そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱)   作:夜月工房

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167.見舞いました。ジャガ丸くん下さい。

「邪魔すンぞーっと、いたいた。アイズー」

「あ、先生……」

 

ロキ派若手集団(Lv.6)の試合が終わったのを見届けて、屋台からジャガ丸くんを大人買いした後で敗北者の姿を探す。いやまぁ一直線に控え室へ向かっただけだが。

 

「ちょっと、主催が放り出していいの?」

「いいに決まってンだろ。アタシはバルドル様の依頼で【ナイト・オブ・ナイト】との模擬戦を持ちかけられたからこうやって円形闘技場(ばしょ)貸切に(ようい)しただけで、後は【経験値(エクセリア)】に飢餓っ(うえ)てそうな連中やら暇してる連中に声かけただし」

 

中にはメンバーが勢揃い。レフィーヤがいなかったのは幸いか。いやまぁロキ派(みうち)の前でやっても意味がないんで初手土下座とかはせんが……いや、アイズなら騙せるか? 憧れの的から羨望の眼差しを向けられて涙目で必死に弁明するレフィーヤ(レッフィー)……イイ。後でやろう、そうしよう。

 

「だけって言えちゃう辺りが大物だよねー」

「アタシが大物なンじゃなく、周りが小粒なンだよ。ゼウス・ヘラ時代の記憶はほとんどねーが、今回のこれに殺しまで入れて時間も場所も問わねぇクソ迷惑な抗争が頻発してたらしいのにそれで最高がLv.9だぞ?」

 

ゼウスとかヘラとか、他もエジプト主神クラスでバチバチにやり合ってたらしいが、なまじ神の格が高かったせいで盲信したんかね。

人間の強みである欲望が、知識欲からの解析や調査が余りにも進んでなさすぎるんだよこの世界。いやまぁ前世の感じからしても発展の速度は指数関数的な部分があるから、開始時の水準次第で成長幅がアホみたいな差になるとは思うが。

で、神時代始まって千年だよ。日本で考えたら弥生時代から平安時代、または平安時代から西暦2000年代って考えたらどんだけ文明が発達するかの具合はわかるわな。その前だとギリ弥生時代って説もある縄文時代か。長いな弥生時代。

アルゴノゥト時代から神時代開始までは大穴の存在から文明の発達が難しいとして、だ。神々の降臨とダンジョンと結ばれた古の契約だったかがあって、そこから千年かけて今も中世ヨーロッパにちょい足しで魔石と『神の恩恵(ファルナ)』だぞ。なんなら人造迷宮(クノッソス)の構想を千年前にしたダイダロスを考えれば牛歩どころじゃない。フェルズの賢者時代から見ても四百年前から頭打ちしてるようなもんじゃん。

 

「その言い方……アンタ、もしかして偉業とか――『神の恩恵(ファルナ)』の仕組みを理解してるっての?」

「確定とは言えねェが、それなりに結果は出してるつもりだ。芯のねェ生っちょろいプライドばっかの連中にゃ不可能な方法だがな」

「へー、それって具体的にはどんな?」

到達点(ゴール)を決めて、後はどこまでも泥臭くひたすらに真っ直ぐないい意味で馬鹿になってやらかしまくる」

 

短い言葉から要点を抜き出して推測できる辺り、アマゾネスらしくない賢さしてるんだよなぁこの姉は。そんでもってよくもまぁ恥ずかしげもなく切り込めるよ妹の方は。素質としては妹の方があるんだが、団長の尻(ゴール)を見据えてる資格を得てる姉のが一歩先か。

 

「何それー、もっとわかるように言ってよー」

他派閥(よそもん)に媚びてんじゃねーよ、バカゾネス。そもそも返せるアテがねぇだろ」

「うっさーい! ベートの癖に!」

「んだとテメェ!?」

 

