そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱)   作:夜月工房

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161.案内しました。満喫して下さい。

18階層をサクッと案内して、教育に悪いリヴィラの街はスルー。そしてあえての森近くで夜営の準備。数少ない娯楽要素と言える果物狩りも体験させたので、派閥体験(インターン)としてはバッチリだろう。レポートに書く内容には困らん旅をお約束だ。

 

「まァ、普通に料理するンだがな」

『ダンジョンの中でこれだけのすいとんを!?』

「つるっとして食べやすいですね」

「粉と水がありゃ作れるが、ダンジョンの中じゃ水の確保が手間なンだよなァ」

「重くて嵩張りますもんね……」

安全階層(セーフティポイント)を経由するならその場で確保できる。言い方は悪いが、足手まといがいなければ存外問題は少ない」

「例えばこの先の『大樹の迷宮』も湧水を見つけられるが……言うまでもなくここまで戻る方が安全だな。あるいは先の『水の迷都(みやこ)』まで進むか」

 

粗食に慣れてもらうべきか悩んだが、下手に楽をさせて冒険者なんて余裕だぜ的な勘違いというか見積もりの甘さを持たれても困るなー、と。

そんなわけで持ち込みの塩と小麦粉と塩辛い干し肉以外は現地のキノコ出汁や果物の水分糖分で可能な限り味を整えてみたが、食えなくはない範囲に収まったと思う。第三小隊以外は大して動いてないから腹もそんなに空いてないし、第三小隊の腹が膨れるまで食わせておこう。他派閥だともう少し悲惨だぞ、と脅しておくのも忘れない。

 

テントは大きめの物を二つで男女に別れる。女性側が小人族(パルゥム)二人と幼女でスペース的に有利だが、その辺は我慢してもらう。ちな、クリスは男性側に振り分けた。

夜間の見張りは二人ずつ。生徒一人と冒険者一人の組み合わせだ。18階層は安全階層(セーフティポイント)だが、上下の階層から移動して来るモンスターは存在するし、森は食料が豊富なので比較的数が多い。練習にはちょうどいいんじゃなかろうか。仮にミスったとしても、今回のメンツはLv.3以上しかいないので危険度はそこまで高くない。

 

で、夜間の襲撃というか遭遇は三度ほど。察知できた時点で合格、対応の見極めまでできたら満点だ。今回は三度とも偶然通りかかった少数の既知な格下だったので、察知してすぐに殲滅を決定、先手を取って増援も呼ばせず処理できて満点揃いだった。

 

 

「おはよーさン、だ。昨日案内した大きめの泉があるから水浴びするならどーぞ」

「おはようございます。私たちはちょっと行ってきます」

 

他の連中より早く起きて、顔を洗うとかの身だしなみは【異界信仰(ヴェルト・グラオブ)】任せにして朝飯を準備。今朝のメニューは事前に作って瓶詰めしてる鶏そぼろにお湯かけただけの即席スープと、マカロニのトマトケチャップ炒め。おやつにドライフルーツと、薄く切って油で揚げた果物。

 

「とりあえず今日は一旦25階層に移動したら観光がてら階層主(アンフィス・バエナ)を探して狩る。その後すぐに移動を再開して深層37階層まで落ちて、闘技場(コロシアム)の見学だな。その後は格上かつ技と駆け引きを使ってくる人型モンスターとの戦闘経験を積んでもらう。第三小隊全員で一体を仕留める形だからそこまで心配するようなもンにはならねェはずだ」

双頭竜(アンフィス・バエナ)……階層を移動する迷宮の孤王(モンスター・レックス)

「ハーイ、質問です! ボクたちも戦闘に参加するんですかー!?」

「バエナはドロップアイテム狙いなんで発見したら即始末する。代わりに道中は参加してもいいぞ。そもそも帰りの戦闘は第三小隊に任せる予定なンで事前に経験しとくのもアリだ」

 

