そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱)   作:夜月工房

155 / 202
155.改造準備始めました。強く生きて下さい。

『ぶっちゃけひでーでやんす』

 

派閥体験(インターン)二日目の夕食時、第三小隊の実力をダンジョンで確認して来たルビスの放った一言がこれである。小さなうぐぅという声と胸を押さえて上半身を倒す動きが四つ重なったが、まぁ事前情報の時点で歴代最底辺(ワースト)なんて呼ばれてるんだし予想できた事ではある。

何せこいつら、Lv.2が四人集まっているのに12階層の小竜(インファント・ドラゴン)相手に敗走続きらしいし。

 

「詳しく」

(ソロ)四』

「おk把握」

「詳しい要素あった!?」

「だが、通じたのも確かだ」

 

指を四本立てて大きく広げ個別に動かしながら極めて簡潔に述べるルビスだが、これ以上ないほどに雄弁でもあった。あと動きが若干キモい。ちょっと真似してみよう……薬指が一向に独り立ちしてくんねぇわ。他の面子も真似できなくてムッとしたり首傾げてら。

とりま、ルビスの放った言葉の中身は姉御に通じたし、オッサンも第三小隊に可哀想なものをみる目を向けている。ベルとて内容こそ伝わってるだろうが、詳しいに対する一般的なイメージとの違いから反射的にツッコミを入れたのだろう。なおヴィトーは食事に夢中でリリは無反応。

ヘスティアはパイカットアイになって瞬きを繰り返しながら、アルカイックなスマイルを浮かべている。これは分かっていない顔ですわ。

 

「しかし連携が取れなくともLv.2であれば……あぁ、そもそも環境(ダンジョン)に慣れてないのですね」

「ンアーッ!」

『その通りザマス。基本は突撃一択。壁に傷を入れて湧きを押さえるなり、通路に誘い込んで魔剣で一掃するなりのちょっとした工夫が、知識として存在しても知恵にはなってないからタンスの肥やしにしかなってねーでゲス』

「グワーッ!」

「学区の生徒はなまじ優秀なのが集められてる分だけ自分の意見は正しいって決めつけが多くて視野も狭ェからな。慣れねェ内は突発的な事態の連続で力の半分も出せンよ。学ぶのは好きでも考えるのは苦手なタイプも多いしな」

「グワーッ!」

単独(ソロ)四人と言ったな。手柄を奪い合う愚図ならば……その上で他者に責任を求めるようならこの先も大成はすまい。その辺りはどうだ?」

『懸念通りでやんす。自分が一番な三名と振り回される一名』

「ンアーッ!」

「まー、ドン底なのは事前に聞いてわかったけど、逆に言えばこれ以上は悪くならないって事だろう?」

「「「「アバーッ!」」」」

 

チクチクどころかザクザクされてたと思ったら、ヘスティアのまとめが全体攻撃になってまとめて倒したぞ。これは偉業。

 

『学区の特別(ダンジョン)実習は課題に合わせて探索範囲が解禁される仕組みでやんして、今の第三小隊(こいつら)は12階層でインファント・ドラゴンのドロップアイテムを回収できずに足踏みしてるでゲス』

小竜(インファント・ドラゴン)かぁ。倒すより出会うのが難しい相手だね」

『ところがどっこい敗走続きザマス』

「確か、お姉ちゃんはLv.1ソロで倒してましたよね?」

「アタシは親父の教えと五年分の下積みがあったし、身の丈に合わねェ武器や道具があった。参考にゃできねェよ。他にはアイズ――【ロキ・ファミリア】の【剣姫】もLv.1ソロでやったらしいが、あっちもあっちで特別(ワケあり)だからなぁ」

 

初代ダマ鞭とスリンガー、麻痺毒ダート他多数。その上で傷入れた広間(ルーム)に誘き寄せてタイマンに持ち込んで……だからなぁ。後ろにお供を連れてたら邪魔されてさぞかし面倒だったろう。しかもしっかり火傷と骨折はしたし。なおその後。

 

「ラジルカくんは昔から無茶してたんだねぇ」

「二つ名の由来からして、その小竜(インファント・ドラゴン)を突破した足で本来の目的を果たすため15階層に単身突撃したときの逸話ですからね……道具を使いながらモンスターの群れを誘導して、予め仕掛けてあった爆弾の罠でまとめて爆殺したという。近くにリヴィラの街から換金目的で地上を目指していた冒険者様の一団がいなければ、恐らく帰り道で力尽きていました」

「へぇ……あぁ、芸術は爆発だーってやつかぁ。きっと爆発(それ)、自爆でもあったんだろう?」

「あン頃はなァ……若かったのさ」

「10歳は幼いの範疇だと、リリは思いますが?」

 

ヘスティアとリリのジト目(ごほうび)がすごい。ありがとうございます!

とはいえ、これどう頑張っても巻き返せねぇな。話題を変えて逃げるが勝ちよ。

ちな、アバった後に復帰した第三小隊は揃ってチベスナ顔である。安心しろ、やらかしたのはどっちもオラリオ有数の狂戦士(バーサーカー)で、一応は実力的にも上澄み中の上澄みだぞ。むしろ真似したらあかんタイプの実例なんだわ。

 

「まァ、なンだ。とりあえず今まで実現できなかった連携が一朝一夕で身につくわけもなし。まずは安全に地獄見せる感じか?」

「えっ」

「そうだね。状況は……小竜(インファント・ドラゴン)含むモンスターとの戦闘中に通路から増援が来て、戦闘が長引く中で放置した魔石を食べた強化種が出ちゃって、ついでに別の場所で冒険者を全滅させて死体を食べた拍子に集めてた魔石も食べて強化種になった小竜(インファント・ドラゴン)がもう一体来るとかどうかな?」

