そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱) 作:夜月工房
長いようで短いオラリオ頂点の集いは無事に終わりを告げた。そんでもっての予備日。安全を確約しなかったにも関わらず観客席は満員御礼、立ち見客で通路までびっしり埋まってた。これ集合体恐怖を感じるやつなら気絶まであるぞ。
個人的には塊転がしてくっつけて大きくしたい。オラリオ丸ごとステージにして二十分くらいをですね……あの塊あったらバベル要らねぇな。むしろ惑星丸ごと巻き込むよな。最終的には宇宙を一つにまとめた卵みたいになるんだろうか。
で、集まった参加者は……はい、勢揃いです。フレイヤ派はフレイヤの神意だろうし、ロキ派は全敗したし開き直って【
チーム分けが非常に面倒なんで、最大限【ナイト・オブ・ナイト】の意向に沿わせるから個々に希望があるなら説得してみせろって参加者に丸投げしといた。
「忠告したにも関わらずやって来た命知らずな馬鹿共には呆れるしかねェが、実際に死なれても参加者が気に病むかも知ンねーからな。仕方なくアタシの知る限りで最強の守りを提供してやる」
アタシはチーム戦の詳細を決めてる内にエイジャとラピスのお披露目をしておく。観客席には学区の制服がチラホラ見えるが、先生メインな昨日までよりは数が少ないな。宣伝効果は弱いかもしれん。
『よ、っす』
ポーチから出て来てアタシの体を駆け上がり、頭上に陣取ると片手を上げながら挨拶した緑色の小動物。そんなエイジャは五年の実績があるので黄色い歓声と共に迎えられ、しかも今回からは当たり前に喋るんで歓声は更に大きくなった。~っす口調の僕っ娘は強いな。
『ランク1、乙ダルヴァだ』
「なんだありゃ」
「【
「こいつはラピス。ダンジョン37階層に生息するウーズの強化種で、エイジャ同様の超がいくらついても足りねェ特異個体だ」
『これが、私のドミナントだ。良く見ておくんだな!』
そして新しく紹介されたラピスに関しては、レイヴンやリンクスの語録を用いた合ってるんだかないんだか微妙な自己紹介をしながら金属生命体チックな擬態を披露して野太い歓声を浴びていた。うーむ、男の子。
ちな、学区の生徒はエイジャがオラリオ勢に受け入れられてるっぽい事に驚き困惑してたっぽい。喋った事に関しては一層。喋るモンスターも情報提供に関する
そこからいくつか芸を披露してると、どうやらチーム戦の用意ができたらしいんで。二体を呼び戻して入場のアナウンス。
「どうしてこうなった」
「何、やはり一人だけ刃を交わしていないのも収まりが悪くてね。周りの勝負が決まれば横槍が入るだろうし、時間が惜しい……行くぞ」
「教師筆頭か? その姿が……」
「今は一人の悪童さ」
適当に別れたチームが単なる複数組のタイマンを始めた件。しかも何故かアタシの相手は【ナイト・オブ・ナイト】と来たもんだ。いやまぁ理由は言った通りなんだろうが。
でもって待ちきれない様子で斬りかかって来た……が、例え【ステイタス】や技術の差があっても何度となく見せている剣ではあるんで、避けたり受け流したりに不都合はない。
「……素直な剣だな」
「生憎とあれこれ深く考えるのは苦手でね!」
「抜かせ、教師が」
とりあえず初見殺しオンパレードでサクッと片付けたいところではあるが、決着に納得せず粘着されても困るし、学区謹製の
剣筋が素直ではあるし、型に嵌まってはいるんだが、逆に対応されるパターンが限定されて慣れきってるんだろう。全く崩れる気配が見えない。
「ただの悪童だと言った!」
「ンでそンなテンション高ェかな」
「楽しいからか、んなぁ!?」
「悪ィ、口が滑った」
剣を受け流しながらスリケンの要領で魔力から作った含み針で眼球を狙うも、首を倒して避けられた。とはいえ警戒を煽るには十分な効果があったらしく、距離を取って仕切り直し。
「今のは驚いた。ここ数年で一番ヒヤリとさせられたかもな」
「
