そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱) 作:夜月工房
休養日二日目。今度こそ用事も特にない、正真正銘の完全なる休養日だ。まぁ朝食の時間は固定なんだが。別に昼までぐっすりしててもいいんじゃよ?
第三小隊が外出する場合はヘスティア派が同行する予定だし、しない場合でも侵入禁止な場所には
「つーわけで一応希望を聞いておくか」
「私はダンジョンの勉強をしようかと」
「ほう」
「いい心がけだが、ちゃんと休めよ?」
「大丈夫です。途中で息抜きしますから」
真面目か。いやまぁ
「本、読む」
「ボクも読書かな! 学区でもお目にかかれないお話がいっぱいだからね!」
「そりゃあ、ないだろうねぇ」
「ジル姉の書いた本は独特だもんね」
「指が汚れねェ摘まめるもンでも作っとくか……」
識字率が100%であろう学区の強みよな。オラリオでも
そして独特なのはアタシが異世界の偉人達から拝借してるおかげなんだ。アタシが独特なわけじゃない。物語として好きな作品だからこそ記憶に残ってるわけだが、一部の作品についてそれを考えついたと思われるのは心外なんだ。
チーター並の速度で匍匐前進とかいうあたおか発想はアタシの頭じゃ出ねーよ。懐かしいなぁ、チーターが匍匐前進する速度って意味に捉えて頭の中が疑問符で埋まった
「鍛冶をしたいがどこか使わせてもらえる場所はあるだろうか?」
「訓練場の下に工房区画があるからそこ使え。夕方までの通行許可は出しておく。案内と見張りは置くがな」
「感謝する! 素材に関しても幾つか売って欲しいのだが……」
「現物の前に在庫リストがあるから、持ち出す際に使用量を計測して書いとけ。
「ありがたい!」
休養とはいったい……まぁ、ドワーフらしいっちゃらしいのか? 危険物は置いてないはずだから放置でいいな。いや、塩と水は用意させておこう。水風呂と着替えもだな。汗だくでこの辺を歩き回られても困る。
んで、特に問題も起きずに昼が過ぎ、夕食時。成果報告をしていた時、それは起きた。
「ルビス様のご指導のおかげで、
『春姫はあっしが育てやした』
「マジでか」
春姫、謎の方向に強化されるの巻。この場合のスリケンってアレだよ、魔力を直に操作して形作り出力できる様になったって事。エルフの先天的な魔法よりも先鋭化された、無詠唱で変幻自在な遠近両用の主に
しかもダンジョンの壁が魔石に似た材質とか、そこから
ルビスはモンスターでも精霊でもある穢れた精霊の要素が備わってたからできるわけで……
いやしかし、第三小隊に注目してたら予想外の角度からぶん殴られたな。仮にこれが戦闘能力に繋がるなら育成が楽になるんだが……あ、ルビスがとても優しい笑顔でゆっくりと首を横に振っていらっしゃいますね。まぁ、慣れだよ、慣れ。
でもまぁ姉御の遠隔発動とか無詠唱とか可能性は見えてるから【ウチデノコヅチ】乱射できるようになればいいと思うよ。つーかそっちを誤射した事ないんだから、対象指定の誘導型スリケンとか開発してみたら? とりあえずイシュタルに要報告だわ。
「改めて……いや、念のため聞いておくか。第三小隊の面々はどうだ?」
「ダメみたいですね」
「明日の予定に変化はないな?」
「もち。テメーらも眠ってても引きずってくからな。起きたら深層とか初見だと心臓に悪ィからオススメしねェぞ?」
『こいつら監視が必要でやんす』
「この辺も
散々な言われようの第三小隊。何故ならそこにいたのは頭から煙を出してグロッキーなニイナ、疲労困憊で枯れ木のようになったイグリン、そしてキラキラを越えてギラギラしているクリス及びレギ。しかも最後の二人もさっきまで眼精疲労と肩凝りで萎びてたからな、春姫のスリケン発言で復活しただけなんだわ。
「とりあえずこの際だ、報告は飛ばしておこう。軽く食わせたらそのまま水着に着替えさせて、まとめて
「わかりました」
『了解でやんす』
「えぇ……効果あるのかい? それ」
「よし、第三小隊と合わせて我らがヘッスも漬け込むぞ」
「任せてください、お姉ちゃん!」
「なんでノリノリなのかな!?」
『是非効能を確かめて欲しいと思いつつも主神を相手に粗相を働くのはちょっと……というあっしらの気持ちを汲んだ結果でやんす』
「通じ合ってるなぁ【
と、いうわけで有言実行。おかげで次の朝には回復しきった第三小隊の姿がありました。
