そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱)   作:夜月工房

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Ex7.平和に終わりました。お返し下さい。

バレンタインデーがあるならホワイトデーだってあるに決まってる。

それは分かるんだ。商人としても商機(イベント)は見逃せないし、流行と同じで無いなら作り出していくべきだしな。

 

「依頼です、【芸術家(ファイアワーカー)】……私に性転換薬を売って頂きたい」

「その前に鎮静剤を打つべきじゃねェかと思うンだが、その辺どうお考えだよ正義の眷族(アストレア)

 

でもだからってホワイトデーのお返しするために性転換薬を飲んで男になる必要はねぇだろうとアタシなんかは愚考する次第。せめて男装で済ませろよ。

何が怖いって、真顔なんだわこのポンコツ妖精(エルフ)は。心の底からそれをする必要があると信じて疑ってねぇの。どうしてこうなった。

 

「ラジルカさん、リューは真剣なんです!」

「真剣なら何してもいいわけじゃねェのよシルさンや。つーかベルが泣くぞ」

「はい、泣かせるつもりです♪」

「それで上手い事言ったつもりか? つーかドヤ顔すンな。紐神(ヘッス)に告げ口すンぞテメー」

「大丈夫です。シルにもベルにも性転換薬を飲んでもらいますので何も問題はありません」

「問題しかねぇよハジケエロフ」

「ハジケエロフ!?」

 

シルと来てベルと来たらヴィントと続いてほしみがあるスパロボ民だけど、ちょうど【疾風】だからニアピンなんだよな。シュトゥルムだけど。日本人の感性だと動詞っぽい響きに聞こえるよな。ちょっとそこでシュトゥルもうぜ的な。

あとドイツ語的には発音間違ってるけど、ズィルバーヴィントよりはシルベルヴィントのが女性らしい響きに聞こえる気がする。元ネタに関して言えば女性は女性でも女傑の類だが。

 

「大体、本人(ベル)に許可は取ってンのか?」

「何を言っているのです……サプライズなのですから取れるはずがないでしょう」

「自慢気に言うなや年下好き(ショタコン)が」

 

許可は取らなくても(おとこ)(あかし)をベルから取る気満々な癖に、何を考えてコイツはこんな堂々としてんだろうか。

つーかシルはコレを二号さんにして平気なの……あ、無言で満面の笑みと共に親指立て(サムズアップし)てるわ。うん、手遅れだ。強く生きろベル。多分まだまだ増えるから。

具体的にはリュー繋がりで【象神の詩(ヴィヤーサ)】とか、そこから英雄譚繋がりで【大切断(アマゾン)】とか。まぁ正妻(シル)の判定次第なんだろうが。

その辺の縁が足らない部分がある二名――アルテミスは精霊だし、ヘスティアは神で主神(ははおや)気味だし、二の足を踏んでる感じはあるよなぁ。これに関してはベルから多少強引でも押しきる方向に誘導してやる必要があるかもしれんね。

どうせどっちも処女神だ、ベルのクラネルが失礼しても膜がアホみてぇに伸びて行為にはしっかり及んだし胎内にファイアボルトしたけど(まく)が健在だから未だに処女判定とかいう奇跡(ミラクル)起こすなり権能が機能するなりしてくれんべ。知らんけど。

 

「私は別に年下が好きなのではない。好きになった相手が自分よりも年下だっただけだ!」

「はいはいそーですね。ちゃんとご母堂(アストレア)様なら祝福してくれるだろうさ。行き遅れ共(かぞく)は知らんが。それはそれとして、前の馬鹿騒ぎの時にも言ったが体質ってもンがあっから本人の意思は大前提なんだよ。何せ最悪死ぬまであるンだからな」

「……何だと?」

「そうなんですか?」

 

おや、さすがに命が関わるとなれば心配か。そのまま諦めてくれると助かるから少し脅して……嘘は通じないから本当の事だけしか言えないが。

 

