そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱)   作:夜月工房

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Ex3.洗浄しようぜ! お前モップな!

先日の忘れてしまいたい事件だが、あれを解決する方法の……せいでと言えばいいのかおかげでと言えばいいのか、ダンジョン探索の目処が立ってしまった。

 

現状の大きな問題点は、物量と溶解液による圧倒的な資源の無駄使い、むしろエントロピーの消失による宇宙寿命の短縮を起こしているようにしか思えないあのド腐れキモ虫である。

連中はモンスター丸呑みして栄養を蓄えたら自ら極彩色の魔石を捧げて精霊の分身(デミ・スピリット)を作り出してるが、そもそも超硬金属(アダマンタイト)製の武器を溶かせるなら原石を出土するダンジョンの壁も溶かせるだろ。でもってダンジョンの壁って魔石に似た物質で構成されてるわけなんだし、わざわざモンスター溶かさず直に壁を溶かして啜れば良くね、って思うんだわ。

そんで調子に乗って壁を溶かしすぎてダンジョンをキレさせて全身魔石なジャガーノートに鏖殺されてしまえばいい。あー、でも溶解液とは相性悪いか? その辺のせめぎ合いは起きてそうだな互いに。

いやまぁ肉食獣が直接草を食わずに草食獣を食う流れに近いのかもしれんが、それにしたって極彩色モンスターって、こう、進化の方向性が力isパワーな感じで……ね? 精霊の役割が人間というか英雄の支援と魔物の撲滅だから仕方ないっちゃーないんかな。

 

つーかね、ダンジョンもダンジョンなんよ。敏感なってる状態でお漏らし神威に反応して黒ゴライアス送れるなら穢れた精霊のやらかしにも黒モンスターを送れよと。

いやね、正史のダンジョンなら極彩色とはいえ魔石持ちのモンスター判定でスルーとか考えれるんだが……ここのダンジョン、どうやらアタシの先輩らしいんよ。転生者的な意味で。

この世界がアタシの見(せられ)ている夢だって判明した(ネタバレの)時点で一緒に教えられたんだが、どうにも数十年前の時点からダンジョンの意思というかは憑依転生で乗っ取られてて、しかしながらダンジョンの機能は半自動制御で稼働し続けてるんだとか。

まだ早いって教えてもらえなかった情報も多いんだが、少なくともこっちやあっちでは神々が意味深に呟く『約束の刻』とやらは実質無効なんだそうな。ひどくない? 全ての人類も神類も詐欺られてるんだよ? 訳知り顔で真剣にしてる連中、皆して道化よ? 内心、笑いが止まらんわ。

まーそんなダンジョンパイセンもそこまで好き勝手できる権限は獲得できてないらしく、傍目にはしっかりダンジョンがダンジョンしてるわけだ。むしろ人間に対する同族意識とか消えてて人類への感情はめっちゃドライっぽい。

で、獲得できてるそこそこな権限を使って何してるかってーのの答えが、転生者(アタシ)のモンスターや各種異常事態(イレギュラー)に関する遭遇率上昇ってわけだ。お排泄物ですわ!

いうてそのおかげでアタシがそれなりのペースで【ランクアップ】できてるわけだし、ある意味では感謝するべき部分なんだろうが。

向こうも向こうでアタシにモンスターをぶつける行動を通して経験値的な点数(ポイント)が貯まってて、それを消費してダンジョンの機能を開放というか掌握しつつあるらしいんだが……具体例は壁から強化種とからしい。パイセンにとってはポイント稼ぎの効率化の一環らしいんで、役立つっちゃー役立つが腹立たしくもある。

情報元の都合でどこまで信じていいのかわからんが、ポイント稼ぎに腐心してるパイセンはそのポイントを盛大に使って新種のモンスター開発してるらしい。人型モンスターの『異端児(ゼノス)』――要は美形キャラ――を認識してテンションが突破、以来延々と最初から美形に産まれてくるようモンスターを調整して過ごしてると専らの噂だ。冒険者が聞いたら憤死しかねない過ごし方だな。

あっちの世界だとその内の一体が突然変異を起こして、それをきっかけに世界そのものがヤバい状況になってるんだよなぁ。先輩じゃなく戦犯じゃねーか。

ちな、直接の意思疎通は不可能なんだとか。正直な話、【異界信仰(ヴェルト・グラオブ)】でゴリ押しして魔道具(マジックアイテム)製作したらいけそうな気がして仕方ないんだが、肝心のスキルから絶対にノゥ! って返ってきたんで諦めるしかなかった。

