そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱)   作:夜月工房

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Ex12.計画的犯行に遭いました。結果は聞かないで下さい。

「つーわけでこどもの日だ」

「相変わらず唐突ですねお姉ちゃん」

 

五月五日。言わずと知れた祝日である。アレだ、暦については少なくとも教会で暮らす面子にゃ浸透してるんでな。気にすんな。数字は風情がない代わりにわかりやすくていいって評判だし。大事なのは商売に使えるイベントだって部分だしな。このまま商人経由でグレゴリオ暦を流行らせるのだぁ。

 

「いやいや、前にやったひな祭りがあったろ? あれの仲間だよ。あっちは桃の節句って呼び方もあってな。今回は端午の節句だ」

 

つーか前の時点で軽く話したんで、多分覚えてると思うんだよな。つまりこれは会話をぶった切らない心遣い、付き合いってやつだな。さすリリ。

 

「なるほど、何やら情熱的な催しなのですね」

「愛しいリリ、端午は最初の午の日って意味であって踊りの種類じゃないぞ」

「ほへー」

 

すっかりボケもこなせるようになって……お姉ちゃんは誇らしいぞ。

あと今更だけどほへーって可愛すぎんか。めっちゃ好き。微妙にアホっぽいけど。そこも含めて好き。

 

「前回のひな祭りが女子会なら、今回は逆に男向けだァな。元は男子の成長を願う催しで、もっと前は単に季節のお祝いだったかな。鯉のぼりとかの風習はオラリオよりメレンに広めて大漁祈願と混ぜた方がいい気もするが」

 

その意味じゃオラリオに男子って少ないんだよなぁ。いてもダイダロス通りの孤児なわけだし。いやまぁちゃんとそこを狙い撃ちするがな。

孤児院の土地や運営権はこっちで抑えたし、将来を見据えた読み書き計算と職業体験みたいな事をやらせてる。こういった行事にかこつけて贅沢させて思い出作りもさせとかんとな。

神ペニアは肩身が狭くなってそうだが、あの神の役割としては貧乏だからこその工夫というか、何もないから生きるため必死に何でもする精神による発展を期待してる節があるんよね。つまりこの世界においては物理的な貧困よりもハングリー精神に重きを置いてる神なわけだ。

まぁ物理的な貧乏の行き着く果ては弱肉強食の獣で、それもまた自然らしく一種の美しさを持つって意見もあるのは理解できる。それが続けば自然と奪いすぎてはならないって自戒にも辿り着くし、人間の考える高潔さに関しては野生動物のがそこらの人間より上に思えるんよな。ものすんげー皮肉だと思う。

さておき、ハングリー精神と仮定した場合は孤児院のより上の暮らしをしてやるぜって方針とは合致してなくもないんよね。その意味じゃLv.1で止まってその日暮らしに満足してるというか諦めてるというかな大半の冒険者に対して思うところがあるんだろうか。まぁ、どうでもいい話だが。

ただ、世界規模で行事を広める場合、孤児院支援は中々に難しい面があるんだよなぁ。食うのにも困ってるだろうからちまきと菖蒲酒でも広めりゃいいかなーと思ってるが。柏餅も普及させるべきか。スイーツ扱いしていいのか微妙なんよねあの辺。オラリオの民に久慈良餅は受けが悪かったし。無念じゃ。米の品種改良をするべきなのか?

 

「なるほど、桃の節句に端午の節句、つまり合わせて言う場合、節句を複数形にして」

「おっとそこまでだ。子供の健やかな成長を願う話に大人の要素をぶち込むんじゃない。コラ、親指と人差指で輪っかを作るな! 指を出し入れすンな!!」

 

これはボケの範囲や種類(レパートリー)が広い事を喜ぶべきなのだろうか。育て方を間違えたかなぁ。いやでも下ネタは極力避けてきたはずなんだが。どうしてこうなった。

 

「いやぁ、近くお姉ちゃんが男性として活動するまたとない機会が訪れると聞いてリリも張り切ってまして」

「そーかい」

 

さらっと貞操の危機に関係する犯行予告らしき情報を伝えられたんだが、この場合どう反応するのか正解なのか。リリには幸せになってほしいが、リリに釣り合う男となるとこっちで認めて紹介できる候補は極めて限られるし、そいつら既にリリと知り合いかつ異性としては見向きもしてない相手なんよね。前途多難すぎんか。

いやまぁリリの選んだ相手なら文句は言わんが。なお選んだのは種族と性別を変えられる未来が確定している実の姉な模様。

異世界で活動する場合は種族単位で違う肉体になるだろうから遺伝子的な問題とかも解決するし、気持ちの問題ってなら自分で娶るのが妹はやらんって我儘を通せる最善な選択肢の一つに思えるし……あれ、流されない選択肢がないな?

