そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱) 作:夜月工房
18階層をサクッと案内して、教育に悪いリヴィラの街はスルー。そしてあえての森近くで夜営の準備。数少ない娯楽要素と言える果物狩りも体験させたので、
「まァ、普通に料理するンだがな」
『ダンジョンの中でこれだけのすいとんを!?』
「つるっとして食べやすいですね」
「粉と水がありゃ作れるが、ダンジョンの中じゃ水の確保が手間なンだよなァ」
「重くて嵩張りますもんね……」
「
「例えばこの先の『大樹の迷宮』も湧水を見つけられるが……言うまでもなくここまで戻る方が安全だな。あるいは先の『水の
粗食に慣れてもらうべきか悩んだが、下手に楽をさせて冒険者なんて余裕だぜ的な勘違いというか見積もりの甘さを持たれても困るなー、と。
そんなわけで持ち込みの塩と小麦粉と塩辛い干し肉以外は現地のキノコ出汁や果物の水分糖分で可能な限り味を整えてみたが、食えなくはない範囲に収まったと思う。第三小隊以外は大して動いてないから腹もそんなに空いてないし、第三小隊の腹が膨れるまで食わせておこう。他派閥だともう少し悲惨だぞ、と脅しておくのも忘れない。
テントは大きめの物を二つで男女に別れる。女性側が
夜間の見張りは二人ずつ。生徒一人と冒険者一人の組み合わせだ。18階層は
で、夜間の襲撃というか遭遇は三度ほど。察知できた時点で合格、対応の見極めまでできたら満点だ。今回は三度とも偶然通りかかった少数の既知な格下だったので、察知してすぐに殲滅を決定、先手を取って増援も呼ばせず処理できて満点揃いだった。
「おはよーさン、だ。昨日案内した大きめの泉があるから水浴びするならどーぞ」
「おはようございます。私たちはちょっと行ってきます」
他の連中より早く起きて、顔を洗うとかの身だしなみは【
「とりあえず今日は一旦25階層に移動したら観光がてら
「
「ハーイ、質問です! ボクたちも戦闘に参加するんですかー!?」
「バエナはドロップアイテム狙いなんで発見したら即始末する。代わりに道中は参加してもいいぞ。そもそも帰りの戦闘は第三小隊に任せる予定なンで事前に経験しとくのもアリだ」
個人的なダンジョンの見所さんは初の
もちろんその先も、それまでの途中も、貴重な体験ができる場所ではあるんだが。でも階層主や安全階層の関係もあるから、観光するならここって感じ。なお心身の安全は考えないものとする。
「帰りというと、深層からかね?」
「深層は一体残す以外はこっちで処理だな。下層は推奨Lv.3だからそっち任せになる」
「なるほど、了解だ」
「連携……不安」
「いざってときは助けるから、安心して間違えて失敗から学べ。瀕死までなら見逃すから甘ったれてると迫る死の恐怖に漏らすぞ」
「……いやん」
さすがにベルたちじゃないやつらに格上多数との戦闘なんて無理はさせられない。いやまぁ格上一体相手に四人でも毎回が苦戦ないし死闘になりかねないんだが。
人型モンスターの厄介さというかやり難さは対人慣れの程度に依存するから、学区の生徒は……国際問題に巻き込まれるらしいし、割と慣れてたりするんかね? 模擬戦の感じだと毛すら生えてない素人にしか見えんかったが。
同格多数との戦闘も経験は積んだ方がいいし、下層のモンスターともなれば魔法じみた遠距離攻撃だけじゃなく
「はい、ここが25階層。ここから先27階層までが通称『水の
「て、テンション上がるぅぅぅぅ!!」
「なんだこれ、すっげええぇぇぇ!!」
「……やばば」
「本当に……すごいね」
大瀑布の威容に大はしゃぎな一同。しかし周囲を見回したら当たり前のように群れをなす
障害物もないのに半径500
「滝に感動してるっぽいし、階層主は次回のゴライアスでいいか。アタシは先にバエナ狩って来るわ。そっちはお客様とゆっくり観光しながら来てくれ」