 

 

 

「そンなわけでダンジョン掃除に向かおうと思う」

「穢れた精霊の本体ですか……せめて何階層なのかだけでもいいので具体的な潜伏先を知りたいところですが」

『道中の移動は僕が魔力壁を張って、リリちゃんがネキを背負って運べば問題ないと思うっす』

 

黒竜討伐を終わらせた後も相当数がリリの指揮下にある状態なんで、ぶっちゃけ穢れた精霊の討伐も余裕だとは思う。思うんだが……どうせなら夢から覚めた後にどう動くかの参考にしたいかんね。色々と試すだけ試しておきたい。殺したらそれ以上の実験できんし。

 

「あっしは倉庫内で応援しとくでやんす」

『……あなたを信じてる。帰ってきて』

「テメーも行くんだよ」

『じょ、冗談じゃ……』

 

おそらくだが、ダンまち世界で最強なはずの黒竜を無傷で仕留めたリリとエイジャの組み合わせは、そのままダンジョンの攻略も二人だけでやれちゃうんよね。

なんならペガッサくんで物質の余裕もそこそこあるし、アタシがいなくても制覇して来る可能性はほぼ確実なライン……自分で言ってて悲しくなってきた。ラピスでも揉んで気を紛らわそう。

 

『てこずっているようだな……尻を貸そう』

「テメー全身尻みてェなもンだろ」

『いやん!』

「実際問題、拘束とかで協力してもらう可能性はあるかンな」

「そうですね、エイジャちゃんには防御を優先して欲しいですし、お姉ちゃんはご自分の作業があるでしょうから」

『ナル……ホド……オマエモ……ドミナント……』

 

 

そんなわけでヘスティアにルビスを借りる許可をもらい、ダンジョンへと向かった。

なお、オッサンと姉御は黒竜討伐を見届けて肩の荷が下りたらしく、生き残りや墓を訪ねて報告して回っている。

ベルは見せ場がなかったから凹んでたのをシルに押し付けておいたから、上手いこと慰められてそのまま搾られてるんでねーかな。

今まで頑張って来たご褒美だよ、うん。スキルからして一途じゃないんだからへーきへーき。

ハーレムルートへ進んだ影響でアルテミス(精霊)の存在もそれなりの範囲にバレたが、この世界(ゆめ)もあと数ヶ月の運命っぽいから問題なんてないない。アタシらだって好きに動くぞー、良識の咎めない範囲で。

 

その意味じゃ、夢から覚めたらあっち側でアンタレスにちょっかい出しておいた方がいいんだろうか。オッサンと姉御が大人のまま快癒してたし、ベルも村から出てオラリオ近くの開拓村に合流済なんだよな。

時期的にはこっちの大抗争があった年だし、そっから原作開始前までの、えーと、七年間。オラリオの外を巡って見るのもいいかもしれん。そういや自由都市のアイナさんとかもあるか。次の年に学区が帰港するタイミングでエイナさんがギルド入りするはずだし、折角なら家族丸ごと招待してサプライズもありじゃねーかな。なんならニイナのコンプレックスもその場で解消させてその場で学区突っ込もうぜ!

ん? あれ、よくよく考えたら持ち越しされるこっちのリリって十五歳で? あっちのアタシって十四歳じゃね? おや、おやおやおや、これはこれは。あっちにリリがいる以上、こっちのリリには偽名を名乗ってもらう事になるしなぁ……リリカル……マジカル……マジルカ? 一人称がマジは無理があるな、やはりアタシにとってネーミングセンスは投げ捨てるもの。後で本人に考えてもらう方が建設的な。

 

 

「なンつー事を考えてたら50階層に到着です」

51階層(カドモス)を荒らしますか?」

「んー、在庫はそれなりにあるが、肩慣らしの意味もあるし軽く挨拶しておくか」

『泉の番人に合掌っす』

『許しは請わん。恨めよ』

 

こうして特に理由のない暴力がカドモスを襲う! 強化種にすらしなかったんで瞬殺だったわ。泉水の回収も一応しておいた。

 