ちなみに、バルドルには深層旅行に連れて行く旨を伝えてある。めっちゃ悩んでたけど、最終的には許可が下りたからヨシ! まぁ竜の谷がどうこうってのを考えたらLv.4相当との戦闘は経験しておいた方がいいからな。確かそろそろアンフィス・バエナが生まれてるはずなんで、竜種との遭遇経験もできて実際お得。
「さて、それじゃあ実際にこれからダンジョンに入るわけだが、よくよく考えたらズレの修正があるンで学区のやり方に合わせて解禁された12階層から先15階層までを第三小隊のペースでやらせンぞ。問題ないと判断したらそのまま18階層まで運んで『
『第三小隊ぃ張り切ってぇ、ガンバルゾー!』
「「「「ガンバルゾー!」」」」
「【
『「「「「アバーッ!」」」」』
「オイ、これからダンジョンだぞ。気持ちはわかるが」
「貴様のやり方を見て、変に尻込みされても困るのでな。12階層までは運んだ方が
とんだ出発式になったが、まぁ
アタシ以外の面子でそれぞれ第三小隊を担ぎ上げると、バベルの螺旋階段を無視して跳躍。1階層の正規ルートを外れたら爆破移動を開始、あっと言う間に12階層。
早速、第三小隊を叩き起こして探索を先導させる……アタシがいると
初見で12階層から15階層を抜ける事を考えて、全てを薙ぎ倒しながら正規ルートを通るなら昼前には着くだろう。ニイナが地図を覚えるか持って来るかしているはずなので心配はいるまい。ただ、どうせならボス戦みたいなのが欲しいよなぁ……。
「と、いうわけで用意しました。色合いが綺麗なのを選りすぐったクリスタル・マンティス強化種がこちらです」
「馬鹿なのかな!?」
「予測可能……回避不可能」
「同格か、やってやらぁぁぁ!」
「みんな、気は抜かないで!」
うむ、やる気は十分らしいな。そこそこ苦労して作った甲斐があるってもんよ。
いやね、適当に何かしらの強化種を作るまではすぐに決まったんだが、何を強化種にするかは少し悩んでな。ちょうど群れの最後に残ったクリスタル・マンティスを見て、そういやこいつ強化種にすると
で、どうせだから戦隊も組ませたいじゃろ? 厳選の始まりよ。綺麗な一色にならなきゃ廃棄、一色でも濃淡が斑模様だとアウト、色被りは二者択一で片方を泣く泣く討伐……そうして完成したのが、それぞれ
「というわけで行けェ! 数が一体多いのを活かすンだぞ!」
『
『
「なんか普通に命令してるー!?」
こうして始まったボス戦だが、まぁいくら強化種になってLv.3相当の
技構成はそこまで悪くなかったと思うんだがな。きりさく、いやなおと、とびかかる、つるぎのまい……いやなおとの代わりにあやしいひかりにしておけば良かったか。
つーか、つるぎのまいを積んでる間に二体ほどボコられて数的優位を覆されたんだわ。しかもポケットなモンスターじゃないから実際は無駄行動だったのが痛い。いやなおとは聴覚にダイレクトアタック決めて間違いなく防御を崩したのに。
「か、勝てた……」
「なんだか無駄に疲れた気もするけど、さすがボク達だね! キラーン!」
「おっ、ドロップアイテムだ」
「周囲、敵なし……壁、壊す」
「あ、ありがとう。少し休憩しようか」
第三小隊の消耗は軽微なはずなんだが、同格相手を数で負けてる状況って事で精神的な負荷は大きかったのかね。とりあえずリーダーのニイナには後で賞金を渡そう。今は移動を優先で。
「休憩は18階層でするぞー」
「そうだね。そっちの方がいいと思う」
「え? え?」
『お体に触りやんすよ』
「……羞恥、恐縮」
そして爆破移動で18階層まで。意識のある状態で体験したのが初な第三小隊は、驚き七割感心二割、残る一割呆れてるって感じだった。
「……おぉ」
「ここが18階層……最初の
「『
「これは凄いよ! ダンジョンの中だなんて信じられないね!」
口々に感想を述べる第三小隊。連れて来た甲斐があるな。アタシも初めて来た時は……もう思い出せねぇわ。最古の記憶でもゴライアスソロ討伐の後でボールスと話して、そのまま酒の席で絡んできた連中を吊るして周りの連中と指差して馬鹿笑いしてる場面だし。
この感じだと観光の企画を組んだのは正解かね。馴染みの商会連中に体験させて生の感想を広めてる最中だからまだ予約段階だし客も少ねぇが。
ただ、その商会連中からの意見だと、ダンジョンの雰囲気を体感した後だからこその感動って気もするから対策必要かも……って話だったんよな。まぁ後で他の連中も巻き込んで考えるか。
少人数なら精神異常対策と魔力壁の