そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱) 作:夜月工房
遠征二日目。ヘイズが【
移動自体は爆破して落ちるだけなんでサクサク進み、本日の夜営先50階層……の直前、49階層そのものである
「まったりとか言ってられないんですが!?」
「やる事が……やる事が多い!」
「ぎゃーっ! 何だこいつ、明らかに他のやつより強いぞ!?」
「色違い……強化種!? 何で壁から!?」
「通路から増援多数! つーか
「あぁ! ジャン・ルイがやられた!」
「こいつ、壁の中から直接……!?」
何やら後ろが騒がしいが、とりあえず前方から来る分はこっちで処理してるんで負担は半分……とまではいかんか。だがまぁ慣れだ、慣れ。
「前より酷くなっているぞ、どうなっている小娘」
「強化種生えるようになったのは最近になってだが、出現率は大して変わってねェだろ。これがアタシの日常だ」
「こんな日常があってたまるか」
「そのせいで色々と狂ってるのか【
「むしろダンジョンが狂乱してるんだが」
「とりあえず本隊から離れてほしい」
「「「それな」」」
第一級冒険者は本隊の前後に配置している。その中で指揮能力に優れたリリと白エルフは双方に分けているが、人数的に主体となるのがフレイヤ派なんで前方に白エルフが配置される事となり、リリと離れ離れになってしまったのは遺憾としか言えない。
いっそアタシも後方に配置されたかったが、爆破移動の都合で最前を進んでるんだわ。まー仮に分断されたら物資の都合ですぐ引き返さなきゃならんしな。
「迷宮すらも作品とするか、混沌の申し子」
「ほざいでンじゃねェ。テメーの口から出すもン省みてから言えや」
「……ヘディン、俺この
「黙ってろ。作品にされるぞ」
「ヒェッ」
「してどうすン……いや、待てよ。魔法少女ヴァナディースリーの第二作としてレッドとホワイトとブラックか……」
「【永伐せよ、不滅の雷将――ヴァリアン・ヒルド】!」
軽口の応酬をしていたら降りた天啓に近いアイデア。しかし待っていたのは危険を察知した白エルフによる過激なツッコミだった。これにはどつき漫才に飢えていそうな黒エルフも満足」
「してないよ!?」
「これでも足りねェのかよハードル高ェな……あァ、充電ご苦労」
「チッ……」
ツッコミのときはテンパってるから素に戻るっぽいんよな黒エルフ。関係性としては標準語を話す若者がツッコミのときだけなんでやねんと発言してしまうのに近いんだろうが。勢いと鮮度って意味じゃ
唐突な大規模砲撃に後列がざわついてるが、歩みが止まったわけじゃないんですぐに収まる。いやまぁLv.4連中は激闘続きで喧騒が絶えないわけだが。強化種が出て来るだけで格上混じりの死闘に
「この先が49階層――
「うん、了解」
「他はまァ、そこそこボチボチ周りの雑魚を枯れるまで好きなだけ。アタシの影響で変なの湧くかもしンねーし第一級連中は気を配ってやれ。何か質問や意見があるやつは挙手してくれ……ねェな。よし、行けっ、ベル!」
君に決めた! なんて冗談はさておき、ベルの後に続いてボス部屋しかない階層へと突入。全員が入場する頃には既に出入り口から大きく離れ、射線が出入り口を通らない位置を保持しつつ遠くに見えるデカブツへと駆けていた。
「うーん、見渡す限りフォモールだらけだな。さすがケルト」
「そういった部分もまたダンジョンの配慮なのでしょうか?」
「さてなァ。ミノだのアラクネだの個体を差すもンでも種族になってっし、
「それはそうですが……あ、お姉ちゃん。ベル様が決めました」
「マジで? おー早かったな。ドロップアイテム回収に行こうか、愛しいリリ」
「はいです、お姉ちゃん。ベル様に早いと褒めて差し上げませんと」
