そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱)   作:夜月工房

19 / 202
19.地上に来ました。とんずら下さい。

目標(ミノ群)達成(爆殺)できたので大満足だが、帰り道を探すのは心底だるいとも思っていた。気分はしあわせの箱を入手したリア充商人である。そこに臨時のサポーター雇用で同行を許してくれたのは正直ありがたい。この状況からでも入れる保険はここにあったんだ……!

今後リヴィラの街を利用するようになったとして、普通に何のコネもなく行ったらめっちゃナメられるのは目に見えてる。だが、今回のミノ爆殺を見た住人がこれだけいて、玩具的な意味合いとはいえ好意的なら、融通を利かせる何か――合言葉を教えてもらえるとか、割符をもらえるだとか――を期待できそうだ。

 

「それじゃ【ランクアップ】のためにあんな無茶苦茶やったのか? 馬っ鹿じゃねーのおめぇ」

「いやァ、照れるぜ」

「ほめてねーよ。パルゥムだからって成人かと思えば油断まだ(とお)だぁ? あの正義(アストレア)に喧嘩売ったようなもんだしよぉ。命知らずにもほどあんだろ。いいかぁそもそも子供(ガキ)ってえのは……」

 

これまでの経緯を軽く話したところ、返ってきた反応がこちら。まぁ残当。アタシ自身そう思う部分はある。そうじゃない部分は全力で強くなれって叫んでるわけだが。

 

「まーまー、それのおかげで面白い光景(もの)見れたんだからいいじゃない」

「本当にな。何度も見たいもんじゃないけど。通路まで熱が届いてたし」

「ハッハッハ、こっちもやりたくねーッすわ。二度と」

「実感込もってるなぁ」

 

長くなりそうなオッサンの説教を、明るい感じのお姉さんが遮る。ナイスカット。しかし実際あんな光景は早々見られないし、見たくない。一歩間違えればジャガーノート案件だからなぁ。思わず遠い目をしたアタシを優男の猫人(キャットピープル)が生暖かい目で見守っていた。その喋り辛くない? 野生解放していいんやで? そのネオチャイナ代表のクラブ・エースみたいな声でにゃあにゃあ喋るヨロシ……君ホントにモブ?

 

 

 

その後も雑談をしながら地上を目指し、何事もなく辿り着いた。さすがに18階層を活動拠点にしている面子だけあって道中は苦戦らしい苦戦を見せず、唯一アタシの影響で妙に高い出現率をダンジョンの異常かと警戒していた。原作時点で三百三十三回だったか壊されてるんだもんな、過敏にもなるか。

 

「そンじゃ、助かりました。今後世話になることもあるかもですけど……」

「堅苦しい挨拶はなしだ、なし!」

「そーそー、代わりにリヴィラの街まで来て金を落としてくれればいいから」

「じゃーなー!」

 

そんな感じにさっぱりした雰囲気で互いに手を振って別れを告げた。さて、愛しいリリを心配させてるだろうから早く帰って――。

 

「見つけた」

「やっぱりダンジョンか。単純馬鹿が」

 

聞き覚えのある声に、思わず油が切れたような動きで首だけ動かして振り返ると、そこには想像した通りの顔が。

 

「よ、よぉ、同胞。昨日振り。悪ぃンだがアタシちょっと用事が――」

 

ぎこちなくとも精一杯の笑顔を浮かべるアタシに対して、二人一組で動いていたであろう【アストレア・ファミリア】――ライラとネーゼ――は即確保に動く。抵抗を試みるも素の【ステイタス】に加えテンション補正というか空気というかにより失敗、アタシは無情にも連行されていくのであった。煙玉使っても良かったんだが、さすがにハバネロとか毒とかだから軽犯罪扱いになるよなぁ。逃走に使えるスキルや魔法が欲しい。

