そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱) 作:夜月工房
「そんなわけでお願いします、ラジルカさん」
「オーケー、まずは飛ばした詳細から聞かせてもらおうか」
ロスタイムすら終わったはずの夢が当たり前のように再開された件。ただし【
しかも教会地下にシルが乗り込んで来てるし。いやまぁフレイヤに通行証を渡してるから当然ではあるんだが、どっちかってーとご都合展開な気もするんだ。
「ここがあの女のハウスニャ……」
「おー、広いのに暖かくって実に快適ニャ。あ、お菓子見っけニャ」
「こら、あんまりキョロキョロすんなアホ猫コンビ」
「「誰がアホ猫ニャ!?」」
「二人とも自覚はあるようですね」
ほらね。
つーか
「えーとですね。バレンタインデーが近いので珍しいチョコレートを紹介して頂けないかなー、と」
「その為だけにこンな人数で来たのかよテメーらは」
現在は朝食後の自由時間。もう少ししたらダンジョンに潜る予定ではあったんだがなぁ。
せっかくクリア後のオマケストーリーも終わらせた状態なんだし、ここは一つオカンことダンジョンの意思に会わせようかと思ってたんよね。どうせだし『
「それだけではありません。関連して【ヘスティア・ファミリア】には可能な限り多くの
「あ、はい」
「酷いマッチポンプを見た」
ギルドを通さないと貢献度的なもんが記録されなくて無駄に
つーかリューがベルを名前呼びしたのは……シルの誘いに乗っかって段階飛ばしに食った感じかしらん。むっつりエロフだってのは例の事件からわかってた事だしな。
まーこっちのベルは憧憬が一途じゃないんで、肉食系だけど誠実なハーレム王になればいいと思うよ。幸せの形なんて人それぞれだし、感情以外の迷惑を振り撒かなきゃ別に問題ないっしょ。
ところでベルがLv.8になってたのって、童貞捨てたのが偉業扱いになったとかあるんだろうか。
「「う゛ニ゛ャー!?」」
「アーニャ!? クロエ!?」
「あー、大方アタシの寝室とか探そうとして捕獲されたンだろ。Lv.4程度が好き勝手できる
「どこの要塞ですか……」
なんて考えてたら、微妙に遠くから響いて来た猫の悲鳴。恐らくは
とはいえ、だ。こいつらが初来訪なのは反応から判明してたんだし、それを知ってて
「酷い目に遭ったニャ……」
「ミャーはおミャーに賠償を請求するニャ!」
「粋がってンじゃねーよ不法侵入者共が。ルノアを見ろ、大人しく漫画を読みながら冷やしたポッキー摘まンで満喫してやがる」
つーか順応するの早いんよ。ちな、読んでる漫画は某デンプシーなロールとかで有名な
「もうバレンタインデーのチョコはこれでいい気がするんだよねー」
「何言ってるニャ! 三倍返しのために簡単だけど手間をかけた風に見えるチョコを作るべきニャ!」
「そんなんだからルノアは女捨ててるとか言われるニャ!」
「ふんっ!」
「「ミギャー!」」
フラグ回収が予想より早かった件。いやまぁ繰り出したのは廬山で昇龍な覇に近い感じだったが……考えるまでもなくこっちのがヤバくね? 周囲に被害出してない辺りも含めて。まぁギャグ補正だろうし気にしなくてもいいか。
「……あっちはさて置くとして、こっちはベルたちが
「えーと、できれば、そのぉ……作ってるところを見せて頂けないかなぁ、と」
「……まァ、別にいいが」
「本当ですか!? ありがとうございます!」
漫才を横目に、シルへ確認を取ったらこんな答えが返って来た。
シルの料理の腕は人並……とまで言えるかは微妙なところだが、少なくとも原作初期時点のそれよりは格段に進歩している。だが一方で、そのマシな腕が適用されるのは作り慣れた品に限るのもまた事実。
初見のレシピでは何故か絵の具やら香水やらで殺しに来るからな。途中途中で味見しろって言ってんのに守らないのどうして……。
「練習だろうとシルが作る場合は『豊穣の女主人』の厨房を借りて、換気をしっかりしろよ。そンで味見役は【
「はい? 特に問題はないはずですけど……」
「あー、ならいいンだ」
この場合、
シルお手製のチョコとか、フレイヤ派の連中なら喜んで食うに違いない。涙の種類は考えないでおくのが優しさってやつだぁな。
「そンじゃ早速だが始めるか。ベルにアタシの作った完成品を見られたらテメーらが気の毒だ」
「むっ、ベルさんなら形が悪くても喜んでくれるに決まってます。大事なのは気持ちですから」
「同感です。独り身の【
