そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱) 作:夜月工房
到達階層が12階層までだった第三小隊が今回の往路で経験したのは、まず15階層までの探索、18階層と25階層の観光、そして37階層の空気。
正直に言おう。詰め込みすぎたかもしれん。
「あわわわわわ」
「……うぇ」
「まるで夢を見てるようだね……」
「それもとびきりの悪夢をな」
モンスターの同士討ち、そして減った端から即座に補充されるという珍しい現象を前に、第三小隊は混乱と恐怖がない交ぜになっているようだ。半ば呆然として見えるのは、必要以上に神経を使ってるからだろうか。悲鳴や怒声もあるかなーと思って遠めに見てるんだが、この分だともうちょい近づいて……いや、面倒が起きる可能性は減らしておく方がいいわな。
「まーこんな感じにパッと見て意味不明な事態になってるのがこの
うーむ、こちらの説明も聞こえていない感じだな。この分だと虐殺を見せても安心しそうにないなー。まぁドロップアイテムを回収する以上はやらない手もないんだが。
「つーわけで行って来るわ」
「ある程度見学させたら私たちは下がるぞ」
「頼ンだ。一時間も狩れば集まると思うんで、下がった後は上を目指して大丈夫だぞ?」
「なら、そうするか。歩みは遅くなりそうだしな」
そういう事になった。とりあえず今回も
普段から戦闘最優先で魔石を食う機会がモンスターに食らいついて殺すタイミングくらいな上に、無双可能な強さまで育つ前に数の暴力で圧殺されてしまうのが
ダンジョンのリソース的にどうなのかは知らん。強化種って最低でも同種族の魔石五個は食ってると見て良さげだし、そう考えたら最低でも生産コストが六倍の計算やぞ。魔石単体で考えたらもう少しお安いか? とはいえ混じる割合そこそことはいえコスト悪化したモンスターを無限湧きさせるとか……その内に枯れるんでね? ちょっと我慢大会してみたくはある。
あとアタシがいる時だけならいいんだが、今後常に強化種も産み出される場合は
「と、いうわけで、第一級冒険者になったからってソロのLv.5が突撃しても物量に押されて殺されるんで、少なくとも逃走を実現させられる保護者同伴でないと挑むのは止めとくよーに」
「ジル姉、誰も聞いてないよ」
「スカルシープが一匹、スカルシープが二匹、スカルシープが三匹……」
「……暴力こそ真理」
「あっはっはっはっ」
「魔石を動力にした罠を仕掛けて置くことで出現と同時にモンスターを退治し、ドロップアイテムを自動で収納、運搬して回収する機構を作れば……」
駄目みたいですね。この感じだとルー・ガルーやスパルトイの相手をさせるのは酷か。まぁアタシが一緒だと強化種が生まれてくる
そんな判断をベルたちも否定する事はなく、深層は見学だけで終わらせて地上を目指す事となりましたとさ。
ちな、途中の戦闘はヴィトーとルビスに担当してもらった。同格以上が相手になるものの、駆け引きが通じるので戦士系モンスターを容易く翻弄するわ、人型であるが故に把握しきった急所を実に慣れた動きで突くわ……実力を発揮できないまま倒されていった戦士系モンスターたちは泣いていいと思う。
なお
28階層で一泊したらさすがに復活したので、そこから先は改めて第三小隊を軸にして戻る事に。途中休憩を挟みながらなんとか18階層まで辿り着き一泊。そして次の日の夕方に地上への帰還を果たした。
教会でヘスティアの暖かな笑顔と言葉に迎えられた第三小隊は、そこで完全に気が抜けたのか泣き始めてしまい、ヘスティアを大いに焦らせ困惑させた。そして経緯を説明したアタシは流れるようにその場で正座させられ説教を受ける羽目になったのだった。解せぬ。
三泊四日の深層旅行は貴重な体験だったはずで、世間一般で言う小遠征でもあった。つまり次の日となる今日は丸々休養日であり、
