そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱) 作:夜月工房
オラリオにおける
「……見つけた」
「おン?」
こんな短いやり取りの後、アタシは誘拐された。
まぁ、犯人はアイズ以外あり得ないわけだが。むしろ何でこいつだけは毎度のごとくアタシの気配察知をすり抜けてくるんだ。うーむ、わがんね。永遠の謎ってやつだぁな。
「なぁ、いい加減素直に吐いた方が身のためやで、ラジルカたん?」
「クッ、どれだけ辱しめられようとアタシは屈したりしねェぞ……ロキ派なんかに絶対負けない!」
そうして
このままだと敵に回ったリリによってオラリオの第一区画と第八区画が消し飛ぶまであるんだが。イベント時空のギャグノリなら酷けりゃアラレちゃんにでも変身されて惑星割れるまであるんだが。
さておき、何故かアタシはアイズに捕獲されたままなんだが、これまた何故か食堂にてロキにウザ絡みされる羽目になってる。アタシはアタシでアイズが解放してくれんから、乗っかって悪ふざけするくらいしかやる事がない。いやまぁアイズに本題を切り出させるためにもロキは撃退した方が良いのかもしれんが。
「ぐっへっへ、そうは言っても体は正直やんか……あっ、ちょっ痛い痛い。マジで止めて」
「ロキ……邪魔」
「せやけどアイズたん。うちにとっては死活問題なんや! いや、
「ンなご大層な名目掲げてンじゃねーよ、たかが豊胸で」
そう、ウザ絡みの理由は胸を大きくする薬の製造・販売についてである。
なんでもフレイヤからホワイトデーでの
まー教会に乗り込んで来られる面子が現状アイズしかいないからなぁ。ロキ派はフィンがいるから断りにくい対価を提示しながら取引を申し出て来そうで面倒なんよ。
ちな、フレイヤ派は考え無しに突っ込んで来るから全弾きしてる。団の経営をほぼ一手に担ってる苦労人の
つーか十数年過ごしてて今更すぎるとは思うんだが、主神と眷族で【ファミリア】までは理解できる。でもそこから派閥で何故か団長なんだよな。少しは統一しろと。派閥と団長は冒険者以前――傭兵時代の名残なんかね? まぁ使い慣れてるから今更ではあるんだ、ホント。
豊穣の女主人に対してはあくまでシルとして許可してるんで、神意とは無縁。フレイヤとして振る舞わない分別はあるし、ミアさんもフレイヤ派の要求を当たり前に突っぱねる……いやまぁ、たまにフレイヤとしてのワガママを聞き入れちゃうんだけどさ。肝っ玉母ちゃんでも娘に甘くなる時くらいあるわな。
なお、ミアさんがするのは基本的に依頼の書かれた女神直筆の手紙を渡すだけで他はノータッチ。でもその対価が手紙を受け取る名誉を賜ったアタシを労働力に扱き使う権利なのは解せぬの一言なんだわ。でもフレイヤって妹属性だから断りきれないんだよなぁ。
そんで
「おま……それティオナの前では絶対に言うたらあかんからな? フリやないで?」
「はァ? あー、いや、そりゃそうか。まァ、そンなもンだわな」
「は? なんやその反応は……まさか!?」
ロキの発言は眷族を思う発言なのか、それとも同類の門出を祝えない僻みなのか。どちらにせよ、とっくの昔に相談されてるわけだが。
「まーな。成長を促進させるタイプだから近くにいたら気付かねーかもだがとっくに手遅れだぞ」
「いやあああああ!? 嘘やああああああ!?」
愉悦愉悦。崩れ落ちるロキを見下ろしながら吸う空気は美味しいなぁ! なお実際に大きく息を吸い込むとアイズの使っている
つーかアタシ製でお揃いなんだから、アイズはアタシの髪に顔を寄せてすんすん言うのは止めなさい。前世で飼ってた猫を思い出すなぁ。元気してるだろうか。アタシより長生きだがお婆ちゃん猫なんだよなぁ。
この洗剤やら洗髪料やらは、ここ五年くらい前にギルドを巻き込んでオラリオ中から応募してくれた獣人
そんでティオナは気軽に「胸を大きくする薬って無いのー」に対して「あるぞー」って事で瞬時にデカくなるが時間経過で戻るタイプを使わせたら「大きすぎると動くのに邪魔」と真理に到達していた。その後で成長を促進させる薬を
まぁ、飲み続けると後遺症というか成長値そのものに補正が残るんだが、加齢による減少には勝てないので遅めの成長期みたいなものとなり、やがては自然と収まる。
そしてわかった事は、個人用の調整めっちゃめんどいって事。ティオナ専用はレシピあるからそのまま希望が続く限りは継続して作るが、別人用は二度と作りたくない。こっちは遊びでやってんだよ人助けなんざ知るかっての。
「さて、ロキは静か……にはなってねェが、しばらくこのままだろ。そろそろなんで
「うん。えっと、お母さんがひな祭りに凄く乗り気で」
「凄く乗り気」
「私に右大臣をやらせたいって」
「そこはお雛様じゃねェのかよ」
「だから先生には弓矢の使い方を教えて欲しくて」