「穢れた精霊の位置がわからン以上は爆破移動も難しいからなァ。かといって次の安全階層(セーフティ)ポイントまで辿り着けるかって話もあるし」

「どうせならアリア様を連れて来られれば良かったのでしょうか?」

「あー、まァ、 全盛期の本体ならセンサーとしての働きも期待できたンだろうが……」

『初回特典と本物(ホノホン)が融合しちゃいやしたもんねぇ』

『あれってほぼ全盛期って言えちゃうんじゃないっすか?』

「よぐわがンね」

『ありゃー』

 

いや、ホント謎なんだわ。シミュレーターの初回特典で顕現したアリアの分身いるじゃん? 現物の黒竜討伐した際もドロップした……って言うと語弊があるな、えーと救出したと言うべきか。とりあえずそっちのアリアもいるんよ。

でもってダブルアリアが出会ったらね、何か通じあって手と手を繋いで、そのまま現物アリアの方に、こう、にゅるんって吸収されたんよね。

まぁ、すぐに分かれたんだが。多分だが、記憶の統合でもしたんだろうな。で、特典アリアはベルに、現物アリアはアイズにそれぞれべったりなんで今回はスルーしたわけだ。

おかげでこのままだとダンジョン内部を総当たりで調査しなきゃないわけだが。いやぁ、失敗、失敗。

 

 

「つーわけで心当たりとかないか?」

『あー、オレっち達は独自のルートで進んでっし、極彩色連中は避けてるからなぁ』

 

リドたち『異端児(ゼノス)』に望みを賭けるもダメ……ッ! 言われてみれば納得ではある。回復手段に乏しい『異端児(ゼノス)』とは相性が悪すぎるんよキモ虫他。

 

「そういうもンか。アステリオスなら何か知らねーかな」

『どうだろうなー。オレっち達は魔石の質が低くても糧になるのは確実だし。今だってアイツがどこまで潜ってるのかわかんねぇ』

 

次点というかある種こっちが本命なアステリオスも連絡手段がなくて不発。そして交流不足で更に不発。アイツ孤高(ボッチ)キメてそうだもんなぁ……まーしゃーない。

 

「了解だ。情報提供ありがとな。そういや、人造迷宮(クノッソス)経由して地上に出て滞在できる建物は作ったから、後で案内するわ」

『マジか、楽しみに待ってるぜ! それじゃオレっち達も見回り行くわ。じゃーな!』

「おー、したらな」

 

通信を終えて一息。今回の探索は遠征並の期間になるとヘスティアには伝えてあるんで、半月程度は潜ってても問題にはならない。

途中でベルたちが潜って来て合流する事もあるかもしれんが、まぁその時はその時で。特にやましい気持ちも……うん、ないな。

 

「お姉ちゃん、いっそ最下層から上ってみるのはどうでしょう?」

「おォ?」

 

ここでリリから意外な提案。しかし穢れた精霊に対する懸念であるダンジョン乗っ取りについて考えるなら、予防策としては効果的な方法なのではなかろうか。

穢れた精霊は空を見たい的な目標を掲げてるっぽいし、勢力としては基本的に上を目指すと見ていい。つまり、下から上っていって極彩色のモンスターが姿を見せた階層の付近に本体がいる可能性は高いわけだ。

すごいぞリリ。賢いぞリリ。実際にアタシより頭の回転は速いからな。

 

『ちなみにっすけど、ダンジョンの最下層って何階層なんすか?』

「え、知らンが」

「……リリも正解は知りません」

『管制室、聞こえるか!? すぐに援護しろ!』

『とりあえず爆破移動できる限りって感じでやんすね?』

 

そういう事になった。

 

 

 

それから果たして何階層落ちたのか、百を越えた辺りからは数えるのを止めていたが、ついにアタシたちはダンジョンの最下層らしき場所に到達したのであった!

 

「こンな感じにぼかしておけば大丈夫だろ」

「さすがに原作の階層が百を越えるとは思いませんが……」

『わかんないっすよ、オラリオに住む人々の欲望が尽きない限り続くとかあるかも知れないっす』

「案山子の不思議なダンジョンかな?」

『こっちのダンジョンもオリキャラ化してやすからねぇ』

『そんなものだ、所詮な……』

 

具体的な数字を避けたところでローラー作戦の始まりである。

パッと見が普通そうでも見えない部分でヤバい環境だったりするかもしれんし、エイジャの魔力壁は常に展開してもらう。そしてリリのもうあいつ一人でいいんじゃないかなって言われそうな【ステイタス】の暴力で移動しながら痕跡も含めて極彩色モンスターや穢れた精霊の本体を探す。アタシ? 単なる荷物入れ(バックパック)扱いだ。