「そーなの。特に特効薬の類は人に害をなすモノを殺す用の毒だと思え。それ以外の薬も適量を超えたらそのまま人にまで通じる毒になる。普段から胃薬や頭痛薬の世話になってる連中は大体危険だな。ギルド長なンかはそろそろ意図しないまま自害するかもな……案外あの体型っつーか体重はそのためだったりすンのかね?」

「ほへー」

「まーそういうわけだから最低でもアタシに処方させたかったら本人の許可をもらって来るこった。これ同意書な」

「チッ、使えない……仕方ありません。シル、ベルを捜しに行きましょう」

「あっ、ちょっとリュー! えぇと、それじゃ失礼しますね」

 

うーむ、跡を濁して立ってったな。そんなんだから羽虫扱いされるんやぞ妖精め。戦車猫(シスコン)以外が言ってるのは聞いた事ねぇが。

別にこの世界だと妖精って書いてエルフ読みだから小さくもなけりゃ羽根もないし、割合としては後衛魔導士が多いから敏捷はむしろ低い傾向あって飛び回るわけでもないのに、どっから出てきた呼び名なんだろな。あのキレ芸マイスターは悪口に特化してるだけで語彙そのものは貧相だし、一種の方言(スラング)か? まぁどうでもいいや。

 

「……よし、今の内にクッキーとマシュマロでもつくるか。何故か知らンが未だにダンジョンでウィーネ達がチョコをバラ撒いてるらしいし、たまにはリドやグロスの出番も必要だろ」

 

そういやグロスで思い出したが、エイジャやラピスは全く動かなかったなバレンタイン。食う方には全力だったが。

今回も同じだろうからお菓子は多目に用意しておくか……いや、ついでにエイジャからもチョコを配ってもらうのもありか? 何だかんだアタシと主従契約する前から『異端児(ゼノス)』への同族意識がないからなぁ、どっちも。帰属意識とは別に友情を結んでもらう分には喜ばしいと……エイジャからアイズにチョコを贈るのは悪ふざけの域になっちまうかね? 仲良くしなさいってアリアから叱られるアイズが見たい。でもアリア取り戻してるからモンスターへの憎悪も薄まってたり……パパさん(アルバート)泣いちゃうからね、もうちょっとだけ続くんじゃしてもらう方がいいよな、うん。

 

「……作りすぎたな」

 

考えながら作業してたら、結構な量ができあがってしまった。材料も完成品も倉庫から出して倉庫に突っ込んでるんで実感は湧きにくいが、倉庫の内容物リストにあるクッキーとマシュマロは個数が千個を超えた時点でスタックの限界に引っ掛かり、二つ目が表示されていた。合計はそれぞれ二千三百ちょっと。足りないよりはマシだな。

 

――ネキ、ネキ。今、貴女の脳に直接語りかけているっす

――あー、うん。食って良いぞ。ラピスもな。食えそうならボーグとピクニンにもくれてやれ

――了解っす

――あなたと組んでよかった

 

倉庫に次々と突っ込まれる菓子類を前に目を椎茸にして涎を垂らしていたであろうに、こちらが一区切りするまで我慢していた相棒(エイジャ)の訴えを却下する理由はなかった。

 

――うめーっす、めっちゃうめーっすよ、ネキ!

――そいつァ何より。これから別の味も作るから反応遅れるぞー

――楽しみに待ってるっす!

 

そんなわけでチョコやイチゴ、抹茶やナッツ類、各種香草(ハーブ)なんかを加えたクッキーとマシュマロが追加で仕上がった。モンスターは雑食で毒になる食べ物とかは条件緩いし、チョコもハーブも関係なく食わせて大丈夫。

まーヘスティア派へのお裾分けもあるからベル向けの甘さ控えめな種類も用意しておいた。甘いのが欲しい場合は飲み物で調整するタイプの。

あと罠として作ったはずの鶏モモ肉醤油煮から取り出した煮凝りを使った生マシュマロが割と良い感じなんだが。いうて同じ味なら普通に煮凝り単体で白米に乗せて食べたいんだけどね。煎り卵と合わせて親子になり損なった丼にして掻き込みたい。

 