「実際に使う必要はねェよ。つーか【
「リヴェリアは……厳しい」
「さよけ」
昔日の勉強やら特訓やらを思い出したのか、カタカタ震え始めたので会話を一度切り上げる。捕獲されてるアタシにまで振動が伝わって来て微妙に酔いそうなんよ。脳や内臓がシェイクされるんだわ。
そんで渋い
「あー、アリアさんは何でまたアイズに弓を教えろと?」
『私の風を活かすなら剣より弓だと思うの』
「私情かよ」
ロクでもなさすぎる。いやまぁつかみどころのない自由な様は風で精霊なんだなって感じはするんで個人的には問題ねぇんだが、もうちょっと、こう、娘を慮ってやれよと。
『ラジルカちゃん、精霊って、要は神の写し身なのよ?』
「納得しかねェ説明すンのやめーや。つーか子供で遊ぶな」
『まぁまぁそんな事言わずに私の顔を立てると思って……ね?』
何故かアイズに捕獲されて膝の上に座らされてるアタシの膝の上に座って来るアリア。見た目は少女なのに表情が艶やかで無駄に色気を発揮してるんだが、こいつは一体どこを目指してるんだろうか。アルバートも草葉の陰で泣いてんぞ。
「ね? じゃねェよ。
周りは子供が刃物を持ってるのを見るみたいなおっかなびっくりの視線を向けて遠巻きにしてるが、せめてリヴェリアは止めろや。娘と親の挟み撃ちとか無礼度が天井なんよ。席を外してるからしゃーないが。
「ものすごい勢いで【ファミリア】に飛び火してるから止めて欲しいんだけどね」
「団長、あれはそんな悠長にしてられる場面なんですか?」
「そうっすよ! このままだと【
こんな具合である。何やってんだよ? 団長!
「聞こえてんぞ【
「き、ききききき聞かれてたっす!?」
「ちょっと、私を巻き込まないでもらえる?」
「扱い酷くないっすか!?」
第一級冒険者はレオンに全敗した記憶も新しいので、鍛練にダンジョンへ向かったとか。軽く見回した感じだと、残ってるのはアイズ以外だとフィンとティオネくらいか。ラウルとアナキティも【ランクアップ】したのだが、だからこそ留守番を任せられているのだろうか。
そんな予想からご祝儀に下世話を焼こうと思ったのだが、あっさり流されてしまった。でもアナキティの尻尾は正直で、先が揺れているんだわ。これはもう一押しだな。貴重な純愛枠だぞ囲め囲め!
だから機会があっても【
「ら、ラジルカたん。うちに
「うっわ、復活してきやがった」
長話をしすぎたか。つーかその並びだと薬を英語でヤクって言うみてーなんだわ。
あと今更だけど神は英語とか天使とかの下界に存在しない言葉や概念を普通に使うんだよな。やっぱり神を名乗る元人間または人間の作ったゲームのNPCなのでは? いやまぁ日本人により日本語で書かれたラノベの登場人物だが。
何なら天使と対になる悪魔は下界でも使ってる概念だし。悪で魔って考えたら普遍的っちゃ普遍的だが、魔には鬼が含まれて悪いものって意味が含まれてるんだよ。そうなると魔法を使う先天性の
つーか悪魔って大半は唯一神を掲げる例のアレがアレして零落した異教の神だぞ。そら下界に降臨した神が悪魔みたいな性格なわけだわ。反省して、どうぞ。
あとアルミラージの配色とか丸きり日本人の持つ
まぁ、ラノベって成立年代と内容からして比較的若い人が書くイメージあるし、若けりゃ人生経験だって少ないし、ガバなんて無い方がおかしいんだが。前世でアタシの生きてた限りでも六、七年は平気で続いてたわけだし、本になる前も含めれば初期段階だと下手すりゃ学生時代だろ。ナバールや火炎大地斬の年代なわけだしな。仮に社会進出済だったとしても、修められる分野は限られている。
年代って意味じゃ情報化社会って言ってもアタシの生まれ育った土地じゃネット環境が整ったのは二十年前とかで、普及ともなればもっと後。それまでは本やゲームが情報源で、翻訳も専門的な特殊能力扱いだったから神話伝承のような分野は当然の様にガバい。ブリューナクとかな。それ以外でも、単純に義務教育等で学んだ知識は興味がなければ残らないし、むしろ無理矢理やらされていた苦手意識から距離を置く可能性も高い。そういう事をやらせた国に不信も抱くし、若者の政治離れも起きるわ。そうなるとどうしたって世界観にも
なお個人的な意見だが、そもそも昨今では内容に関わらず小説そのものが色々な意味でライト扱いされているように思う。文豪と言われる芥川だの太宰だのの作品も、元ネタを読んだ後に読めばなんと読みやすく軽快な事か。何しろそれらは高校の教材として扱われる――つまりは
割と泣きたくなる現実だが、鼻とか蜘蛛の糸とか走れメロスとかって要は
いうて一説によるとライトノベルの始まり候補な作品として耳長エルフの祖やら竜破斬やらがあって、そうなると世に出てから三十年は経過している。先のゲームや漫画と同世代か。歴史が浅いと言っても当時からそれらの作品に
