこうって研究結果もあるが、知ってる人の要素を少しずつ抽出して混ぜ合わせたキメラチックな登場人物が出演したら認識としては見知らぬ登場人物だからなぁ。
そうなるとあのノエルは……精霊も幼女も黒髪も、孤児に至るまでアタシの身近に溢れてる要素ではあるな。ベルと【
それはそれとして、全く意味のない夢を見る事がないのも今生なのである。てなわけで早速その日の内に17階層へ突撃したが……何の成果も得られませんでしたとさ。そこはせめて夢だけど夢じゃなかったって感じにですね。いやまぁそもそも明晰夢ってそういうんじゃねぇか。
どっちかってーと予知夢だよな、それは。ちょっと【ステイタス】更新してスキル生えてないか確認した方がいいだろうか。いや、不確定性に任せておこう。運命とか現実改変的な能力は扱いが難しすぎる。卵が先かひよこが先かって議論になっていくし。いっそ【
豊穣の女主人にも顔を出して確認したが、新人はいなかった。シルですら全く知らないんで、少なくとも現時点では存在を確認できない。こうなると実際の聖夜祭に期待かね……ベルが外堀埋められるから期待はしない方がいいんだろうか。戦力にするのは良心が咎めるしな、あのキャラは。
その代わりと言ってはなんだが、教会地下や隣の倉庫内に下位精霊が居着いてたのをヘスティアが発見した。火水光闇の四種類が一体ずつ。やっぱり予知夢やないかーい!
これが何を意味するかと言えば、まぁよくわからんの一言に尽きる。アルテミスやネーゼムが居着いてるから惹かれてやって来て、近くの自然として果樹園や水源に居着いた感じだろうか。
そんな考察についてアルテミスから同意が得られたし、そう考えると今後も少しずつ移住者が増えて来るんだろうか。素材に期待が……もう少し地ならしして植樹するかな。土地の購入もか?
しかし、なんだ、夢と照らし合わせると過程を飛ばして結果を得た感があるな。キングなクリムゾンから攻撃を受けている可能性が微レ存?
ちなみに、命名式はなかった。自我が薄い下位精霊は名前を覚えていられないだろうとの事で、もちろん名付けで進化とかも起こらないそうな。それでも【
言葉に力が宿るって考えはないわけじゃないが、それは実際に宿ってるわけじゃなくて、言葉に応えようと力を振り絞ったから奇跡を起こすって流れだそうな。うーん説得力あるぅ。
そうして迎えた次の日だが、アタシはバベルで待機していたアイズに捕獲されていた……何故だ。こっちはLv.7のはずだぞ。幼女アイズが鼻息荒く自慢気に胸を張ってる幻覚が見えるんだが、どう仕返ししてくれようか……ちょっと水張った落とし穴にご案内してみるか。ギリギリ足が届かないくらいの。
「で、ご用向きは?」
「えっと、今度深層に行くとき、私達も一緒に運んで欲しい……です」
「人数は?」
「え、と……フィンと、リヴェリアと、ガレスと、ティオネとティオナ、あとレフィーヤ?」
ベートェ……というわけで、用件は深層に行く日があったらロキ派の面子を途中まで同行させて欲しいという依頼だった。やはりヘスティア派とフレイヤ派の
まぁ、こちらとしてもベル一行――今なら第二級に到達したヴィトーとルビスも含めた面子の踏み台が増えるのは歓迎するところではあるし、一枚劣るって評価になっちまった最強派閥が持ち直す分にはギルドも困らんでしょ。
つーかヘスティア派とフレイヤ派の争いにアタシは介入してねぇどころかバイト突っ込まれて迷惑被ってるまであるから、ロキ派のワガママまで追加されるのは完全にとばっちりなんだけどな。こう見えて我、時給で億叩き出せる芸術家ぞ? 最強派閥だからって扱い軽くない? いっそキレさせて戦闘による【
いやまぁ二回目の