強いて言うなら両親に顔向けできないくらいだが、魂漂白されて転生する世界じゃ死者への配慮も不要に思えるしなぁ。むしろあの両親なら仕方のない(あらあらうふふ)で終わる気がするわ。

 

よし、切り替えよう。というかスルーして端午の節句に話を戻さねば。とはいえ、だ。

 

「まー、そンなわけでアタシらとしちゃ別段関係ない催しなンよね」

「ですねぇ。ベル様とガルド様も既に子供とは呼べませんし」

 

だよなぁ。ハーレムの主と歓楽街の常連だもん。オッサンは食欲しかないと思ってたけど、睡眠欲と性欲もちゃんとあったっぽい。なんならオラリオに来て割と早い時期から通ってたらしいからな。

姉御とくっつくのかなーとか思った時期もあったが、どうやらオッサンとしちゃ尻に敷かれるのは嫌らしくて無理だそうな。いや絶対どんだけ大人しい女性と縁を結んでも頭上がらねぇからな多分。そして姉御も密かに我儘を受け止めた上でリードしてくれるような頼れる男性を欲するお姫様系の願望があったりなかったりするようなしないような。

つまり広めるにしてもアタシらとは微妙に関連性が薄い。むしろオラリオ的にも弱い。子供の成長を願うコンセプト自体は世界中どこであっても合致してるんだが、大多数が参加できるようにして金を動かすにはもう一声欲しいよなぁ。

改変して聖夜やバレンタインデーの仲間として春が来る但し恋人すっ飛ばして子供を仕込むみたいな応援キャンペーンにするか。それこそタンゴを求愛ダンスとして普及させて舞踏会を大々的に開くとかしてもいいかもしれん。文化的な活動も推進しとかんと。あれ、ところでこの世界だと聖夜に性夜的な要素あったかな……ミニスカサンタの時点で十分性的な要素か。個人的にエロスは晒すより隠す方にこそあると考える民なんでトナカイの着ぐるみとかのが性的に見えるのは内緒だ。ラインが出るのもそれはそれでえっちだと思います!

まぁ元ネタから内容を変えるだけじゃなく方向性が方向性なんで極東面子にはぶん殴られるかもしれんが、まぁその時はその時だ。

 

 

 

「で、その辺はどうなンです?」

「いや、どうと言われてもな」

 

オラリオにおける極東代表、タケミカヅチもこれには困惑。気持ちはわかる。アタシ自身も説明しててなんか通すべき筋が別の場所にある感じがしてたし。

 

「そこまで変えるのなら名前も新しくしてはいかがかと」

「あァ、それだ」

 

命の意見がアタシの疑問に対する答えになってくれた。最早別物なんだから、名前も別にしていいわな。由来は極東の行事だったのに伝わる内に変化しましたって感じで名残は残すが。

 

「サンキュー皆の衆。あ、これ試作の粽な。みんなで食べてくれ。意見や感想は歓迎なんで後ほどにでも」

「お、おぉ。ありがとうな」

 

 

 

こうしてオラリオにまた新しい行事が追加された。

三大冒険者依頼(クエスト)が消えた事で人類の時代が近づいた昨今、畑仕事が楽になって食うに困らなくなれば人口の増加を躊躇う理由も減る。今こそ増えよ人類。今日のこの日を記念して、我々は『大人の日』の制定を宣言するものであるぞなもし。

そんな感じで実装してみたが、初回だけあって効果は全くと言っていいほど出なかったよね。そこらの木端冒険者には相手がいないし、娼婦は避妊してるし、一般人も地上のモンスターによる被害って生活への不安が残ったままだし。