すまんリリ、会えるのはもう少し後になりそうだ。先になりそうの方がいいのか? んー、わがんね。どちらにせよ、アタシは無性にリリの顔が見たいし抱き締めたい。いや待て、シャワーが先だな。なんだかんだでマントも服もインナーまでもボロボロだし。体つきはまだまだ子供体型だから羞恥心らしい羞恥心も湧かないけど、それなりに破廉恥な格好ですわ! ですわ、ですのわ、なのですわー! なんか魔法の系統みてーだな。

 

そんな現実逃避をしていたら運ばれて来たのは案の定『星屑の庭』だった。なんか玄関の前にアストレアが待ち構え(スタンバっ)てるんだが。

ははーん、これもしかしなくても違法行為を疑われて尋問される流れだな? 女神は嘘発見器ってところか。発券機だったら笑うんだけどな。いや笑ってる場合じゃねぇわ。弁護士を呼んでくれ!

 

 

 

そうこうしている内に【アストレア・ファミリア】が勢揃い。これが圧迫面接ならぬ……なんとか尋問ってやつか。TALKの威圧的に話しかけるパターンだな。

 

「さて、じゃあ聞かせてもらうわねアーデ」

「黙秘します」

「ダメよ! ちゃんと答えなさい。こほん、それではラジルカ・アーデ。貴方は昨夜から今日の昼にかけて何をしていましたか?」

 

いかん、アリーゼがおふざけは許さないモードだ。そんなモードあるのか知らんがそうとしか考えられない、真面目な雰囲気だ。普段からそうしてろって視線が集まってるけど気づいてんのかな。ふざけても真面目でも挑発効果があるとかナチュラルボーンタンクかよ。ここじゃ前衛壁役(ウォール)ってんだったか。まともなパーティー組む機会がなさすぎて概念が薄れてるわ。

 

「ダンジョンで羽を伸ばしてしてました。ソロダンはいいぞ」

「それを証明できる人物は?」

「帰り道に同行してくれた冒険者はいたがどこの【ファミリア】かは聞かなかったな」

 

この時点であのアリーゼが大袈裟に溜め息を吐いて天を仰ぐ。新鮮な気持ちだが、隣のアストレアが悲しげというか悩ましげな表情をしているので無駄に罪悪感が。

 

「……他にダンジョン内で誰かと会いましたか?」

「会ってない。少なくとも自覚はねーな。強いて言うならインファント・ドラゴンくらいか?」

「「「インファント・ドラゴン!?」」」

 

うぉ、ビビった。なんでそこ声揃うんだよ。仲良し家族め。威圧的な空気は若干薄れたが、ここでギャグ補正が働くとむしろ酷い目に遭うんだよな、暴力的な意味で。

 

「一人でそこまで潜ったの? どうしてそんな危険な真似を……」

「……言わなきゃわからねェの?」

 

嘆くようなアリーゼの言葉に真面目な声色を作って疑問を投げかけると、場は静寂に包まれた。

まぁ、今回の行動はそのままお前らは頼りにならないって言ってるも同然だからしゃーない。今回は諦めるって言った奴がその日の内に独断行動とか、された側は裏切られたと感じてそうだしな。これでもまだ次回を企画、実行、大成功したのまではバレてないからセーフセーフ。

 

「とりあえずアタシはソロでダンジョンに潜ったし、最後の同行者以外に人とは会ってねーし、闇派閥(イヴィルス)への協力行為は欠片もなかった。身の潔白(嘘じゃねーの)は女神様が証明してくれると思うが?」

 

疑われてる内容とは掠りもしてねーからな。ダンジョン内部で人と会うのは偶然を装えるし後ろ暗い取引には持ってこいなんだろうが、嘘発見器(かみさま)の存在が色々と台無しにしてくれるっていう。

 

「アストレア様……」

「えぇ、嘘は言ってないわ」

 

すがるような子供(アリーゼ)の声に、母親(アストレア)は首を横に振りながら答えた。実際は神が嘘を吐く可能性あるから確実な方法ではないんだよなぁ。だからって他の神を同席させたとしても、面白そうだと結託して庇ったり逆に偽証扱いしたりなんてことも起こりそうだし。