ふむ、アタシが妹属性に弱いってのを知らんせいか【凶狼(ヴァナルガンド)】が挑発したな。ツンデレリーダーここに極まれり。ちゃんと相手の好意に甘えてばかりでなく対価を示して対等な取引にしないと駄目ですよって教育までしておるわ。

 

「とりあえず、ほれ。今日のために開発された新味もあるぞ」

「! おぉ……ジャガ丸くんが、こんなに」

 

ほぼ無表情ながらも目を輝かせ声を弾ませるアイズ。貴重なシーンを【大切断(アマゾン)】との口論で見逃す【凶狼(ヴァナルガンド)】の幸あれ。幼女アイズもいい笑顔((>ワ<))しておるわ。

 

「ありがとう、先生」

「まー落ち込んでそうだったからな。せめて向こうの【ランクアップ】前に当たってたら胸を借りると言わずに挑めたンだろーし、多少の罪悪感も込みだ」

「……?」

 

コテン、と首を傾げる仕草は愛らしいが、高校生相当って考えたらあざとすぎるんだよなぁ。天真爛漫から復讐者を経て行き着く先が無表情系幼女ってどんな遍歴してんだコイツの精神。

しかも黒ワイヴァーン後から大して成長してなくて、ありがちな概念干渉系能力みたいな精神を凍らせてる疑惑まであるぞアタシん中じゃ。鑑定すればはっきりする? ごもっとも。

 

「……うまいか?」

「……(コクコク)」

 

もっきゅもっきゅとジャガ丸くんを頬張る様は小動物を感じさせる。その瞳はしいたけであった。これには口論を止めた二人を含めた全員がほっこり。本人は全く気にせず食事してるが、一応四人分のつもりだったんだよなぁ。まぁいいか。

 

「とりあえず用事も済ンだし、アタシは行くわ。ジャガ丸くんは好きに分けて食えよ、じゃーなー」

「ばいばーい!」

 

全員に対して言ったつもりだが、挨拶を返してくれたのは【大切断(アマゾン)】だけだった。おぉアイズよ、ジャガ丸くんに夢中で文字通り眼中にないとは……声なのに眼中、これは中々に哲学なのではなかろうか。どうでもいいか。

 

なお、控え室を出て適当にぶらつこうと通路を歩いてたらレフィーヤ大明神がお見えになられたので、端に寄って土下座し続けた。レフィーヤは泣き、友人眼鏡(アリサ)から文句を言われたので、必死に謝罪と退去の挨拶を述べながら背を向けず土下座のまま後ろ向きに視界からいなくなるまで去る事に成功。いい仕事したわ。

途中で試合に臨むべく控え室から出て来た白エルフにめっちゃ怪訝な顔されたけど、声はかけられなかったのでこっちも無反応を貫いた。白エルフの激励に現れたらしい黒エルフはアタシを見て悲鳴を上げていたが。

 

 

で、その後の試合はほとんど見てません! 後から聞い話では、それぞれ一矢報いる形で意地を見せたものの、結果は【ナイト・オブ・ナイト】の全勝だったとか。

双方とも多少の怪我はあっても後遺症はなく復帰できてたらしいんで問題はない。

 

じゃあ何をしてたかってーと、まずイシュタルのところに先触れじゃねーけど予約取って、午後一で春姫(スリケン)の報告。本人連れて【ステイタス】の更新もお願いしておこうと思って。まぁ当のイシュタルはフレイヤ派もロキ派も負けてるから胸のすく思いだってんで試合をガッツリ見てたわけだが。使い捨てと銘打って通信用の魔道具(マジックアイテム)渡しておいた甲斐があるってもんだぁな。

スリケンの実演と可能性について説明してたら超テンション上げてた。精神力(マインド)の鍛練と『魔導』やら『精癒』やらを狙う育成方針についても了承を得たし、春姫の口から聞かされる近況報告(トンチキ)にも感情豊かな反応を見せてたんで、概ね楽しんでたんでねーかな。パッと見だと派閥(かぞく)関係は良好な。