「そしてこんな事もあろうかと予め冷やしておいた完成品がこちらです」
「準備いいじゃん。予想してたわけ?」
「いンや、店に材料を買いに来た連中に配布すンだよ。ぶっちゃけ自分で食いてェ女も多いだろうしな」
もしくは上手く作れなかった連中の最終手段として。
「め、めっちゃ輝いて見えるニャ!」
「どれどれ、このアーニャ様がチョコの味とやらを見てやるニャ……って、うんまー!?」
「あ、アーニャの……」
「服が……」
「「弾け飛んだ!?」」
「えっ、怖……」
いや
幸い、内側にエプロンドレスみたいなの着込んでてセーフっちゃセーフだが……いや、弾け飛んだ制服どうすんだよ。ミアさんの拳骨確定じゃん。つーかそもそもなんで重ね着してんだコイツ。
「話は聞かせてもらったよ」
「きた!母きた!」
「メイン母来た!」
「これで勝つるニャ!」
「どうやって来たンだよ」
「決まってるだろ……最初から来てたのさ」
「アッ、ハイ」
さてはこれ
「なんだい、早速アーニャを
「心を読ンだと思わせて内容を大袈裟に改変するのは遠慮して欲しかったと言わせてもらうわ」
「ニャァ……」
「アーニャ、ファイト!」
「大丈夫です。貴女は
帰りたい(現在地:自宅)。鑑定結果は全員異常なしな辺り、色々と終わってんな。
特に本性を隠してないエロフ。ベルに言いつけんぞ。いや、案外と本人の前で晒け出した後だから開き直ってる可能性も……えぇい厄介な。下手に確認したら赤裸々に語り始めそうで怖いから迂闊に尋ねられん。
「モテると男も女も大変だねぇ」
すげー他人事な感じのルノアだが、前回は途中参加のほぼ良心だっただけあって今回も毒にも薬にもならない安心感があるな。さすルノ……だと擦るのって誤変換されるから変えるか。さすがルノア、略してさすノア。
「あー、まァ嫌われるよりはマシだと開き直るか悩ンでるわ」
「ふーん。まぁ、あのアホ猫共は悪い子じゃないから」
「さらっと
と、見せかけて人差し指と中指の間から親指を出してんな。そんなもんどこで覚え……どう考えてもアタシの記憶からです本当にありがとうございました。
つーかリリ的には同性とか複数とかアリなの? 泡沫の夢だから何事も経験? そっかぁ……。
「ごめーんクロエ、バレた」
「似非ショタのお尻は何時如何なる時もミャーを優しく受け止めてくれるから問題ないニャ」
「問題しかねェよ」
こっちはノリが軽いからまぁ流せる。問題は……
「……(チラッ、プイ)」
あらかわいい。
でも暗黒期からほぼ変わらず拗らせたままで、最早ガチ勢に昇華されちゃってる気配が濃厚というか特濃なんだよなぁ。どうしてこうなった。兄猫が泣いてるぞ。
アタシが姉御らと協力しながら端正込めて育て上げた
あるいは原作同様に白髪頭って呼んで、姉御にゴスペられたトラウマが仕事してんのかも知れんが。Lv.1の魔法でLv.6がダメージ受けたわけだし、アタシでも苦手意識を持つだろうな。
まーそもそも猫人男性の有名実力者が実兄くらいしかいないのも原因の一つか。ネームドに範囲を拡大してもジュラ・ハルマーくらいだし。女子ならロキ派の【
つーかダンジョンの約束やら契約やらは有耶無耶なままだが、黒竜討伐はギルドから全国に向けてそれはもう大々的に宣伝されてるんだよな。兄猫が妹猫を遠ざける理由なくね? ネコと和解せよ。
あと結局まだ調べてなかったけど、獣人って細かい種族差を無視して繁殖できるんだっけ? 少なくとも
「まー、なンだ。直営店くらいでしか取り扱ってなさそうなチョコのレシピがこれな。でもって単なるチョコレートじゃなくチョコケーキとかのレシピがこっち。そンで計量や温度測定の器具がこれ。ついでに
「随分と気前がいいじゃないか。嫁入り道具かい?」
「いい加減そっから離れてくれ。そして若返り薬だ、飲め」
「後でね。今は帰ってレシピを見ながら試作させてもらうよ……ルノアとクロエは荷物運びを手伝いな」
「「はーい」ニャ」
話題転換ってほどでもないが、ミアさんに色々と必要なもんを渡しておく。数的に余るのでツッコミ役のルノアと賑やかしのクロエを引き取ってもらうためでもあったり。まーここで味見せんでもミアさんならレシピ通りに作る以外の――個人の好みに合わせた味を提供してくれるだろうし。
「さて、改めてこっち側での試作といこうか」
「はい、よろしくお願いしますね、先生!」
「よろしくお願いします」
「……ニャ」
約一名キャラ崩壊して服装も違うのが混ざってるけどヨシ!