「その場合はさすがに剣も届いてるさ。妹さんの時も思ったが、身長差とは厄介なものだな」
呼吸を整え終わった【ナイト・オブ・ナイト】が斬りかかってくる。しばらくは先ほどまでの再演となったが、ここで諸手突きが飛んで来た。
「おっと」
「……ッ!」
上半身を傾けて避けるも、距離が近すぎて長巻の射程からは外れてしまった。ので、武器を手放しながら側宙に移り、伸びきった腕にしがみついて肘関節を極める。靭帯が裂ける嫌な音が響くも、周りの激戦に隠れて聞こえてないと思われ。
学区の生徒は真剣勝負を捨てどさくさ紛れでレオン先生に抱き着いたとか言って悲鳴とブーイングを上げてたが、片腕が上がらない【ナイト・オブ・ナイト】の姿に悲鳴の割合を増やした。
「続けるか?」
「最後まで足掻かせてもらおうかな」
「さよけ」
目が死んでない辺り、ベル戦の底力的なスキルが発動されてると見た方がいいか。左手一本で剣を構えた【ナイト・オブ・ナイト】は、しかし自分から仕掛けずに迎撃態勢。
「来ねェのか?」
「そっちこそ」
「ほォ……ま、いいか。十分テメーの土俵にゃ付き合っただろ。今度はこっちの土俵で勝負といこうや」
「……は?」
【
「Lv.1でミノタウロスの群れを爆殺してからこっち、アタシは常に
「なにそれこわい」
アタシの遍歴(抜粋)を聞かされた【ナイト・オブ・ナイト】がキャラ崩壊をしましたが、ギャグ補正を得られたので問題ありません。こちらも自分にできる
「この世の理不尽を謳歌しろ」
直後、倉庫から直接射出される火炎石。左手一本で大長剣を振るい絶妙な受け流しで迎撃してはみるものの、機関砲かシャワーかといった物量を捌ききる事はできなかった。走って逃げれば当たらないだろうに、それをしない辺りは正しく騎士の中の騎士か。
「【
「あふン」
結局、見かねた姉御の魔法で射出が止まり、魔法の衝撃で手に持っていた火炎石が起爆して……なんでかアタシは天高く吹き飛ばされた。そしてエイジャの展開している魔力壁に優しくクッションのように受け止められ、この上ない勢いをつけて地面に突き飛ばされた。ひどぅい。なお、アタシの最後の記憶はものすごい速さで近づく視界一杯の地面だった事を記しておく。
「いやァ、チーム戦なの忘れてたわ」
「流れ弾で大変な事になってましたよ?」
気がついたら第一ラウンドは終わってて、第二ラウンドは【
つーか【ナイト・オブ・ナイト】が連戦してるって事は靭帯破壊も
でもってアタシが起こされずにハブられたのは、やはり危険物扱いなんだろうか。あるいは経験値泥棒的な? あ、忍者違いのBGMが脳内に流れ始めたんで首を振って意識を切り替えんと。危ない危ない。
「エイジャには悪ィ事したかね。消耗具合は大丈夫そうだったか?」
「はい。魔力壁にぶつかったのはお姉ちゃん由来のものだけでしたし」
「ホントに悪ィ事したなァ。後で埋め合わせしとかンと」
「久々に頼られて嬉しそうでしたよ?」
「……そっか」
エイジャ自身は元々戦闘を好まず臆病な性格だ。アタシらが黒竜ぶっ殺を掲げてて余り構えてないが、当人(?)は倉庫内でのんびりまったり過ごす生活が気に入ってて特に不満はないってのが幸いではある。
念話での雑談はしちゃいるから話題の共有はされてるし、疎遠な空気とは無縁だが……現場の空気とか触れ合いとかもっとほしいって本音はあるんよね、互いに。言葉に出さなくても流れてきちゃうからなぁ、魂の共有あるから。
――つーわけで復帰したぞー
――おかーっす
――再起動だと! 有り得るのか、こんなネクストが……
――エイジャちゃんは辛くないですか?
――ぶっとゃけ余裕っす。ただ僕は戦いとかあんまり興味ないんで暇を持て余してるっす
――ありがとなー後で埋め合わせするわ
――ご褒美は今欲しいっす!
――では今からお姉ちゃんと二人でブラッシングに向かいましょう
――ドライ
――最高じゃあないっすか……
このあと滅茶苦茶おもてなしした。
なお、戦闘が終わってもそっちのけでエイジャを構い倒してたんで無事に姉御からゴスペられた。