天界いた頃の情報からしても、ヘスティアが傀儡にされても気にしないぐーたら女神だって見られてる可能性は十分にあるもんなぁ。アタシが眷族の育成に口は出しても派閥経営には口を出してないだなんて、誰が見抜けるんだって話よな。つーか経営はむしろリリが練習台として担当してるんだわ。アタシの愛しい妹は
まー仮にロキ派と
その点で考えればフレイヤ派は狂信者集団だから最初から条件は半分満たしてるし、フレイヤが黒竜とダンジョンに取り組むって方針を打ち出したら完成するんよな。成長速度の問題なあるが。
「他の第二級は連れて行かねェの? 熟年夫婦やら【
「……いいの?」
「そォだな。15人超えねェなら価格は変わンねェぞ」
「おぉ……」
まーもちろんの話だが、ロキ派が踏み台で終わらずに競い合って高め合う事で一人でも多く黒竜戦に貢献できる戦力となってくれるならそれに越したこっちゃない。
もっとも、最大七年の停滞を経てようやく動き出しても間に合うとは思えないよねっていう。早熟や熟練度補正を発現してから来てくれ。いやまぁそれを言ったらアタシも同じではあるんだが。発展アビリティはもう諦めてるからスキルくれ、スキル。でも運が相手じゃどうしたって分が悪いよなぁ、切ない。
熟練度に関するスキルと近い効果の
これはこれでミアハに頼んでナァーザで実験してもらうのもありだろうか。でもミアハが彫金して効果あるんかな? 製作者じゃないと効果ないとかだったらディアン・ケヒトかぁ。無理だな。色んな意味で。
「わかってるとは思うが、穴が塞がる前に動けるのが大前提だからな? 団体行動できねェやつが置いてかれても待たねェし責任も取らねェぞ?」
「うん。ありがとう、先生」
「わーったからギュッとすンな。アタシはぬいぐるみじゃねェぞコラ」
ひとまず、アイズの依頼に関しては片道の輸送を許可しておいた。少数でも帰れる地点って事で51階層狙いらしい。遠征の資金稼ぎを兼ねるならカドモスと泉に用事があるんだろう。
しかし依頼予約のお使いとはアイズも成長したもんだ。せっかくだから今日もついて来るかって聞いたら、目を輝かせた後にしゅんとなって
一連のやり取りを見て尊いとか言ってた周囲の神をアイズから解放され次第バベルに吊るし、ようやくベルたちと深層に向かった。待たせてすまんやで。
「流石に相手にならんわな」
「
「一応Lv.5だな。
「力だけLv.6でも通じるくらい、か」
「それでもお二方の慣らしには足りてない感じですね……はぁ、リリにも『幸運』があれば良かったのですが」
49階層の
カドモスは泉の番人って呼ばれるだけあって、あんまり泉から離れないんよね。追撃して来る距離も短い。おかげで魔石をぶん投げて別の場所で狩りして戻って来たらまた魔石ぶん投げて……で簡単に潜在能力がLv.6相当の強化種にできるし、半日とせずにLv.7相当まで強化できる。とはいえ、力に関しては一つ上だから【
そういえば、パーティー内に『幸運』持ちがいればメンバー全体にもドロップ率上昇効果が及ぶっぽい節があるんよね。原作の描写にあった気はしないが、この辺はあれかね、パーティーメンバーの合計値で効果が順次解放される的な。原作のベル一人じゃポイント未達だから当人にしかないけど、こっちはオッサンと姉御の分が加算されて達成できてる可能性はある。
まーどちらにしろ幸運持ち本人に倒させる方が明らかにドロップ率は高いんで、
ドロップ率上昇も欲しいわぁ。こっちはいっそ幸運持ちの髪の毛を編んだミサンガとかでいけないかな……ホーンラビットやアルミラージの強化種から脚部がドロップするのを祈るよりはずっと健全だし効果もありそうだろ。知らんけど。
「……話にならんな」
「消耗なく倒せるのは大きいがな」
「二人とも、お疲れ様」
「やっぱズレの修正は地下訓練場でやる方が早そうだな」
