そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱)   作:夜月工房

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156.訓練しました。ごめんね許して下さい。

さて、第三小隊をさっそく地下の訓練場へ案内したわけだが、この時点で侵入禁止エリアへ進んでいるので割とテンションを上げていた。そして途中の実験畑には驚きの声。初々しい反応あざーっす!

そしていざ訓練場に辿り着くと、既に展開されていた金属ボディを隠さないが形はモンスターを模してある人形兵(ゴーレム)の群れを見てチベスナ顔になっていた。きっと未来視にも似た感覚に襲われたんだな。アタシとしても頑張った甲斐があったってもんよ。

 

「えー、そンじゃ12階層の正規ルートから少し外れたポイントの広間で接敵した設定。最初はシルバーバックやインプの群れから始まって後は流れで。とりあえず魔石代わりに起動スイッチが備わってるンで即死判定ありだ。全滅判定ごとに反省会と罰則あるから気をつけてな」

 

アタシの言葉を合図に、丸まってた小竜(インファント・ドラゴン)型が立ち上がって咆哮する。それを号令代わりに他の人形兵(ゴーレム)も動き出した。

 

「みんな、落ち着いて行こう!」

「ふっ、生まれ変わった私達の知的な戦いを見てもらおうじゃないか!」

「無様、回避」

「昨日までとは違うところを見せないとね! 行っくよ~!」

 

対する第三小隊は昨日の今日で協力的な台詞を吐いている。果たして結果は出せるのだろうか……リヴィラの街なら間違いなく賭けが始まるな。

とはいえ、このプランが実行される流れを作った際にアタシは言った。連携が一朝一夕で身につくわけねぇ、って。

 

「「「「アバーッ!」」」」

 

さて、初回という事もあり第三小隊は予想通りに敗北を喫した。そしてこの時点で一つ発覚した事がある……アタシの認識不足だ。

 

「はて? ダンジョンはこんなにも厳しかったでしょうか……?」

「「「「……あっ」」」」

『マスター・ラジルカの同行時はこんなもんでやんす。これはミラーシェード=サンのケジメ案件では?』

「アッ、ハイ。セプクします」

「後にして下さいね、お姉ちゃん」

 

いやね、言葉にしてしまえば実に単純なんだが、物量を異常事態(アタシ)基準で考えてたわ。今回の具体的な状況を考え提案したベルたちも、ここ最近になってアタシが同行するようになったせいで感覚が麻痺してて疑問に思わなかったらしい。

マトモな感覚を残してたヴィトーには感謝しなければなるまい。そして知ってて指摘しなかったルビスには後で八つ当たりしておこう。

 

「よーし、何はともあれ反省会だ。ダンジョンじゃ異常事態(イレギュラー)は起きるものだからいい経験ができたと思え」

「……理不尽」

「あれが当たり前だったらさすがの僕も慎重になるかな!」

「本番だったら死んでたって事だ。クソッ、油断とは思いたかねぇがな」

「でも声掛けの成果は出てたと思うよ?」

 

レギの視線は冷たいがアタシの顔は火照る……まさかこれが恋!? なんて冗談はさておき、これをきっかけにレギが呪詛(カース)を発現したらどうしよう。黒妖精(ダーク・エルフ)的には喜びそうなのがまた何とも。フレイヤ派の黒エルフも呪武具(カースウェポン)使ってるしな。

しかしニイナの言葉通り、拙いなりに連携しようとする意思は感じられた。自分を客観視した上で長所を活かそうとして出した結果が、周りを見て武器の間合い(リーチ)に入らないってのは情けない気もするが、ルビス的にはこれでも前進らしい……そっかー。

 

「ニイナの魔法はすごかったね」

「結界の方は詠唱も効果も中々にハラハラさせるがなァ」

「あれは階層が深くなるほどに重要性が高まっていくだろう」

「え、いや、えっと、その」

治療師(ヒーラー)は後方に位置する関係上、指揮官やサポーターも兼ねる場合も多い。戦場を俯瞰する術を身に付けるといい」

「は、はい!」

 

