そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱) 作:夜月工房
精霊の棲み家になり前衛芸術みたいな事になってしまった教会隣の倉庫だが、屋根を突き破って反逆の意志を隠さない大樹は今日も元気に青々とした葉を繁らせている……今って晩秋なんだが。季節感ってご存知? いやまぁ紅葉からの落ち葉なんてやられても困るんで助かる話ではあるんだが。掃除が大変だし。
これだけの巨大な樹木が急成長したともなれば土の栄養状態が心配なんで鑑定してみたが、むしろ状態は良好だし。これってもしや、地味に
「しかし
「言われてみれば……」
「オラリオでは『精霊の事業』を通して
「どこからともなくやって来て、知らない内に消えている……そんなやつらだからな」
「知らぬ者で知恵を出し合うのもいいが、答えを知りたいのならそれこそ神に聞くのが早いだろう」
姉御の言葉は実に正しいが、多分それヘスティアは知らんと思うんよ。アルテミスは意味深なヒントだけ出して終わりそうな気がするし。
会話しながら見上げる先では、今も都市の遥か上空からふよんふよんと不規則に揺れながら降って来る光の玉が見える。目指してる先は……どう見ても目の前の大樹なんだよなぁ。現時点でチラホラ集まってる低位精霊たちが
この非常に気になっちゃう感じの樹木なんだが、複数の木が絡み合って一本の木に擬態してる感じなんよね。中心部にいる木って日照不足とか外側の木々に押し潰されたりとかで死なないんだろうか。鑑定結果の状態は『力を溜めている……』とかいう、思わせ振りだけど嫌な予感しかしない文言だし。なお、職業欄の見習い大聖樹って表記は見なかった事にする。種族じゃなく職業なのか大聖樹。しかもなんだよ見習いなのに大って。転職どこでするんだよ。
割と切実に、これ以上デカくなられても困るっていうか、精霊が集まりすぎると穢れた精霊が同胞たくさんおるやんけとか言ってダンジョン深層から地上進出して来そうで怖いんだよなぁ。今朝も精霊の血がうずうずしたのかヴェルフとアイズが教会付近をうろうろしてたし。他にも知らん顔が歩いてたが、あれは精霊関係者じゃなく単なる商人か盗人だろうな。
エルフは少し離れた場所に集まってなんか企んでたっぽい。これリヴェリア巻き込んで先手を打つべきなんだろうか。それとも喧嘩売って来たモブ
つーかエルフってさ、モンスターに蹂躙される人間の助けにするべく神から遣わされた精霊を独占して森に引きこもり、人間を避けておきながら色が白くて処女が好きもしくは雄臭が嫌いって習性なだけの
そりゃ森も焼かれるわ。あの
まず精霊の設定からしてイカれてんだがな。なんでモンスターの氾濫で荒廃してる下界に送るのわかってて濃い自然を好む設定にしたし。考えたり決めたりした神は馬鹿だろ。いやまぁモンスターへの対抗策である精霊を確保するために自然を守らせて戦後の復興を見据える目的でもあったのかも知れんが。どうせなら若いまたは弱い内は自然のある場所を好むけど、成長すると自然のない場所へ旅立って自己犠牲でその場所に自然を芽生えさせて朽ちる生態にしてほしかったな。
あと結局そこまで人間に力を貸してねぇし。自分たちの棲みやすい環境作ったらそのまま引きこもるとか攻勢に出させる気がねぇじゃん。とはいえ一部の英雄がどうにかして大穴に辿り着いて、拠点を築いたりしたから結果的に最良のバランスではあったんかね。神々そこまで考えてないと思うよ案件な気はするが。
そっからは神時代の到来で、千年かけて蓄積したノウハウを費やして最近ようやく旧約聖書の肉と魚は退治されたし、トントン拍子ではあるのがまた厄介よな。翻訳ミスか解釈間違いで生まれた二次創作キャラを元にした三次創作キャラさんだけ残って生き恥晒してるから介錯してやらんとないが。オラッ容量削減のためにクを使わなかったから生まれたダースドラゴンさんに謝れ! 奇跡の出会いに感謝しろ!