それでもイベントに後押しされて成立した結婚どころか出産前提のカップルが生まれたって話はあったし、どこぞの【凶狼(ヴァナルガンド)】が故郷付近のモンスターを退治して回ってる古巣(ヴィーザル)に足を伸ばしたって話もある。なお【勇者(ブレイバー)】が【怒蛇(ヨルムンガンド)】に襲われたっていつもの流れもあったそうな。

 

「むぅ、いけず……」

 

そしていじけているのが我が最愛の妹、リリルカ・アーデである。同士を集めて性転換薬を盛る気満々だったってーんだから行動力を褒めるべきかハジケ具合を咎めるべきかの判断がようわからん。

 

「ロリオヤジはいい加減に腹を括るべきニャ」

「先生は、男前」

「こん……」

「おう、テメーらは黙ってろ」

 

そんでぐるぐる巻きにされて逆さ吊りされてるのがリリの集めた同士――襲撃犯である。中でも春姫は完全に予想外だったんだが、どうしてこうなった。

 

「どうせなら強い雄の胤が欲しいって思うのは当然だろ?」

「だまらっしゃい」

 

はい、こいつが春姫を唆した犯人の【麗傑(アンティアネイラ)】ことアイシャです。つーかドワーフ以外の種族が揃い踏みなんだが。ここまで来たらアーニャはどうにかしてミアさんを誘えよ。いやまぁ来られたらそれはそれで困惑するんだが。なお、孤児院出身のモブ娘とかは参加希望だったので希望者の段階ではコンプしていた模様。最低Lv.3はないと行為が危険だと弾かれたらしいが。エルフ? 知らんな。

 

「私は止めたぞ」

「そこはさすがに信じてるわ。止まらなかったみてーだが」

「ぶぅ、いじわる」

「アイズ……お前という奴は」

 

こちらで頭を押さえて深い深〜い溜息を吐くのがみんな大好きハイ・エルフ御年九十九歳まだ二桁だからお前と大して違わないだろうの名台詞で周囲をドン引きさせた悲しき独身貴族オラリオが誇る二大巨頭ロキ派副団長【九魔姫(ナイン・ヘル)】リヴェリア・リヨス・アールヴである。控えおろー。

なんでも話が歪んで伝わったらしく、今回の企みにリヴェリアが参戦する事になってたっぽいんよね。それを理由にエルフの辞退が相次いだらしい。いや相次ぐだけ候補いた事実が怖ぇのよ。大聖樹の守り人扱いでエルフからの株がアホみたいに高くなってるらしいんだが、だからって当たり前に同性の小人族(パルゥム)が性転換する機会に飛びつくなと言いたい。

あと男になびかないから女を好むに違いないとかどこ情報だよ。リヴィラの街だろなぁ、これ系の流言飛語(こわいものしらず)は。後で爆破しておこう。避難訓練だ。

 

「それで、これはどう始末をつけるつもりだ?」

「いや別にこのまま解散でいいだろ」

 

初回で失敗してんだから二度目以降も成功する余地なんざねーよ。

 

「ふむ。だが新しい仲間を増やせば話は変わると思わんか?」

「ンー? あァ、例えば【九魔姫(ナイン・ヘル)】の件が誤解だってわかりゃエルフの参加者が増えるのか?」

「そういう事だな。もしくは私が参加した上で許可しても同じ事になるだろうな」

「……おい?」

 

不穏な空気を察するも、どうやら少しばかり遅かったらしい。意識を逸らした一瞬でリリがアイズたちを縛ってた紐を斬って自由にしたよね。気付いたら出入り口は大量のエルフが塞いでるし。窓の外にもびっちり。エルフなのにビッチって言ったらキレられるだろうか。

 

「すまんな。こちらとしてもたまにはお前が振り回される姿を見て溜飲を下げたいのだ。それに、歪とはいえようやく娘に訪れた春だ、我儘を叶えてやるのも役割だろう」

「それでいいと思ってンのかテメー」

「誰がママだ」

「言ってねェよ」

 

ちくせう周りが敵しかいねぇ。どうしてこうなった。思えば疲労だと思ってたのもアイシャ経由で集められたイシュタル派アマゾネス辺りの呪詛(カース)が重ねがけされてんな、これ。オイオイ詰んだわ。