とりま、ベルが帰って来たら甘い匂いで悶絶しそうだし、換気扇は全開にしておこう……精霊達が寄って来そうだから甘い方のお供えにも向かうか。ついでに野菜や果物も収穫して来よう。チップスにしたりドライフルーツにしたりするんや。

 

 

 

「ねぇ、ジル姉……僕が女の子になったらどうする?」

「まずは姉御(アスピナ)に指示を仰ぐ。全てはそれからだ」

 

後日、めっちゃどんよりと元気のないベルが悩み相談な感じで尋ねてきた。同意書は入手してないから、あるいは手元にあって署名(サイン)するか悩んでるんだろうか。

 

「そっか……そうだよね。そっちもあるんだ……」

 

なんかベルの周りだけ重力が増してる気がするんだが。獅子咆哮弾とか使えそう。

 

「まー、なンだ。結局どんな選択をするのも自分の自由だし責任も自分のもンだからな。流されるにしても抗うにしても良く考えるこった」

「うん……」

「それにな、こういう言い方は良くねェとは思うンだが……」

「?」

「お前が女になったところで見た目はほぼ姉御(アスピナ)だぞ。中身が女傑(レディ)から令嬢(ガール)に変わるくらいで」

「……orz」

 

リューもシルもその辺を理解してるんだろうか。ベルの顔付きは中性を通り越して女顔なんよね。髪型と服装を変えるだけで女性を名乗れるレベル。

この辺は地味に祖父と二人暮らししてたところに生き別れた妹と小人族の姉妹が転がり込んで来たのもあるっぽいんだよなぁ。アタシとリリも造形はほぼ一緒だから、箱入り息子だったベルは兄弟姉妹の顔は似るものって認識しちゃったらしくて、妹の存在を意識してる内に近付いた可能性がなきにしもあらずって感じ。スゴいね、人体。

でもまぁ二人して兄の方しか意識して見てないなら思い至らんのかもな。リューの場合は最終決戦のトラウマから無意識に過去の記憶と重ねるのを避けてる可能性も高いし。シルもシルで魂優先してて外見は基準を突破してる美形ならそれほど重要視しない可能性は十分ある。

どうせなら性転換薬に髪を伸ばす機能でも付与するか。やる事は飲む育毛剤を混ぜるだけなんだが。なお、頭髪の未来的な意味で寿命の前借りになる模様。強く生きろよベル。そんで可能なら戻る前にアタシらにも遊ばせろ。

 

「まァ、微妙に違うがホワイトデー用のプレゼントやるから元気出せよ」

「うん、ありがとうジル姉」

 

これは……駄目っぽいですね。いうてベル個人でも資産は遊んで暮らせるだけあるはずだし、普通なら一度きりの人生なんだしハーレムの主と見せかけて複数女性の共有財産として甘やかされるのも一興でねーかな。知らんけど。

一般的な冒険者の出費額が堂々の第一位な武器の製作やメンテを【異界信仰(むりょう)】で済ませてるから、深層往復だけで文字通りの億万長者なんよね、ヘスティア派。経済が滞って壊死しそうだからガンガン使うように言ってるし、都市外に流出させるようにはしてるんだが……まぁ焼け石に水ってやつよね。最後の手段カジノは幸運で逆に資産を膨らまして帰って来ちゃうというか既に出禁だし。うちの経営してるカジノでガチャに注ぎ込んだところでアタシの懐に入って来るだけで意味ねぇし。

収入面だけで考えても爆破移動のおかげで深層は深層でも基本は49階層~58階層だったし、アタシの影響で敵の湧きは異常、そこにベル達の幸運でドロップアイテム祭、【異界倉庫(ドラ☆マゲ)】のおかげで魔石やドロップアイテムの持ち帰りも身軽なままで、その分だけ移動も速くダンジョンアタックの間隔も短い。今更だけど反則(チート)だな。

 

 

「つーわけでアタシら一同からバレンタインデーとホワイトデーの一挙両得プランだ。受け取れ」

『お、おぅ。唐突だな。いや貰うけどよ。サンキューなネキっち』

『ネキ、ありがとう! こっちは、わたしたちが作ったチョコレート。ハッピーバレンタイン!』

「はいはい、ハッピーバレンタイン。日持ちはするが湿気には弱ェから、食う分取ったら封を忘れンなよ。湿気ったのが好きってやつら用にはソフトクッキーがあるし」

 