それが関係しているかは不明だが、一部の人間は二次元作品を軽蔑や排斥の対象としてるのに、映画やドラマといった三次元作品になると即落ちする。原作ラノベや漫画やぞって言ってもそれが何と受け入れる。連中は見えてる世界が違うから割と本気で怖い。
つーか根っこに神道由来の
要はアレだ。設定ガバが気になるのは仕方ないが、ガバが生まれるのも仕方ない。その辺は神が作った仕様だから割り切れと言うしかないのだ。音のある宇宙って話な。
これを別の宇宙を抱える神が自分ルールを押し付けてると考えれば、それなりにみっともなく映るだろう。これでおかしいと思うだけではなく変えろとまで言ってしまえば他人に信仰を強要する宗教の同類だ、恥ずかしくもなる。
つーか手強いシミュレーションは当時のファミコンが金持ち向けの娯楽で大人向けかもしれんが、大冒険は少年漫画なんよね。その延長にあるとすればダンまちも少年向けな王道冒険譚なわけで、そりゃメイン武器窃盗してダンジョンへ置き去りにした犯人やらランクアップまでの寄生を宣言する年上やら私不幸だけど責任負いたくないから勝手に助けてねチラッチラッみたいな人生ペロペロしてる連中も普通に改心して真の仲間になるわ。前世抜きでも二十歳過ぎてるアタシには作品に文句を言う資格を持つべきじゃない。
だがアタシは謝らない。だって気になるんだもん。娯楽で育った身としては教材でもあるから正しさを求めちゃう部分はあるんよ。いやまぁ知らん部分で気になればそれが本当か自分で調べるんで正誤はあんまり関係ないが。周りがね、鵜呑みにするのよ。間違った知識そのまま使うから訂正すると偉そうとか言われるし、テレビでやってたから正しいとか言われて会話にならん。アイツらこそ真にファンタジー世界の住人だわ、次元が低いって意味で。
後は転生したから既に作品じゃなく現実なんよ。そら文句も言うし流れも変えられるなら変えるわ。神にも猪にもショタオジにもハッキリ失望だってするよ。こっちを相手する分には政治面で厄介だけど黒竜とかダンジョンとかこっちの考えてる脅威に対してはほぼ無力なの本気でゴミって叫びたかった。だからフリーな人材を鍛えてゴリ押ししたわけだが。うちのリリがこの世界の
つーかこの灰汁が強い連中を動かして最後の英雄になるであろう原作ベルさんマジパネェ。アタシには無理だ。
「夢が詰まっとるんや、おっぱいには……」
「詰まってンのは筋肉と脂肪だよ。ついでに言うならテメーのありがたがりそうな母乳は成分的に言えばほぼ血液だぞ」
「えっ……」
床を這いずって恨みがましい声を上げるロキにツッコミを入れたら、何故かアイズが反応していた。そういやコイツって
思えば精霊の奇跡ってどこまでやれるのか。人との間に子は作れない的な事を言ってるけど、それこそご都合ファンタジーの出番だろうに。
神は『
全知全能とか抜かすけど、もしかして発想力が死んでる=疑問に思う能力がないから知らない部分を知らないと認識してなくて、逆に知ってる範囲が世の中の全てだと思い込んでるから自称全知とかじゃねぇよな。
「で、実際はどーなンだよ?」
「あー、ノーコメントで頼むわ」
「語るに落ちてる様なもンじゃねーかテメー。そこは嘘を吐いて良い部分だろうが」
「いや、ラジルカたん普通に神の嘘がわかるタイプやし」
「真顔で言うのやめーや」
そういやロキってスレイプニール生んでるんだよな。果たしてコイツは母乳が出たんだろうか。むしろ眷族の名前や二つ名を考えれば妊娠も出産もなさそうなんよね。全異世界のスレイプニール達が泣いてんぞ。
どうでもいいけど前世で大変変態な変換候補が出てきたんだよスレイプニル。日頃の行いってやつか。打ち間違えてスレイニプルとかなった事もあるし。日本語訳した小説の校正ミスったまま参考にされて映画の字幕に乳首殺しとか出された可能性があるの怖いよな。だからアタシは伸ばすようにしてるんだ。乳首じゃねーよ何が楽しくて乳首伸ばさなねぇんだ乳首から離れろ。自分から振っといてなんだが。スレイプニルじゃなくスレイプニールって話な。これはこれでグレイプニルやグレイプニールと混同しかけた模様。
「あ、思い出した。ジョークグッズ的な胸をデカくする薬ならあるぞ」
「ほんまか!?」
「ほれ、乳(首だけ)がデカくなる薬だ」
「うひょーい! やったあああああ! 今に見とれよドチビに色ボケ、わいが新世界の神やああああ!」
ネタバラシする間もなく走り去ってったわ。まぁお礼も言わんかったし別にいいか。
一粒で300mみたいなネタを仕込んで服の上から見ると30
「……ンン?」
「? 先生?」
「あァ、リリが来たっぽい」
「そう、早いね」
誘拐に気付いた割にゃ穏当に訪ねて来て通されたっぽいし、アイズの反応も焦りが一欠片もないんだが。もしかして仕込みありか?
