そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱) 作:夜月工房
「なんてこった……エイプリルフールを忘れてた!」
「またですか、お姉ちゃん」
今日も今日とて続く夢。カレンダーを破いて「今日から四月かー」なんて考えをそのまま声に出して呟いてたら、ふと前世の風習を思い出して頭を抱える羽目になった。これにはリリも呆れ顔。
だが待ってほしい。
「あー、いや。今回は商売とは別口だよ。つーかもしかしてこれも記憶流れてない系?」
「いえ、概念は知ってます。神の降臨しているこの世界では全くツマラナイ行事になってしまいますが」
「それな」
しかし悲しいかな、
しかしこの
そんなゴミ機能を頼りにしてる神っていくらなんでもポンコツすぎん? そんでそんな神を当てにする人間も雑魚すぎん? ヒイロ・ユイみたいに脳波を自力で調整できるタイプには勝ち目ないって事やぞ。いやまぁそんなんだから外伝ではディオニュソス派と見せかけて実は……みたいな事になるわけだし、アタシでも
つーか思い出しても声に出した言葉にしか効果なかったな。連中、神威頼りな身の安全を信じ切ってる割に殺すつもりはない殺気や爆弾を投げる振りにも普通にビビるし。余計に間抜けすぎねぇか超越者共。しまいにゃ王族とかの神威耐性的なもんまで出てきて立場が揺れに揺れてて草なんだ。天界送還って最後の砦があるからかね? なお漆黒のモンスター。
しかしそんな半端機能を使い続けて何が楽しいのか。ある意味じゃ未知を体験できる機能だろうに、わざわざ選択肢を狭める愚かさを発揮してしまうのは何故なのか。
外伝でエニュオに一杯食わされたと判明したタナトスの独白から、可能性として高いのは下らないプライドだろうか。あくまでも自分の立場が上で、安全に楽しみたいって気持ちはわからなくもないが……おかげで
「つまりこうだ。黒竜もダンジョンも実は終わってるから人間の戦争で
「すみませんお姉ちゃん。聞き取れなかったのでもう一度お願いします」
「ヘステミスをベルのハーレムにシュート!」
「超エキサイティング!?」
「露骨な文字数稼ぎは規約違反だからな。寿限無は判定的にどうなのか知らんが」
「原作の大幅なコピーに相当してアウトではないかと」
「それもそうか。名詞一つで利用規約の禁止事項に該当とか落語の笑いどころに忠実すぎんだろ」
「あれは話の内容よりも、一生懸命に長い名前を口にしている様子の方が面白いと思います。リリは実際に聞いた事ありませんけど」
はい、そんなわけでちょうどいい機会だし黒竜戦に参加はしたけど都合により出番がなかったベルへの補填計画として推し進めているハーレム計画に脈アリな神二柱ほど追加します。どうせならアテナも突っ込んでオリュンポスの三大処女神コンプさせたいんだが、あの完全武装型名誉しっとマスクはオラリオ内にいないんでパス。
つーかアラクネを蜘蛛に変えたりメ
それ抜きでも
まーこんなんオラリオ連れて来たら問題しか起こさんやろ。神話じゃアレスが自分勝手とかって盛大なブーメラン投げて非難するレベルだぞ。単なる脳筋ならフレイヤに魅了してもらうのが早いんだけど、知恵と戦略を司る上に処女神なんだよなぁ。なんだこのオラリオメタな性能した女神。地味に芸術や工芸も含んでるし、神話世界ならアタシも動物やら怪物やらに変えられてたんだろうな。
「じゃあ早速ヘスティアルテミスに飲ませるか」
「お待ち下さい閣下。その前にベル様の居場所を特定しておくべきです」
「それもそうか。リリベルシュタインは賢いな」
「称賛は不要です。が、受け取っておきましょう」
呼び方にツッコミが入らなくて寂しいのは内緒だ。しかし関係者のごった煮みてぇな名前だなリリベルシュタイン。自分でも言い終わってからすげぇ変な気分になったわ。
「それに、そうでもしないとベル様より先にお姉ちゃんが襲われ兼ねませんし」
「いや、それはない」
解釈不一致です。アイツらには普通にベルのクラネルを奪い合っててほしい。団員に年単位で引きこもってもらえるなら種族転換薬を使ってもいいし。
つーかこの際だからオッサンや姉御には『
「ですが追い出される寸前な寄生暮らしから労働の喜びを教えて眷族の斡旋までしてくれた恩人と、神から精霊に劣化したとはいえ下界で力が振るえる分だけお得な存在に変えて命を救ってくれた恩人ですよ? しかもお二方とも処女神ですから、男性相手よりはむしろハードルが低いのでは?」