「えっ」

「待て、壁が修復されたタイミングで怪物の宴(モンスター・パーティー)も追加だ」

「あ、そっか」

「えっ」

「安心しろ、怪我はするが後遺症は残らん……心が折れても鍛冶の如く砕いて溶かして元より強く鍛え上げてやる」

「えっ」

「ちなみにバルドルの許可はもらっちゃってるからね、諦めておくれ……気を強く持つんだぜ?」

「「「「え~っ!?」」」」

『ナイス連携でやんす』

「逆に言えばこのやり方が効果的だと判明してしまいましたね。他派閥ですがリリとお姉ちゃんも微力ながらお手伝いします」

 

みんなウキウキだなー。つーか割と育成スキーなんよね。アタシとしても分かりやすく成果を感じられるのは好きだが。

まー派閥体験(インターン)は希望者の受け入れなはずなのに、学区は今回補習扱いで問題児揃いの小隊を送りつけてきたからな。ルビスの説明会に参加した面々から眷族取る気ないんでしょって感じで話が伝わってって希望者が出なかったんだろうか。

とりあえず参加者の情報を求めたらバルドルは先入観なして本人たちを見て~とか抜かしてきたんで、先入観を抱かせる評価しかできないなら教員止めさせろって事で急遽各教員からの評価をまとめさせた書類を作らせた。そんで送られて来た内容から、評価した教員の評価を辛口めにして送り返しといた。

流石に善神揃いな学区の目に適うだけあってしっかり教員してはいるんだが、どうにも画一的な良い子ちゃんしかいないのか価値観の偏りが見受けられたんよね。でも神の方はイズンとか割とハジケてんだから、変な遠慮してるだけな気がしたわけだ。

なもんで希望者以外を送る失礼やらかしてんだから今更取り繕うなって感じで助言したら、次の日には改訂版が提出されて来た。それもやべー文章量のが。これには一同ニッコリ。こいつら生徒好きすぎだろ。

で、結局は尖りすぎなら削って丸めるんじゃなく全体を太くすればいいじゃんって脳筋スタイル育成に決まった。土台をしっかりさせてから周囲を見る練習させりゃえぇねん。乱暴に言えば基本アビリティ伸ばし続けるより【ランクアップ】した方が強いのと一緒だな。多角形グラフの形をそのまま目盛りの桁を変えてみた感じ?

そうしてどうなったかってーと、アタシの計画してたやつに魔改造トンチキ集団(ヘスティア・ファミリア)の常識に基づいた最適化が加えられた世の恩恵持ち全員に真似させたい地獄巡り(コース)の完成です。

第三小隊(モルモット)には強く生きてほしいと願う次第。いやまぁ殺さんし壊さんが。いや待て、尊厳は殺されるし常識は壊れるのか? まぁいいか、何しろここは【ヘスティア・ファミリア】だ……こほん。

 

【ヘスティア・ファミリア】は家族のよう(アットホーム)派閥(しょくば)です。

 

コレデヨイ。

 

 

そんなこんなで夕食後。昨日と同様にイグリンから人形兵(ゴーレム)関係の質問や意見が来るかと思っていたんだが、第三小隊は何やら与えられた部屋の一つに集まっているらしい。きっと夕食中に心を一つにした瞬間が何度かあったから、忘れない内に復習してるに違いない。

さすがだぞ! 連携の 重要性を ばっちり わかって くれたんだな!

いやまぁ、実際には思った以上な【ヘスティア・ファミリア】のヤバさに震えてる可能性が高いんだが。ふむ……ここは一つ他派閥で年長なアタシが悩める若人にトドメ(フォロー)刺し(いれ)てやるべきだろうか。

 

「駄目ですよ、お姉ちゃん。今はそっとしておきましょう」

「愛しいリリほどのお方がそう言うなら……」

「というより、ベル様やアスピナ様が仰った状況(シチュ)を再現できるようお姉ちゃんには人形兵(ゴーレム)を製作して頂きませんと」

「おォ、それもそうな。その場で作ったらさすがに気が動転して訓練になンねーか」

 

イグリンに説明してる真っ当な製作方法の説得力も下がるしな。リリには感謝してもし足りない。

てなわけで地下の訓練場へ赴き、エイジャとラピスを解放してリリと戯れる眼福な光景を視界に収めつつ、せっせと12階層のモンスターを再現した人形兵(ゴーレム)を地味に難航させながら製作した。

途中でオッサンが新技を試しに来たんで殺伐とした光景に変わってしまい涙したのはここだけの話だ。しばらくしたら姉御も来て怪獣決戦みたいな事になったし。エイジャが魔力壁を張ってくれなかったらせっかく作った訓練用人形兵(ゴーレム)が全損するところだったわ。

 

 

 

そして一夜明け、本格的な派閥体験(チュートリアル)が始まったのであった。すげぇ、始まる前から目が死んでるぞ第三小隊。遺書とか用意してそうな感じだわ。




1/1の0:00~0:05辺りって回線パンクしてそうだなーって予約時間を01:01にしてたんですが、普通に0:00投稿されてましたね。去年や一昨年の投稿作品を調べればわかった話なんですが。空振りした皆様にはこの場を借りて謝罪を。申し訳ない。
あと時間軸が原作最新刊をはみ出してネタ切れなんで文字数少なく話の進行も遅くなりそうです。ルシェイメアに連れて行かなかったエスカデみたいな気分。
いっそ魔道具暴発させて過去や原作世界といった並行世界に……というか序盤の師匠枠をアストレア・ファミリアからガネーシャかオリ派閥辺りに差し替える作業もしないとなー、なんて。その場合はいっそリメイクとかの形で通常連載の側で投稿、そして低評価と心無いコメントの嵐により沈没。そんな今年の抱負どすえ。
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