そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱) 作:夜月工房
さて、第三小隊をさっそく地下の訓練場へ案内したわけだが、この時点で侵入禁止エリアへ進んでいるので割とテンションを上げていた。そして途中の実験畑には驚きの声。初々しい反応あざーっす!
そしていざ訓練場に辿り着くと、既に展開されていた金属ボディを隠さないが形はモンスターを模してある
「えー、そンじゃ12階層の正規ルートから少し外れたポイントの広間で接敵した設定。最初はシルバーバックやインプの群れから始まって後は流れで。とりあえず魔石代わりに起動スイッチが備わってるンで即死判定ありだ。全滅判定ごとに反省会と罰則あるから気をつけてな」
アタシの言葉を合図に、丸まってた
「みんな、落ち着いて行こう!」
「ふっ、生まれ変わった私達の知的な戦いを見てもらおうじゃないか!」
「無様、回避」
「昨日までとは違うところを見せないとね! 行っくよ~!」
対する第三小隊は昨日の今日で協力的な台詞を吐いている。果たして結果は出せるのだろうか……リヴィラの街なら間違いなく賭けが始まるな。
とはいえ、このプランが実行される流れを作った際にアタシは言った。連携が一朝一夕で身につくわけねぇ、って。
「「「「アバーッ!」」」」
さて、初回という事もあり第三小隊は予想通りに敗北を喫した。そしてこの時点で一つ発覚した事がある……アタシの認識不足だ。
「はて? ダンジョンはこんなにも厳しかったでしょうか……?」
「「「「……あっ」」」」
『マスター・ラジルカの同行時はこんなもんでやんす。これはミラーシェード=サンのケジメ案件では?』
「アッ、ハイ。セプクします」
「後にして下さいね、お姉ちゃん」
いやね、言葉にしてしまえば実に単純なんだが、物量を
マトモな感覚を残してたヴィトーには感謝しなければなるまい。そして知ってて指摘しなかったルビスには後で八つ当たりしておこう。
「よーし、何はともあれ反省会だ。ダンジョンじゃ
「……理不尽」
「あれが当たり前だったらさすがの僕も慎重になるかな!」
「本番だったら死んでたって事だ。クソッ、油断とは思いたかねぇがな」
「でも声掛けの成果は出てたと思うよ?」
レギの視線は冷たいがアタシの顔は火照る……まさかこれが恋!? なんて冗談はさておき、これをきっかけにレギが
しかしニイナの言葉通り、拙いなりに連携しようとする意思は感じられた。自分を客観視した上で長所を活かそうとして出した結果が、周りを見て武器の
「ニイナの魔法はすごかったね」
「結界の方は詠唱も効果も中々にハラハラさせるがなァ」
「あれは階層が深くなるほどに重要性が高まっていくだろう」
「え、いや、えっと、その」
「
「は、はい!」
ニイナの結界魔法【ラグリエル・クリスヘイム】は状態異常や
「イグリンとクリスティアは前衛功役として見れば及第点だ。周囲にも気を配っているのは見て取れた」
「【
「いや、まだまだだ。どうにも頭に血が上っちまうし、敵から意識が逸れたら本末転倒だ」
大剣と鎚なんでまとめて薙ぎ倒せる点では壁役代わりにもなってるんよね。同格以上相手だと厳しくなってくが。
クリスことクリスティアは
イグリンはドワーフの特性通りで順調といえば順調。まぁ鎚を握ると素に戻るが、冷静に熱くなれる素質は見せた。多少焦ってる感もあるんで本来なら時間をかける方がいいんだろうが、今回は焦る必要がないくらい強くする方向なんで諦めてほしい。
ちな、クリスの言った【
なお、当の
「レギは短剣二刀流だからベルの動きが参考になるんでねーかな。後は魔法が設置型だから常に撤退を視野に入れた立ち振舞いができればいいとは思う。一段落したら並行詠唱の訓練もしとくか」