「あー、ヘスティアの処女性はポセイドンやアポロンみたいな男神が言い寄って来るのめんどいって話からで、アルテミスはニンフの愛人がたくさんいたかな。同じ処女神のアテナも鍬だか鋤だかの発明を自分の手柄って言った愛人に罰を与えた話があって……あれ?」
「だから先に
「それは事前準備が活きたその場でネタバラシするときに使うんだぞ、愛しいリリ」
古代ギリシャってその辺はあけすけなんよね。というか、十字軍が暴れまわる前はどこも似たようなもんだが。
脳の構造的に気の合う相手が同性なのはむしろ自然だし、性交も快楽目的の行為として捉えた場合に子供ができるのが不義の証拠扱いされるなら同性やら子供相手に走るのも理解できるんよな。そういう行為そのものを嫌う価値観がないなら子供も大人を見て育つ以上は同じ穴のムジナになった可能性はあるし、文化として継承されてもいたんだったか。
あるいはディオニュソスの秘儀なんてのも記録があるし、キタローのペルソナでお馴染みオルフェウスもなんか
もっとも、それらを変態と一言で纏めるよりは、かくあれかしと定められたから盲目的に従って考えなしに上面を形だけ否定する頭の中身がスカスカな連中の洗脳具合に焦点を当てて考えちゃうが。果たして自分は正気なのか、どこか間違えていないか。常に考えてこその人間だろうに。
信じる事は大切だが、同時に疑う――考える事をやめたら人は獣以下になり下がる。差し出された餌に食いつくのに夢中で相手が背中に隠してた刃物で殺されるとか間抜けすぎんべ。考えたところでさえ多少賢い代わりに素の肉体が脆弱な動物でしかないんだし。イエスマンを集めて無条件に信じてヨイショしてもらえるのは気持ちいいだろうが、疑われた上で受け入れてもらえた方が下げて上げる効果で最終的な好感度は上がると思う。
まぁ下げる側はやり方を間違えたらフラグブレイクから永久に底辺だし、言葉が足りないと成果を出したら媚びて来たキモいって言われて凹む場合ある(一敗)から、最初はすり寄って途中で離れて再度すり寄るのが上手なやり方かも。いやこれDV男の手口……限りなく成功例ではあるのがムカつくわぁ。
話を処女神の恋愛事情に戻すが、ヘスティアのエピソードから推測するに自分がその気になったら取り消しても問題なさそうだし、アルテミスはオリオン関係からポンコツ化しても不思議はない。
だからこそのベルハーレムなわけだが。ヘスティアはヘラ対策の意味もあるし。派閥としての力はなくても個神で怖いからな、あの御仁。
「つーわけだ。まァ飲みねェ」
「君さぁ……今の説明で飲むと思うのかい?」
正面から正直にぶつかったらお礼にヘスティアのジト目を頂きました。我々の業界ではご褒美です。
『いいんじゃないか、ヘスティア。他ならぬオリオンとの仲を後押ししてくれるんだ』
「アルテミスぅ!? 恋愛アンチだった君はどこへ行っちゃったのさ!?」
『それはもちろん、本体の魂が持って行ったさ』
「あ、うん。そう言えばそうだったね。恋愛以外じゃボクの知るアルテミスだから、どうにもその辺は忘れちゃうや」
言いながら、ヘスティアはのどが渇いたのか近くにあったコップの中身を盛大に呷った。
「あっ」
『あっ』
「ぷはー、何だいこれ、めちゃくちゃおいしいじゃないか!? って酒ぇー!?」
「良い飲みっぷりでした」
「感動した」
拍手を送るアタシたち。慌ててツインテールをビンっと立たせてから蠢かせるヘスティア。後追いで酒を飲むアルテミス。いい具合に
ちなみにベルは身柄を確保、連行されており、現在は所在なさげにソファーに腰掛けている。説明もバッチリ聞いてたので今後の展開も知っているわけだな。喜べ、両手に花だぞ。アリアはちょっとこっちと一緒にアイズのとこへ遊び行こうな。
「ねえ、ジル姉はそのお酒飲んでみたの?」
「まァな。相変わらずスキルの副次効果で酔わねェから存分に味と香りを楽しんださ。いうてこれ以上にしたら別のやつが誤飲したとき精神崩壊まであるから開発させる気にならん」
「そっかぁ」
こんな事をベルが聞いてきたのは、前々からアタシが【
「ベル様、もっと直接アピールしませんと! ハッキリやらせろって命令スルノデス!」
「無理無理無理、嫌われるから! ジル姉だよ!? 聞いてもらう対価もないし! 僕の事は弟から上にはならないって」
「それならそれでお姉ちゃんならしっかり断られた後でも変わらず接してくれます!」
「そうかもだけど、僕の方が気まずいからね!?」
めっちゃ聞こえてるんだよなぁ!