例の如く20階層の食料庫(パントリー)である。集まっているモンスターがついに模擬戦どころか軍事演習を始めて強化種とは別方向の強化に踏み切ってるのを横目に、連絡した結果やって来たリドとウィーネへ菓子を預ける。

サンタの持つような袋に詰めてあるので割と重いが、ウィーネもしっかり強化種になってるので持ち運びの負担は少なそうだ。何故かしっかりバレンタイン用なのかパティシエイメージにスケベ要素を混ぜた感じの衣装を着用している不思議には触れないでおこう。犯人はフェルズか、それともハーピィ(フィア)か。まぁどっちでもいい。

 

『しっかし、バレンタインデーは女が男にチョコをあげて、ホワイトデーは逆に男が女にお返しするんじゃなかったか?』

「神の妄言から人間の商人が商売になるって広めた風習だからな。金になるなら性別なンぞは建前でしかねーのよ」

『ふーん。まぁ確かに、オレっちもお菓子が食えるならその辺は気にしねぇけどよ』

『大切なのは、ハート!』

「まァ、そういうこったな」

 

フンスと鼻息荒くドヤ顔なウィーネの頭を撫でてから、演習を終えたモンスター達にも菓子を配る……というかバラ撒くイベントも急遽開催してみた。大体好評。

カリカリ効果で完全に訓練(テイム)済な連中なので、多く拾えたモンスターが拾えてないモンスターに分け与えたり、手先の器用なモンスターが包装を解いてから器用でないモンスターに与えたりと秩序が生まれてて草生える。

 

『またねーバイバーイ!』

『元気でなー!』

 

こうして『異端児(ゼノス)』相手のホワイトデーは終了した。

あっさり目だが、元より勢力としての『異端児(ゼノス)』とはそこまで親密な訳でもないので……でもここのカリカリを食ってるなら手遅れなってる可能性もあるんだよな。

ちな、地上の施設で渡さなかった理由は直射日光や温度による劣化の影響を避けるためだったりする。木竜みたいな里の守護者やってる面子に渡すのを考えたらダンジョン内のが早そうだったのもあるが。

 

 

そしてここからが対人間のホワイトデーである。ぶっちゃけ一言二言会話して菓子を配るだけなのだが。

 

「レフィーヤ大明神には【千の妖精(サウザンド・エルフ)】の二つ名にあやかってこちらをそれぞれ千個ほど奉納致したく……」

「食べきれませんよ!? そりゃバレンタインデーの時は【ファミリア】の皆で分け合えばいけましたけど!」

「ははー、どうか、どうかそのお怒りをお鎮めになって下さいますようかしこみかしこみ」

「雑ぅ!? 実はとっくに面倒になってきてますよねその変な態度!?」

「まさか! 決して、そのような事は……断じて! ございませぬ!! 平に! 平にご容赦下さいますよう、この通り伏してお願い申し上げまする!」

「ぷえぇぇぇぇ復活しちゃったぁぁぁ!!」

 

ノルマ達成。日本語がおかしいのは知識として入ってねぇ言葉を台本もなしにテキトーぶっこいてるから自然な事であり指摘する意味はない。

 

「あ、それとこれはアイズ用な。ジャガ丸くん詰め合わせセット。ほぼ揚げたてだからなる早で渡してくれ」

「わ゛か゛り゛ま゛し゛た゛ぁ゛。でも普段がらぞんな感じで接じで下ざびぃ」

「ゴメン、無理」

「ぴぃぃぃぃ!!」

 

 

続いて訪れたのは魔窟『豊穣の女主人』である。入店と同時に女体化ベルが店員(ウェイトレス)やってる姿を見る羽目になりそうで怖いわー。

 

「毎度ー」

「いらっしゃいませニャー」

 

あら普通。これはこれで逆に怖いな。何が起きてるのやら。

 

「丁度良いところに来たね! あんたも助っ人(ヘルプ)に入りな!」

「アッ、ハイ」

 

ミアさんが真面目(しごと)モードだからふざけられないのか、納得だわ。いや待て、シルもリューも姿が見えないんだが……これは補食の真っ最中か?

