そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱) 作:夜月工房
結局、魔石を回収されて体を灰に変えたインファント・ドラゴンはドロップアイテムを残さなかった。魔石は巨躯を支えるにふさわしい立派なものだが、思ったほどでもない。これなら戦闘に支障が出ることはないだろう。それでもアイテムボックス的なサムシングと魔石およびドロップアイテムの自動回収機能は相変わらず欲しいが。
マジックポーションとポーションを飲んでから軽く休憩を挟み、探索を――冒険を再開する。ここから先はLv.2相当、単純な身体能力だけで見ても格上の相手しか出なくなる。その上でヘルハウンドの炎やミノタウロスの咆哮といった、魔法のような攻撃手段を持つ者も珍しくなくなる。しかもそれが数で攻めてくる。
質も量も負けている戦にどう勝つか。そんなもん、知恵と運に決まってる。具体的にはAIがアホだから仕方なくパラメーターをアホみたいに高くして強敵扱いにしたゲームの数々を思い出せ。
現状もぶっちゃけそれだ。要はモンスターの習性を利用して対応しながら
なんて気合を入れてたんですがね。リヴィラから戻る冒険者が複数組いたみたいで徘徊するモンスターめっちゃ少なかったし、縦穴もあっさり見付かったので割とあっさり15階層到達。二回落ちたし多分15階層。道中の壁から生まれてるモンスターは予兆の最中にさっさと通り過ぎながら出口付近でハバネロ煙玉使ってきたし諦めてくれたっぽい。
しかしなんだ、悪◯城みたいな加速や壁すり抜けバグ欲しい。斜めキックとか二段ジャンプとかって練習してできるようになるかな……いや、無理だろ。つーかできるようになっても困る類だろあんなん。でもスラキャンなら……うーん、保留。後だ後。
まぁ想定外ではあるが好都合だ。正気に戻ったのでミノタウロス集団爆殺の準備。早速
次に取り出したるは……これ、浅い階層の
そんじゃ集める予定の部屋の中心に火炎石製の爆弾まとめて九個仕掛けて、周囲に餌を全部撒いておく。ついでに餌が減ると展開されて周囲に飛び散る粘着罠も。薬剤は難燃性だから吹き飛ばされずじっくり焼かれてくれ。それと中心から導火線代わりのマグネシウムリボンをセットしておく。あとは通路入ってすぐの所には部屋の内側へ吹き飛ばすように突風を発生させるふきとばし罠を。取っ手を持って中心近くまで引っ張ると起動するので、逃げ帰ってきたらこれ持ってラストスパートする必要がある。
ミノタウロス以外も集まるとは思うけど、強さ的には似たようなもんだから纏めて倒す予定。後は進路上に冒険者がいないことを祈りつつ、モンスター集める血肉の改良版をぶら下げて、よーいスタート。
はい、集まりました。人間に向ける殺意よりも食欲を優先させる血肉改すごくない? 途中冒険者パーティーいたけど気にせず走り抜けた。多分進路を塞いで轢かれでもしない限りは絡まれもしないはず。
途中、すれ違い様にモンスターの攻撃を受けることもあったが適宜ポーションで回復したので事なきを得た。ライガーファングには追い付かれそうだったけど、ヘルハウンドの炎に誤射されてそっちに向かおうとしたところをミノタウロスに撥ね飛ばされてた。ウケる。
一筆書にダンジョンの一部をぐるりと回り、最後に吹き飛ばし罠を起動させる取っ手持って中央までダッシュ。引っ張り返される抵抗を感じると同時に背後で悲鳴のような鳴き声が聞こえたので無事に起動したらしい。そのまま取っ手を手放して、今度は吊るしてる血肉改の紐を解いて爆弾の埋まってる辺りに落としながら駆け抜けて、念のためにエリクサーモドキを口に含んでから最後に地面後方の目印へ向かってスリンガー爆発弾――着弾点で極小規模な爆発を起こす――をシュート!