個人的なダンジョンの見所さんは初の安全階層(セーフティポイント)であり自然豊かな18階層、蒼の巨滝(グレート・フォール)で繋がっている25~27階層、深層の洗礼を浴びせてくる重苦しい空気と闘技場(コロシアム)なんてあたおか区画が名物の運が良ければウダイオスにも遭遇できちゃう37階層だと思うんだ。

もちろんその先も、それまでの途中も、貴重な体験ができる場所ではあるんだが。でも階層主や安全階層の関係もあるから、観光するならここって感じ。なお心身の安全は考えないものとする。

 

「帰りというと、深層からかね?」

「深層は一体残す以外はこっちで処理だな。下層は推奨Lv.3だからそっち任せになる」

「なるほど、了解だ」

「連携……不安」

「いざってときは助けるから、安心して間違えて失敗から学べ。瀕死までなら見逃すから甘ったれてると迫る死の恐怖に漏らすぞ」

「……いやん」

 

さすがにベルたちじゃないやつらに格上多数との戦闘なんて無理はさせられない。いやまぁ格上一体相手に四人でも毎回が苦戦ないし死闘になりかねないんだが。

人型モンスターの厄介さというかやり難さは対人慣れの程度に依存するから、学区の生徒は……国際問題に巻き込まれるらしいし、割と慣れてたりするんかね? 模擬戦の感じだと毛すら生えてない素人にしか見えんかったが。

同格多数との戦闘も経験は積んだ方がいいし、下層のモンスターともなれば魔法じみた遠距離攻撃だけじゃなく異常魔法(アンチ・ステイタス)呪詛(カース)に近いものも混じって来る。対人に近い面倒さが無尽蔵な数の暴力で攻めて来るのはいい経験になるはずだ。連携じみた動きになる場合もあるし、参考にできる点は少なくない。

 

「はい、ここが25階層。ここから先27階層までが通称『水の迷都(みやこ)』だ」

「て、テンション上がるぅぅぅぅ!!」

「なんだこれ、すっげええぇぇぇ!!」

「……やばば」

「本当に……すごいね」

 

大瀑布の威容に大はしゃぎな一同。しかし周囲を見回したら当たり前のように群れをなす稀少種(ブルードラゴン)が上空を優雅に泳いでいたので、そっとダマ鞭を振るってまとめてメザシみたいにしておく。

障害物もないのに半径500M(メドル)以内でのんびりしてる方が悪い……向こうからしたら大概クソゲーだな。息吹(ブレス)より射程の長い格闘攻撃ってなんだよ。目標の禁鞭よりはマイルドだし、無限(パンチ)には程遠いんで勘弁してもろて。

 

「滝に感動してるっぽいし、階層主は次回のゴライアスでいいか。アタシは先にバエナ狩って来るわ。そっちはお客様とゆっくり観光しながら来てくれ」

「わかりました。気をつけて下さいね、お姉ちゃん」

 

絶景に見とれる第三小隊と、周囲の警戒に腐心するヘスティア派をよそに、こっそり滝坪に向かってダイブ。倉庫から長巻を取り出しつつひたすら落下。途中でイグアスが突っ込んで来たりもしたが、魔力壁に阻まれて灰になっていくので被害はなし。

そうして特に使命もないのでのんびり滝登りを敢行中のアンフィス・バエナを発見したので、すれ違い様に滝ごと両断。Lv.7にもなるとこんな無茶だってできちゃうんだな、うん。

長巻を倉庫にしまいつつ、ダマ鞭で灰に変わる前のギリギリまだアンフィス・バエナなものを滝から引っ張り出して、後は弱爆弾で落下速度を抑えながら滝とは反対方向の崖に着地。遺体を引っ張り足場の上に乗せて解体を……と、思ったら足場が崩れた。しかも衝撃で魔石が割れたのかアンフィス・バエナだったものになり、落下再び。

