そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱) 作:夜月工房
「……てーのを考えてンだが、何か他に意見や希望の類はあるか?」
「ふむ、レオンはどうです?」
「いえ、こちらとしても望むところです……酒は勘弁してくれると助かるかな」
解散宣言して教会に戻ったら夕食を済ませ、通信用の
とりあえずこちらの提案に関しては特に不満はなし、と。自分で覚えてたのか他人に聞かされたのかは知らんが、さすがに初日ラストの醜態は教師筆頭として堪えたらしいが。
「まともな戦闘なンぞ堪能しきっただろうがよ。それに初日終わりから『レオン先生ファンクラブ』とやらの会員数が激増したって聞いたぞ?」
「またどこからそんな話を……いや、それは置いて、せっかくオラリオが誇る第一級冒険者と肩を並べる機会が得られるんだ。正々堂々とやらせてくれないか」
「まーそういう依頼だってンなら意向に沿うさ。ただ第一級冒険者なンざどいつもこいつも我の強ェ問題児だらけで連携も期待できねーぞ。そもそも【ステイタス】秘匿とかでロクな戦術組めねェし」
「あくまで模擬戦だからいいさ。それに剣を交えて大体の実力は把握している。それこそ問題があるとしたら、君の実力だけは未知数な事かな」
「ンだよ口説いてンのか? 大変だよなー生徒に手を出すわけにもいかねーだろうし。あ、色街行くなら優待券くれてやるぞ?」
「やれやれ……」
模擬戦じゃリリに頑張ってもらって後方支援しかしてねーもんなアタシ。オラリオはともかく学区からの評価は底辺だって自信がある。
実情は生徒人気ぶっちぎりトップなレオン先生の貴重な姿を発掘した功績で妙な株の上がり方をしてるっぽいが。ちょくちょく商会関係者で学区入りしてる生徒もいるらしくて、変に持ち上げられたりもしてるっぽいんだよな。まぁどうでもいいが。
「話はまとまりましたね。何か問題があれば明日のこの時間にでも話し合いましょう」
「あい、あい。おやすみさン」
通信を切ったら改めてプライベート時間の到来。とりあえずリリに突撃して構ってもらおう。そして癒されたら風呂入って歯磨きして寝る。これに限る。
四日目、本来であれば最終日なその日は、綺麗に各派閥の団長が集まった見所さんしかない一日となっていた。
まず【
この領域まで来ると魔法による狂化のデメリットが痛すぎるんだよなぁ。使うと【ステイタス】の差はほとんど埋まるが、技と駆け引きが失われるから却って不利になるの噛み合わなくてめっちゃ辛そう。
怒りとか感情が限界突破すれば冷静なままらしいんで、いっそ恥ずかしいエピソードとかの地雷を多目に作っておけば良かったんじゃねーかな。でも計算高い面や英雄志望の外面取り繕う必要があるから無理か。こうなると要素がとことん噛み合わなくて草なんだ。
とはいえ模擬戦の範囲ではあるが全力の戦闘を何度も見せている【ナイト・オブ・ナイト】を誘導して、魔法を使った自分の行動まで予測して状況を整えたのはさすがと言うべきなんだろう。乾坤一擲の策を決めて一撃与える事には成功した……残念ながらアタシが事前に依頼を受けて製作、納品してた
で、そのまま理性を戻されるって意識の切替で生じた混乱の隙を突かれて剣を首筋に這わされたされた【
で、本命のベルは
つーか、いつの間にか分身し始めたぞコイツ。同格なはずのアタシの目にそう映るのどうなってんだ。スロー映像なのにワンシーンで五人くらいの輪郭を揺らがせたベルが映ってて解説の火炎魔法君が悲鳴を上げてる。ルビスのせいで忍者だってどよめかれてるけど、極東出身の皆さんは怒っていいと思うよ。
それでもカブ……守りは抜けません。って事でベル側の魔法まで解禁された。【
そんな感じでベルがギアを上げつつじわじわ削ってはいたんだが、時間が経過して【ナイト・オブ・ナイト】が速さに慣れてくるとベルは一転して防戦する羽目に。二刀流が抱える問題点の一つは片手持ちだから競り負ける可能性が高い事だよなぁ。
ただまぁベルの覚悟というかイカレた部分が顔を出しちゃって、片腕を犠牲に肉薄して鎧の継ぎ目から脇腹を抉る凶行に出ちゃったわけだが。切り飛ばされてくるくる回る自分の腕を回収して回復魔法としてのファイアボルトで繋いだし……回復力エグくね? あのアホ【