 

「……あの二人なら今日から三日間休暇だよ」

「それは……気の毒に……」

 

いやまぁ性別反転してるなら回数制限の都合で干からびるのはポンコッツーズの方だろうし、その回復に寝込むって考えたら三日は妥当なのか? 結局シルに性転換薬が効果あるのか知らんのよな。

リューには強く生きて……願わなくても勝手に強く生きそうだからいいか。とりあえず剣製都市(ゾーリンゲン)に手紙を持たせた騎兵型の人形兵(ゴーレム)を走らせよう。

アストレア派は黒竜討伐を聞いてからも都市外の抱える問題と向き合うためにオラリオへの帰還(ていじゅう)は考えていないらしい。むしろ黒竜討伐をきっかけに竜の谷が荒れて人類圏に到達するモンスターが増えて来て忙しさも増加傾向だとか。手伝いにルビスと人形兵(ゴーレム)一個旅団くらい送った方がいいんだろうか。

で、その事(なかまはずれ)が関係しているかは不明だが、何年経っても何人増えても末妹扱いが派閥の掟なんだとか。そいつが今まさに末弟と化しているかもしれない事実からは全力で目を背けるが。アタシは悪くねぇ。

 

 

こう言っちゃなんだが、昼の営業内容ははぼ喫茶店だし、利用者も一般人女性の割合が高いから駄弁りが多く回転率も良くはないし、そこまで忙しくない……普段ならば。

 

「なンかやけに盛況だったな、オイ?」

「ホワイトデーのために持ち帰り(テイクアウト)しているお客が多いからニャ」

「クロエがキャンペーンを企画したらそれが当たったのよねー」

「おかげで給料が二倍ニャ!」

 

なるほど。確かに季節限定の言葉は購買意欲を刺激する魔法の言葉だから店の売り上げを考えるアイデアとしては間違ってない。だがしかし、所詮はアホ2号(クロエ)と言うべきか。

 

「忙しさは明らかに二倍より上なンだよなァ……」

「……あ」

「「……ニャ?」」

 

うん、歩合制じゃなく時給制だから労働力に対する単価は下がってて働き損になるんだわ。猫人は数字に弱いとかあるんだろうか。【貴猫(アルシャー)】は例外中の例外だろうから考慮したらアカン。

いやまぁ時間は金で買えないから利子有りな借金の返済や喫緊の場合には有効な案ではあるが。こいつら確か名目上は店の法(ミアさん)により借金漬けだし。

 

「まー客は捌けたし、本題のホワイトデー用に作った菓子だ。適当に分けて食え」

「おー、気が利くニャ!」

「うんうん、おミャーはやるやつだってミャーは信じてたニャ」

「あんたも相当な物好きだよねぇ」

 

割と好き勝手に言われるが、慣れたものなのでスルー。

 

「なんニャこれ!? 手羽先の味がするニャ!」

「へー、面白いじゃん」

「辛めの酒が欲しくなるニャ」

 

早速外れを引くアホ1号(アーニャ)。語尾のせいか知らんが芸人気質が多いのも猫人(キャットピープル)だよな。獣人である以上は嗅覚が優れてるはずなんだが……むしろ見えてる地雷だからこそ踏みに行くのか。なんでかクロエとルノアも続いてんのは、これが今まで積み重ねてきた信用ってやつなんかねぇ。

 

さておき、後はミアさんに酒と燻製系のツマミを渡したら今日は帰るとするか。ベルは恐らく帰してもらえないだろうから、明日の仕込みも問題なくできるだろうし。

明日はイシュタル派の娼婦連中が男共への当てつけにする菓子類を届けて、ガネーシャ派の男性陣にホワイトデー用の菓子を売り込みかけつつ調教(テイム)済モンスターにカリカリを供給して、……はて? なんか視点が変わったな。

 