ニイナの結界魔法【ラグリエル・クリスヘイム】は状態異常や呪詛(カース)を防ぎ、また解除し、ついでに傷も癒す欲張りセット。ただ障壁としての機能はないし範囲も割と狭いので、戦闘――特に今回のような乱戦中に使うのは厳しいものがある。そして攻撃手段に乏しいので、普段は治癒魔法の【マギア・クリス】しかやる事がない。それはそれで忙しいのが第三小隊だが。

 

「イグリンとクリスティアは前衛功役として見れば及第点だ。周囲にも気を配っているのは見て取れた」

「【芸術家(ファイアワーカー)】や【傑物(ミスティック)】の前だったからね! 張り切りつつも慎重になったよ!」

「いや、まだまだだ。どうにも頭に血が上っちまうし、敵から意識が逸れたら本末転倒だ」

 

大剣と鎚なんでまとめて薙ぎ倒せる点では壁役代わりにもなってるんよね。同格以上相手だと厳しくなってくが。

クリスことクリスティアは小人族(パルゥム)かつ都市外の活動でLv.2という逸材なんだが、道化っぽい振る舞いと合わせて激重な過去を持ってそうなのがなぁ……地雷踏み抜きそうで怖いんよ。

イグリンはドワーフの特性通りで順調といえば順調。まぁ鎚を握ると素に戻るが、冷静に熱くなれる素質は見せた。多少焦ってる感もあるんで本来なら時間をかける方がいいんだろうが、今回は焦る必要がないくらい強くする方向なんで諦めてほしい。

ちな、クリスの言った【傑物(ミスティック)】ってのはリリの二つ名な。最初は芸術品(アルス・マグナ)とか最高傑作(ペルフェクティオ)とか候補にしてたそうだが、物扱いしたり姉の影を出しすぎるとリリルカ・アーデという個人を見ていないって(アタシ)がキレるんじゃ……っていうロキの意見により回避されたんだとか。ヘスティアは黙って冷静に誰がどんな候補を挙げたか確認してたらしい。

なお、当の本人(リリ)は姉と関連した二つ名を欲していた模様。姉底魂妹(シスコン)とかにされるから無難でえぇねん、無難で。

 

「レギは短剣二刀流だからベルの動きが参考になるんでねーかな。後は魔法が設置型だから常に撤退を視野に入れた立ち振舞いができればいいとは思う。一段落したら並行詠唱の訓練もしとくか」

「動きの方向からするとジル姉の手伝いも必要なんじゃ……」

「まァな。だがまずは基礎からだ」

「ん……頑張る」

 

地雷魔法は新しいし面白いな。爆弾使いとしては若干の共感(シンパシー)を覚えなくもない。敵に魔法を仕掛けてぶっ飛ばしてから起爆させるんだよオラァ!

しかし動きが対人寄りの一撃必殺ムーブなんで、モンスター相手の動きを仕込んでおいた方がいいかなぁ、と。暗殺なんてのは真正面から堂々と皆殺しにしても標的(ターゲット)を仕留めてる以上は成功なんだからへーきへーき。力こそパワーだ。

 

「てなわけで休憩できたな? 次だ、行け」

「「「「えぇ~」」」」

「ダンジョンは待っちゃくれねぇぞ。上手な休憩については次の機会に教えてやる」

 

ブー垂れる第三小隊をまとめてダマ鞭で捕縛、広間の中心に放り投げる。動き出した人形兵(ゴーレム)を前に、第三小隊もすぐさま態勢を立て直した。

 

「……なぁ、設定は戻したのか?」

「……あ」

「【福音(ばかもの)】」

「グワーッ!」

 

このあと滅茶苦茶設定変えた。

 

 

「「「「アバーッ!」」」」

「途中もう一息だったね」

「というか最初の小竜(インファント・ドラゴン)を強化種設定にしてないか?」

「いや、さすがにそれは……なかったな、良かった。いや良くねーわ、負けンなや」

 