「じゃーまずは下から
「「「……はい?」」」
そんなわけでやって来ました、ダンジョン産の素材を栽培している区画です。土に砕いた魔石を混ぜたり
「これは……凄まじいですね」
「へー、実物はこんな風に生えてるんですね」
「まー採集できる量は限られてるから必要な分だけ確保したらとっとと上がるぞ。わかってるとは思うが口外してくれるなよ」
そうして確保したらキッチンへ。
本来のカカオ豆と同様に手間をかけてチョコレートが作られるんだが、その辺は専用の
「おー、それじゃ早速……ニギャー!?」
「アーニャ!?」
「まァ、このままだとほぼカカオだからな。食えたもンじゃねェわ」
「先に言うべきでしょう」
「人は主に失敗から学ぶ生物なンだよ」
口の中から漏れたらしいチョコレートでダイイングメッセージを残す余裕があるなら平気だろう……あ、
「で、このほぼカカオに混ぜる砂糖や
「今度は味見しても大丈夫ですか?」
「分量的には甘さ控えめだぞ。ベル向けだしな」
「シル、危険です。ここは私が」
「ベル向けって聞いて張り切ってねェかコイツ」
「あはは……でもそれがリューの可愛い所ですから」
そうして味見……ある意味では毒味を済ませたリューは、何度か頷くとシルにも試食させてた。出て来た感想が大人の味だったのは、果たして誰向けのアピールだったのだろうか。
なお、復活して来たアーニャは苦いニャーと耳を伏せて尻尾を丸めていた。お子様舌なご様子。
「味付けはほぼ完成したベル向けチョコだが、ここから先がバレンタインデー向けの手作りチョコってやつだな。とりあえず型に温まって溶けたチョコレートを突っ込んで、
「ほへー、こんなにあるのニャ?」
「ラジルカさん、ベルさんの好みってわかります?」
「シル、そこは私たちの好みを見せるべきです。ベルならばきっと「シルさんらしくて可愛らしいですね」と言ってくれるはずです」
「……良い……」
リューの言葉でシルが
「こうして見ると、手作りチョコは失敗する方が難しいニャ。これならシルでも成功間違いなしなのニャ」
「だが本番じゃこの素材が冷えて固まったやつを湯煎で溶かして使うからな。温度を間違えると風味が落ちるぞ」
「そこはおミャーが『
えっ、アホ猫が賢いぞ。コイツ偽者じゃね?
「そこは交渉次第だな。豆突っ込む方が貸し出しで一日五万ヴァリス、冷やすのは新造するから売却価格が二十万ヴァリスってところだな」
「ケチケチするんじゃねーニャ。ミャーたちの仲だから遠慮は不要なのニャ」
この厚かましさは偽者じゃ出せねぇな。単純に食い意地で賢さに
こんな一幕もあったが、試作は無事に済んだ。その内にベルたちもダンジョンから戻って来た。大量の
依頼側の人数が減った事から持ち運べるか微妙だってんで、達成報告のついでとばかりにベルを貸し出した。あるいは数日後を待たずこのタイミングで甘さ控えめナッツインチョコをプレゼントする可能性もあるな。ハッピーバレンタイン、ってやつだ。
「愛しいリリ、ハッピーバレンタイン」
「わぁ、ありがとうございます、お姉ちゃん! それと、これはリリからです。ハッピーバレンタイン!」
バレンタインデー当日。個々に別れて作ったチョコレートをリリと交換し合う。
商会を立ち上げてる以上、友チョコの概念も広めてある。まぁお互いに本命よりも本命な作りになってるのはご愛敬ってやつだ。
実は精霊たちが占領して森になった元・畑だった辺りに品種改良された
「お姉ちゃんは他に誰へあげるんですか?」
「身内以外だとアイズと『豊穣の女主人』と取引のある神の内で性格が面倒なやつだな。別名をイシュタルって言うんだが」
「そこはオブラートに包んであげるべきかと。レフィーヤ様やアーニャ様個人には差し上げないので?」
「レフィーヤ大明神にはちくわっぽいサクサクチョコバーをグロス単位で置いてくるし、アホ猫は舌までアホだからわざわざ精霊産を使う気にならンのよ……また服が弾け飛んでも困るし」
「あぁ、例の……あれは結局どんな原理だったんでしょうか」
「わからん。予想する気にもならん。アタシは雰囲気で流してる」
いやホント、アレは何だったんだろうな。
なおオラリオメリー入りのボンボンをバラ撒いてオラリオに混沌をもたらす案もあった模様。悩んでる内に時間が足りなくて半端に終わったのは内緒。