あっさり片付けてしっかりドロップアイテムを回収してきた二人をベルが労い、アタシがアイテムを受け取り倉庫に突っ込む。以前は常識的な探索をするってんで断られてた【
「そンじゃ水汲んでくるわ」
カドモスが守ってる泉の水は溜まり始めたばかりで量が少ないんで、とりあえず壁を破壊、掘り進めて流れの太い場所から直に汲む。これが一番効率いい方法だと思います。なおアタシ以外がやると
アタシの場合は、なんかもう最初から発生率がカンストしてるような気がしてるから……悔しいが認めざるを得ねぇのよ。最近じゃついに壁から強化種の状態で産まれて来る事態まで確認されたんだぞ。一人だけゲームモードが違うんだが、ダンジョンはアタシをどうしたいんだ。
「本当にできるんだ……」
「やつは参考にするなよ」
「真似したら命が幾つあっても足りんぞ」
外野が何か言ってるが何も聞こえないな。カドモスの泉水は売って良し使って良しな便利素材その二だぞ。これ飲んでるカドモスも薬効の塊扱いされてるのは草だが。
生まれたばかりの個体と長生きしてる個体じゃ強化種とはまた別枠で皮膜や牙の質が変わったりするのかね? ここまで来る連中にはほぼ確実に狩られる悲しき強者だから長寿個体とかお目にかかる機会はなさげだけど。同じような守護者系としては宝石樹と
「お待たせーい。次の泉に行こうか」
「また強化種にするのか?」
「やつの皮膜は防具の素材にもなる。手間を惜しむ方が悪手だろう」
「それもそうか。こっちとしては少しでも歯応えが欲しいんで丁度いいがな」
そんな感じでカドモスと泉を荒らして、52階層で砲撃跡から飛び出してくるイル・ワイヴァーンを狩ってから50階層で一泊。強行軍で18階層まで向かい一泊。果物狩りをして地上に帰還した。
「いやー、あはは……」
『すまない、予想を超えた』
で、なんか教会隣の倉庫を突き破って樹木が姿を覗かせてて、内部も森になっていた。精霊が集まって来て、見事にやらかしたらしい。畑? あいつは最後まで勇敢に戦ったらしいよ。いやまぁ一般的なファンタジー作品みたいに野菜や果物がモンスター化してるとかの事件は起こってなかったからまだマシと思おう。悪い、やっぱ辛えわ。
ちなみにギルドは異常を確認した段階で聞き取りに来ようとしたが、教会まで辿り着けずに涙を飲んで引き返したらしい。エイナさん専用の許可証を作って渡しておくべきだろうか。ついでに神々も遠巻きに見るだけで何もできず涙を飲んだんだとか。ざまぁ。
で、いざこっちから出向いて速報入れたら、精霊が居着いたって情報の時点でなんかギルド長が泡吹いて倒れた。そういやエルフだったなこいつ。
ちな、やらかしにアタシが関係してないって言ったら何の慰めにもならないと怒鳴られた。精霊の勝手って意味じゃ理不尽だが、精霊の居着いた経緯が経緯だから正当な怒りなんだよなぁ。
まぁ、後日『精霊の護布』に関して納入できないかの交渉が来たが、命令や要求じゃなく交渉な辺りに精霊が爆弾でもあるって認識が出てるなぁ。自我の薄い下位精霊たちはアタシの言う事なんて聞かないから正解ではあるんだが。
そしてアルテミスが相手すると畏まりすぎて逆に動かなくなるんで、ネーゼムが担当窓口になっている。代わりにアルテミスにはやらかし抑制担当というめっちゃ重要で切実なお願いをしてる。勘違いエルフ共の相手とかしたくないもん。あいつら絶対土地を明け渡せとか言って来るぞ。教会まで辿り着けないとは思うが。
ヘスティア? 上位者の面目躍如とばかりに精霊たちを手足のように使役してたが、ぐーたら女神の側面が顔を出し始めてたらしくてアルテミスから尻に矢をチクチクされてたよ。その後は下位精霊たちからの評価もアルテミスのが上になったらしい。神ェ……。