いっそ種族変更薬でアマゾネスになれば性転換薬は無効化できるんじゃ……駄目だな、捕まった時点でこっちの負けだし、体がデカくなんのも被弾率が上がって不利に働く。

つまり無理だろうとここからこいつらを鎮圧する必要があるわけで。下手に人壁をどうにかしようとしたら隙を突かれるし、真正面から倒すのも呪詛(カース)で難しくなったと来たもんだ。リリの極大補正がかかった【ステイタス】はアタシが指揮下から外れるだけで人数ごっそり減ってどうにか相手できるようになんのが不幸中の幸いか。

 

「安心しろ。全部終わったら解放してやる」

「何の慰めにもならねー言葉をドーモ」

 

むしろリヴェリアが仲介しねぇと監禁ルートの可能性あるのかよ。妹とその仲間が肉食系すぎる件。ちくしょう、よく考えたら事実上ダンまち完だって知ってるからリリは遠慮する必要がねぇんだよなぁ。

 

「それでは第二ラウンドと参りましょう、お姉ちゃん」

 

わぁ、いい笑顔。前世の弟だったどこぞの腹黒団長との繋がりが垣間見えるんだが、言ったらショックで自殺までありそうだから指摘できねーわ。どうせなら詰めの甘い部分まで似て下さい。

 

「ぐっふっふっ、優しくするから安心して覚悟するがいいニャ」

 

アホ猫(コイツ)はつける薬がねぇから率先して潰そう。つーか兄猫仕事しろ。でも予め潰されてるんだろうな、多分。同情はせんが過ちを認め悔いてそれでもと立ち上がる事を願う。その意味じゃアホ2号(クロエ)が隠れてる可能性もあるんか。マンマミーア。

 

「実力で、掴み取る」

 

なんか一番ヤる気に満ちてるのがこのアイズなんだが、アリアはどうした。つーか誰か止めろやこの蛮族。ママからして協力者だったわ。

 

「が、頑張ります」

「その意気だよ、春姫!」

 

春姫は魔法禁止な。いやマジで。普通に完封される。アイシャも駆け足でLv.6なったから詠唱の時間稼ぎはできるし。いやまぁアタシは表向きLv.7だから認識の違いを利用すればワンチャン瞬殺できるんだが。でもこの馬鹿騒ぎでバレるとかあんまりだよなぁ。

いっそどこぞの青狸よろしくポケット漁って出した秘密道具で解決できんもんか……閃いた。コイツら全員性転換させたら最初で最後の一枠を争って同士討ちするぞきっと。絵面が酷すぎるし精神的外傷(トラウマ)で訴えられる未来が見える。むしろ責任取れって同調圧力でなし崩しにハーレムが築かれそうなんで却下。いいアイデアだと思ったんだがなぁ。

つーかアタシが性転換した場合って、そもそも精通してるんだろうか。こちとら二十歳すぎても生理の来ないぺどぼでーを全盛期として保持しとんのやぞ。でも来てないならそれはそれでその事実に辿り着くまで普通に地獄を見そうで怖い。

 

「そういうわけだ。大人しく敗北を認めろ。この人数を相手に勝てるわけがないだろう?」

「馬鹿野郎テメーアタシは勝つぞテメー!」

 

そんな会話を合図に、各々が武器を構えて駆け出し、また飛び出した。アタシの戦いはまだまだこれからだ!

 

しかし、なんだ。アタシいっつも打ち切りエンドみてーな終わり方してんな。




五月六日も休みだぞって気づいたので途中で投げ出した花見も書きたいところ。北東北や北海道はギリギリGWとソメイヨシノの開花時期が重なってたのだ……昨今は地球温暖化で時期が早まったり食害で咲く花がなかったりもしますが。
ここ最近は事あるごとに性的な意味で襲われてましたが、今回で一段落です。婉曲表現すると椿の花がボトボト落ちてるんでしょうが、どちらかと言えば貞操逆転気味でもあるので何か違うような。あ、夢オチなので次回出て来た時は全員が何事もなく清い体なのでご安心下さい。記憶がないとは言いませんが。
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