「み、ミャーたちからホワイトデーのお返しをくれてやるニャ! ありがたく受け取るがいいニャ!」

「こんな強気だけど作ってる最中は耳が倒れっぱなし尻尾丸まりっぱなしだったからね」

「おミャーの方がいい腕してるからって不安がちになってたニャ」

「う゛み゛ゃ゛あ゛あ゛ぁ!!」

 

なるほど、考え事をして気もそぞろになっているところを確保、移送されたのか。気を抜けるくらいだし、信用してるのはこっちも同じってわけだぁな。善き善き。

 

「そンじゃありがたく頂こうかね」

「ニャ……」

 

差し出された袋をその場で開けると、中には綺麗な白い……珍しい、ソフトキャンディだな。ちゃんと一個ずつ個別に包装してあるし。

つーかそもそも存在したのか……いや、これ前にアタシが漏らしたやつでね? よく現物もなしに完成品にまで漕ぎ着けたな。正直コイツらって料理の腕は良くないだろうに、メイでも巻き込んだんかね。そうなると労い用に栄養ドリンクでも差し入れるべきか。まぁ、後だな。

 

「良くできてるな……ン、味もいい。良く頑張ったな、偉いぞ」

「んにゃあ……」

「こいつ……マジか……」

「これが神の言うナデポニコポってやつニャ……? 恐ろしい子!」

 

褒めるときはちゃんと褒めてやらんとな。いや実際、良くできてるよ。売り物にできるレベル。外野が何か言ってるが、コイツらも褒めて欲しい系なのか? 高さの意味で物理的に頭を下げるならやぶさかじゃないぞ。つーかむしろしゃがんで撫でやすい位置に頭を用意するこの妹猫(アーニャ)にツッコミ入れとけよと。

 

「まァ残りはダンジョンとかで大事に食わせてもらうとするわ」

「大事に……」

「うぉぉ、えっぐいニャ。内角ストレートと見せかけた鳩尾直撃ルートみたいな」

「普段は話術詐術上等なのにこういう時だけ天然っての信じらんないんだけど」

 

ボロクソ言われてるけど、実を言えばからかうと面白い気持ちが混じってはいるからサービスしてる面はあるんよね。感謝の気持ちとかは本心だから(シル)の判定もすり抜けて来たはずだが。

 

「アーニャ、いるね!? ちょっくら買い出しに行っといで!」

「ニャ!? わ、わかったニャ、母ちゃん」

 

そこへ現れたミアさん。思わず身構えてしまったのは、こういう流れで登場する度にトンチキ発言かまして来るのが恒例になってるからだな。アタシは悪くない。

 

「おや、まだ帰ってなかったのかい。丁度良いからアンタも荷物持ちで行っとくれ」

「あい、あい。丁度良い繋がりでコレ、ホワイトデーな」

「んん? へぇ、わかってるじゃないか。ありがたく晩酌させてもらうとするよ」

「そうしてくれ。ほれ、行くぞ」

「ま、待って……じゃなくて待つニャ、ロリオヤジ!」

「いってら~」

「甘い土産話を頼むニャ」

 

今回は無駄にベッドインさせようとしたり責任を取らせようとしなかったな、ヨシ!

いやホント、なんであんなキャラになったんだろうな。肝っ玉母さんというか漢らしくすらあるあのセクハラ発言の数々は。

 

 

ちなみにこの後は普通に野菜や肉を買い物して終わった。変装したクロエがいちゃついてんじゃねーよとか絡んで来るイベントもなかった。今年のホワイトデーはおおよそ成功に終わったと言えるだろう。

 

 

 

ベルたちは……まぁ、言わぬが花ってやつだよ。決してまとめてディアン・ケヒト派の治療院にぶちこまれた話とかはしないぞ。アタシにだって慈悲の心くらいあるからな。

 

「……良かれと思って性転換薬じゃなく性器追加(ふたなり)薬にしたのが不味かったンかなァ」

 

仰いだ空は、雲一つない晴天だった。




UA100k超えてました感謝。
チラ裏で評価頂いてた完結済が通常投稿に出張って来たから物珍しさなのは理解してますとも、えぇ。
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