「わかりました。気をつけて下さいね、お姉ちゃん」
絶景に見とれる第三小隊と、周囲の警戒に腐心するヘスティア派をよそに、こっそり滝坪に向かってダイブ。倉庫から長巻を取り出しつつひたすら落下。途中でイグアスが突っ込んで来たりもしたが、魔力壁に阻まれて灰になっていくので被害はなし。
そうして特に使命もないのでのんびり滝登りを敢行中のアンフィス・バエナを発見したので、すれ違い様に滝ごと両断。Lv.7にもなるとこんな無茶だってできちゃうんだな、うん。
長巻を倉庫にしまいつつ、ダマ鞭で灰に変わる前のギリギリまだアンフィス・バエナなものを滝から引っ張り出して、後は弱爆弾で落下速度を抑えながら滝とは反対方向の崖に着地。遺体を引っ張り足場の上に乗せて解体を……と、思ったら足場が崩れた。しかも衝撃で魔石が割れたのかアンフィス・バエナだったものになり、落下再び。
灰が舞い散る中で形を保っているドロップアイテムを発見したので、ダマ鞭で確保、そのまま引き寄せてダマ鞭も一緒に倉庫行きにしたタイミングで着水した。審査員がいたら厳しい評価をもらいそうな飛び込みだったと思う。
割と溜まり場になってるのかモンスターが寄ってきたから、とりあえずコハクの
「いやー酷い目に遭った」
「むしろどうして生きてるのか。聞けば聞くほどに規格外だな、第一級冒険者とは」
「さすがに学習したよ! 突っ込んだら負けだってね!」
Lv.7でも電気には勝てなかったよ……筋肉の不随意運動はあったけど意識はあったんで脱力して水死体ごっこをしてたら、落下場所が滝坪からそこそこ離れてたんで波に押されて岸まで運ばれ楽ができた感。つーか滝に雷魔法ぶっぱしたらアンフィス・バエナも感電死したりすんのかね?
そんで滝の底にはそこそこ魔石が転がってるだろうから、近く蟹辺りが強化種になっちゃう予感。そいつに襲われる顔も知らぬ上級冒険者よ、済まんやで。
あとイグリンはこんなのと一緒にすんなって視線が向けられてるの自覚しような。下手すると死ぬぞ? アタシは泣きそうだがな!
「とりあえずバエナは狩ったし、深層まで移動するか」
「……いよいよ」
「ドキドキするなぁ」
ちな、合流したのは26階層で、野生のカーバンクルを捕獲して性別判定してる最中の事だったりする。ポーチから取り出す振りして倉庫から取り出した魔石を変異するまで食わせてから、ベルにシメてもらって秘晶に変える。
モフりたかったのか、第三小隊は微妙に残念そうな顔をしてた。深層旅行から帰ったらエイジャを紹介してやるからな。
「…………やば」
「うん。これは、キツいね」
「ふ、ふふ。やるじゃないか。雰囲気だけでこのボクをここまで追い詰めるなんて」
「こんだけ広いのに薄暗くて、閉塞感と圧迫感がひでぇ」
以上、初めての深層を経験した第三小隊の感想です。自信家のクリスも語気が弱い。やっぱり深層って違うんだなー。アタシらはすっかり慣れたもんだが。
「まーここのモンスターはLv.4相当だから間違いは起きねェ。安心して怯えて縮こまって不意打ちされて痛ェ目を見ろ。例えば……ほれ」
「……え?」
鞭を振るい、そう遠くない位置にいた
「雰囲気に呑まれてるテメーらは気づかなかったかも知れんが、ぶっちゃけアタシらは囲まれてたぞ」
「ぜ、全然気づかなかった……」
「深層やべぇ」
「深層やばい」
「……迷彩?」
顔を真っ青にしている第三小隊。辛うじてレギが原因の究明に一歩進んだくらいで、完全に腰が引けてるな。これ
「さて、そンじゃあお待ちかね。
「多分、見た事ある人の方が少ないと思う」
「物好きか死にたがりだからな」
「無限湧きすっから
「お姉ちゃん、普通のパーティーはここに来るまで数日かかりますし、持てる荷物の量も決して多くないんですよ?」
何故だろう。アタシは一般論を言っているはずなんだが。みんなの反応が思ったのと違うというか、リリの労るような声が染み渡りゅぅ。