 

で、解散の合図は必要なんで闘技場に戻ると、ちょうど黒エルフが負けるところだった。中二台詞と共に斬りかかったけどそれより速く【ナイト・オブ・ナイト】の一撃が入って無念の一言を残して倒れましたとさ。

試合の最中はスロー映像が必要だが、決着については実況解説がちゃんと盛り上げてくれるの助かるわ。スロー映像に夢中で勝敗が決まったのに反応ないとか多分めっちゃ悲しいと思うし。

 

で、両選手が下がったらいかにも最初からちゃんといましたみたいな体でアタシが解散宣言。三日目の終了。

明日が最後って宣言に不満を訴える声が揃ったが、どうにも予備日を予約してるのが漏れてたらしい。ギルドの情報セキュリティ終わってんな、おい。最初から信用なんざねぇし、漏れて困るもんはギルド通す前に終わらせて事後報告が基本だからいいけどさ、別に。

つーわけでロスタイムを協議の上で考えとくって答えたら大歓声。なんかよくわからんがノリがいいぞコイツら。まー冒険者(ゴロツキ)の街だから民度というか都市民性は暴力(そっち)寄りか。

 

さて、チーム戦にするか『異端児(ゼノス)』お披露目にするか……両方かな。

学区ってタイミング的に前回の帰港一年半で二回までしか怪物祭(モンスターフィリア)を見る機会なかったはずだし、ここで改めてエイジャとラピスを紹介しとこうかね。

学区はモンスター被害の最前線を巡っててトラウマや敵視が当たり前で、喋ろうが感情を持とうがモンスターに変わりない存在との融和はめっちゃ悪感情を刺激する事になるだろうが……まぁ、融和とは別に古代のモンスターですらない強化種を通して、黒竜を討つというオラリオの意義を――都市外に目を向ける余裕の有無を知ってもらおうじゃねーの。ぶっちゃけLv.3未満はある程度なら放流してもいいと思う。

つーか、学区のお利口さんならベヒーモスとリヴァイアサンを倒したのに黒竜には負けたって事の脅威(いみ)は考えたら理解できちゃうとは思うんだがな。

とはいえ連中の真実は大多数のオラリオに引きこもってる破落戸こそが冒険者で、世界を救って回ってるのは冒険者ですらない自分たちって理不尽を強く感じてるだろうからなぁ。なお人間同士の下らない争いにも巻き込まれてる模様。いやまぁ難民とかモンスターの襲撃に端を発してる問題が絡んだ結果も多いんだろうが。

その意味じゃ多感な時期に外を巡って世間の荒波に揉まれる学区の生徒は、オラリオで過ごす連中よりも精神的な成長を遂げててもおかしくない。逆に階位(レベル)が低い内から達観して精神的な成長が頭打ちになって、そっち側で上位の【経験値(エクセリア)】を得られなくなったりも考えられるんだよな。なおレフィーヤ。さ、三年前は……そもそもアイツ何歳だっけ? エルフだし実は……だったりする? その辺どうよリヴェリア・リヨス・アールヴ殿!? 酷い流れ弾を見た。

つーか、そのリヴェリアが証明した魔力壁の強さからすると、エイジャのが黒竜より強い疑惑を抱いてるんよね。あれ【ナイト・オブ・ナイト】も切り札を使わない本気かつ全力の一太刀を防がれて驚いたって言ってたし。その一撃で魔道具が完全に沈黙したのはさておき。

とりあえず、【猛者(おうじゃ)】から獣化して魔法も乗せた斬撃をひたすらエイジャなは当たらないが魔力壁には当たるよう向きを調整した上でバンバン放ってもらって、魔力壁がどこまで耐えられるかの試験だな。先に力尽きるのは【猛者(おうじゃ)】だと思うが、その時にエイジャの消耗がどれくらいか確認したいよね。鑑定使って数値をさ。

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