微妙にリリの発言がセクハラっぽいが、ベルなら素直に受け取って礼を言うだろう。それはそれで無知無垢な相手を気づかれずに汚しているようで背徳感が……いやいや、リリに限ってそんな。
遠足気分で荒野を制圧して、
「つい一ヶ月ちょっと前に58階層で狩りをしてたら出てきたからな、今回も下に向かうと接敵するだろうし、下手したら襲撃の可能性もある」
そして軽く
まぁ代わりっちゃー変だが、こっそり作った機構武装が役に立つはず。スリケン技術を用いて魔力の塊を撃ち出す
「とりま、先行して偵察して来ようと思うんだが希望者は挙手……だから多いンだよ。どンだけ張り切ってンだテメーら」
「僕たちは対処の実績があるし……」
「逆に我々は一度見ておきたい」
「言っとくが
と、いうわけで帰りに追われながらだと狩れない可能性のあるカドモスを強化種にしてから狩り、52階層から58階層までは直通する側と階段移動する側に別れて偵察する。アタシは当然直通側……だったんだが、ここで
「砲撃が来ねェな?」
「やられてる可能性があるか」
「もしくは前回以降ダンジョンが産むのを止めている可能性もあるな」
「……そんな事があり得るのか?」
「こいつがいると常識が壊れる」
「……あぁ」
甚だ遺憾である。が、事実として狙撃されない以上は仕方がないので……爆破移動開始である。代わりに58階層から上りRTAを開催するが。
で、きっちり
「ほぅ、来るなら【ロキ・ファミリア】だと思ってたが……まぁ、いい。例え【フレイヤ・ファミリア】だろうと不足だぜ? この俺……グラン様の相手をするにはなぁ!!」
「「「いや誰!?」」」
いや、まじで。そこには堆く積もった大量の灰と大剣を持った禿頭をした大男の姿。そいつが魔石を噛み砕き飲み込んだ事から、間違いなく
ちな、ツッコミをしたのはアタシ、リリ、ベルの三名であり、当のフレイヤ派――同行している白エルフと【
「……ンン? あー、思い出した。こいつアレだ、確か【イケロス・ファミリア】だ」
「知っているのジル姉!?」
「ほぅ、俺を知っているとは情報通だな。いや、
テメーがそうなった主原因ですが何か。知らぬが仏ってやつなんかね。まぁ大抗争前に一度すれ違ったくらいで面識ほぼねぇもんな。
つーかやっぱダンジョンに潜むのを選んだか。主神はどうなったんだろ? 穢れた精霊ならぬ穢れた神が生まれたりしてんのかね? あるいは怪人ならぬ怪神? 宇宙的脅威な神話生物になっちゃーう。神だけに。
「ンな事ァどうでもいい。アタシとしちゃ、てっきり【
「く、ふははははっ! 懐かしい名前だ。ディックスは『彼女』の恩情を拒み、逆らって殺されたよ。他は耐えられずに死んだ。残ったのは俺……そう、俺だけだ。俺こそが! 『彼女』に選ばれたのだ!!」
「ほォ」
【
いや待て、【
「おい、わかるように話せ
「ナチュラルに種族名を罵倒語として使ってなきゃ応じたかもなァ、ブラック」
「ぶち殺すぞ……」
「話が進まん。それで、敵なんだな?」
「敵でもあり敵の敵でもある。ぶっちゃけこいつ個人は殺しても問題ねェ」
「そうか――【永伐せよ、不滅の雷将――ヴァリアン・ヒルド】」
「は?」
ごんぶと雷撃が
なんて思ってたが、なんと跡形もなかった。キモ虫やら食人花やらをけしかけて来なかった辺り、深層ソロしてたんじゃないのかとツッコミたくなるんだが……まぁ倒せたならいいか? 大丈夫? いつから鏡花水月を使っていないと錯覚していたとかない? あっさり過ぎてあやしいんだが、証明手段が先に進むくらいしかないんだよなぁ。
「あ、イケロスの行方確認してねェな。仮にも神なンで保護が必要なンだが」
「……いずれわかるだろう」
白エルフ、痛恨のミス! いやまぁ常識的に考えて神が入ダンしてるとは思わんしな。そもそもイケロス派の情報とか興味もないだろ
とりあえず
すまぬ、お布団は強敵でござった。