「こんにちはー。お姉ちゃん回収に来ました」
「いらっしゃい」
「チャオ、愛しいリリ」
「はい。リリですよ、お姉ちゃん」
「アイズちゃんもご協力頂きましてありがとうございました」
「うん、平気。大人しかった、よ」
「人をペットか何かみてーに扱ってンじゃねーぞ」
がるるるる、と唸って威嚇するも通じないよね。むしろアイズの抱き締める力が強まったばかりか、アリアまで抱き着いて来たので母娘サンドが薄くなった。本物のサンドイッチだったら具材の水気でパンをべちゃべちゃになるレベルの加圧、まことに遺憾である。
この場にロキがいたら羨ましすぎて発狂するんでねーかな。ベートはヴィーサル派が生存してっから除外。その他の男団員は論外。なお
「それではお姉ちゃん、改めて
「あいよ。つーわけだから二人ともいい加減に離せ……っておい? 何でそのまま立ち上がるかね、ン?」
「アイズちゃんもアリア様も
「マジか」
「マジです」
『マジわよ』
「うん。マジ、だよ」
こうしてアタシはアイズに運ばれた。アリアもしがみついてサンドされたままのアタシはさぞ見ものだったろうよ。指差して笑ってた神々は後で爆破してやりたい。
で、帰った
て事は、だ。コイツらアタシをハブって計画してやがったな……! ここでギャン泣きしたら慌ててくれるだろうか。だが愛は試すものではないが信条なのでグッと堪える。
「ラジルカくんも合流したし、ヴァレンシュタイン君もそっち側のアリア君も連れて来たし、早速始めようじゃないか!」
『オリオンがいないのは残念だが、たまには羽目を外して騒ぐのも悪くない』
「それではひな祭りイブの女子会と参りましょう。皆様お手元に甘酒は渡ってますか?」
どうやらヘスティアとアルテミスも参加するらしい。ヘスティアは原作の駄女神っぷりを超えるとは思えないからまだ良いとして、アルテミスのキャラ崩壊しそうなんだが大丈夫だろうか。
つーかアイズに酒はまずいんだが。神に会っては神を斬るされたら洒落にならん。あとこれ
「なァ、アイズは」
「アルコールの残っていないタイプなのでアイズちゃんも安心……な、はずです」
「そこはかとなくフラグ立てるのはよそうか」
「うまうま」
「乾杯を待てやテメーは」
「おおっとボクたちも遅れてなるものか。かんぱーい!」
『「『「乾杯!」』」』
なんだろうか。こう、飲む前からデキあがってる感。でもまぁ、たまにはこんな日があってもいいのかもしれん。つーか考えるのがアホらしい。同じ阿呆なら踊らにゃ損だ。
「あーもう、こうなりゃ混ざるか。乾杯!」
この後めちゃくちゃ飲んで食ってお喋りした。
アイズは酔わなかったが、大人向けとか言って白酒を置く事をしなかったリリたちのお手柄だと言えよう。偉いぞーすごいぞーわははー!
代わりにアリアが酔っ払いテンションでダル絡みして来る事故は起きたものの、交流を深める意味ではちょうど良かったのかもしれない。娘をよろしくの意味が微妙に微妙だったのは気のせいだと思いたい。
そして
UA120k超えました。お気に入りも前回時点で500超えてたようで。圧倒的感謝……ッ!