今回の失敗は――正確には今回も、だが――処理方法と小竜(インファント・ドラゴン)のヘイト管理だな。クリスの大剣もイグリンの鎚も大振りで吹き飛ばせはするんだが、精密さに欠けるんで魔石を狙いきれず強化種を生む可能性が高まる。そして小竜(インファント・ドラゴン)は首が長いんで割と死角がない。背後も尾があるし、横も尾が届くし火球だって飛んでくる。割と巻き込まれるんよね。

 

「そもそもの話、小竜(インファント・ドラゴン)と戦闘するがわかっているのに『火精霊の護布(サラマンダー・ウール)』を用意していないのは何故だ」

「恐らくは学んだ知識がヘルハウンドの出現する中層から必須、という広く知られている部分だけなのかと」

「……なるほど、視野の狭さや知識はあっても知恵はないというやつか。嘆かわしい」

 

姉御の疑問はもっともだし、リリ考えも間違ってはいないだろう。一番の問題は資金と流通量だと思うが。学区の生徒を賄うのは無理だろうし。

つーか普通に中層潜らせてるし、戦闘服に耐火性あるって考えないと変か。そう考えるとオラリオ生まれオラリオ育ちの叩き上げな一冒険者としては大事にされてる感が半端ないから妬み僻む気持ちもわかっちまうな。

 

「で、そこんとこはどうなん?」

「はい。都市外では街中で戦闘したり被災地での活動も多いので、戦闘服には耐火性が備わってます。それで完全に防げるわけではないですが……」

「む、無策ではなかったか。そこに関しては取り消そう」

 

軽く振ってみたら、ニイナの回答はアタシの考えを肯定する内容。くっ、これなら意見を口に出しておくべきだったか……姉御も納得したっぽいし、軽く煽れる機会を逃したな。

他の三名は自分の服を詰まんだり眺めたりしながら感心したり呆然としたりなのは……そっとしておこう。

 

「ここは訓練だからいいが、本番ではちょっとした小道具は惜しまん方がいいかもな」

「むむっ、どういう事ですか?」

「簡単なのは毒を利用したりだな。安価なパープル・モスの毒鱗粉は毒性がそこまで強くないが、上層のモンスター相手なら小竜(インファント・ドラゴン)であっても多少は弱らせる事が可能なはずだ……もちろん、自分で吸い込む危険もあるが」

「毒……確かに。盲点……」

「そういや都市外だと耐異常の発展アビリティは縁遠いんだよな」

「そうなの?」

「ダンジョンでは上層からパープル・モスがいますし、中層でもキラー・ホーネットやダークファンガスがいます。ですが地上ではそれらと遭う機会がほとんどない」

「虫辺りは寿命が短く設定されてて世代交代のサイクルが早すぎるから魔石の消耗も激しくて勝手に絶滅したらしいぞ。逆にペルーダなンかは寿命が長くても個体数が少なくて繁殖力も低いから人が犠牲になりにくい」

「ほへー」

 

オッサンの助言(アドバイス)もしっかりと生徒の蒙を啓いた。ここで毒なんて卑怯だとか言い出さないのは、使うかはさておきって割り切った上で知識を吸収してるんかね。素直なのは美徳だな。

そんでベルとリリは冒険者を目指してダンジョンの勉強をしたんで地上のモンスター事情に疎い。こっちもこっちで英雄になる気持ちを強めてもらうため都市外の現状を教えておくべきか……第三小隊がポロっと生の声を漏らさないかな。それこそクリス辺りが。

 

 

この後は昼食と少し長めの昼休憩を取った後で午後の部を再開。今日一日だけでもかなり動きは良くなったし、もう実地に出しても良さそうなところあるな。明日からはエンドレス模擬戦の予定だが。

こんな簡単に変わると学区は何やってたんだって言いたくなるけど、向こうじゃ毒とかの直接的な答えを与えずにとことん考えさせる方針らしいんで、その、短気だったり飽き性だったり頭が固かったりな第三小隊とは相性が悪かったっぽいわ。おのれ画一的な教育の弊害……!

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