うん、成功。あっという間に導火線代わりのマグネシウムリボンが火花を放ちながら部屋の中心に向かい、強烈な閃光と、轟音。そして唐突なスローモーションになった視界。ゆっくり半球状に広がって迫ってくる、これは……熱風かな? 爆発の影響が視認できる。これ威力計算失敗してるわ、低く見積もりすぎたな。つまり命の危機ってやつだから急いで逃げ、間に合わないから防御体勢、って言っても顔隠して背を向けながら伏せるくらいなんだけど。
うわー、ふわっとした。高~い、熱~い。アタシ今、空飛んでる~ぐえっ、天井か何かにぶつかった。壁と押し寄せる熱い空気とに挟まれてなんていうか痛熱い。目も口も閉じて呼吸も止めたままでいられるのが不幸中の幸いだな。生きてたら……今の時点でエリクサーモドキ飲み込むか。
お、勢いが弱まった。つまり落下が始まったんだけど、既にエリクサーモドキは飲んだあと。でもそのおかげで動けるのでもう一本グイっと。口の中に含んだら口を塞ぐように袖を当てて、肌で感じる風から向きを確認、頭が下にならないよう調整して……へぶぅ!?
「……凄かったね」
「芸術は爆発だーって叫んでた酔っ払いがいたけどそんな感じだったな」
「覚えてる。あの神様ね」
「通路まで届くとか何使ってんだろあの爆弾」
「床が抜けて縦穴になってるぞ」
「天井も抜けてんな。その割に横は無事だが」
「おい、いたぞー」
「ボロボロじゃねぇか」
「神様にいい土産話ができたし、助けておきましょ」
「だな。こんだけ馬鹿やれるんだ、生き延びたらなら伸びるぞコイツは」
「そんで将来大物になったときに自慢するんだろ? 命の恩人だって」
「「「そりゃいい!」」」
辛うじて聞こえてるんだよなぁ。つーか落下の衝撃で飲み込むか吐き出すかは賭けだったけど、吐き出すコースだったな。誤嚥するよりはマシだし、布のおかげで染み込んだ薬液を多少リサイクルできる。今度からは奥歯にエリクサーモドキを少量封じたカプセル仕込んでおこう……よし、体起こせるな。
「うわぁ!? 起きた!?」
「マジかよ、すげぇな……無事か?」
「うっす、足は……あるな」
立ち上がって服の汚れを叩き落としながら、先輩であろう冒険者に返事をする。全身痛いが骨が突き出たりはしてないからセーフ。ハイポーションで誤魔化しておくか。
「お前、この後どうすんだ?」
「帰りますわ。
「おう、ならついてこいよ!」
「そうそう、なんでこんな事になったのか聞かせてよ!」
「あー、ありがてェ話ですけど、いいンです?」
見覚えのないシンボル。しかも数種類合同。男女まで混合。割と珍しいんじゃなかろうか。
「いいのよ、私達『リヴィラの街』から地上に素材売りに行くんだもの」
「荷物持ち手伝ってくれるなら護衛も請け負うぜ!」
「あざッす! お世話になりまァす!」
「いきなり元気良くなったな」
「取って食いやしねぇから安心しなよ。これからも今回みたいな馬鹿やって楽しませてくれそうだし」
訂正、微妙に悪人だわこいつら。アタシは苦笑いしながら向こうメンバーと自己紹介を交わし始めた。
実はインファント・ドラゴンの時点で【ランクアップ】に必要な偉業は達成済だったりする。が、今回の同行者が見たインパクトの凄すぎる大爆発を酒場で盛大に広めたので先んじて人々の間で噂になり、ソーマも引きこもりでそういった話にならなかったので事実は広まらず、結果的に爆弾魔的な風評に。今の所、噂の爆弾魔と変なソロパルゥムとが同一人物だとはバレてない。