リリはアタシに男の人っていつもそうですよねとか叫ばせる気だろうか。元ネタ知らんからベルは本気で傷付いちゃうと思うんだが。その昔公開されたUCを見てなかったせいで久々ログインしたガンダムゲーの対戦中にバナージのここから出ていけーって台詞言われのを元ネタ知らんからカミーユの台詞をマイルドに改変した分だけ本心から言われたと受け取ってそのまま離脱してトイレに駆け込んだのはいい思い出。やっべ吐きそう。
つーか小声で叫び合ってても距離的に今から相手する予定の二名に聞こえててめっちゃ苦笑されてるの気付けと。いや苦笑で済ますんかい。マジで親枠だな。小娘二人で止まってるベルハーレムに足りない要素だから助かるが、叱るには威厳……違うな、迫力が足りない。
そうなると次の
仮に呪われたらクロッゾの魔剣爆発みたいな感じで弓の腕がガタ落ちしそうじゃない? オマケにアルテミスって三位一体じゃないけどセレネの月から夜、闇を経たのかヘカテーにも関連付けされたから魔法もワンチャン使えなくされる。アタランテとかの件もあるしアルテミスって
嫁って息子の配偶者で義理の娘だけど、家族内における権利者に合わせた呼び方とすれば配偶者を嫁と呼んで成立するんよな。つまりこの場合だとリヴェリアが嫁と呼ばれる場合アタシがクラネル一家の最高権力者にしてベルの親って事だな。なんて?
「そンじゃ用事は済ンだし、後は若いモンに任せるって事で」
「そうですね、リリたちはこれからIレムを偲ぶ会に参加しなければなりませんので」
「三機の究極互換機から主人公を選んでたくさんの個性的な
「リリはサイビットちゃん推しです」
「アタシはフリントかなァ」
「あの頃は大らかな時代でしたね。リリは生まれてませんでしたけど」
「それを言ったらアタシもなンだわ」
そんな感じでアタシたちはその場を後にした。こっち側のアリアをアイズに合わせてやらんとないし。
「すごい……ジル姉とリリが何を言ってるのか全然わからない」
『まぁまぁ。こちらはこちらでやる事が残っているだろう、オリオン?』
「お、お風呂を。せめてシャワーを使わせてくれないかい!?」
「あ、それはパスでお願いします」
「ベル君っ!?」
そんなやり取りが背後から聞こえてきたが、とりあえず今日は外泊しておいた方が良さそうだな。他の面子は輸送なしで深層に向かってる最中だから帰還の予定はないし、どうか存分に励んで欲しいものである。
一応、シルとリューの乱入が心配なんで人払いの結界は暗号鍵を変えて来たし、後は野となれ山となれ、ってやつだ。
「そう言えばお姉ちゃん。エイプリルフールって嘘を午前中に吐いて午後はネタバレなのでは?」
道すがら、リリがそんな疑問をぶつけてきた。
アタシも持っているその知識だが、まぁ錯綜した情報の一つだし、そもそもその設定すらわざと撒かれた嘘まである。ルールなんてのはいかにもな、真面目なやつを馬鹿にするため後出しで捏造される最たる物だからな。
そしてアタシら騒げればいい民にとっては――極めて無責任な事に――正誤なんてどうでもいい。
「それだと真面目に日中学校行ったり会社行ったりして働いてる日本人には合わねェ風習なンよ。そもそも発祥が謎だし歴史も浅いから好きな様にローカルルールを決めてしまえばいいのさ。ましてや日本は魔改造の国だ」
まぁ昨今は品質で勝負するより並品質でも宣伝の上手い方が流行するし、本人が楽しむだけじゃなく共通の話題って用途を考えれば簡単な内容で会話多めにした方がネタにもしやすくてありがたみを感じるんでねーかな。似たような作品でも乱発してりゃ同じ作者だよって話題に引っかかりやすいし、模倣に関しては繊細な問題で突きにくいからやったもん勝ちな泣き寝入りにも思える。
究極的には人類そのものが行き詰まってるから真新しい物を開発するのが極一部の天才を除けば到底無理で、今の流行に食らいつきながら流行の変遷を歴史に学び過去の流行を再燃させて逆に新しいって次の流行にしてる状態だし。
「んーと、結局みんな理由がないと動けないって事ですか?」
「そーゆーこった。自由に馬鹿はやりたいが責任は持ちたくない。都合なんてのは良い方が良いに決まってンだわ」
「なるほどー。だからお姉ちゃんはエイプリルフールだって言いながらも特に嘘を吐いたりしてないんですね」
腕を組んで首を捻りながらリリが本質的な部分を突いてきたので、肯定しておく。すると、リリからアタシへの評価が高いせいでとても好意的な解釈が飛んできた。
甘いな、リリ。アタシはそこまで高尚でもねぇし孤高を気取るつもりもねぇ。リリの理想とする完璧な姉でいられない事は汗顔の至りだが、それでも好感度は保たれるって経験則から知ってる。だから……言うぞ。
「いや、そっちは素で忘れてた」
「ありゃー」
こうしてアタシのエイプリルフールは終わった……実際には『黄昏の館』で本格的に始まり、その日の内に【ロキ・ファミリア】を恐怖のドン底に叩き起こしたのだが。これに関しては、言うまでもなく嘘じゃない判定を下したロキのせいで被害が拡大した。そして第一級冒険者は後日ダンジョンに走る事となる。
ちな、その日【
――っていう夢を見たんだ。カレンダーや四月等は魔法暴発による余波です。