「動きの方向からするとジル姉の手伝いも必要なんじゃ……」
「まァな。だがまずは基礎からだ」
「ん……頑張る」
地雷魔法は新しいし面白いな。爆弾使いとしては若干の
しかし動きが対人寄りの一撃必殺ムーブなんで、モンスター相手の動きを仕込んでおいた方がいいかなぁ、と。暗殺なんてのは真正面から堂々と皆殺しにしても
「てなわけで休憩できたな? 次だ、行け」
「「「「えぇ~」」」」
「ダンジョンは待っちゃくれねぇぞ。上手な休憩については次の機会に教えてやる」
ブー垂れる第三小隊をまとめてダマ鞭で捕縛、広間の中心に放り投げる。動き出した
「……なぁ、設定は戻したのか?」
「……あ」
「【
「グワーッ!」
このあと滅茶苦茶設定変えた。
「「「「アバーッ!」」」」
「途中もう一息だったね」
「というか最初の
「いや、さすがにそれは……なかったな、良かった。いや良くねーわ、負けンなや」
今回の失敗は――正確には今回も、だが――処理方法と
「そもそもの話、
「恐らくは学んだ知識がヘルハウンドの出現する中層から必須、という広く知られている部分だけなのかと」
「……なるほど、視野の狭さや知識はあっても知恵はないというやつか。嘆かわしい」
姉御の疑問はもっともだし、リリ考えも間違ってはいないだろう。一番の問題は資金と流通量だと思うが。学区の生徒を賄うのは無理だろうし。
つーか普通に中層潜らせてるし、戦闘服に耐火性あるって考えないと変か。そう考えるとオラリオ生まれオラリオ育ちの叩き上げな一冒険者としては大事にされてる感が半端ないから妬み僻む気持ちもわかっちまうな。
「で、そこんとこはどうなん?」
「はい。都市外では街中で戦闘したり被災地での活動も多いので、戦闘服には耐火性が備わってます。それで完全に防げるわけではないですが……」
「む、無策ではなかったか。そこに関しては取り消そう」
軽く振ってみたら、ニイナの回答はアタシの考えを肯定する内容。くっ、これなら意見を口に出しておくべきだったか……姉御も納得したっぽいし、軽く煽れる機会を逃したな。
他の三名は自分の服を詰まんだり眺めたりしながら感心したり呆然としたりなのは……そっとしておこう。
「ここは訓練だからいいが、本番ではちょっとした小道具は惜しまん方がいいかもな」
「むむっ、どういう事ですか?」
「簡単なのは毒を利用したりだな。安価なパープル・モスの毒鱗粉は毒性がそこまで強くないが、上層のモンスター相手なら
「毒……確かに。盲点……」
「そういや都市外だと耐異常の発展アビリティは縁遠いんだよな」
「そうなの?」
「ダンジョンでは上層からパープル・モスがいますし、中層でもキラー・ホーネットやダークファンガスがいます。ですが地上ではそれらと遭う機会がほとんどない」
「虫辺りは寿命が短く設定されてて世代交代のサイクルが早すぎるから魔石の消耗も激しくて勝手に絶滅したらしいぞ。逆にペルーダなンかは寿命が長くても個体数が少なくて繁殖力も低いから人が犠牲になりにくい」
「ほへー」
オッサンの
そんでベルとリリは冒険者を目指してダンジョンの勉強をしたんで地上のモンスター事情に疎い。こっちもこっちで英雄になる気持ちを強めてもらうため都市外の現状を教えておくべきか……第三小隊がポロっと生の声を漏らさないかな。それこそクリス辺りが。
この後は昼食と少し長めの昼休憩を取った後で午後の部を再開。今日一日だけでもかなり動きは良くなったし、もう実地に出しても良さそうなところあるな。明日からはエンドレス模擬戦の予定だが。
こんな簡単に変わると学区は何やってたんだって言いたくなるけど、向こうじゃ毒とかの直接的な答えを与えずにとことん考えさせる方針らしいんで、その、短気だったり飽き性だったり頭が固かったりな第三小隊とは相性が悪かったっぽいわ。おのれ画一的な教育の弊害……!