 

「そう、ですか。じゃあ、アーデ、最後に一つ聞かせてくれる?」

「最後とか縁起でも――」

「私達は頼りにならない?」

「あ~、あ゛~ッ……はぁ」

 

処刑モード入ったのかと身構えながら茶化すも、アリーゼは取り合わなかった。そういうとこだぞ正義の眷族。

どう答えたものかとバツの悪さから頭を掻きながら考えるも、本音を問い質しているのだから取り繕う必要もないかと思い開き直る。

 

「頼りになってるし、した。諭されて常識だから正論だからと納得して引き下がって、けど戻った先で気が変わった。言ったよな? 派閥(うち)歪み(システム)。今だから言うが基本アビリティは【ランクアップ】の条件を満たしてたんだ。だからさっさと団長と対等になって内情の改善に動きたかったんだよ」

 

アタシの言葉に絶句する一同。まぁ分かる。

【ファミリア】の内部事情という機密の漏洩で信頼してましたアピール。そこから得ていた団長による支配体制と、戻った先で心変わりしたと語るアタシ。なまじ頭が回るだけに、もうそうせざるを得ない事件(イベント)があったと勘違いしたことだろう。実際には単なる気紛れというか修正した計画の一部で、嘘は言ってないが全てを語ったわけではないという方便なんだが。

常識を説く程度には心配する相手の悩みに対して事情(ルール)があるとはいえ干渉できない無力感、何かが起きてしまった事を察して自分達は何も分かっていなかったのだとする悔い。正義の眷族には堪えるはずだ。

 

「あら、嘘発見」

「マジか」

「ア~デ~?」

 

ここでまさかのアストレアがインターセプト。どこだ、どこが引っかかった? 焦るアタシを前に、アストレアは慈母の笑みを浮かべて

 

「ウ・ソ」

 

ぶん殴りてぇ、この笑顔。見ろよアリーゼが元ネタ通りの表情してんぞ。周りも似たり寄ったりの驚き顔……ライラと輝夜は呆れ顔だな。

 

「ふふ、ごめんなさいね。けど、このままだと喧嘩別れしちゃいそうだったから」

「そんな! こと、は……」

 

壊した空気(シリアス)がすぐに戻ってきた。とはいえ幾分楽になった顔してるな。今頃は今までの流れを振り返って粗探しでもしてるんだろう。

 

「で、まだ聞き取り調査は必要か? 早いところ本拠(うち)に戻ってリリを(かぞく)安心させてやりてェンだが」

 

矛盾は特にないとは思うが畳みかけよう。事実、直接告げずにダンジョン行ったしお揃いの使い捨て姿隠しは使ったしで愛しいリリに謝らねばならぬのだ。あと【ランクアップ】できるかの確認して、できるようならそっちも頼みたいし。

 

「あ……そう、ね。報告書は書けるし、うん。今日は一旦お開きにして、お仕置きはまた今度にしましょう!」

「なんて?」

 

聞き間違いだよな? そうに決まって……あかん、スッキリした表情浮かべとる。今の流れで気分を盛り返して復活する要素あった?

 

「法を犯したわけでもなし、それが家族のためならなおさら問題にはしにくい。それはそうとムカつくから私刑は譲らない」

 

肩に手を置く同族(ライラ)がアリーゼの心境、もしくは【ファミリア】の総意を説明してくれたが、後半部分は納得できるわけがない。いやでも【ランクアップ】しちまえば戦力はほぼ互角に……人数差は覆せねーな。そもそも輝夜とアリーゼは格上のままだし。

 

「それでいいのか正義の眷族」

「戯け、正義とは暴力を正当化するためのものよ」

 

アタシの呆れと諦めがブレンドされた感情の吐露を、当の輝夜(Lv.3)が引き継いだ。その顔に浮かぶのは嗜虐的(サディスティック)な笑み。なんてことだ、もう助からないゾ☆

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