しかしそこで【ナイト・オブ・ナイト】がスキルか魔法かわからんが急激に能力上がって、有利を取ったはずのベルが死角から放った攻撃に合わせたカウンターの一撃でベルを吹き飛ばした。
ベルは会場を球状に覆ってる魔力壁に叩きつけられ、反動だけでも地面にクレーターを作る速度で墜落。そして土煙が晴れると、その中心で煙を上げながら
見た目は軽装でヒョロいベルだけど、防具の性能も耐久の数値も悪くないはずなんだがなぁ。なんか一撃で意識を刈り取られて負けてるんだよな。頭部を保護する宝飾品系統の
「つーわけで反省会だ」
「はい……」
控室の出入口には面会謝絶の貼り紙をしておき、
「まずは説教からだな」
「……はい」
「自分の腕を囮に使った部分のな」
「え? そこは普通でしょ?」
視線を下に向けて殊勝な態度を取っていたベルだが、自己犠牲に関しての指摘にはあっさり反論してきた。いやまぁ結果的にみれば後遺症なしで済んではいるんだが、どうしてこうなった。
「馬鹿を言わないで下さい。二度目は細切れにされて回収できなくされるだけですよ。与えた傷も
「うっ、それは……確かに」
「そもそも向こうが模擬戦気分だからこそ不意を突けたンだよ。本気の殺し合いなら何か知らンが攻撃通ったラッキーって隙のすの字もなく膝蹴り辺りで迎撃されて終わりだっつーの」
「そうかな……そうかも」
「とはいえ負け前提の玉砕覚悟な最後の足掻きは参加者のほとんどがやった事ではある。それを勝つための布石として組み込んだ点では他の連中よりマシだろう……僅かでしかないがな」
「そういやお前……腕を繋げる時のアレ、スキルを乗せたな?」
「……黙秘します」
反省の色はないな。古株同士で視線を交わし、頷く。
「おしおきだべぇ~」
「へっ、ちょ、待っでぼばばばばばばばば」
「なんつー気の抜ける掛け声だ」
取り出した
「とりあえず意気込み自体は間違ってねェし、観客とかは入場料を払ったわけでもねェ勝手に見に来た連中だから気遣う必要なンざなかったが……」
「な、なかったが……?」
「
「あ、またそんあばばばばばば」
「まァ、こンなところか。昼飯食って【
そんなわけで午後の部が開始され、世界で見ても最強を決める戦いとなるLv.8二人の試合が始まった。
姉御はどっちにも勝てる事実からはこの際だから目を背けておくべきだとアタシは愚考する次第。質量やら防御力やらで黒竜相手だと一撃の威力足らんかもだけど、対人だと事実上のトップなんよね。
で、昔馴染みの二人は様子見から始まって、徐々にギアを上げていく。恩恵を持たない連中はスロー映像でも目が追いつかないっぽい。まぁ動画が再現してるシーンと次のシーンの間に動作が終わってるからしゃーない。
むしろこれを認識してる『
ちなみに戦闘が激しくなってったら魔力壁がヤバいんで、急遽エイジャに協力してもらった。スロー映像でも戦闘がよくわからん状況なせいでめっちゃ注目浴びたのは、まぁご愛敬ってやつで。
試合自体は互いの全力を受けきれちゃったんで膠着気味のまま進み、時間切れになった。
オッサンの時と違ったのは、全力の方向性が真逆だった事かな。おかげで魔力壁の
なお
「お姉ちゃん、よだれが垂れてます」
『そして僕が危険に晒されてるっす』
「悪ィ悪ィ。気が緩ンだ」
で、一通り終わったので閉会挨拶。参加者と依頼してる各方面への感謝を告げて、明日の予定へと話題は移る。
「とりあえず今回の模擬戦に参加した連中から希望者を募って、明日実際に集まったら即興の二チームに別れて時間が許すか飽きるかするまで戦う予定だ。前段階で
安全が確保されないと聞いてざわつく会場。実際にはエイジャに魔力壁張ってもらったら何も問題ないとは思うんだが、いつだって奇跡は起きるからな。この場合の奇跡は一向に破壊される気配を見せないエイジャの張った魔力壁って事になるのかもしれんが。
「そンじゃまた明日ー。どンだけ集まりが悪くても【ナイト・オブ・ナイト】とヘスティア派とアタシら姉妹でドンパチやるから見学にくるLv.4未満は遺書を用意しとけよー」
ちなみに、この後リリと二人でギルド本部に赴き【ランクアップ】の申告をしておいた。担当してくれた職員は口から煙を吐いて動かなくなったんだが、これはアレだな、リリの愛らしさに魂が飛んだんだな。見所のあるやつめ。