アタシはと言えば、いよいよ先延ばしにしていた
演目は以前決めた内容に追加して『上層、中層で集まる素材を用いた回復薬』と銘打っておいた。ミアハ派には確認を取っておいたので、開発中の新薬やその改良版を公表する事態にはならないはずだ。ディアン・ケヒト派? 取引先じゃないから知らね。
「――以上で説明は終わりだ。ご静聴には程遠い残念な受講者が多かったが、身内で騒ぐのが好きそうだし質疑応答はいらねェだろ。後は勝手に盛り上がれ」
はい、終わりました。アタシ、激おこ、なう。資料を渡したらざわつく、説明の最中も騒ぐ……それも私語がほとんど。もう今度から資料と音声データだけ提出でいいだろ。
引き留める司会の言葉を笑顔で手を振りスルーしながら退室。そして塔の最上階――校長室へとカチコミである。
「熱心っちゃ熱心だがよォ、考えた本人の話とか価千金なはずなのに資料持って勝手に議論してるやつが多過ぎて萎えたわ」
「ははは、彼ら彼女らは生徒ですからね。未熟なのは多目に見てあげて下さい。そもそもこの資料は劇的な薬なのですし」
「アタシが十年以上前、十歳やそこらで辿り着いてから使い続けてるもンばっかだぞ? それまでも、それからも、何してたンだ優秀な
なお
つーか学区ってリヴァイアサン討伐時に足場として使った要塞を船に改造してから世界中を回り始めたんだったか。そう考えると歴史浅いし新薬の開発とか無理かな。
「それはそうですが、その……怒らないでださいね。強化種の素材って流通してないじゃないですか」
「……おン?」
「しかも
「……おっふ」
「その上で断言できますが、例え入手できたとしても一個二個から
「なん……だと……」
「というかですね、おそらく題目である回復薬よりも、それを実現させる強化種のドロップアイテムが秘めた可能性に注目が行っているのだと思います。私語はそれぞれ薬とは別の専門分野についてのアイデアが湯水のように湧き出たせいでしょう」
「そういうもンかねェ……どちらにせよアタシの話は聞く気がなかったって事じゃねェか。契約通り二回目以降はキャンセルすンぞ」
別に強化種を使わない調合とかも載せてあるんだがな。一度に試験管一つしか作れない上に約六時間拘束されるが。発展アビリティも専用器材も不要なのに重傷でも問題なく治せる薬が作れるとか破格じゃんよ。
つーか、強化種素材に目をつけたって事は、今後それ目的の
しかしそうなると、サポーターや子供、駆け出しが囮にされる事態も起きそうなんだよなー。そこまで含めて説明して、神からキツく言い聞かせてもらおう。学区の生徒が死んでも困るし。
ぶっちゃけ強化種の素材って、強化種自体が全身異常発達した部位しかないモンスターだからドロップ率は高いんだよな。部位で出現率の偏りはあるが。
そうなると問題は強化種を生み出す手段なわけだが、
つーか
「契約書に明記されている以上は履行されねばなりませんね。ところで新しく依頼を受けるつもりは……」
「内容次第だァな」
「そうですか。では、レオンとの模擬戦をお願いします」
「……なんて?」
つまりこうだ。先日行われたヘスティア派とフレイヤ派の
そんで、今までは自分と【
これには【ナイト・オブ・ナイト】も悪童と呼ばれた部分が顔を出し始め、最近は一人でじっと剣を見詰めていたりするらしい。
トドメに【
「まァ、どうせなら、だ。
「おや、よろしいのですか?」
「そりゃーな。ヘスティア派は黒竜ガチ勢だから強さには貪欲だし、フレイヤ派もヘスティア派の傘下に収まったとはいえ負けたままで済ます連中じゃねェ。ロキ派だって最強看板は下ろしたわけじゃねェんだ、むしろ率先して噛みついてくるだろ」
リリも近くLv.7になるし、最後の仕上げに使うべきか、上げた後の糧にするべきか。初戦ボーナス考えたらリリもナイナイも上がった後がいいな。元よりリリはスキルの都合で
よし、どうせなら