そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱) 作:夜月工房
遠征が終わって数日後、アタシは教会地下の寝室にいた。
そこにはリリとエイジャ、ラピス、ついでにルビスの姿もあった。要は【
空気は何とも言えないどんよりした感じで、しかし各々うっすら納得した気配を醸し出していた。
「竜の依頼ナンバリング六作目かよ……」
「リリはロマンシングなサガの三作目を思い出しました」
『銀の手は消えないっす』
『まるでファルスだ』
『正しく胡蝶の夢ってやつでゲス』
「はい、NGワード」
『ルビス、アウトーっす』
『グワーッタイキック!』
勘の良い読者諸君はおわかり頂けただろう。
それはある意味で無から有を生み出したし、並行世界の運営でもあり、高次の存在を干渉可能な領域に引き込み、意思の疎通を可能とし、運命を変えた。それもいくつかの異なる叡智を結集した結果生まれた、理論立った技術のみによって。いやまぁ説明されても全く理解はできんかったが。固有名詞ばっかりでぬね顔晒して終わったわ。
ついでに言えば、これを実行というか主導してるやつが完全に無限残機の
「まーハンサムが勝ったってこったァな」
『アゴがあんなにも尖っている。おかしいと思いませんか、あなた』
『いかん! そいつには手を出すな』
「ぼく達は、幸せになった――つまりはそういう事なのでは?」
「この場合に厄介なのは、どこぞのイカレみてーに人間とは自分ただ一人みてーな完結の仕方が成立する事なンよな。アタシらは個々に独立しちゃいるが、いざとなれば意見は一つにまとまっし」
「元より人間個人で見ても、多角的な見方をした上で妥協してますからね。集団の意思決定と何も変わりません」
『一度決めた後でくよくよして自縛や自爆、足引っ張りと逆走キメる辺りも変わんないっす』
「まー、そうな。難しく考えるまでもなくアタシらは独立した個の意識が強いし、仲良しグループくれェの感覚でいいわ」
手っ取り早く言うと、アタシが生きて来たこの二十一年――前世記憶を自覚してからだと十六、七年か。
長いようで短い時間を過ごしたこの世界は、アタシの見ている夢であるらしい。いやまぁ基本的にダンまち世界にオリキャラぶち込んで介入させる自分だけのダンまち史的な一人プレイ用VRPGに近いそうだが。ただし周回は可能だし記憶や製作物など一定条件を満たしたものを現実に持ち越せる特典付きの。
そりゃ都合がいいわけだよ。
ちな、夢だと自覚する羽目になったのは前世の寿命と同じ年数までしか特典の獲得期間が設けられておらず、それが過ぎたから。現時点で引き継ぎ用のデータがオートセーブされてて、ゲームで言うエンディングを迎えた後らしい。既に人生というか夢生というかはロスタイムに突入しているわけだな。
「しっかしそうなると、今後どうすっかなンだよなァ」
「残り時間が少ないですもんね。思い残す事は割と多いですが……」
『とりあえず黒竜はぶっ飛ばしておきたいっす』
『穢れた精霊もオタッシャ重点な』
『秩序無くして人は生きてゆけん。たとえ、それが偽りであってもだ』
「ふむ……『
「間に合うかね? ノンストップでやれば一月とかからねェだろうが、ここまで来たら犠牲者なしで終わらせて有終の美を飾りてェし。そうなると準備がな」
元より世界も原作開始三十年前くらいから開始後三年くらいまでしか用意できてないって話だったし、内容も今後のアップデートにご期待下さいとの事。現時点ではギルド長の幼馴染になってスリム体型を維持させるプレイとはできないんだそうな。いや、誰得なんだそのプレイ。
なお開発が突き詰めた黒竜討伐RTAは限界ギリギリな三十年前から始めて、十五年前のゼウス・ヘラの討伐に合わせてエジプト勢と友好度を高めながら生存させ、フェルズを酷使して、トールやポセイドンも巻き込む全力プレイらしい。開始時の種族は獣人がオススメだそうだが、キャラメイキングは二周目以降に解放される機能なんだとか。微妙に意欲をくすぐってくるの本当にズルいと思う。
『ゲームならデータを引き継いで次の周回を始めるか聞いてくるNPCが配置されてそうっすね』
『あ、それは大聖樹見習いが担当してるみたいでやんす』
「マジか」
『NICE JOKE』
もしや普通に喋れたんだろうか。だったら何か変わったのかって聞かれたら正直微妙って答えるしかないが。あ、でも大筋には関係ないがエルフに知らせたら引っくり返りそうだからやってみたい。
「しかしこれ、ギャルゲーで言うとフラグを立てられずに時間切れになったエンドですよね?」
「い、一周目らしいから……あのアホ共の言葉を信じるなら、だが」
確かに原作知識の届く範囲にないからって黒竜討伐もダンジョン踏破もしなかったし、穢れた精霊も『
「どうせなら二周目に移って開始直後に黒竜を殴りに行きましょうか」
『クロトリっすか?』
『史上最凶のやり込みSRPGかもしれねーでゲス』
「二周目以降のプレイ料金次第だな。無料なら無限に周回して世界が愛しいリリで溢れ変える未来しか見えねェし」
『拘るな、ここだけじゃない!』
「夢な以上はあちらでの時間という制限があるはずですがね。リリとしては、自分じゃない自分が増えるのはちょっと……いえ、もちろんお姉ちゃんがそれを望むのなら止めはしませんけど……ごにょごにょ」
「まーその辺は持ち込み禁止だの同じ人物は勝手に統合されるだのされそうだし、やらん方がいいわな。むしろ今の時点であっちのリリとこっちのリリが存在するのが確定してンだし」
夢から覚めた後の世界でリリの扱いについては紛糾してるらしいんだよな。性格を考えると全くの別人レベルなんで、
果たして『
つーか、そもそもあっちのアタシとリリは紆余曲折を経て『
『僕は限凸しておきたいっすけど、記憶や性格に影響が出るのは自分じゃなくなりそうで怖いっす』
『すみません。限界、突破しました』
「確かにラピスちゃんはある意味で限界突破しちゃってますね」
「それ言ったら強化種の時点で限界突破してるようなもンだろ」
『そう考えたら僕たちって能力の限界が果てしない感じっすかね?』
「多分な」
エイジャの懸念はアタシ自身も持ってる内容なんよな。夢で見たってだけかもしれんが、事あるごとにこれは夢で見たやつだ! とか某ゼミの漫画みたいな感覚になられても困るし。なお原作知識持ち。あれ、そう考えたら多少気楽に構えてもいいのか? うーん、わがんね。休むに似たりって言うし、下手が考えるのは止めとこう。思考停止万歳。受け身が楽でいいんだわ、求む有能な状況。
「ひとまずここが夢の中だろうとなかろうと安易な行動を起こす気にもならンし、現状維持でよくね?」
「リリは賛成です」
『僕もっす』
『最後まで付き合ってもらう』
『お任せでやんす』
そういう事になった。
しかし話にも出たが、既に時間切れエンド迎えた後なんだよなぁ。この先というかこの話し合いすらもなかった事にされるって無情感ヤバいな。ネタバレしてきた連中を信じられるかは別問題だが。
さておき、せっかくこんな事態に陥ってるんだし、恒例のアレを言っておくべきだろうな。こほん。
アタシたちの冒険はまだまだこれからも続く……!
一身上の都合により毎日更新のチラ裏としては完結しておきます。飛ばした部分やダンメモ、ダンクロのイベントとかのif話をそっと更新する事はあるかも知れませんが。
お付き合い頂きありがとうございました。