原作でダンジョン最下層に何があるのかって質問に契約だの決着だのって意味深な回答されてた気がしたが、今のアタシらが知ったこっちゃねー! 先に穢れた精霊だオラァ! ダンジョンが何か哭いた気がしたが気のせい気のせい。

 

 

 

「……それで、どうなったの?」

「形容しがたい状態になっていた穢れた精霊を発見して、お姉ちゃんが例のアレをしました」

「そうして私が生まれたってわけね」

 

数日後の教会。リビングでおやつを摘まみながらこっそり先走って(おこな)った遠征の内容を報告していたアタシたちには、また一人(?)仲間が増えていた。

 

言わずもがな、元・穢れた精霊ご本人(?)である。

穢れた精霊の本体は、劇場版強化形態(フォーム)を維持したリリと、そんなリリの一撃を何度か防げる自然発生型バグ『異端児(ゼノス)』であるエイジャを除けば、誰であっても脅威でしかない能力を持っていた。間違いなく正攻法で挑んだら苦戦必至な相手だったと言えよう。

しかし通信用魔道具を通して地上の景色を見せたら「……きれいだわ、そら。どうし……」とか死亡フラグを立てるどころか遺言をぶちまけ始めちゃったんで、事前に詠唱を終えて待機状態にしておいた【終憶(ビス・モーゲン)】で魂引っこ抜いて即死させといたよね。

したら周りにいた極彩色モンスターも連動して灰になったんで、今後の深層探索も楽になったと見ていい。つまり作戦は成功だ。

いやまぁ深層深部のモンスターがどれくらい厄介か心配な点もあるんだが、でも極彩色にやられる程度なんだしって考えると……ねぇ?

 

ちな、肉体を与えたのは地上に戻って来た後、青空の下で。おかげさまで受肉した直後は泣きじゃくって会話にならんかったわ。

そんで肉体は人間のものを用意しておいた。元は神に次ぐとされる上位精霊の身でありながら、現在は無力な人間よ。なお見た目は安定の幼女。

ついでで実験がてら引っこ抜いた剥き出しの魂に【異界信仰(ヴェルト・グラオブ)】で干渉できるか試してたんだが、無事に失敗したんよね。例の如く記憶の大半を喪失してしまっていた。万能な能力(ちから)なんてこの世にはなかったよ。

アリアって名前にもどこか懐かしいような……くらいの反応になってるし、罪の意識に苛まされながら細々と暮らしてもらう計画は水の泡と化して弾けて消えたわけだな。いやー残念無念。

 

「とりあえず邪魔なキモ虫は消えたっぽいし、残ってンのは最下層まで遠足するくれェだァな」

「念のため確認してからですがね。それと気にするべきか悩ましいですが、ギルドの強制任務(ミッション)対策に到達階層は偽装します」

 

何度も繰り返すが現状はクリア後のロスタイムだし、ダンジョン制覇したらダンジョンの機能まで失われないかって懸念があるし、実力的にもギルドの動員できる戦力は潰せるし、今更ギルドへの配慮なんて必要かって話よな。個人的にはここまで来たら不要だと考えてるが、まぁ建前は大切だよねって事で。

 

「最下層かぁ。僕も行ってみたいけど、環境の問題があるんだっけ」

「そうですね。エイジャちゃんの協力がなければ厳しい部分があるかと」

「爆破の手応え的に、ダンジョンに深く潜って行くに連れて床ないし天井も強度が上がってたからな。エイジャの魔力壁がねェと落下移動も難しいぞ」

「へー。なら正攻法で潜れるようにもっと鍛えなきゃ駄目かな。環境対策に『精霊の護布』とかも用意した方がいいよね?」

「まーな。それでもベルの場合は上昇補正(バフ)の魔法を使えばある程度の保護が見込めそうだが、過信はできねェし消耗は避けるべきだな」

「だよね」

 

ベルは完全に立ち直って前向き上昇志向だねぇ。シルたちに慰められた結果なのかを聞きたい気持ちもあるが、地雷だったら怖いんで話題を振るのは避けておこう。リリも同じ考えっぽいし。

 

とりま、ダンジョン最下層――パイセンとの本格的な接触は次回に持ち越し。本人たちは大丈夫すぐ行けるとは言ってるが、リリとエイジャにはゆっくりじっくり休んで疲れを取ってもらわんとな。久々にマッサージといこうじゃないか。ぐへへ。

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