「て事があってだな」
「お前は問題を起こさないと生きていけないのか?」
「知るか。
真剣な悩みを相談しているというのに、呆れを隠さず冷ややかな視線を向けて来るリヴェリア・ポンコツ・ハイエルフ。これにはビッグバン前の宇宙並に広いと噂のマイハートも傷つきご立腹っすわ。
「リヴェリア様に何たる不敬……! 離しなさいレフィーヤ、彼の者に鉄槌を下さねば」
「無理ですってば! 仕返しにロキが送還されたらどうするんですか!?」
「リヴェリア様のために死ねるならロキとて本望に違いありません!」
「アリシアさん、落ち着いて下さい! お願いですからぁ!!」
何やら大きめの雛鳥がピーチクパーチク囀ずってるが、ですからって聞く度に守備力上がりそうだなって思っちゃうんよね。~ですって聞く度に即死判定しちゃうし。
王族に対する過剰な崇拝って、エルフである事に寄りかかりすぎててそれ以外の自分に自信がない雑魚
まー他種族が多様な価値観に触れながら一瞬一瞬を煌めく思い出にしてる横で、何十年と同じ事を繰り返すだけの灰色な幼年期や青春を過ごしてドップリ肩どころか頭の天辺まで漬かってるわけだからな。どこまでも視野は狭く頑固にもなるわけだわ、年季が違う。本人的には不満ないっぽいんだから、外野がとやかく言う問題でもないんだろうが……いや実害出てるから是正したくはあるんだわ。
物覚えに差がある感じはしないが寿命は差があるの、本来なら知識タンクとしてめっちゃ尊敬集めれるはずなんだけど、インプットもアウトプットも死んでるから宝の持ち腐れでほんともったいない精神に喧嘩売ってるんだよな。だからアタシは気に入らねぇのかね。その割に森を出た連中に対しても初期好感度は低めだが。
「ンで、ブンブン羽音のうるせェ虫共が土地寄越せって言ってきてンだが、
「好きにしろ。他人の育てたものを掠め取ろうなどと、情けないにも程がある。それに、森を出て尚そのような妄執に囚われている者にかけてやる慈悲はない」
「え、それだと神の遣わした精霊を独占しモンスターを側に侍らせる魔の種族エルフに人類一丸となって正義の鉄槌をとか呼び掛けて森という森を焼き払わせるンだが」
「止めんか馬鹿者」
「そうは言うがよ。
「ンッフ」
さすがに族滅へ導くのは止められたが、個人的な制裁は止めない感じだな。やったぜ。そんで最後の漏れ出したレフィーヤの笑いは、多分邪悪の化身ロキを倒したら跡地から清らかな精霊を発見する想像とかしたんだろうな。
「……とりあえず、私の側でもそれとなく釘は刺しておこう。『
「助かる……ちなみに文言はどンな?」
「うん? いや、先ほど言った通りだが。獲物の横取りなどは誇り高き妖精としてあるまじき行為だと」
「つまり徒党を組んで真正面から抗争仕掛ければいいってわけだ。聖地を奪還するとかトチ狂ったお題目掲げながら」
「いや、そうはならんだろう」
「なるし、やるンだよ、それが。そもそも外の世界に興味を持って森を飛び出したお転婆なお姫様を永遠の乙女とか言ってる連中だぞ? どう思うよ世界を救うため古代の怪物を討ち果たさんと故郷の森に涙の別れを告げて旅立った聖女の再来様?」
アイナさん情報でリヴェリアの旅立つ経緯を知ってしまえば、自ずと比較される聖女様の旅立ちにも想像できる。それこそアルバート一行だって配役は現代の面子で代用できるんじゃなかろうか。
「あぁ……うむ。それを言われると弱い」
「リヴェリア様!? そこは否定しませんと!」
「そうですよ! セルディア様は我らエルフの誇りなんですから!」
「な? 詳しく残ってねェのに勝手な思い込みを真実に仕立て上げて事実として周囲に強要するのが人間だ」
「はぁ……しかしそうなるとどう言ったものか」
「まーとりあえずアタシの寿命を考えて三十年後にリヴェリア・リヨス・アールヴへ権利を譲渡とか契約しときゃいいンじゃねェの?」
「は? いや……いいのか?」
契約書を差し出したら世にも珍しいハイエルフの間抜け面が見られて大満足なんだわ。引きつった笑みとか初じゃね? このやり取り自体こっそり撮影してるし、後で編集してリューとかに渡したら面白そう。
「俗物を黙らせるにゃ現物が一番なンだが、さすがに今すぐは無理だ。普通に精霊どころか下手したら樹がキレるからな。まァ、見てろよ。予想なら三十年後に王族の物になるって言ってンのに、既に自分たちの物になったつもりで突っかかって来る傲慢エルフモドキがそこら中から生えて来やがっから。契約書には期間を待たない干渉により契約は無効になるって明記してあるんで、是非とも説明頑張ってくれ」
「頭が痛くなる話だな……これにサインを?」
「そォだな。原紙はアタシが、謄本をそっちが、写本はヘスティアとギルドにかね」
「ふむ……」
何の躊躇いもなくサインしたー! これを本人の世間知らずと見るかアタシへの信用と見るかは難しいところ。後者の場合は居心地が悪くなるんで尋ねるのはパスで。
つーか内容的にエルフへの踏み絵でもあるんだよな。要は変なちょっかいはリヴェリアの成果を台無しにする愚行だし、支配者としての資質にも疑問を抱かせる背信行為でもあるわけだからな。
「ちなみに例の木についてギルドに報告した直後から、あの辺りは土地単価が跳ねたからな。破産しねェ事を祈ってくれ」
「……譲られても土地代が払えず即手放す事になっては笑い者になるな」
おぉ、今度はすごく疲れた顔だ。お供二人のリヴェリアフォルダもさぞかし潤っている事だろう……今更だけどなんでこいつらいつの間にか同席してるんだろうな。思い切り紅茶とパンケーキ頼んでるし。いやまぁ二人増えたところで支払い額の桁が変わるわけでもなし、懐へのダメージも皆無に等しいから別にいいんだが。王族と同じ席に座るとか不敬じゃないん?
あと見えてないけど向こうの席にフレイヤんとこの白エルフいるんだよな。王族への不敬でお供二名しばかれるのでは? つーかこいつも割と気にしてたりするんだろうか……樹木だけに。いや、なんでもない。とりあえず王族の名誉に関わる事だし、自発的に木っ端エルフの取り締まりとかしてくれそう。
まぁこの店内で一番強いのは間違いなく注文受けたとき以外は全く顔色を変えず知らんぷりしながら本を読んでる(振りしてる)店主なんだが。プロいわー。今日のお礼とか言って見習い大聖樹の枝で作ったカトラリーセット五百組くらい贈呈したら少しは反応するんだろうか。よし、作ろう。
ちなみに契約書の写しをギルド長へ渡したら、表紙をめくって数秒後には胃を押さえて呻いてた。ウケる。読み終わって深い溜め息を吐いている所に追撃で――
なお、喫茶店の店主はのほほんとお礼を言ってあっさり受け取って終わりだった。強い。