灰が舞い散る中で形を保っているドロップアイテムを発見したので、ダマ鞭で確保、そのまま引き寄せてダマ鞭も一緒に倉庫行きにしたタイミングで着水した。審査員がいたら厳しい評価をもらいそうな飛び込みだったと思う。

割と溜まり場になってるのかモンスターが寄ってきたから、とりあえずコハクの付与魔法(エンチャント)してくれた魔法矢(しっぱいさく)を取り出して、へし折りまアバババババババ。

 

 

「いやー酷い目に遭った」

「むしろどうして生きてるのか。聞けば聞くほどに規格外だな、第一級冒険者とは」

「さすがに学習したよ! 突っ込んだら負けだってね!」

 

Lv.7でも電気には勝てなかったよ……筋肉の不随意運動はあったけど意識はあったんで脱力して水死体ごっこをしてたら、落下場所が滝坪からそこそこ離れてたんで波に押されて岸まで運ばれ楽ができた感。つーか滝に雷魔法ぶっぱしたらアンフィス・バエナも感電死したりすんのかね?

そんで滝の底にはそこそこ魔石が転がってるだろうから、近く蟹辺りが強化種になっちゃう予感。そいつに襲われる顔も知らぬ上級冒険者よ、済まんやで。

あとイグリンはこんなのと一緒にすんなって視線が向けられてるの自覚しような。下手すると死ぬぞ? アタシは泣きそうだがな!

 

「とりあえずバエナは狩ったし、深層まで移動するか」

「……いよいよ」

「ドキドキするなぁ」

 

ちな、合流したのは26階層で、野生のカーバンクルを捕獲して性別判定してる最中の事だったりする。ポーチから取り出す振りして倉庫から取り出した魔石を変異するまで食わせてから、ベルにシメてもらって秘晶に変える。

モフりたかったのか、第三小隊は微妙に残念そうな顔をしてた。深層旅行から帰ったらエイジャを紹介してやるからな。

 

 

「…………やば」

「うん。これは、キツいね」

「ふ、ふふ。やるじゃないか。雰囲気だけでこのボクをここまで追い詰めるなんて」

「こんだけ広いのに薄暗くて、閉塞感と圧迫感がひでぇ」

 

以上、初めての深層を経験した第三小隊の感想です。自信家のクリスも語気が弱い。やっぱり深層って違うんだなー。アタシらはすっかり慣れたもんだが。

 

「まーここのモンスターはLv.4相当だから間違いは起きねェ。安心して怯えて縮こまって不意打ちされて痛ェ目を見ろ。例えば……ほれ」

「……え?」

 

鞭を振るい、そう遠くない位置にいた骨の死羊(スカル・シープ)の群れを数珠繋ぎに捕らえる。杭を飛ばしてくるんで確実に無力化するのが難しいんよな、このクソモンス。とりあえず引っ張って来て、トリモチを被せておく。

 

「雰囲気に呑まれてるテメーらは気づかなかったかも知れんが、ぶっちゃけアタシらは囲まれてたぞ」

「ぜ、全然気づかなかった……」

「深層やべぇ」

「深層やばい」

「……迷彩?」

 

顔を真っ青にしている第三小隊。辛うじてレギが原因の究明に一歩進んだくらいで、完全に腰が引けてるな。これ闘技場(コロシアム)見せて大丈夫か? トラウマになるようなら避けた方が……いや、それで折れるなら折れた方が楽なんかね。

 

「さて、そンじゃあお待ちかね。観光名所(コロシアム)へご案内だァ」

「多分、見た事ある人の方が少ないと思う」

「物好きか死にたがりだからな」

「無限湧きすっから黒曜石の兵士(オブシディアン・ソルジャー)の体石とか集めるのに重宝するンだがなァ」

「お姉ちゃん、普通のパーティーはここに来るまで数日かかりますし、持てる荷物の量も決して多くないんですよ?」

 

何故だろう。アタシは一般論を言っているはずなんだが。みんなの反応が思ったのと違うというか、リリの労るような声が染み渡りゅぅ。

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